暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

不眠

2019-07-22 | 自動筆記
吐き気がするほど疲れている
じっとり濡れたシーツを握り
待てども鐘は聞こえてこない
瞼のうらでぎゅるぎゅる蠢く
けばけばしい芋虫を潰せたら

(骨はまるで鉛だし)
(肉はいったん挽いて戻されたんだ)
(詰め物の鳥)
(つくねの焼き鳥)

消えた芋虫、増える梯子
階段を登れど上がりもせずに
だらだらと転がり落ちていく
奈落の底に落ちてしまえば
そこが楽園と呼べるはず

(どんなオチをつけるつもりだった)
(何を考えていた)
(何しろ脳みそが足の下まで)
(攪拌されたものだから)

明日は何をすべき
(あれとあれとあれ、あとあれ)
(まず起きること)
明後日は何をすべき
(その前に眠ること)
明明後日は
その次は
その次の次の次の次の次
(寝て起きて寝て起きて寝て起きて)
生きる手順:
目を開ける。手を動かす。時計を見る。二度寝をする。また目を開ける。目覚ましを止める。足を動かす。立つ。歩く。下着を下ろす。排泄をする。流す。コップをとる。水をひねる。うがいをする。コップをかける。はぶらしをとる。はみがきをする。うがいをする。重複に気付く。間違った。間違った。もうわからない。何もわからない。いいや大丈夫。巻き戻そう。
うがいをする。はみがきをする。顔を洗う。ごはんはいつ食べる。今か。後か。もっと前だったろうか。ごはんを食べる。覚えているうちに。思い出している。そのうちに時間が来る。家を出る。歩く。歩く。歩く。人を縫って。人を見送って。たどり着く。仕事をする。鏡を見る。化粧を忘れている。巻き戻そう。
顔を洗う。化粧をする。いや。巻き戻せない。仕事をしているのだから。会話をする。話をする。ひとと。話を。疲れている。鼓動が増える。最近自覚したことなのだが、いつからか会話をする際におのれの首に手を添える癖がついていた。添えるというより、力を込めれば絞められるような形に。首のカーブに沿って自ら手を添えている。あなたと会話をすることはまるで首を絞められているようです。
首を絞める。解放する。解放される。帰る。ごはんを食べることを忘れていた。巻き戻せないのでそのままにする。風呂に入る。そして目を閉じる。
目を開ける。
繰り返しているはずのことを、
(なぜ繰り返すことができず)
私は
(さも真っ当そうな顔をして)
お腹がすいた。

明日は何をすべきだろう
今日すべきことさえできないのに
明日のことを考えて
(紛れ込んでいるのか)
明後日のことを考えて
擦れ合う袖の数を憂いては
(こそこそ隠れている)
芋虫がひとりでに消えるのを願っている
(もう芋虫は)
消えた、芋虫は消えた
欠けた梯子を転がり登っている
挽き肉をぽろぽろこぼして
奈落はきっとあと少し
底に広がる楽園によって
ヒトの生活を許されるんだから

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