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この夏を終えても羽が生え変わらないし、今年の冬は過ごせないのかなという懸念通りになってしまった。
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「チュンくん(ママはこう呼ぶ)、ママよ」と言って、朝に晩に家内に抱っこしてもらうのが彼の楽しみだったようだ。
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我々夫婦がまだ今のマンションに移り住む前の一軒家の庭に落ちてきてピヨピヨと鳴いていたのを家内が見つけ、なんとか生かそうとスポイトで牛乳を飲ませ、すり餌を食べさせようと懸命だったのを思い出す。
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以前に飼っていた十姉妹や文鳥の経験をもとに飼いならし、部屋の中に飛ばし、手のひらに載るようになり、肩に留まって家内の吹くハーモニカに耳をそばだてるまでになった。
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部屋の外へ出ようとすると、ピヨピヨと甘えた声を出し、それも無駄だと知ると、ジャージャーと威嚇して引き留めようとする。
外出から帰って玄関のドアを開けると、もうピイピイと鳴いて歓迎してくれる。
ベランダに吊るしても、他の鳥が寄ってくると固まっている。
自分は鳥だと思っていなくて人間だと思っているようだった。
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家内が出かける時、「チュンくん、出かけるよ!だいじょうぶ?」と声をかけたら「ヒュー」とか細い声を出したのが思い起こせばお別れの一鳴きだった。
家内が外出して、落っこちるように壺巣から出てきたので、ああ、まだだいじょうぶだ、エサをついばむのかなと見ていたら、隅っこにうずくまってしまった。
おかしい! 足が丸まって立てないようだ。
あわてて抱き上げると、目をぱちぱちしていて体は温かい。
しばらく抱っこしていたらすぐ目をつむってしまった。
ああ、ついに、もう最後だ!
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そのまま巣の中に戻すのは忍びなくて、小さなタオルに包んで巣箱に戻した。
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きっと、「長い間、ありがとう」と言って、十姉妹や文鳥と同じように、ガジュマルか月下美人の植木鉢の根元に埋めるだろう。
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「可哀そうなチュンくん、それでどんなふうに亡くなったの?」と聞くから経過を説明した。
「そうお父さんの手の中で亡くなったの? ひとりぼっちでなくてよかったね」と言った。
しばらくして、「もう埋めたのか?」と聞いたら、「オリーブの根元にね。チュイ(十姉妹)はべコニヤの根元だったからケンカしないように」と言った。
娘に電話して、「今日は喪中よ!」と言っていたから、夕食は無しかと覚悟していたら出てきた。
しかし、ご飯粒を上げようといつもの巣箱に目を向けたらチュンタはいない。
今は気丈にふるまっている家内も寝る前、抱っこの時間になったらひそかに涙を流すのだろうか。