昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

運が悪いことから全てが始まった(58)貿易会社(16)

2013-12-06 03:51:55 | 小説、運が悪いことから全てが始まった
「じゃあ、出かけます!」
 課長からお金を受け取り、書類の入った封筒をつかむと、心配そうな永野の視線を振り切り浜松町駅へと急いだ。
 ・・・なんちゅう初仕事だ・・・
 羽田で伊丹行きの飛行機に乗り込んだが、初めて飛行機に乗ったなんていう感慨はなかった。
 
 伊丹で無事水上飛行機に乗り込んだ。
 乗客は他に二人。目の前に操縦士と副操縦士が何か言葉を交わしているが、耳をつんざくようなものすごい騒音で何も聞き取れない。
 薄い窓ガラスの外には大阪の街並みが模型のように広がっている。
 
 ようやく気持ちが落ち着いた。
 やがて瀬戸内海の島々が次々と形を変え、眼下に展開していく。

 あっという間に、といっても一時間近くかかっているはずだが、機体はぐんぐん高度を下げ、ぐーんというショックとともに窓の外に水しぶきが上がる。
 
 ・・・着水だ・・・
 気づくとモーターボートが近づいてきていて、それに乗り移った。
「ご苦労さまでした! これで間に合います。助かりました」
 陸に上がると、気のいいおっさん風の男に笑顔であいさつされた。
 名刺には係長、斉藤 保とあった。
 ボクにはまだ名刺もない。

「山川課長さんには無事受け取ったことを電話しておきます。お宿と思ったのですが、課長さんからとんぼ返りさせるようにとのご指示だったので、ここで失礼しますが、タクシーを用意してありますので、新居浜駅で電車に乗って下さい。ではお気をつけて・・・」
 それだけ言うと乙仲の係長はボクから受け取った書類を持ってそさくさと去って行った。

 ・・・とんぼがえり? じょうだんじゃないぜ!・・・
 これから電車を乗り継いで、今日中に東京へ帰れるのだろうか?
 学生時代、姫路、尾道に住む友人を訪ねて瀬戸内ひとり旅をしたときのことを思い出した。
 帰りの時間を間違えて岡山駅でひと晩過ごすはめになり、お土産の水蜜桃を何個も食べたいじめな思い出を。

 ─続く─

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