ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

旅で出会ったローカルごはん101…大阪・長居 『浪花屋』の、トロトロのたこ焼き

2008年08月30日 | ◆旅で出会ったローカルごはん


 夏休みも終わりに近づいた中、ことしの家族旅行は大阪へ行くことになった。主たる目的は、実は子供の宿題対策。上野でやっていた「ダーウィン展」を見て、感想を書くという課題があったのだが、うっかり行けないうちに会期が終わってしまった。という訳で、次の会場である大阪に追っかけて見にいこう、ということになった。ついでに
USJで1日遊んで、できれば大阪らしいところへもちょっと寄って、夏休み最後の家族サービスといきたい。
 羽田からの飛行機で関西空港に着いたら、遊ぶ前に課題を済ませるべく、「ダーウィン展」の会場の大阪市立自然史博物館のある長居へとやってきた。展示を見てから昼ごはんにするつもりが、お昼はお好み焼きが食べたい、うどんがいい、と、旅行前に何かで調べたのか、いっちょ前に大阪名物をリクエストする子供たち。夏休みの課題はおろそかなくせに、こういうところは用意周到なのは、いったい誰に似たのやら。

 長居は大阪の南のターミナル・天王寺から電車で3駅ほどで、駅の周辺にはマンションや住宅街が広がる、典型的な大阪のベッドタウンである。駅周辺にはファーストフードやチェーンの飲食店が目立ち、地元の人は大阪の名物なんて食べるんだろうか、と、リクエストに合った店を探しながら、路地をうろうろ。すると長居公園通りに出たところでドンピシャ、たこ焼き屋に出くわした。格子をあしらったシックな和風の店頭には、『浪花屋』との屋号入りの幕がひるがえり、店頭では兄さんが焼けたたこ焼きを、手際良くひっくり返している。
 昼ごはんがたこ焼きでは少々軽いかも知れないが、お勉強の前に食べ過ぎると頭の回転が鈍ってしまうから、ちょうどいいかも知れない。テイクアウトして長居公園で食べようとすると「中で食べて行きはりますか?」とお姉さん。店を覗くと2組あるテーブル席が運良く空いていて、ありがたく店内に通されることにした。


注文は8個以上、4個単位で。4個100円ということで、数が増えても割引はないシンプルなシステム


 壁に貼られた品書きによると、味付けはしょうゆ味、ソース、マヨネーズ、ソースとマヨネーズ両方の4種類が選べ、8個以上4の倍数単位で注文ができるらしい。8個から40個まで4つ刻みの値段表も掲示され、8個で200円、40個でもたったの1000円! 東京のたこ焼きはひと皿500円ぐらいのイメージだから、本場は激安だ。
 そういえば3の倍数でアホになる芸人がいたな、なんてことを思い出しながら(笑)、4人分で4の倍数のキリのいい注文数を検討。安さもあって遠慮なく、ソースマヨをどん、と36個、さらにマヨネーズが苦手の娘のために、ソースだけのも12個お願いした。これでビールなしとは何とも殺生な、と嘆いていたら、家内が「スーパードライ」の貼紙を発見。テイクアウトがメインのたこ焼き屋だから、期待していなかっただけにこれはうれしい。

 竹の皿にのった熱々のたこ焼きが数皿運ばれてきたところで、大阪ごはん
1食目を皆でいざ、いただきます。ソースマヨに楊枝を刺したとたん、ふんにゃりと崩壊してしまった。楊枝で引き上げようとすると、中央から割れてしまうほど柔らかい。
 何とか口に運ぶと、皮はしんなり、中はトロトロでまるでカスタードのようだ。熱々のをやけどしないように、口の中で転がしながらモグモグ。出汁がしっかり効いていて、これはなかなかうまい。クリームのような食感は、だし汁に浸して食べる明石のたこ焼き・明石焼きのようでもある。ソースの辛さとマヨネーズの酸味、花カツオの香ばしさは、たこ焼き王道のコテコテに濃ゆい味わい。中身のタコは小さめで、甘辛く味付けしたコンニャク片が入っているのが面白い。熱々のをつまんでは、ビールをググッ。添えてある甘酢しょうががまた、ビールのいい肴になる。


客席から見た焼き場。ソースやマヨネーズを塗る前はプクプクにふくれている


 大阪のたこ焼きといえば、皮はカリッ、中はトロッなのがお決まりな中、ここの「ふにゃふにゃ系」と呼ばれるやわやわのたこ焼きは珍しく、前述の明石焼きのテイストに似ている。それだけにインパクトある味わいにハマる、地元大阪のたこ焼き食べ歩きファンも多いという。
 生地にたっぷりの卵、そしてカツオだしが入っているため、本来主役であるタコが小さめなのに、生地のうまさで評価が高いというのが面白い。つまみながら店頭を眺めていると、自転車でやってきた子供たちや、買い物ついでのおばちゃんが、20個、30個と買っていく。ベッドタウンの店らしく、普段使いのお客が多いのが、人気の証のように思える。

 計
48個のたこ焼きは、またたく間に4人のお腹に納まってしまい、もうひと皿ぐらいなら軽く食べられそうだ。生地の味がいいのなら、追加は何も塗らない醤油味で12個いってみよう。マヨだめの娘でも、これなら大丈夫。
 運ばれてきた竹皿には、シンプルなまん丸なのが12個、行儀よく並んでいる。こちらはパンパン、プクプクに膨らんでいて、ソースなどがかかっていないからへしゃげないのだろうか。口に入れるとホクホク、あっさり醤油のライトな味で、いくらでもいけそうな飽きのこない味だ。ソースやマヨネーズの濃さがない分、タコの香ばしさも感じられ、ある意味本来の「たこ焼き」らしい味がする。

 合計36プラス12プラス追加の12で、4人で計60個のたこ焼きを食べて、ごちそう様… と席を立とうとすると、「すみません、数が間違ってました」。お姉さんが笑いながら、足りなかった分です、と竹皿に2個のせて持ってきてくれた。数えながら食べていた訳じゃないのでもちろん気づかず、何だかおまけしてもらったような得した気分で、子供たちに1つずつ食べさせて店を後に。
 広い長居公園の中を自然史博物館に向けての移動中、子供たちはハイテンションでふざけまくっている。本場のたこ焼きがウケたのか、単にお腹いっぱいで機嫌がよくなったからなのか。このままお勉強モードに突入してもらい、宿題をしっかり仕上げてもらおう。その間お父さんは、夜の新世界食べ歩きに備えて英気を養うべく、公園の木陰で午睡をむさぼりながら待ってようかな。(2008年8月26日食記)