23.蛙女さん、ありがとう
乗り継ぎのため、アムステルダム空港で通関チェックを受ける。
空港を出ることのない単なるトランジットなので、普通問題ないはずだったが、元自衛隊員のデカ男がワインを没収された。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/d2/1793b2021d2489f4b706b365133d73e7.jpg)
ぼくたちはノーチェックだったが、彼だけ荷物を全開させられた。
「お酒というより、液体に神経を尖らしているのよ・・・」
「飛行機に乗る前は、乗り継ぎとはいえ、その都度危険物のチェックをするんだ」
「たぶん、彼の目つきが鋭いから目をつけられたんじゃない?」
「お酒が大好きな人だったのに、運が悪かったのよ。かわいそうね・・・」
ぼくたちはうわさしあった。
蛙女は懸命に係員に抗議したがワインは戻ってこなかった。
空港内で買ったものだが、所定のシールが貼ってなかったから没収されたという。
お酒を購入する時は「シールをはってあるかどうか確認しなさい」という注意の言葉は蛙女から事前になかった。
しかし、今のぼくは彼女を非難する気にはならなかった。
彼女に対するぼくの気持ちはすっかり変わっていた。
成田行きの航空機はJALだった。
JAL機の日本人キャビンアテンダントは優しい。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/57/c2/b40a7c7f6baea443857adba8dce90330.jpg)
JALのうすいブルーの紙コップの色のようだ。
機内は空いていて、一人で十分二人分の席が確保できる。
ウオーキングウーマンが三人席をひとりじめして横になっている。
素足が魅力的だ。
マンガのような顔で、のべつまくなしにしゃべっていた茨城弁のおばさんが、枯れてしまったようなうつろな表情で固まっている。
エネルギーを失ったのか、それとも目覚めたときに備えて蓄えているのだろうか。
ゆったりとした気分で十分寝ることができて、疲れも取れた。
無事通関を終えて、蛙女に挨拶した。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3d/b7/e41303e51c7c1dadb16e334d5044a651.png)
「ありがとう・・・」
「お疲れさまでした・・・」
にこにこと返す笑顔は、よく見ると目が大きくてなかなかかわいい。
・・・蛙女なんて言ってゴメンネ・・・
ぼくは心の中でつぶやいた。
─了─
長い間ご愛読ありがとうございました。
次回からは小説「平取締役」を連載します。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hiyoko_thunder.gif)
空港を出ることのない単なるトランジットなので、普通問題ないはずだったが、元自衛隊員のデカ男がワインを没収された。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/d2/1793b2021d2489f4b706b365133d73e7.jpg)
ぼくたちはノーチェックだったが、彼だけ荷物を全開させられた。
「お酒というより、液体に神経を尖らしているのよ・・・」
「飛行機に乗る前は、乗り継ぎとはいえ、その都度危険物のチェックをするんだ」
「たぶん、彼の目つきが鋭いから目をつけられたんじゃない?」
「お酒が大好きな人だったのに、運が悪かったのよ。かわいそうね・・・」
ぼくたちはうわさしあった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kaeru_shock1.gif)
空港内で買ったものだが、所定のシールが貼ってなかったから没収されたという。
お酒を購入する時は「シールをはってあるかどうか確認しなさい」という注意の言葉は蛙女から事前になかった。
しかし、今のぼくは彼女を非難する気にはならなかった。
彼女に対するぼくの気持ちはすっかり変わっていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kaeru_love.gif)
JAL機の日本人キャビンアテンダントは優しい。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/57/c2/b40a7c7f6baea443857adba8dce90330.jpg)
JALのうすいブルーの紙コップの色のようだ。
機内は空いていて、一人で十分二人分の席が確保できる。
ウオーキングウーマンが三人席をひとりじめして横になっている。
素足が魅力的だ。
マンガのような顔で、のべつまくなしにしゃべっていた茨城弁のおばさんが、枯れてしまったようなうつろな表情で固まっている。
エネルギーを失ったのか、それとも目覚めたときに備えて蓄えているのだろうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/nezumi.gif)
無事通関を終えて、蛙女に挨拶した。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3d/b7/e41303e51c7c1dadb16e334d5044a651.png)
「ありがとう・・・」
「お疲れさまでした・・・」
にこにこと返す笑顔は、よく見ると目が大きくてなかなかかわいい。
・・・蛙女なんて言ってゴメンネ・・・
ぼくは心の中でつぶやいた。
─了─
長い間ご愛読ありがとうございました。
次回からは小説「平取締役」を連載します。