昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

小説「昭和のおふくろとボク、そして平成の妻」②

2020-01-22 04:22:33 | 小説「昭和のおふくろとボク、そして平成の妻」
 おふくろがトイレに入ったり出たりしている。
 ・・・腹の具合でも悪いのだろうか・・・

「咲子さんは?」
 トイレから出てきて、書斎を覗いて言った。
「出て行ったよ」
 ボクはブスッと言った。
「ふ~ん・・・」
 出て行ったということが普通の意味と違う、重大なことだという認識はないようだ。

 それ以上確認することもなく、おふくろは部屋へ戻って言った。

 そのうち、電話が鳴った。
「今から、横浜へ行くからね。・・・そのうち荷物を引き取りに行くから・・・」
 それだけで電話は切れた
 
 ─ 続く ─


  

「昭和のおふくろとボク、そして平成の妻」

2020-01-21 05:21:34 | 小説「昭和のおふくろとボク、そして平成の妻」
 1.妻の家出

 「今までいろいろとお世話させていただきました・・・」
 玄関わきの書斎の扉を開けて、咲子がいつもと違う低い声をパソコンに向かっているボクの背中に抛りかけてきた。
 ・・・お世話させていただきました?・・・
 ふり向くと、もう姿は消えて、パタンという玄関扉を閉める音だけが残っていた。
 ・・・おふくろは、孫はどうするんだ・・・  
  
 ボクの頭がムダに回転しだした。
 ・・・どうせこの前と同じだろう・・・
 気を取り直して、前向きに考えることにした。