長崎出張からの帰り、機内で人間国宝の講釈師、一龍斎貞水の「真景累が淵」の中から、「宗悦殺し」の場をラジオで聞きました。
落語を聞こうとおもってチャンネルを代えたところ、夏のせいか、怪談をやっていたというわけです。
年老いたあんまの宗悦が、爪に火をともすようにしてためた金30両を3年前、旗本に貸します。
いつまでたっても返してもらえないので、宗悦は催促に行ったわけです。
「今はないから待て」の一点張りの旗本に、それまで旦那さまといってうやうやしい態度をとっていた宗悦が豹変するところが面白かったですねぇ。
いつまで体が動くかわからない年寄りには、金は命より大事なんだ、と啖呵を切るところなど、現在の老人にも共感を呼ぶのではないでしょうか。
結局旗本は宗悦を無礼打ちにしてしまい、宗悦は血まみれで事切れてしまいます。
それから起こる様々な怪異現象が「真景累が淵」の真骨頂ということになるのでしょうが、機内では「宗悦殺し」の場をたっぷりと演じていました
わが国の話芸が発達していること、世界に例を見ないのではないでしょうか。
英国などではサイレントが盛んなようですし、喜劇やコントは世界で行われていても、落語だったら扇子にせいぜい手ぬぐいを小道具になんでも一人で演じてしまいます。
講談はもう少し舞台装置がありますが、それにしたってわずかなものです。
歌舞伎が豪勢な舞台装置を使うのとは好対照ですね。
そのわずかな舞台装置すら見えない、ラジオで音だけ聞いても楽しめるというのは極めて高度な話芸だと言わざるを得ませんねぇ。
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