昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

運が悪いことから全てが始まった(76)貿易会社(34)

2013-12-31 05:04:36 | 小説、運が悪いことから全てが始まった
 ・・・自分の彼女を見せたかっただけじゃないか・・・
 ボクは西荻窪の藤原の部屋のふたりを思い出していた。
 <新居浜の水上飛行機> <神戸のエコーサウンダー事件> <ココム違反事件>
 <ソ連使節団の接待> この会社に入社して3年目、今は次の仕事が決まっていない。
 永野の仕事を手伝っているだけだ。

「今井さんがダニチさんと結婚するらしいわよ・・・」
 仕事が手に付かなくってボーっとしているボクに永野が顔を近づけて言った。
 
 
 今井さん?
 総務部の今井女史だ。
 入社早々ジアゾ式コピーの撮り方が分からなくてまごまごしていたボクに代わって撮ってくれた優しい人だ。
 永野に「自分でやらないと覚えないわよ!」と怒られたことを想い出した。
 今井女史とダニチ課長の仲はうすうす感じていたから、やっぱりと受け止めた。

 それにしても最近の永野はボクに優しい。
 この間も「これいいわよ・・・」とジュリー・ロンドンのレコードを貸してくれた。
 
 ハスキーなラブバラードに、たちまちボクは惹きつけられた。
 今井女史のことを報告してくれる彼女の目を見て、<our day will come>の歌詞がとつぜん頭に浮上した。
 ・・・私たちの時は来るから すべてを手に入れて 喜びを分かち合う 恋に落ちることで手に入る・・・

 ─続く─

 今年も今日で終わりだ。
 毎日、大半の時間を付き合ってくれたパソコンに門松を飾った。
 
 

運が悪いことから全てが始まった(75)貿易会社(33)

2013-12-30 03:58:53 | 小説、運が悪いことから全てが始まった
「電話よ・・・」
 永野から言われた。
 ・・・どこから?
 確認しようと思ったがやめた。
 一瞬、ダルタニアンの幸子のことが頭をかすめたからだ。
 しかし、永野の表情はあのときと違う。
 怒った顔ではない。

「はい、司ですが・・・」
「おっ!久しぶりだな。声は昔のまんまだ」
 上から目線の言い方!
 すぐあの懐かしい顔が浮かんだ。
 藤原だ。元住吉の下宿仲間だった・・・。
「藤原さん? お元気そうですね。今何やってんですか?」
「今? あいかわらず学生だよ・・・」
 ・・・そうか、医学部は長いんだ。インターンかな?
「今、西荻の駅の近くの学生寮に住んでいるんだ。明日休みだろう?来ないか」

 学生寮は西荻窪の駅前の商店街を少し入った所にあった。
 
 門構えがある古い屋敷だ。
「一丁前になったじゃん。格好つけちゃって・・・」
 インターフォンを押すとあのころの気楽な格好で、冬だというのに半ズボン姿で現れた。 ・・・背広なんか着てくるんじゃなかった・・・
 大柄な彼に付いて薄暗い廊下を歩きながら思った。
 
「ここだ。入ってくれ」
 彼に言われて部屋の中を見回すと、四畳半ほどの和室に若い女性が膝頭をきちんとそろえて座っている。
「いや、友人の浅井さんだ。近所のK女子大学の寮に住んでいるんだが、たまたま今日遊びに来てくれたんだ・・・」
 藤原にしては照れた顔で紹介してくれた。
「浅井さち子です。よろしく・・・」
 ・・・友人? サチコ?・・・
 メガネをかけているが奥に光る目がかわいい理知的な女(ひと)だ。
 きゃしゃな姿に似合わず深みのある声。

「まあ、気楽にしてくれや・・・」
 彼はどんとあぐらをかいて座るとボクにも座るように座布団を勧めてくれた。
「司秀三です」
 ボクは曲がらない足を気にしてテーブルの下につっこんだ。
「こいつとはね、日吉の教養学部のころ下宿でいっしょだったんだ」
「・・・」
 
「なかなかこう見えても隅に置けないやつでね。下宿の奥さんと懇ろになっちゃって・・・」
「懇ろ? 冗談じゃないですよ!」
 ボクはあわてて否定した。
「いや、悪かった。そこまではいかなかったんだよな。・・・だけど浅草の酉の市に奥さんとデートしたんだぜ。下宿仲間が8人いたんだけど美人の奥さんとデートしたのはこいつだけだもんな・・・」
    
 いきなり何て話だ。
「魅力的な方ですね・・・」
 ボクをじっと見つめて、さち子さんまでくだけちゃって人を出汁(だし)にしている。

 ─続く─

 夏の間、あんなに長く咲き誇っていた百日紅の林も今はすっかり冬景色に変わっている。
 
 

運が悪いことから全てが始まった(74)貿易会社(32)

2013-12-29 04:07:34 | 小説、運が悪いことから全てが始まった
 今日も沿岸貿易の担当、物資部の池田のロシア語でまくしたてる電話の声が営業部を圧していた。
 
「おい、おい、声がでかい! そんなでかい声でなくても伝わるだろうが!」
 佐賀が、彼にしては大きな声を張り上げたが、そんな日本語は次の瞬間、池田デブチカのロシア語に押しつぶされ消し飛んでいた。
 浅井などは机の下にもぐって電話をかけていた。

 池田は体形からデブチカなんて呼ばれていて、普段はニコニコと話を聞いてくれ、風船みたいに扱いやすい男なんだが、いったん仕事の話となると表情は一変する。
 目が据わって口が尖がり、でかい声で反論する。
 その声たるや、部屋の外の人まで相手にしているのではと思われるほどだ。

「また電話か・・・」
 今度は日本語で対応している。
「売り込み先は、姿、形で売り込む魚屋ばかりとは限らんだろう!」
 相手は、池田が今回ソ連と輸入契約した魚の売り込みに出かけた営業マンらしい。
 日本では見慣れない深海の魚で、みんなが・・・こんな魚売れるの?・・・と言っていたやつだ。
 沿岸貿易はバーターだから輸出した分だけ輸入しなければならないが、売るものはいくらでもあるが、買うものが少ないからこんな変なものを押し付けられる。
 
「お前、喰ってみたか? 鱈みたいな淡白な味で意外とうまいんだから! フライにすれば学校給食で売れるぜ。かまぼこ加工業者でもいいし、一挙に捌けるじゃないか!」
 ・・・なるほど!・・・
 部屋中のみんなが納得させられちゃった。

 ソ連からの魚といえば、何といっても鮭だが、敵もさるもの、数量割り当てで希望するほど売ってくれない。
 
 だから、これはお歳暮として、M造船など重要なお得意さまに配ることにしている。

 ─続く─

 

エッセイ(190)仲井真知事の決断<落語談義>

2013-12-28 04:32:46 | エッセイ
 <落語談義13>

 熊さん:仲井真知事が辺野古埋め立てを容認しちゃいましたよ!
 
 ご隠居:二期目の知事選では普天間は少なくとも県外と唱えて当選し、それ以来強硬に言い続けていた主張を変えちゃったんだからビックリだね。
 熊さん:一期目では条件付きで県内移転を容認していたんですよね?
 ご隠居:そうなんだ、それが鳩山首相が「少なくとも県外」なんて言い出してから同調して変わっちゃったんだが、ここで再度変節だね。
 熊さん:鵺みたいなつかみどころのない人ですね。
 ご隠居:というか、現実派なんだろうね。ここでは強力首相に従っていた方がよさそうだと。・・・「驚くべき立派な内容だ」なんて言っちゃって。
 熊さん:でも、マスコミの論調を見ると、「とんでもないことだ!」という沖縄の人たちの声をいっぱい取り上げて、結局、辺野古基地建設なんてできっこない何て言ってますぜ。
 
 ご隠居:だいたい、マスコミなんてのは、一般の不平不満を取り上げて報道するのが商売だと思っているから。大所高所から日本はどうあらねばならないという観点での主張がないのが問題なんだ!
 熊さん:大所高所からの見方? ずいぶん怒ってますね。
 ご隠居:先日の首相が靖国神社を訪問した件だってそうだ。テレビ朝日で石破自民党幹事長が出演していたんだけど、デーブ・スペクター氏が「アメリカとの関係もうまくいっていて、さあこれから中韓との関係改善に取り組もうとする矢先に、何で今逆なでするようなことをやるんですか! ぶち壊しじゃないですか!」っていうような趣旨を顔面蒼白になって抗議したんだ。
 熊さん:それが、中韓を始めアメリカや欧州でも、もちろん日本国内でも一般的な受け止め方じゃないんですか?
 ご隠居:そしたら、あんまりだと思ったのか、末延吉正コメンテーターが、「首相としてもそれなりの覚悟があってのことじゃないんですか?」って言ったんだ。へえっ、マスコミにもこんな人もいるんだと思ったね。
 熊さん:こんな人?
 ご隠居:つまり首相の行為の悪い効果だけを取り上げてがなり立てているのが、マスコミだと思っていたから、安倍首相の真意を慮ろうとする人がいたことにちょっと感動したんだ。
 熊さん:感動する?
 ご隠居:というのは大げさかもしれない。時間がなくなって末延さんの真意は訊けなかったからね。しかし、少なくとも首相の行動の真意を考えてみようじゃないかという姿勢が垣間見えたのだ。
 熊さん:安倍さんの真意って何なんですかね?
 ご隠居:昨日も言ったように、少なくとも自らが前回首相だったとき約束を果たせなかったことを今回果たしたという個人的な感情に基づくものだけじゃないと思いたいね。
 熊さん:て言うと
 ご隠居:中国や韓国の言う<歴史認識>を変えたいという思いなんだ。つまり私利私欲に走った侵略国家日本という歴史認識を払しょくしたいという思いなんだ。
 熊さん:でも、実際は朝鮮を併合し、中国を侵略したんでしょう?
 ご隠居:ある意味それは事実だろう。しかし、それは何も日本固有のものではなくて、世界歴史の流れの中の一つだったんだ。日本だけが責めを負う類のものではない。
 むしろ敗戦したために咎めを一身に負っているんだ。英国やフランスの植民地主義、アメリカでもフィリピンなどで犯した殺戮の歴史を持っているし、日本の一般市民に行った東京大空襲や広島長崎に対する原爆投下、ベトナムへの殺戮行為など、人類そのものが問われなければならない<歴史認識>であるべきなんだ。
 熊さん:・・・
 ご隠居:だいたい、現代文明社会は国単位で行動している。国の利害をベースに外交が行われていることは現実を見れば明らかだろう。ところが日本のマスコミはどういうわけか、戦後自虐的な傾向があって、今回の首相靖国参拝問題でもそうだが、結果的には外国に利する報道に終始している。私は朝日新聞のモニターをやったことがあって、当時の編集長にお会いする機会があった。
 
 その時、「おたくはいつまでも戦争責任による自虐趣味に陥っていて国益に軸足を置いてないのが問題だ」といってやったんだ。当時日本も核武装すべきではという論議があったのだが、中国の高官が日本にやってきて「日本は核三原則を守りますよね」と言われたと記事に載っていたので「核を持っているおたくには言われたくない」となぜ反論しないんですかと言ってやったよ。
 熊さん:なるほど・・・。半世紀以上前の戦争をタネにいつまでも恨まれるんではたまりませんね。その割に日本は原爆を落とされても空襲で民家を焼き尽くされても、恨みを引きずらないでアメリカと仲良くしているなんてお人好しなんですかね?
 ご隠居:その点は世界各国が認める<和>の日本の特性だな。これからの人類の進むべき道に役立つと思うよ。
 熊さん:日本の引き起した戦争は、魔がさして、外国の真似をしたからなんだ。本質は違うんだ。
 ご隠居:これからの若き日本人よ、自虐から脱却して自信を持てと言いたいね。

 

エッセイ(189)安倍首相靖国参拝<落語談義>

2013-12-27 05:48:04 | エッセイ

 <落語談義12>

 熊さん:安倍首相が靖国に参拝しましたね! 何で今どきなんですかね?
 
 ご隠居:ちょとびっくりだったね。
 熊さん:中国や韓国との仲にさらに火を注ぐようなもんじゃないですか!
 ご隠居:安倍さんに信念として今年中に挙行しなければ、という強い想いがあったんだろう。
 熊さん:友党の公明党の反対も押し切っての行動らしいじゃないですか。
 ご隠居:秘密保護法も押し切って自信をもったのだろう。朝日新聞の世論調査なども見て、時は今! と思ったんじゃないか。
 
 熊さん:中国や韓国だけでなく、アメリカも遺憾だ!と言ってますぜ。
 ご隠居:そりゃそうだろう。今、アジアで事が勃発しては困るからな。それに・・・。
 熊さん:それに?
 ご隠居:今回の安倍さんの行動は一つの方向を向いているのがアメリカにとって気がかりなんだよ。
 熊さん:一つの方向?
 ご隠居:つまり、安倍さんとしては今後、集団自衛権行使、そして憲法改正と、戦後レジームからの脱却を目指しているのがアメリカの意向にそぐわないんだ。
 熊さん:戦後レジームからの脱却?
 ご隠居:中国や韓国も懸念しているところなんだが、東京裁判を受け入れて国際社会に復帰したはずの日本なのに、安倍さんはそれを否定する動きをしているというわけだ。
 熊さん:東京裁判?
 ご隠居:戦争末期アメリカのコーデル・ハル国務長官はルーズベルト大統領に「日本をアジア解放に殉じた国と思わせてはならない」と進言し、東京裁判で彼の狙い通り、日本は私利私欲に走った侵略国家として仕立てられ、東條英樹ら7人を平和と人道に対する罪で処刑されたのだ。それが日本を巡る戦後国際体制なんだ。
 
 熊さん:安倍さんは日本が歴史的にそんな破廉恥な国家と見られることに我慢できず、敢えて今回靖国参拝に踏み切ったと・・・。
 ご隠居:国際世論はそうした戦犯を祀ってある靖国を参拝するのがけしからんと言っている。しかし、日本人の宗教観からすれば、罪を犯した者も死ねば仏になるという考え方があるんだ。つまり死ねば罪は問われないと・・・。他の国では中国などもそうだが、時の政権にとって悪人だった者の墓にはつばを吐きかけるらしい・・・。
 熊さん:日本では、西南戦争で時の政府に反逆した西郷隆盛が死んだ後は銅像まで建てられるという・・・。
 
 ご隠居:そうだね。こういう宗教観は世界でも異質だとオーストラリアの国際政治学者グレゴリー・クラーク氏は言っているんだ。
 熊さん:でもアメリカは日本は「実利的な外交から脱却か?」などと懸念を示していますよ?
 ご隠居:たしかにポチと言われても実利的な外交に専念してきた日本だが、安倍さんはこれからの日本はポチに甘んじることなく自主外交を目指さねばと思っているんだろう。だからと言って、戦前のような軍事覇権国家を目指すことなど出来るわけもない。少なくとも現在の泥沼的国際状況を打破する日本独自にアピールできるものがあるのではという信念から今回の行動が行われたと思いたいね。
 熊さん:ちょっとカッコつけ過ぎなんじゃないの?

 

運が悪いことから全てが始まった(73)貿易会社(31)

2013-12-26 04:01:20 | 小説、運が悪いことから全てが始まった
「専務はいらっしゃるか!」
 営業部のドアが開かれると同時に部屋中にでかい声がひびき渡った。
 北海道選出の衆議院議員阿藤先生だ。
 岩田専務はソ連の貿易公団に人脈を築いているだけではなく、日本の政治家にも顔が利く。

 1964年ソ連は従来の貿易公団によるものとは別に、日ソ貿易に関わる全ソ輸出入事務所を創設、極東部ソ連と日本海沿岸の日本都市との間で貿易を開始した。
 
 さらに日ソ沿岸市長会議を開催し、両国間の沿岸貿易のみならず、姉妹都市提携並びに友好文化交流にも取り組むようになった。
 岩田専務はいち早くその動きに敏感に対応し、交流を期待する日本サイドの地方出身政治家との結びつきも深めた。

 今日も商店街を仕切るおっさんのようなずんぐりした体形の阿藤先生は、大きな声を張り上げて、社員のみんなにも愛嬌をふりまきながらやってきた。
 北海道の都市とソ連沿岸都市との結びつきのために、貿易を中心とする経済・文化交流を目指しているのだ。
 声がでかいと言えば、我社の沿岸貿易の担当に選ばれた物資部の池田デブチカに触れないわけにはいかない。

 ─続く─

 先日NHKテレビに熊谷真実さんが出演していた。
 
 53歳で35歳の書道家と結婚してニュースになった方だ。
「相手のご両親に結婚の御挨拶で伺ったら、共に61歳で旦那になる人より歳が近いの・・・」
「もう子どもも生めないお嫁さんに不安だったようだけど、今ではご両親と兄弟のようなお付き合いで、和気藹々・・・」とお幸せそう。

 ウチの奥さんのお母さんはすでに90歳を超えているが、杖もつかないで歩くし、声にも張りがあって元気いっぱい。
 たまにお伺いして、昔秘書課の華とおだてられた頃の話をすると「そんなことないわよ・・・」と言いながらもご機嫌。このところ奥さんからコケにされているボクに「旦那を大切にしなきゃダメよ!」とサポーとしてくれて、ボクにとってホッとする存在だ。
  

エッセイ(188)平和な国日本<落語談義>

2013-12-25 05:03:37 | エッセイ
 <落語談義11>

 熊さん:猪瀬都知事が寂しく退庁しましたね。
 
 ご隠居:オリンピック招致に頑張ったりしたんだけどね。気の毒な面もあるね。
 熊さん:でも徳洲会から5000万円借りたなんて言ってるけど、本当は裏があったんじゃないの?
 ご隠居:その辺は司直の手で解明されるだろうが、そっくり返したわけだし政治家の真似をしてバカみたのは本人だよね。
 熊さん:でも、その心は利権に関心を示したってわけだろうから許されないよね。
 ご隠居:しかし、こんな個人的なことで、ぐだぐだと時間をかけて都政が停滞したのはどうなのかね?外国から見たらとんだ猿芝居だったろうね。
 熊さん:たしかに、お隣の中国や韓国の汚職はけた違いなんでしょう?
 ご隠居:中国の温家宝元首相なんて、親族で27億ドル以上不正蓄財したって言われてるもんな。
 
 熊さん:27億ドルって、2700億円ってことですか? スゴイね!
 ご隠居:韓国の前大統領が辞任前に竹島に上陸したのは辞任後不正蓄財の追及逃れだって説もあるくらいだからね。
 
 熊さん:そういえば、韓国の歴代大統領って、辞任後ほとんどが不幸な末路ですよね。
 ご隠居:パク・クネ現大統領が<恨み姫>として日本の悪口を言い募っているのも、お父さんの親日不純路線を覆い隠さざるを得ないからだって見方もあるくらいだから・・・。
 
 
 熊さん:そういえば、最近日本が南スーダンで活動している韓国軍に一万発銃弾を提供したのが武器輸出三原則に抵触するんではと批判されてますね。なし崩しに武器輸出解禁へと持って行こうとする安倍政権への不信感ですね。
 
 ご隠居:韓国からの要請によるものであることは間違いのない事実だし、今断絶している日韓政府間の緩和の第一歩になればという思惑もあったんではないかな。
 熊さん:しかし、韓国で北朝鮮の金正恩首領を冒涜するデモがあった時、北は「予告なく報復手段をとる」なんて物騒なことを言ってましたね。
 
 ご隠居:現実は厳しいんだ。
 熊さん:猪瀬さんの5000万とか、銃弾の供与とか、日本で問題にしていることはチョロイと?
 ご隠居:しかし、今後の人類の進むべき道、という観点から言えば日本の倫理的というか、平和的な姿勢は貴重なものとして評価しなければ・・・。
 熊さん:ずいぶん大きく出ましたね!
 ご隠居:残念ながら現実的じゃないけどね・・・。
 

運が悪いことから全てが始まった(72)貿易会社(30)

2013-12-24 03:39:03 | 小説、運が悪いことから全てが始まった
「司さんにはお世話になりました・・・」
 視察が全て終わり、東京のレストランでさよならパティーが開かれた時、使節団の団長が挨拶の中でボクの名前に触れた。
 ・・・えっ!ボクが?・・・
 びっくりだった。
 ロシア語がしゃべれるわけではない。
 裏方として地味な働きをしただけなのに。
 不自由な足を引きずって右往左往していた姿に同情してくれたのかもしれない・

 パーティーは大いに盛り上がった。
 
 彼らは出されたウオッカを「底まで乾杯!」の儀式をした後、コザック踊りを披露して場を盛り上げた。
 
 C機械工業の春田部長が調子に乗って同じようにコザック踊りでみんなから喝采を浴びたが、会がお開きとなると同時にぶっ倒れてしまった。
 ボクは彼をタクシーで旅館まで送り届ける羽目になった。

 ボクの仕事は春田氏の尻にくっついて歩き、最後に彼の反吐の面倒を見ることだった。

 ─続く─

 「夢をみよう!」テレビCMでJRAが名馬テイエムオペラオーを使って連呼していた。
 
 テイエムオペラオーといえば2000年にはG1を総なめにし、無敵の8連勝を成し遂げた伝説の名馬だ。
 馬主は、自分の愛する馬の単勝を買い、勝った額すべてを次のレースに投入するという方式で買い続け馬券だけでもウン千万儲けたという。
 もちろん馬自身の賞金は18億円を超え、歴代1位だそうだ。

 そして今回夢を求めて集まった11万の観衆の前で新たな伝説の馬が誕生した。
 オルフェーヴルは最後の直線、後方からまくり、8馬身の大差で圧勝した。
 
 サッカーの名選手、オウエン氏をして「何という馬なんだ!」と言わしめた。
 レースで横道にそれたり、騎手を振り落したり、期待された凱旋門賞では2着に甘んじた気まぐれやんちゃ牡馬だが、池添騎手は「彼こそ世界一だ!」と絶賛した。
 これで引退なんていうもんだから、彼は「冗談じゃないぜ!」と初めて本気を出し、見せつけたのかもしれない。
 オルフェーヴルの快走はyoutubeでご覧ください。感動します。

 
 

運が悪かったことから全てが始まった(71)貿易会社(29)

2013-12-23 07:44:52 | 小説、運が悪いことから全てが始まった
 プラント製造メーカーC機械工業は岡山県の福山市にあった。
 ソ連使節団を案内したのは、木材製造業が集まっていた瀬戸内の企業だ。
 ボクがスケジュールを立て案内をしたといっても、実際はC機械の春田東京営業所長が全てを取り仕切り、ボクは使節団と一緒にくっついて歩くだけだった。
 
 使節団はゴルバチョフみたいな陽気で体格のいい公団の副総裁を団長に総数7名、技術者が4名、陰気なKGBではと疑いたくなるようなお役人も含まれていた。
 しかし、印象的だったのは技術者たちの素朴な人柄だった。
 ソ連というイメージから受けるずるがしこさはまるでない。
 日ソの技術者たちの話し合いは図面があれば通訳などいらなかった。
 彼らはすぐ打ち解けた。

 お酒がべらぼうに強い。
 食事のあと二人同室にサントリーのダルマを1本づつ差し入れたが、ひと晩ですっかり空になっていた。
 仕事から解放されると近所の八百屋から胡瓜やニンジンなど野菜を買ってきて、それをつまみに飲んでいたようだ。
 タクシーを連ねて京都観光なども行ったが、彼らは目を輝かせて楽しんでいた。
 

 天皇陛下が今日80歳、傘寿の日を迎えられた。
 
 そのお立場は孤独と思えるものがあったが、皇后の支えが大きかったとおっしゃった。

 昨日は我が大学同窓会麻雀会の第191回目が開催され、ご夫婦で参加されているM氏が傘寿の祝いを受けられ、「畏れ多くも私は天皇陛下より年上です」と挨拶された。
 
 参加数52名で優勝したのも80歳を超えているK氏だった。
 傘寿を超えたかたが11名となった。
 麻雀は長寿に効果的だと、みんな意気軒高だ。

 帰りは同じバスで先輩のN氏と、まだ若いNさんと一緒だった。
 Nさんの義理のお母さんが今年97歳でお亡くなりになったそうだ。
 山田耕筰や服部良一とも交流があり、80代で海辺の水着姿を披露された方だという。
 わが麻雀会の最高齢は92歳のUさん。
 100歳までの記録を打ち立てるのではというほど元気だ。

 
 

 

 

運が悪いことから全てが始まった(70)貿易会社(28)

2013-12-22 03:47:23 | 小説、運が悪いことから全てが始まった
 かくして岩田専務は不死鳥のごとく蘇った。
 未だ国交がなく、大商社が取引できなかったソビエト連邦との商取引でハザマトレーディングが共産圏貿易御三家の一つと評されるほど成功を収めることが出来たのは、狭間社長が人を得たことだ。
 M造船から吉原専務を迎え、M造船を手の内に入れた。
 そして引き継いだ岩田専務はソ連の魂を鷲づかみにする豪のものだった。
 
 膨大な土地を擁し、多数の民族を抱えるソビエト連邦はスターリンを得て巨大な官僚国家を作り上げた。
 
 思想家レフ・トロッキー曰く。
 「大衆にとって無名の存在であったスターリンが完璧な戦略計画をいだいて舞台裏から突如として出て来たなどと考えたら素朴であろう。否、スターリンが自分の道を探しあてる前に官僚が自身を探し当てたのである。かれらはみなそれぞれの地位にあって<朕は国家なり!>と考えている。だれもが容易にスターリンの中に自分を見いだす。しかしスターリンも官僚ひとりびとりに自分の精神の片鱗を発見する」と。

 つまり、ソ連は官僚で形成される国なのだ。
 岩田専務はその本質を見抜き、果敢にその懐の中に飛び込んだ。
 相手がのどから手の出るほど欲しがったトランジスタ製造装置を、ココム違反と知りながらも、分解し形を変え届け大物官僚の評価を得た。
 手土産で小役人を籠絡し、VIP並みの処遇を受けるほどの人脈を築いた。

 今回も紙の原料のパルプを製造する前工程のプラントの輸出を決めてきた。
 
 木材の皮を剥ぎ、パルプの原料となるチップに加工する一連のプラントだ。
 輸出する前に、実際の稼働状況を事前調査と称してソ連貿易公団は技術者のみならず、幹部官僚が何人か同伴するという。
 
 プラントを製造するC機械工業とともに、ボクは通訳の石山くんとともにそのスケジュールを立て、お供する担当に任命されたのだ。
 なんのことはない、ソ連のお役人の接待係だ。

 ─続く─

 <来年期待されるもの>
 玩具として、スエーデンの開発した<キネティックサンド>なるものが紹介されていた。
 
 一見、ありふれた砂なのだが、握ると粘土のように粘り気があっていろいろな形に成形できる。しかもその辺にくっついたり汚したりしない優れものだ。
 早速孫のお土産にと近くのスーパーやデパートのおもちゃ売り場に行ってみたがなかった。

 全日本フィギャー選手権で羽生結弦くんがSPで103.10という最高得点をたたきだした。
 先日のグランプリでカナダのパトリック・チャン選手を破った時の最高点を上回るものだった。
 文句なし!の、観客の魂を鷲づかみにする演技だった。
 来年の間違いなき我らが<希望の星!>だ。