暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

羨ましいね

2022-09-07 | 狂おしい
道を歩くのが恐ろしい。
目まぐるしく回転しては残像をひらめかせるホイールや、
アスファルトを噛む分厚いゴムや、
薄っぺらく頑強なボディの、
蓄えられた途方もないエネルギーから目を離すことができない。
やわい皮膚と肉と臓器と骨で組成された、
この脆弱な肉体はたやすく、
いともたやすく巻き込まれるだろう。
つぶれて弾け飛ぶ血肉を思う。
内側で砕け散り散りになる骨を思う。
やぶれた臓器から溢れる血を思う。
鉄に、ゴムに、アスファルトにぶつかり、
穴という穴から汚物を吐いて、
あるはずのない裂け目が無数に生まれ、
ちいさなそこを押し広げていく圧力を思う。
エネルギーの塊は今日も何事もなく通り過ぎ、
私はとぼとぼと歩くばかりだ。
破壊に慄き、
夢を見ながら。

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