非暴力といえば、インドの偉大な魂、ガンヂーですね。
当時世界最強の大英帝国に対して非暴力で立ち向かい、インド独立を果たしたのだから驚くべき偉業です。
聖者でなければ出来ない仕事です。
しかし生身の人間が聖者になどなれるのでしょうか。
聖者というのは、内部に巨大な矛盾を抱えた存在にしかなりえないのではないでしょうか。
例えばガンヂーは、インドの父となりましたが、四人の実子の父であったのか、また妻の夫であったのか、疑問です。
ガンヂーは38歳のとき、妻との性的関係を断つことを宣言し、妻子には、家族ではなく、非暴力運動の同士となるよう求めました。
ここに、聖者ガンヂーの、目的のためならば家族すら捨て駒にしようという、悪魔の顔を見ることができます。
とくに長男ハリラルは悲惨です。
英国留学の夢を父によって断たれ、清貧・禁欲の生活を求められます。
ハリラルはそれを断って結婚し、女色と酒に耽ります。
借金とりから逃れるため、乞食の姿でインド中を放浪し、父、ガンヂーの死に目にもあえず、ガンヂーの死後半年で、哀れな生涯を閉じることになります。
あまりに偉大な父をもってしまった平凡な息子の悲劇です。
大体において、天才とか偉人とか言われる人々は家庭でよき夫、よき父に収まることが難しいようです。
非暴力のなかに潜む大きな矛盾を考えることなく、非暴力を称揚することは危険が伴います。
ガンヂーその人は最後は凶弾に倒れ、仲間の多くも暴力により命を落としました。
非暴力で軍隊に立ち向かえば、相手の軍隊の腹一つで皆殺しにできます。
非暴力は暴力を生み出す装置にすらなりえます。
非暴力に潜む暴力性を抜きにして、非暴力を賞賛することは慎まなければなりません。
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