昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

なるほど!と思う日々(369)外人の武士道とは

2016-03-30 07:08:25 | なるほどと思う日々
 先日NHKテレビBSで、日本大好きのアメリカ人によるアメリカ人のための歌舞伎「忠臣蔵」を見た。
 
 その芸術手段としての舞台、所作、衣装のみならず
 
 日本独特の文化<武士道>に憧れたアメリカ人が敢えて<忠臣蔵>を題材に制作したものだ。
 3,000人の観客動員があり大成功だったという。

 一方、一人の日本人旅人がイギリスで体験した<武士道>に関するエッセイをインターネットで見た。
 イギリスのオックスフォード州の古戦場のある片田舎で音楽ライブを観るために重いバッグを担いで歩いていたら、同じライブに向かうイギリスの男から声をかけられた。
 スキンヘッドの刺青のあるフーリガンみたいな男だった。
 
 彼はこの辺で初めて見かける日本人に関心を持ったのだ。
「荷物、重そうだな。持ってやるよ」
 強面の男にビビったが、炎天下、長い道程を彼は親切だった。
「ありがとう」と感謝の言葉を述べると、男は「遠い日本から来たんだろう。人は助け合うべきだというのが<ぶしどう>だろうが、いちいち礼なんか言うんじゃねえ」と。
 そしてお別れの時には「またここで会えることを楽しみにしているよ」
 
 アメリカ人、イギリス人にとって<武士道>に対する共通の認識は<義>だったんだ。
 
  
 

エッセイ(274)白鵬の涙

2016-03-28 06:56:34 | エッセイ
 大相撲千秋楽、横綱白鵬は注文相撲、変化で日馬富士を下し優勝した。
 
 そのことで横綱としてはあるまじき品格を欠く業であると、彼はきついブーイングを受けている。
 
 白鵬が神前に横綱襲名披露し、今や勝星を積み重ね、他の追随を許さない大横綱の地位を確たるものにしていることは自他ともに認めるところである。
 

 今や大相撲は日本人だけの神事ではない。国際的なスポーツになっている。
 横綱としてはあらゆる技を駆使して勝たねばならない。
 とっさに出た敏捷な変化技で勝ったのだ。
 涙したのは、意図した技ではなくとっさの行為だったのだろうと推察する。
 むしろこの敏捷性は日本人力士にもっとも欠けるところでもある。

 白鵬は品格ある横綱たらんとする思いと、勝たねばという思いのはざまの中でとっさに出た技に後悔と謝罪の意味を込めて涙したのだ。
 
 
 品格あるスポーツを求める日本人の精神は尊いと思うが、国際政治にも言えることだが、現実は、あらゆるパワーで他を制するバランスで成り立っていることを痛感しなければならない。
 それが必ずしもいいとだとは思わないが現実の厳しさである。

 <好奇心コーナー>
 
 昨日は毎月恒例、第218回目の大学同窓会麻雀会で12組、48名が集まって行われた。
 
 そしてなんと! 寸前にドタキャンの穴埋めでお願いしたお二人、N氏とT氏が優勝、準優勝された。

 
  


三鷹通信(146)第17回読書ミーティング(6)帝国の慰安婦そしてCina2049

2016-03-25 05:28:06 | 三鷹通信
 今回飛び入りで参加されたH氏は2冊の本を推薦された。
 一つは、朴裕河「帝国の慰安婦」(植民地支配と記憶の闘い)
 

 著者は、韓国世宗大学教授。慶應義塾大学、早稲田大学大学院で学び日本史に精通しており、一方的な歴史観で報道される慰安婦問題から離れ、朝鮮史、世界史的立場から多面的に解説。
 韓国における対日史観、日本における対半島史観には相当のずれがあることを指摘、マスコミでは政治的に報道されているが、事実を正確に捉え学問として世界史的立場から記述している。

 もう一つは、マイケル・ビルズビー「Cina2049」(秘密裏に遂行される世界派遣100年戦略)
 
 CIAで親中派の軍事戦略研究者だった筆者が、中国の戦略を読み解き、1949年に中華人民共和国成立より100年後の2049年には世界制覇を目指していることを解明した本。
 西欧と日本から侵略された中国の本音はどこにあるか。
 今や、西沙、南沙諸島と埋め立てを推し進める習近平政権の目的は?
 アメリカの衰退とそれに伴う中国の強硬施策の変化を明かし、もはや中国は平和な国になると信じてはいけない、対策が必要と警告。

 韓国や中国など近隣に注視するだけでなく、世界をリードしてきたアメリカが変質し、理想的な統合国家EUが崩壊の危機に瀕している現状、<テロリズム>と新たな<ナショナリズム>の台頭に揺れる世界をいかに見て、いかに対処すべきか?
 <自然>とのかかわりを含めて人類文明の岐路にあることを認識する必要がある!


  

三鷹通信(145)第17回読書ミーティング(5)赤いろうそくと人魚

2016-03-24 04:31:48 | 三鷹通信
 5作目はYさん推薦の小川未明「赤いろうそくと人魚」
  (絵・たかしたかこ)
 大正10年に発表された小川未明の創作童話。
 人間に潜むエゴイズムと異形の者が抱く怨念をテーマにした作品。
 この作品は新潟県上越市の雁子浜に伝わる人魚伝説から得た発想を元にしたと言われている。
 
 雁子浜には当時から創業していたローソク屋が現存しているという。
 いろいろな人魚像がある。
 
 

 著作権切れにともない、様々なイラストレーターがコラボした絵本が生まれている。
 <いわさきちひろ>
 
 <酒井駒子>
 
 <朝倉摂>
  

 人魚は、南の方の海にばかりすんでいるのではありません。
 北の海にもすんでいたのであります。
 北方の海の色は青うございました。
 あるとき、いわの上に、女の人魚があがって、あたりのけしきをながめながら休んでいました。

 物語は伝承風の<でございます>言葉で語られます。
 
 自分たちは、人間とあまりすがたはかわっていない。
 さかなや、また、そこふかい海の中にすんでいる、気のあらい、いろいろなけものなどとくらべたら、どれほど人間のほうに、心もすがたもにているかしれない。それだのに、自分たちは、やはり、さかなやけものなどといっしょに、つめたい、くらい、気のめいりそうな海の中にくらさなければならないというのは、どうしたことだろうと思いました。

 みもちだった人魚は人間の世界に憧れを抱いたのです。

 「人間のすんでいる町は、うつくしいということだ。人間はさかなよりも、またけものよりも、にんじょうがあって、やさしいと聞いている。わたしたちは、さかなやけものの中にすんでいるが、もっと人間のほうに近いのだから、人間の中にはいってくらされないことはないだろう」と、人魚は考えました。
 
 せめて生まれる子どもにはこんなかなしい、たよりない思いをさせたくないものだと思い、りくの上で子どもを産み落とす決意をします。
 そして町でろうそく屋を営む信心深い老夫婦に拾われるのです。

「かわいそうに、すて子だが、だれがこんなところにすてたのだろう。それにしても、ふしぎなことは、おまいりの帰りに、わたしの目にとまるというのは、なにかのえんだろう。このままに見すてていっては、かみさまのばちがあたる。きっとかみさまが、わたしたちふうふに子どものないのを知って、おさずけになったのだから、帰っておじいさんとそうだんをしてそだてましょう」
 


 その子はやがてかわいい女の子に成長し、ろうそくに絵を描いて老夫婦の商売にも役立つことになるんです。
 しかし、なんとその信心深い老夫婦も大金をちらつかせた香具師の甘言に乗って彼女を売り飛ばしてしまうのです。

 むすめは、それとも知らずに、下をむいて、絵をかいていました。そこへ、おじいさんとおばあさんとがはいってきて、「さあ、おまえはいくのだ」といって、つれだそうとしました。 むすめは、手にもっていたろうそくに。せきたてられるので、絵をかくことができずに、それをみんな赤くぬってしまいました。

 そして、最後には、
 まっくらな、星も見えない、雨のふるばんに、なみの上から、赤いろうそくのひがただよって、だんだん高くのぼって、いつしか山の上のおみやをさして、ちらちらとうごいてゆくのを見たものがあります。
 いく年もたたずして、そのふもとの町はほろびて、なくなってしまいました。


 なぜか残酷な童話!
 
 
 
 
  
 怖いですね! 
 何か自然をないがしろにし、お金に翻弄される、現代の人間社会を暗示しているみたいで…。 
 

三鷹通信(144)第17回読書ミーティング(4)吉祥寺だけが住みたい街ですか?

2016-03-23 06:04:19 | 三鷹通信
 4作目はAさんの推薦本。
 マキヒロチ「吉祥寺だけが住みたい街ですか?」
 
 吉祥寺で不動産屋を営む姉妹。
 確かに12年連続住みたい街No,1の吉祥寺だが、最近どこにでもある街になりつつあると不満を抱いていて、今日も「吉祥寺以外」を紹介しちゃう不動産マンガ。
 
 

 
 *忙しくて人生を見直したい女性編集長には、「錦糸町」を!
  ・・・錦糸町? ボクの中学の友人、N君は錦糸町の帝王と言われていたっけ・・・
 
 歌舞伎町より治安の悪い夜の街というイメージだった。
 ところか何年か前久しぶりで訪れた錦糸町は、
 
 
 すばらしいコンサートホールなんかもあってすっかり一変していた。
 (すみだトリフォニーホール)

 東京スカイツリーへの玄関口でもあり、駅前にはエスニック料理の名店が多い。
 確かに日中錦糸公園でごろごろしているオヤジを見ることもできるのだが、硬軟織り交ぜた魅力的な街だ。

 *ニューヨークから帰国し再出発を期する女性カメラマンには「蔵前」を!
 
 江戸で一番の遊興地「浅草」に徒歩で行ける。
 川沿いの景観は東京のブルックリンと言われる。
 
 (ブルックリンの夜景)

 他にも、「雑司ヶ谷」
 
 「駒澤大学」
 
 「五反田」
 
 「中野」
 
 などが挙げられている。

 
 Aさんの推薦本はいつも意表を突くものが多い。
 ただこの本は吉祥寺の地元、三鷹図書館には置いてなかった。 意図的? 


三鷹通信(143)第17回読書ミーティング(3)長いお別れ

2016-03-22 05:06:21 | 三鷹通信
 3作目はボクの推薦したレイモンド・チャンドラー「長いお別れ」
 
 ハードボイルド小説の典型である。
 現時点でAmazonのハヤカワミステリの売り上げ1位。
 
 ハードボイルドとは、感傷や恐怖などの感情に流されない、冷酷無比、精神的肉体的に強靭、妥協しないなどの人間の性格を表す言葉。
 ボクは暴力的、反道徳的な内容を批判を加えず、客観的で簡潔な描写で記述する手法に惹きつけられた。

 <酒と女と暴力>
 
 
「ぼくは店をあけたばかりのバーが好きなんだ。店の中の空気がまだきれいで、冷たくて、何もかもぴかぴかに光っていて、バーテンが鏡に向かって、ネクタイがまがっていないか、髪が乱れていないかを確かめている。酒のびんがきれいにならび、グラスが美しく光って、客を待っているバーテンがその晩の最初の一杯をふって、きれいなマットの上におき、折りたたんだ小さなナプキンをそえる。それをゆっくり味わう。静かなバーでの最初の一杯──こんなすばらしいものはないぜ」
 私は彼に賛成した。
「アルコールは恋愛のようなもんだね」と彼はいった。「最初のキスには魔力がある。二度目はずっとしたくなる。三度目はもう感激がない。それからは女の服を脱がせるだけだ」
 
 
 
 としをとった給仕がそばを通りかかって、残り少なになったスカッチと水をながめた。私が頭をふり、彼が白髪頭をうなずかせたとき、すばらしい”夢の女”が入ってきた。一瞬、バーの中がしずまりかえった。活動家らしい男たちは早口でしゃべっていた口をつぐみ、カウンターの酔っぱらいはバーテンに話しかけるのをやめた。ちょうど、指揮者が譜面台をかるくたたいて両手をあげたときのようだった。
 かなり背のたかい、すらりとした女で、特別仕立ての白麻の服に黒と白の水玉のスカーフを頸にまいていた。髪はおとぎばなしの王女のようにうすい金色に輝いていた。頭にかぶった帽子の中に金髪が巣のなかの小鳥のようにまるまっていた。眼はめったに見かけないヤグルマソウの花のようなブルーで、まつ毛は長く、眼につかないほどのうすい色だった。向こうの端のテーブルまで歩いて行って、白の長手袋を脱ぎはじめると、さっきのとしよりの給仕が私などは一度もされた覚えのないいんぎんな態度でテーブルをひいた。彼女は腰をおろして、手袋をハンドバッグのストライプにはさみ、やさしい笑顔で礼をいった。笑顔があまり美しかったので、給仕は電気に打たれたように緊張した。女はひじょうに低い声で何かいった。給仕はからだをまげて、急いで出ていった。人生の一大事が起こったような急ぎ方だった。
 私はじっと見つめた。彼女は私の視線をとらえて、眼を半インチほどあけた。私はもうそっちを見ていなかった。しかし、どこを見ていたにせよ、私は呼吸(いき)をのんでいた。


 
 家へついたのは二時だった。彼らは警察の標識も、赤いライトもついていない、アンテナが二本立っている黒いセダンの中で私を待っていた。私が階段を半分とはのぼらないうちに、彼らは車から出てきて、私にどなった。おさだまりの服をきたおさだまりの二人組で、おさだまりの面倒くさそうなものごしだった。
「君がマーロウか。話があるんだ」
 一人が私にバッジをちらっと見せた。バッジが伝染病予防係の役人のものだったとしても、私にはわからなかった。灰色がかった金髪の男で、執念ぶかそうな人間に見えた。もう一人は背が高く、きちんとした服装の苦み走った男で、教養はあるがいやな野郎といった印象だった。二人とも、油断がなく、冷静で、辛抱づよそうな眼つきをしていた。警官の眼つきだった。警察学校の犯人選び出し訓練で養成された眼つきだった。


 以上いずれも清水俊二訳のものから。
 ちなみに、村上春樹も「ロンググッドバイ」というタイトルで完訳版として出版している。
 
 彼によれば清水のものはかなり原文を端折っているというのだ。
 春樹はレイモンド・チャンドラーは2番目に影響を受けた作家だそうだ。
 (1番目はフィッツジェラルド?)

 ボクはギムレットのような、クールできざな、しかし洒落た表現に魅せられたのだが、意外にも男性だけでなく、女性にもファンが多いことを知った。

 

三鷹通信(142)第17回読書ミーティング(2)仮面病棟

2016-03-21 04:12:24 | 三鷹通信
 講師がピックアップした今回のベストセラー、もう一つは
 知念実希人「仮面病棟」
 
 新進気鋭の作家による医療ミステリーである
 実業の日本社により、18刷り、15万部の実績を積み上げる。

 ピエロの仮面をかぶった男が療養型病院に籠城し巻き起こす、密室的サスペンスミステリーである。
 
「・・・あんたが医者か?」
 仮面の大きく縁取られた唇の中心部がかすかに動き、低くこもった声が響く。そこと目の部分だけ穴があけられているようだ。
「あ、ああ・・・」混乱したまま秀悟はうなずいた。
「なら、こいつの治療をしろ」
 ピエロは自分の足下を指さす。マスクに注いでいた視線を落としていった秀悟は息を呑んだ。ピエロのすぐそばに若い女が倒れていた。海老のように丸めた体を震わせた女。その顔が苦痛で歪んでいるのが遠目にも見て取れる。
 
 医師としての本能が体を動かした。 

 
 先輩医師の代わりに当直バイトを務める外科医、速水秀悟は事件に巻き込まれる。
 女を治療し、脱出を試みるうちに、病院に隠された秘密を知る。

 手指殺菌用の洗面台を横目に通過して扉の前まで来た秀悟は、フットスイッチに足を差し入れた。鉄製の自動扉がゆっくりと開いていく。それと同時に、手術室内の灯りが灯った。
「えっ?」秀悟はその場に立ち尽くす。
 ほとんど使われていない、古びた手術室を予想していた。しかし、扉をくぐった先には予想とはまったく異なった空間が広がっていた。
 
 ・・・古びた療養型病院に、なんでこんなに設備の整った手術室が・・・。


 ピエロ、医師、看護師、病院長、患者、閉ざされた病院内で繰り広げられる究極の心理戦。
 そして想定外、怒涛のどんでん返し!
 
 彼女は一瞬足を止めた後、すぐに再び歩き出した。ゆっくりとした足取りで。まるで秀悟が追ってくることを待っているかのように。
 彼女を追おうとした。しかし、踏み出そうと持ち上げた足を秀悟はゆっくりとその場におろす。
 小さな背中が人の波に消えていくのを、秀悟は立ち尽くしつつ静かに見送った。
 冷たい夜風が体から、そして心から温度を奪っていく。
 風に乗った薔薇の香りが、鼻先をかすめていった


 今回講師がピックアップしたベストセラー作品「君の膵臓をたべたい」、「仮面病棟」を読んでみて、男にとって女こそ永遠のテーマであることを改めて確認した。

三鷹通信(141)第17回読書ミーティング(1)君の膵臓をたべたい

2016-03-20 06:37:12 | 三鷹通信
 現役編集者が主宰する<第17回読書ミーティング>
 今回、講師推薦のベストセラー2作品、参加者推薦の3作品プラス2作品の合計7作品が提示された。
 従来、講師が手際よくまとめた内容に基づき、羅列的に紹介させてもらったが、今回は提示された作品全品を自分なりに読んでみようと思った。

 今回、講師がセレクトしたベストセラーは、無名作家のものが出版社の販売努力で売れるようになったものだ。
 一つは、住野よる「君の膵臓をたべたい」
 
 売れると信じた双葉社が、無名の新人なのに、書店ポップ、ポスター、Amazonビデオなどを駆使して「圧倒的デビュー作品」と銘打って売り出した。
 

 初版10,000部(最近は芥川作家でも5,000部)
 さまざまな仕掛けと営業努力により現在13刷り20万部を売り上げている。
 *本屋大賞2016にノミネート。
 *ダ・ヴィンチBOOK OF THE YEAR 2位。
 *2015年 年間ベストセラー6位。
 *読書メーター読みたい本ランキング 1位。
 *埼玉県の高校図書館司書が選んだイチオシ本2015 1位。

 もともとは電撃小説大賞向けに書いたものだが、長すぎて応募できず、他の賞に送るも結果は振るわず、小説投稿サイト「小説家になろう」に投稿したものがライトノベル作家の目に留まり、双葉社に紹介され出版されることになった。

「読んでみたいですか?」と問われたが、タイトルもえげつないし、内容も病弱の女性を愛してしまった男のいわゆる定番ものだろうとと思って、別に読みたくはないと答えた。
 それでこの作品とボクの縁は切れるはずだったが、出版社が惚れ込んだ内容に興味があったので、念のために自分自身で読んでみることにした。

 クラスメイトであった山内桜良の葬儀は、生前の彼女にはまるで似つかわしくない曇天の日のとり行われた。
 彼女の命の価値の証として、たくさんの人の涙に包まれているのであろうお葬式にも、昨日の通夜にも僕は行かなかった。僕はずっと家にいた。
 幸い、ぼくに出席を強いるような唯一のクラスメートはもうこの世からいなくなっていたし、教師やあちらの親御さんに僕を呼ぶ権利も義務もあるはずもなく、ボクは自分自身の選択を尊重できた。
 もちろん本来なら誰に呼ばれずとも高校生である僕は学校に行かなくてはならないのだけど、彼女が休日中に死んでくれたおかげで、天気の悪い日に外に出なくてもすんだ。
 共働きの両親を見送って適当な昼食をとってから、僕はずっと自室にこもった。それがクラスメイトを失った寂しさや空しさからきた行動かと言えば、違う。
 僕はクラスメイトであった彼女に連れ出されない限りは、以前から自分の部屋で過ごす性分だった。


 読者を惹きつけるには冒頭が肝心と言われるが、ヒロインの葬式、しかも相手の男は葬式に参加しないという、意表を突く書き出しだ。
 そして話がどんどん動いていく。マンガを読んでいるように・・・。
 おそらくテレビドラマ化されるであろう。
 講師によればヒロインは有村架純あたりがいいかなと言った。        
 

 詳しい内容は本を読んでいただくことにして、ボクがこの本に痛く感じ入ったのは、出版社がその気になれば無名の作家の本でも売れるということだ。
 実はボクも本を自費だが、出版している。
 
 2刷りまで行って、3刷りも、別のわが作品「雪舞う日」を出版することで、ダブルで売り込もうと提案された。
 しかしそのためにはさらに作者負担が必要だという。
「売れるはずないじゃん」という家族の意向もあって新たな費用負担は断念せざるを得なかった。
 さらにAmazonのカスタマーズレビューで望外な評価を得たことをタネに出版社のその気を引き出そうとしたが、出版社のリスクを避ける方針を覆すことはできなかった。
 要するにしかるべき人物の評価を得る<価値>がない限りムリだということを悟った。
 
 ともかく、この「膵臓・・・」は講師に言わせれば、「小説に出てきた人を電車を待っているようなときにふと思い出してしまうような<価値>ある小説」なのだ。
 病気で死んでいることが分かっているのに超明るい女子高校生と、彼女に引きずられることだけが唯一の生きがいという超内向的な男子高校生の、泣けるし、人と心を通わせることこそ人生の意義であることを知らしめる、人に勧めたくなる物語なのだ。


なるほど!と思う日々(368)昭和史のかたち

2016-03-18 04:08:05 | なるほどと思う日々
 昨日はFサロンで保阪正康「昭和史のかたち」が取り上げられた。
 
 かたちで表せば昭和時代は「直線」的であり「球」であった。
 (直線的に進み、球のように勢いをつけて転がり落ちて行った。)
 

 昭和史は二つの時代からなる。 
 (1)昭和6年の満州事変から昭和21年の大日本帝国の軍事主導体制の崩壊まで。
 
 (2)昭和35年の池田勇人内閣による所得倍増政策の始まりから昭和49年の高度経済成長体制の崩壊まで。
 

 イギリスの歴史家ポール・ジョンソンは日本人はアジアの中では唯一西洋的であると言っている。
「中国人は空間に生き、日本人は時間に生きる。・・・日本は細長い背骨のような島々の集まりからなる国で、むしろ古代ギリシャに似ている。発展を線的にとらえる意識はほとんど西洋的と言ってよく、点から点へ全速力で移動する。日本人は時間とその切迫性を意識しているが、これは西洋以外の文化ではほとんど例を見ないもので、このため日本の社会では活力が重視される。・・・」

 日本が直線的であればアメリカは曲線的である。
  
 戦時下にあっては学問は軍事的に価値があるか否かが判断の基準になる。
 日本では大学の多くは文学部を廃止している。
「英語を学ぶな」との命令が下された。
 ・・・アメリカの場合は逆に敵性語である日本語を学び、日本人は何を考えているかを学んだ。・・・
 直線社会の場合は効率がいい反面、その分だけ多くのものを失った。
 曲線社会は戦争のための価値観と平時の価値観を共存させている。

 高度経済成長下にあっては、当然ながら「経済」に役立たないものは捨て去られていく。
 司法の場で、工場廃水や廃液、汚染など企業の責任として認めなかった。
 こうした司法のごまかしが、すべて矛盾として噴き出してきた。

 昭和史を<かたち>としてまとめれば、戦前の「大日本帝国時代」も、戦後の「高度経済成長時代」も<直線的>に膨張し、<球>となって加速をつけて転がり落ちて行った。
   



三鷹通信(140)ミニミニ風三鷹散策(追記)

2016-03-12 16:08:54 | 三鷹通信
 今回三鷹駅周辺、特に太宰治ゆかりの地の散策だったが、細かく見れば興味深い史跡、風景がたくさんあることを知った。
 ただ、それらは漫然と散らばっていていわゆる観光地としての体裁という点では問題もあるなと思った。
 三鷹市は「文化の馨りのする水と緑の公園都市」を標榜するからには、もうすこし整理をして、インパクトある公園都市に仕上げていかなければならないだろう。

 例えば、ボクが海外で小さな街だが観光的にインパクトある街はそれなりに印象的で整理されている。
 スペインの白い街、ミハスとか、
 
 花飾りが美しいカナダのビクトリアのように。
 
 


 昨日は小学校の課外活動「スマイルクラブ」囲碁教室の今季最後の日だった。
 

 最後の参加者は4年生と5年生で8名だった。
「脳力を鍛えて、考える力をつける」
「礼儀を学び、挨拶ができるように」をモットーに1年間、ボランティアの我々とPTAのお母さん方の協力も得て子どもたちはみんな成長した。
 明るくて、賢い子どもたちを見ていると三鷹の将来は明るいぞ!