暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

S・

2008-09-07 | つめたい
日光は時にちなまぐさい
死のにおいをひきつれる
鼻につんと突き刺さりながらも
ベッドにわたしのそれを押し付けて
仮想的な死をあじわう
苦しまないみずからの
体液を嗅ぎながら
眠る

ブラインドコール

2008-09-02 | -2008
あなたは猫みたいね、とだれかが言ったので
そんなこたないよ、と謙遜をしてみた。

返事はない。

ビルの中というのはどうにも空が抜けているようで、
開放感と閉塞感っていうのは極端な話どちらも似たような
ものなんだってね。
誰もいっていないことを、さも伝聞したかのように
隣の知らない人に向かって自慢をする。

あいつはちょっとアレだからね。

小馬鹿にした声を無視するのだから、頭は悪くはない
自分に向ってそう言い聞かせることの何とかなしいことか。
元気出せよって知らないお前に言われたところで
ちょっと嬉しくなってしまうばかり。
ざわざわして落ち着かないから、街中はあまり好きではない。
でも静かなのにざわざわする田舎もあまり好きではない。

真っ暗な中に暮らしたいと言えば
(あなたは猫みたいね)
「ああいっぴきでせまっくるしいへやにとじこめられてあたまおかしくなってへやんなかぐーるぐーるしてがんばってがんばってこびをうるいえねこみたいな」
(にゃんにゃん)
みんな頭がおかしくなるよ
ぜったいに後悔するよと囁いてくる。

後悔する頭があると思うならなぜ罵倒するんだ。

もうこめかみで指をまわす動作も
ともだちと会話をして笑われるのも
マイクを突き出されていろいろ聞かれるのも
うんざりしている。
妖精さんなんて信じちゃいない、幽霊だっていないと思っていて
それでもってただ聞こえるだけだ。
ビルの中は抜けるように青い。
トイレの水はなんだかちょっぴり甘かった。

怠惰、憂鬱、諦念

2008-09-01 | -2008
わたしという木片が
とくに不必要でないと知ったとき
わたしはなにかをしゃべることをやめた
けれどその数日のちには
ふたたびめまぐるしくかしましい
声を周囲にふりまいた

忘れたということもあるのだろう
そうだとしてもそれ以外には
なにか理由がなかっただろうか
なにか理由がなかっただろうか

だれもだれを欲していない
だれもがだれかを欲していても
そのだれもが不必要だ
だって運命がひとに決めることができないのならば
つまりは可能性などゼロだということ
だからこそわたしは
木片に似合わぬ四肢をひろげて
丘のうえからとぼうとする
時に落ちて破片がちらばり
見るも無残になったとしても
不必要なのだ
(けれどわたしにとってはどうしようもなく)

何度めかの沈黙に飽きて
わたしはまたもしゃべりだす
陳腐でどうでもよくて不必要な
あるいはみずからまで不快になるたわごとの塵
可能性などまったくない
だからきょうも助走をつけて
海溝めがけてとびあがる