昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

小説<手術室から>(5)美人眼科医(1)

2015-07-31 05:35:26 | 小説・手術室から
 11月にしては陽射しの強い日だった。
  住宅街の中、淡いブルーと白のひし形の看板に<下田外科>とある瀟洒な病院だった。

 ドアを開けると待合室のソファは全部塞がっていた。
  今日は特別殊勝にしているんだというガキが一人親に付き添われていたが、他はほとんど年寄りだった。
 予約の時間より10分早く来たのだが、「わたしの番はいつごろになりますか?」などと督促している人もいる。
 秀三は時間通りにいかないな、と覚悟して立ったまま文庫本を取り出した。

 受付の事務の女性は書類を出したり入れたりパソコンに入力したり忙しそうだが、他に2,3人いる白や青の上っ張りを着た女性たちはあまり機能していない。
 診察している先生はひとりきりなのでそこがネックとなってだぶついているのだ。
 しかも奥から聞こえてくる先生は、「そうそう強いわね、おりこうよ」などと子どもの患者に優しく対応し、しつこい母親の質問に親切丁寧に応えている。

 30分もすると持ってきた本も読み終わり、待合室に掛っている絵の値踏みも、待っている人たちの品定めも済むころには、ガキも本性を現し、親の手を煩わすようになってきて、秀三もいささかいらいらしてきた。
 

 ─続く─

 <好奇心コーナー>
 

 中国、習近平政権の汚職摘発もいよいよ最終段階か?
 徐才厚に続いて、30日軍制服組トップの前中央軍事委員会副主席の郭伯雄に対し党籍剥奪処分を決めた。
 
 軍制服組ツートップが共に失脚するという異例の事態となった。
 注目すべきはいずれも江沢民元国家主席に引き上げられた人物なのだ。
      



小説<手術室から>(4)医者嫌い(4)

2015-07-30 01:55:34 | 小説・手術室から
「ロンパリよ!」
 妻の率直な言い方で目の異常を指摘されたのは、長い人生経験の中で今回が初めてだった。
 これは明らかに片目が見えないせいだ。最近は右目はほとんど見えない。
 明暗だけは認知できるが、ビルがあるな、車が通ったな、人が多いなという程度で、現像液の中でゆらゆらと浮かんでいるぼやけた写真のように見えるだけだ。
 

 右目はどんどん物を見ようとする役目を失い、本来なら左目と一緒に連動するはずがだんだん付いて行けなくなったのかもしれない。
 60を過ぎていまさらロンパリがなんだと思ったが、自分が気にしなくても他人から気にされる可能性が出てきたということだ。もう社会的に一線を退いた身だが、これからの人生だという思いもある。

 ・・・無料だから診てもらうか・・・
 医者を名乗る者に、目とはいえ我が身を委ねるのは意に添わないが、診察を敢えて受けることを後押ししたのは、市の指定医である近くの眼科医院の先生が評判の美人だと聞いていたからだ。
  こんな感じかな?
 取りあえず確かめに行くだけでも価値があるなんて不純な動機だった。
 まだ色気は衰えていない。

 ─続く─

 <好奇心コーナー>
 

 安保法案に関する参議院での論戦が始まった。
 なかなか見ごたえがある。
「海自の内部文書によれば、戦争に巻き込まれることを想定しているじゃないか!」
「ミサイルが原発施設を直撃することを想定しているのか!」 
 
 安倍政権に痛棒を与えるものばかりでなくサポートするのもあった。
 
「憲法9条と13条の狭間で解釈憲法はあり得る!」     




小説<手術室から>医者嫌い(3)

2015-07-29 05:30:06 | 小説・手術室から
 母親も母親だった。
 いつも遊んでいる米屋の息子が風邪を引いたと聞くと、秀三をいっさい外へ出そうとしなかった。
 友だちは彼だけではないのに辺りには風邪菌が舞っているからダメだと、あの小太り医者のアドバイスを神からのご託宣のように繰り返した。
 そして何かというとあの医者のところへ連れて行こうとした。

 もはや秀三にとって、医者なる者は同じ天を共にする存在ではなくなった。
 
 だからできるだけ医者に連れて行かれないように、少々具合が悪くても親に言わないようになった。

 視力検査のときに右目の視力がないことを認識していたが、少なくとも一番上と二番目ぐらいは覚えていて、ほとんど見えないことを明らかにしない知恵をつけていた。
 
 親も子どものカモフラージュにまんまとだまされて、近視ぐらいだろうにしか思っていなくて、彼はそのまま大人になった。

 車の免許を取る時に問題になりそうだったが、片目でも視野が180度確保できれば取得するのに問題はなかった。
 ゴルフもパターが下手だったのはそのせいかもしれない。
 
 でも練習で克服できる問題だった。
 しかし、今回家内から目の異常を指摘されたのはちょっとショックだった。

 ─続く─

 <好奇心コーナー>
 

 乳牛の自動搾乳マシンってスゴイね!
 
 牛が自分で機械に入っていって、所定位置に収まると、乳頭部分が洗浄されマッサージされ、搾乳パイプが乳頭をキャッチ、パイプを経由して搾乳されるんだ。すべて自動で人間はかかわらない。
 終わると乳牛は満足して機械を出て行き、代わりの乳牛が入って来るっていうのもスゴイ!
 
 




言葉(24)やるべきこと

2015-07-28 03:16:48 | 言葉
「おい、お前はなんかわしに相談事でもあるんか・・・」
 ご明察! なんで和尚さんは分かってしまうんだろうと驚きをかくせません。
 ・・・じっくりと話を聞いてもらうことになりました。

 行き詰っていること、勉強にも身が入らないこと、特に彼女にフラれたのが原因であること。
 とりとめもない若者の悩みに「そうかそうか」とうなずいてくれながら和尚さんが放った次の言葉は、一生忘れない言葉となりました。

「寒蝉、古木を抱き、鳴き尽くして頭を巡らさず!」 
 (迫力の声)
 
 秋になって時季を過ぎた蝉が一匹。大きな古木にふととまって鳴き始める。
 ミーンミーンミーン、と力強く精一杯鳴き尽くす蝉。
 しかしその蝉は、自分が時季はずれ・仲間はずれでいることを、気にしない。
 いっさい躊躇せずに自分の本文をまっとうしている。
 蝉は周りをキョロキョロと見渡すことなく、そのまま飛び去って行った。

「蝉も人間も、それぞれ自分の本分を持っている。・・・お前がやるべきことを、やるべき場所で、やり通すこと。それが一番大切なことじゃ」

 <好奇心コーナー>
 

 <オヤジのすごいところは「教えない」ところ>
「〇〇が面白いから見ろ」
「〇〇も読んでみろ」とさまざまな教材を紹介してもらいましたが、実際に何かを教えてもらったことはありません」 
「先生が発信し、生徒がそれを受け取るだけの教育はダメだ。もっと生徒の知的探究心を刺激し、生徒が自ら学ぶようにしなければ」

「すべては君の<知りたい>から始まる」
 荒瀬克己先生の言葉。
 

 以上、宝槻泰伸氏の本から。
          


三鷹通信(121)第14回読書ミーティング

2015-07-26 02:59:19 | 三鷹通信
 「良かった、この本に出会えて!」
 現役編集者主宰の読書ミーティングは今回も魅力満載の3時間でした。
 今回から講師自らがブログを立ち上げて下さるとのこと。期待しましょう。
 取りあえず、今回取り上げられた本を列挙させていただきます。
 *講師のブログは次回からとのこと。それぞれの本に対する講師、推薦人のコメントをぼくなりに追加します。

 先ずは講師からベストセラーズについて。
 
 4月発売以来、現在13万部
 <典型的な頭がよくなる系読書本>
 *(自己啓発)人間の能力は、読書と運動で脳を鍛えることによって一生伸ばし続けることができる。
 *(問題解決)自分の頭でいくら考えても限界があります。しかし本を読めば、何千、何万もの先人の知恵を借用できるのです。
 *(ノウハウ)本を読んで「一週間に3回アウトプットする」と記憶に残る。これが脳科学に裏づけられた記憶の法則です。
 *(時間効率)目次を見て一番知りたいことが書かれている部分が何章にあるか見当をつけて、その結論が書かれているところにいきなりワープ。

  (ぼくは、言葉、表現で気に入った文言をピックアップして索引をつけてPCに格納しています)

 同じ系統の「読書術」に下記がある。
 
 

 一方、教養をつけ人生を変えるもの。
 *知的な偉業を成し遂げた人が自分の読書経験と読書法を語る本。
 *あなたの人生を根幹から変える本に出会える。
 
 
 

 参加者からの推薦本
 ①
 世界で4000万部売れた本に、今回第4部を含めた完成本を発売。
 *飛ぶのはエサを獲るためではなく、飛ぶこと自体が生きる歓び。
 *高みへ登りつめ、また仲間たちのところへ戻る姿勢に共鳴。
 *飛ぶ技術を追求することで、時空を超える無限の自己実現。宗教、ニューサイエンスに通じるところがある。

 ②
 読書が人間の運命を決める。
 *主人公の生き方に共鳴できるとき、それはただの作り話ではなくなる。生き方の指針にすらなる。
 *素晴らしい人生を保証してくれるのは、才能でなく習慣だ。人生で手にするものは才能でなく、習慣が決めている。
 *人間の思考には習慣性がある。放っておくといつも同じことを考えている。自分に自信がない者はいつも自信のない方向に物事を考える。
 *我々が身につけるべきは、心を強く、明るく、美しくするための習慣ということになる。

 (表紙でタイトルより著者名が大きい。推薦者はこの著者の、損得でなく心のあり方を問う爽やかで読みやすい文体に魅かれるそうだ。)

 ③
 著者自薦の限定版。
 (ぼくが推薦)
  がむしゃらに頑張ったサラリーマン。先のことで悩まない、夢も少し。昭和時代の流行、ニュース、社会現象、風俗を4コマで活写。
 
  (実は家内がスクラップしたノートに著者の絵をいただいた)
   
 
(ぼくは「昭和のマロ」のペンネームで昭和時代に生きた経験から最近の世相への感想などを語っていきたい)
 「レロレロ姫の警告」・・・既刊。「雪舞う日」「マロよ翔べ」「仮面のツアー」    


 ④
  *小型船舶免許を持ち、実際に操縦するようになって「川からの目線」を持つと、陸からの認識と違う東京が見える。
  *川を語る本は<治水(洪水・ダム)>と<利水(飲み水・産業用水)>が大半。
  *川に行き船に乗るフィールドワークに基づいたライブ感覚のあふれる本。

  (ベニス、ストックホルムなど世界の水の都に負けない水路を持つ東京! 2020オリンピックに向けて整備が期待される)

 講師からのロングセラー本
 
 三鷹で書かれた太宰作品。新潮文庫累計369万6000部、現在9位のロングセラー。
 *子どもたちの感想文人気高い。「人間は恋と革命のために生まれてきたのだ」はいつの時代の女子高生にも”ささる”。
 
 <好奇心コーナー>
 

  テレビを見ていたら、創業1300年近い老舗旅館、粟津温泉の法師旅館が写っている。
  
  所蔵のお宝を見せてもらっている。
  
  何と46代法師善五郎君ではないか。ぼくの高校、大学生の同窓生でもある・・・。
 
  ごろごろある骨董品の中から取り出した古九谷の大皿。
  
  「1000万はしますね」と鑑定人。