暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

三面鏡

2024-03-13 | 狂おしい
慢性的な怒りは耳に膜を作る
うすく頑なな、だから遠い、
声は遠く、ぼんやりと聞こえるのだ
たとえ言葉が怒れる耳に届いても
脳に突き刺さることはない
脳はもっぱら怒りによって焼け縮れ
かつて持っていたはずの文法でさえ燃やしていく
怒りに理性は必要なく
そもそも知性は邪魔なのだから

あなたは何となく怒っている
わたしも何となく怒っている
具体的な理由のない怒りはつまり
不自由さによって引き起こされる
閉じ込められた獣がむなしく檻を行き交うように
反復行動が手っ取り早い報酬系だと余儀なくされる
わたしは本当に怒っているのか
あなたは本当に怒っているのか
何に対して怒りを覚えているのだろうか
それは直接的な怒りだろうか
無力感や悲しみに浸され爛れる脳の痛さに
神経ごと焼いて逃れているだけではないか
わたしの脳はそこそこに焼けて
そうして今、はたと失われた語彙の道程を振り返り
焼けた看板の文字を読もうとしている
思い出すことはきっとなく
また新たに敷いていかねばならないのだと
遙か向こうの焦げた林に目を細めているところだ

慢性的な怒りは耳に拒絶の膜を張り
脳と他人を焼いていく
あなたは今、常軌を逸しているのだ
わたしがそうであるように
たとえそれが
誰かによってもたらされた災禍としても
あなたは今、本当にその言葉が必要なのか

コメントを投稿