ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

草間弥生展

2011年09月10日 | 美術

 今日は残暑厳しいなか、青山のワタリウム美術館に出かけました。
 この美術館は、小規模ながら現代アーティストの実験的な作品を展示することで知られ、好事家の間では有名です。
 今日観たのは、もはや巨匠と言うべき草間弥生展です。



 草間弥生といえば、水玉模様を執拗に描き続ける画家であり、数々の小説やエッセイを発表した著作家であり、1960年代には米国で数々のスキャンダラスなパフォーマンスを繰り広げた異能の人です。

 今回の展示は、主に1960年代、彼女が最も過激であった頃を写真や動画で回顧するもので、残念なことに作品そのものはわずかしか展示されておらず、草間弥生の作品展ではなく、まさしく草間弥生展でした。

 当時はベトナム戦争が行われ、若者の間ではベトナム反戦運動や、霊的な進化を模索するニュー・エイジ運動が流行、それにヒッピーなどが活躍していました。
 草間弥生もその流れに乗り、自ら全裸になって水玉模様を体に描き、ニューヨークの町をゲリラ的に襲ったり、馬や猫にまで水玉のペインティングをしたりしたそうです。
 今では真っ赤なおかっぱのかつらをかぶった不気味な婆さんですが、当時はあふれ出る創作意欲をもてあましていた感じがします。

 その後帰国し、統合失調症を発症して精神病院に30年以上入院し、病院からアトリエに通って絵画制作に打ち込む日々を今も続けているようです。
 水玉の幻覚が絶えず彼女を襲い、その水玉を美術品に昇華させてしまうあたり、並の精神病患者ではありません。

 ただ残念なのは、自らの作品に対する解説をやってしまうこと。
 「無限の網 草間弥生自伝」に詳しく書かれています。
 それは著述家ならではの悪癖というべきで、絵画はその作品だけを提示し、作者は沈黙すべきでしょう。

  NHKの日曜美術館を見ていていつも思うのですが、必ず大学教授やら美術館学芸員やらが出てきて講釈をたれますが、あれは時間の無駄ですね。
 そんな時間があるなら、もっとじっくり作品を紹介すべきでしょう。
 美術にしろ、舞台芸術にしろ、言語芸術にしろ、また音楽にしろ、芸術作品は感じるもの。
 理解する必要はありませんし、そもそも正しい理解なんて存在しません。
 芸術家と鑑賞者が共同作業で作り上げる神秘体験が芸術の本質であって、ある作品を難解だなどと言う必要はありません。
 一言、つまらん、と言ってうっちゃっとけば良いのです。
 要はその作品にもっと接していたいと思うか、接していて心地よいか、それだけが判断基準であって、どんな巨匠の作品でも、鑑賞する者がつまらんと思えばそれは駄作なのです。

 いかれた作品に億単位の金額がつく大芸術家。
 彼女の画業を見たかったのに、彼女の半生を見せる展覧会で、残念です。

無限の網―草間弥生自伝
草間 弥生
作品社
草間彌生全版画集 All prints of KUSAMA YAYOI 1979-2004
草間 弥生
阿部出版
草間弥生永遠の現在
草間 弥生
美術出版社

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