今日はまた、「ローカルごはん」本の番外ネタから。先日紹介した、旭川のステーキに続いて、十勝で頂いたステーキです。文中にもありますが、私の生涯ステーキランキングで、未だもってトップランクの味わい! 松阪、神戸、米沢、近江など、一応食べ通したつもりですが、原野の中の牧場で頂いたナンバーワンステーキの話、ぜひご覧下さい。旭川の記事で「北海道を旅して魚ばかり食べていると、無性に肉が食べたくなる」といったことを書きましたが、執筆もまた、同じ。魚のことばっかり調べて書いていると、全然違うネタを書きたくなってしまう…。
日本最北端の地・稚内を訪れた際、宿泊拠点とした旭川のステーキハウスで地元・道産牛のステーキを頂いた。「上川牛」という銘柄で、肉汁が少ない代わりに赤身がいい味で、肉そのものの味をしっかり楽しめるステーキだった。上川地区ではほかにも、大雪山の北麓斜面の牧場で飼育される「アンガス牛」も有名な銘柄牛で、道内でも有数の畜産が盛んな地域といえる。その旭川からちょうど、大雪山をはさんで南側に広がる十勝平野もまた、「十勝牛」という銘柄牛で知られる地区だ。別の機会に、帯広や池田など十勝周辺を訪れた際に、帯広市街からクルマで南西へ40分ほど平原を走ったところに広がる『八千代育成牧場』で、この十勝牛のステーキをいただく機会があった。案内役によればサーロインやヒレでなく、珍しい部分を食べさせてくれるという。
北海道の牧場は、本州とはスケールが桁違いだと聞いてはいたが、いざ目の当たりにすると壮観だ。ポロシリ山の麓に広がるこの牧場は780ヘクタールの広さで、東京ドームの170個分に相当する、と言われてもまったくピンと来ない。牧場の中ほどの高台にある、畜産研修センターからぐるり360度見渡して見える範囲は、すべて牧場の敷地内。はるか先の斜面にいる牛がまるでごま塩のように、白や黒の小さな点々に見える。食事は、この研修センター内にあるレストランで、牧歌的な風景を窓から眺めながら頂くことになったが、生きて動く肉牛を見ながらステーキを食べるのは、少々気が引ける。しかし、ここは夏の間に畜産農家から預かった牛を放牧する公共牧場で、放牧される1300頭はすべて乳牛とのこと。ホッとして、おすすめのジャンボステーキを頼むと、270グラムのステーキにグラスワインとパンかライスつき。
ジャンボステーキは、メニューを見ると十勝牛の「サガリ」のステーキとある。名前から部位を想像してみるが、ぶら下がっている部分といえば尻尾か、それともまさか乳? と見当がつかない。運ばれてきたステーキは、名の通り特大サイズであることのほかは、見た感じで特に変わったところはないようだが、ひと口食べてみて驚いた。とにかく肉が柔らかいのである。しかも、それほど脂がついているようでもないのに、かみしめると肉汁がじわりとたっぷりしみ出てきて、旨みが口の中いっぱいにあふれる。思わず顔がほころんでしまううまさだ。赤茶色のソースはデミソースかと思ったら、何と味噌ダレ。これが甘辛く、肉の味の濃厚さをさらに膨らませている。ステーキに和風の味噌が、こんなによく合うとは。
「サガリの正体は、実は牛の横隔膜です」と、店の人が種明かしをしてくれた。なるほど、よく動く部位だから柔らかい訳で、しっかりと歯応えがあった上川の牛肉とは好対照な味わいだ。このステーキ、自分が今まで食べたステーキの中で未だに一番うまかったと思っているが、道内にはまだまだおいしい銘柄牛がいっぱい控えている。この次は、どこで牛を喰ってやろうかと、デザートのかぼちゃ団子と牛乳しるこを頂きながら、窓の外はるか遠くに見える牛達を虎視眈々(それは乳牛だって)。(9月下旬食記)
日本最北端の地・稚内を訪れた際、宿泊拠点とした旭川のステーキハウスで地元・道産牛のステーキを頂いた。「上川牛」という銘柄で、肉汁が少ない代わりに赤身がいい味で、肉そのものの味をしっかり楽しめるステーキだった。上川地区ではほかにも、大雪山の北麓斜面の牧場で飼育される「アンガス牛」も有名な銘柄牛で、道内でも有数の畜産が盛んな地域といえる。その旭川からちょうど、大雪山をはさんで南側に広がる十勝平野もまた、「十勝牛」という銘柄牛で知られる地区だ。別の機会に、帯広や池田など十勝周辺を訪れた際に、帯広市街からクルマで南西へ40分ほど平原を走ったところに広がる『八千代育成牧場』で、この十勝牛のステーキをいただく機会があった。案内役によればサーロインやヒレでなく、珍しい部分を食べさせてくれるという。
北海道の牧場は、本州とはスケールが桁違いだと聞いてはいたが、いざ目の当たりにすると壮観だ。ポロシリ山の麓に広がるこの牧場は780ヘクタールの広さで、東京ドームの170個分に相当する、と言われてもまったくピンと来ない。牧場の中ほどの高台にある、畜産研修センターからぐるり360度見渡して見える範囲は、すべて牧場の敷地内。はるか先の斜面にいる牛がまるでごま塩のように、白や黒の小さな点々に見える。食事は、この研修センター内にあるレストランで、牧歌的な風景を窓から眺めながら頂くことになったが、生きて動く肉牛を見ながらステーキを食べるのは、少々気が引ける。しかし、ここは夏の間に畜産農家から預かった牛を放牧する公共牧場で、放牧される1300頭はすべて乳牛とのこと。ホッとして、おすすめのジャンボステーキを頼むと、270グラムのステーキにグラスワインとパンかライスつき。
ジャンボステーキは、メニューを見ると十勝牛の「サガリ」のステーキとある。名前から部位を想像してみるが、ぶら下がっている部分といえば尻尾か、それともまさか乳? と見当がつかない。運ばれてきたステーキは、名の通り特大サイズであることのほかは、見た感じで特に変わったところはないようだが、ひと口食べてみて驚いた。とにかく肉が柔らかいのである。しかも、それほど脂がついているようでもないのに、かみしめると肉汁がじわりとたっぷりしみ出てきて、旨みが口の中いっぱいにあふれる。思わず顔がほころんでしまううまさだ。赤茶色のソースはデミソースかと思ったら、何と味噌ダレ。これが甘辛く、肉の味の濃厚さをさらに膨らませている。ステーキに和風の味噌が、こんなによく合うとは。
「サガリの正体は、実は牛の横隔膜です」と、店の人が種明かしをしてくれた。なるほど、よく動く部位だから柔らかい訳で、しっかりと歯応えがあった上川の牛肉とは好対照な味わいだ。このステーキ、自分が今まで食べたステーキの中で未だに一番うまかったと思っているが、道内にはまだまだおいしい銘柄牛がいっぱい控えている。この次は、どこで牛を喰ってやろうかと、デザートのかぼちゃ団子と牛乳しるこを頂きながら、窓の外はるか遠くに見える牛達を虎視眈々(それは乳牛だって)。(9月下旬食記)