ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

町で見つけたオモシロごはん122…上大岡 『サンアロハ』の、ポキサラダにアヒ串焼き

2008年08月24日 | ◆町で見つけたオモシロごはん


サンアロハのポキサラダ。貝殻に野菜とマグロブツが大盛り


 
娘の幼稚園の頃からのお友達から、お稽古の発表会のお誘いを受けた。お稽古のお題はピアノか、それともバレエか、と思いきや、何とフラダンスとのこと。「ホイケ」と呼ばれる発表会が、小田急線の湘南台にある文化センターで行われるという。
 
フラダンスといえば、2006年に公開され好評を博した映画「フラガール」を思い出す。閉山相次ぐ炭鉱の町をフラダンスで活気づけようとする、女の子たちの奮闘記で、蒼井優、松雪泰子、山崎しずちゃんら豪華キャストもあって話題を呼んだ。チアダンスをやっている娘に生のフラダンスを見せれば、影響されて蒼井優を目指してくれるかも。ということで7月のとある週末、娘と連れ立って出かけてみた。

 
南の国らしい健康的で陽気な踊り、というのがフラダンスのイメージだが、その精神は神と自然への感謝を示す宗教の踊り、儀式の踊りなのだという。プログラムの最初に演じられた、「カヒコ」と呼ばれる古典フラは、そうした祈りを主題にしたものである。賑やかな楽器や鳴り物はなく、囃子は肉声と「イプヘケ」と呼ばれる大きなひょうたん型の打楽器のみ。いわば日本の舞や能のようで、フラの精神を表した厳粛な雰囲気が漂う。
 
続いて、KONISHIKI氏のようにふくよかなクムフラ(ハワイ語で「先生」の意)の、にこやかな挨拶があった後、演目は一転。「アウアナ」と呼ばれる、明るく陽気な現代フラのオンパレードとなった。「私の心からの歌、心からの愛」「私の愛する人はどこ?」「私の大切な人と、ここで結ばれる」など、曲目から主題は「愛」なのが伺える。中には「あなたは王様、私は召使だから愛はないのね?」「私にとってあなたは一番素晴らしいファイアマン」なんて、どんな愛の表現なのか気になる曲目も。



「ケイキ」と呼ばれる子供クラスのフラ。手にしているのがウリウリ


 出演する年代層は、子供をはじめ若い女性から主婦、年配までかなり幅広く、衣装も、踊りのテンポも、そして表現する愛の形(?)にも違いがあるのが、なかなか興味深い。若い人は彩り鮮やかなヒラヒラのパウスカートで、アップテンポでキビキビした踊り。主婦はゆったりしたムームーをまとって、母性愛を印象づけるゆるやかな踊り。そして年配は裾広のロングドレスで、大人の成熟した愛を表すようなメロウな踊り、といった感じ。手を胸に合わせ、大きく開き、頭上に上げて、と、自然や心を表現するハンドモーションを多用して、心情を優雅に表現していく。
 
それに比べ、「ケイキ」と呼ばれる子供クラスのフラは、大人の艶やかさはもちろんない分、子供らしい溌剌さが気持ちいい。娘の友達も、「ウリウリ」という花を模したマラカスを両手に、精一杯の踊りを披露している。露出の多い衣装が恥ずかしいのか、ちょっと遠慮がちの様子だ。
 中でも目立ったのが、センターポジションの女の子。満面の笑みで、曲を口ずさみながら、大きな手の動きとともに切れよく腰を振っている。これはポスト蒼井優か、と言いたいところだが、何となくネイティブハワイアンっぽいふくよかで愛嬌のある面影は、どちらかというとしずちゃん、いや、ディズニーの「リロ&スティッチ」のリロのような愛らしさか。

 公演が終わる頃には、こちらもすっかりアロハ・スピリッツに満たされ、余韻に浸りつつハワイアンフードで晩飯といきたい。そんな店が湘南台にないか、携帯ぐるなびで店検索をすると、周辺では上大岡で1件ヒット。何と、自宅の最寄駅にある店だった。
 
地下鉄で引き返して、駅ビルの2階最奥にある『サンアロハ』に向かうと、入り口では大きな木彫りの像がお出迎え。入り口をくぐると吊橋があしらわれていて、ゆらゆらと渡ってフロアへと向かった。アンダーな照明の下、木調のテーブルセットに椰子の木、BGMはもちろんハワイアンが流れる。南の島の夜をイメージした、幻想的でムーディな雰囲気で、娘と二人の親子連れには少々ミスマッチである。
 
さっき見たフラの衣装のひとつ、ムームーをまとったお姉さんに席へと案内され、メニューを開いて自分はビールと肴、娘には晩御飯を選ぶことにする。ビッグオニオンフライ、フライドココナツシュリンプ、アボガドディップなどに並び、ハワイの前菜「ププ」、ハンバーグと目玉焼きを載せた丼「ロコモコ」、マヒマヒ(シイラ)のフライに、日本にルーツがあるという餅粉で揚げたモチコチキンといった、ローカル食が強い一品も魅力的だ。
 
さらにメニューには、江ノ島釜揚げシラスに湘南海鮮丼、そして各種カレーメニューがバリエーション豊富に揃っている。そもそもこの店、湘南のカレーショップ「珊瑚礁」から独立した方がやっていて、片瀬海岸とみなとみらいにも店舗展開している。人気店の珊瑚礁のカレーと聞いて、ビールとカレーの組み合わせにもつい、惹かれてしまう。



南国ムードあふれる店頭。テーブルには砂浜のジオラマが(右)


 とはいえ、ここは本日のお題に忠実に、自分はポキサラダと、ハワイの地ビールから「ビッグウェーブ」。娘はおもちゃ付きのキッズプレートを注文する。さらに卓上の「限定」の文字が気になって、アヒの串焼きも2本お願いした。先に運ばれてきたビッグウェーブは、ハワイらしいブルーのラベルで、グラスはなくラッパ飲みする仕組み。やや甘めでフルーティなのが、かつて飲んだシンガポールやインドネシアのビールに似ている。娘はテーブルに組み込まれた、砂浜のジオラマが気に入ったようで、ミニサイズのビーチに並ぶ貝殻をじっくり眺めている。
 ビールが半分進んだところで、アヒの串焼きとキッズプレートが運ばれてきた。アヒとはマグロのことで、現地直送のマグロを特製のハワイアンソルトで仕上げてある。ひと串グイッとかじると、ちょうどレアの火の通し加減。塩ダレにはほんのり酸味とコクがあり、マグロの味がガッチリと引き出されている。ゴマと梅の風味がさっぱり、梅ジソの焼き鳥のようでもありちょっと和風テイストのよう。串焼きをグッ、ビールをラッパでグイッといけば、気分は南の島のオープンテラスか?



パイナップル型の皿のキッズプレート(左) アヒの串焼きと地ビール「ビッグウェーブ」(右)


 
続いて運ばれてきたポキサラダは、大きな貝殻が器になっていて、南国らしいというか豪快というか。「ポキ」とは、マグロの赤身など刺身をぶつ切りにして、レタスや玉ねぎ、海草とまぜ、醤油やごま油のタレで合えた、代表的なハワイ料理のひとつだ。貝殻の中はマグロブツとアボカド、千切りレタス、青ネギ、トマトと野菜が盛りだくさんで、マグロ海鮮サラダといった感じである。
 マグロから口にすると、ドレッシングがからめてありピリッ。香辛料がいろいろ使われているようで、結構スパイシーなサラダである。ねっとりとトロのような味がすることで、アメリカでは寿司ネタにもなるアボカドが入っているおかげで、赤身のマグロブツなのにトロを食べているような、得した気分がする。
 
辛いもの好きの娘に、マグロとアボカドを少しおすそ分けした代わりに、キッズプレートのカレーをひと口味見させてもらう。珊瑚礁の鎌倉店は何度か訪れたことがあり、長時間煮込んで2日間寝かせた、真っ黒で濃厚なルーがくせになったものだ。このカレーもこってりまろやかで、子供向けなのか甘くフルーティな味わい。飲んだ締めに、懐かしのカレーを頼んでみようと思ったが、ボリューム満点のポキサラダを平らげたらすっかり満腹に。魚と野菜、そしてあっさり塩ダレで、ヘルシーにお腹いっぱいとなった。

 帰りの電車の中で、キッズプレートについていたおもちゃの袋を開けると、文具セットのキャラクターが「リロ&スティッチ」なのが、なかなか細かい。思わぬおみやげに喜ぶ娘に、「フラダンス、やってみる?」と聞いてみたら、「う~ん…」との反応。あの衣装と振り付けがちょっと恥ずかしいらしいく、「フラガール」でも「ケツ振れねえ」「ヘソ丸出しでねえか」と、のダンサー募集のシーンで女の子たちが逃げ出していたっけ。
 ということで、娘の目指せ・蒼井優は、本人がのらずにあえなく断念となった。それではチアダンスでがんばってもらって、目指すは松浦ゴリエちゃん!(ちょっと古いか?)。 (2008年7月27日食記)