昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

ペット(9)チュン太の死

2011-11-29 04:24:38 | ペット
 昨日の午前10時、ついにチュンタはぼくの手の中で12歳、11年半の寿命を終えた。
 この夏を終えても羽が生え変わらないし、今年の冬は過ごせないのかなという懸念通りになってしまった。

 特にこの2~3日は壺巣の中へ入っていることが多く、ぼくが毎食ごとに与えるご飯なども食べる量が少なくなっていた。それでも巣から降りてきて食べると、いつものようにちょんちょん飛び跳ねて、家内に抱っこをせがんでいた。
「チュンくん(ママはこう呼ぶ)、ママよ」と言って、朝に晩に家内に抱っこしてもらうのが彼の楽しみだったようだ。

 1999年の初夏のころだったと思う。
 我々夫婦がまだ今のマンションに移り住む前の一軒家の庭に落ちてきてピヨピヨと鳴いていたのを家内が見つけ、なんとか生かそうとスポイトで牛乳を飲ませ、すり餌を食べさせようと懸命だったのを思い出す。

 最初はかたくなにくちばしを閉ざして受け入れようとしなかったが、家内は徐々に彼を手の内に丸め込んでいった。
 以前に飼っていた十姉妹や文鳥の経験をもとに飼いならし、部屋の中に飛ばし、手のひらに載るようになり、肩に留まって家内の吹くハーモニカに耳をそばだてるまでになった。
 
  
 部屋の外へ出ようとすると、ピヨピヨと甘えた声を出し、それも無駄だと知ると、ジャージャーと威嚇して引き留めようとする。
 外出から帰って玄関のドアを開けると、もうピイピイと鳴いて歓迎してくれる。
 ベランダに吊るしても、他の鳥が寄ってくると固まっている。
 自分は鳥だと思っていなくて人間だと思っているようだった。

 それがこの2~3日壺巣に篭っていることが多くなり、声もあまり出なくなった。食事のときは降りてきても、少しついばむと抱っこをせがむこともなくさっと壺巣に戻ってしまう。
 
 そして、昨日、エサをやっても降りてこない。
 家内が出かける時、「チュンくん、出かけるよ!だいじょうぶ?」と声をかけたら「ヒュー」とか細い声を出したのが思い起こせばお別れの一鳴きだった。
 家内が外出して、落っこちるように壺巣から出てきたので、ああ、まだだいじょうぶだ、エサをついばむのかなと見ていたら、隅っこにうずくまってしまった。
 おかしい! 足が丸まって立てないようだ。
 あわてて抱き上げると、目をぱちぱちしていて体は温かい。
 しばらく抱っこしていたらすぐ目をつむってしまった。
 ああ、ついに、もう最後だ!
 
 そのまま巣の中に戻すのは忍びなくて、小さなタオルに包んで巣箱に戻した。

 チュンくんのママは帰ってきて何て言うだろうか。
 きっと、「長い間、ありがとう」と言って、十姉妹や文鳥と同じように、ガジュマルか月下美人の植木鉢の根元に埋めるだろう。
 
 夕方家内が帰ってきたので、「チュンタ御臨終だ!」と伝えると、「えっ? ウソ! チュンくんどうしたの?ママよ」と巣箱に駆け寄って行った。
「可哀そうなチュンくん、それでどんなふうに亡くなったの?」と聞くから経過を説明した。
「そうお父さんの手の中で亡くなったの? ひとりぼっちでなくてよかったね」と言った。

 しばらくして、「もう埋めたのか?」と聞いたら、「オリーブの根元にね。チュイ(十姉妹)はべコニヤの根元だったからケンカしないように」と言った。
 娘に電話して、「今日は喪中よ!」と言っていたから、夕食は無しかと覚悟していたら出てきた。
 しかし、ご飯粒を上げようといつもの巣箱に目を向けたらチュンタはいない。
 今は気丈にふるまっている家内も寝る前、抱っこの時間になったらひそかに涙を流すのだろうか。
 

 
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ペット(8)雀のチュン太6

2010-06-11 05:41:12 | ペット
 高樹のぶ子さん(芥川賞作家)のブログで<意思表示>というのがテーマになったことがあった。タクシーの運転手が「最近、お客さんがなかなか手を上げてはっきり意思表示をしない」と言ったのだそうだ。
 たしかに日本人は<以心伝心>ではっきりとした意思表示をしないことが多い。ひいては外交姿勢にも繋がって問題視されることがある。

 たまたま、雀でもちゃんと<意思表示>しますよと、ウチの雀のことを話題にしたら、いろいろとコメントをいただいた。
 ウチの<チュン太>は幼鳥で庭に落ちて来たのを拾って育てたのだが、すでに11年を超えた。 
  


 普通、野性だと2~3年しか生きないそうだ。
 さすが、最近では籠から出しても前のように勢いよく飛び立って鴨居に止まって捕まえてみろというように鳴きたてる元気はない。
 飛び立っても1メートルぐらいですぐ落ちてしまう這い鳥だ。
 
 餌を撒き散らすという理由でもともと床置きの籠に入れてある。
 先日、ヒーヒーと悲鳴を上げているのを見たら、なんと巣から宙吊りになっている。
 なんと伸びた爪が巣に引っかかってぶら下がっている。
 家内がさっそく伸びた爪を切ってやった。
 曲がってしまってちゃんと機能していない爪もある。
 
 一時、くちばしが<いすか>のように上下食い違ってきた。
 ところがいつの間にか元通りになっている。
 伸びすぎたくちばしの一方の先が落ちたのか?などと思っているが・・・
 11年も生きてすごいですねと言われたが、ウイーンのシェ-ンブルーン宮殿にマリア・テレジア(マリー・アントワネットのお母さん)の15年生きた愛鳥の剥製があったのを思い出した。雀ではなく駒鳥のような鳥だと思ったが・・・。

 愛情を込めてチュン太を見つめると、チと応える。少し離れると、もっとそばに居ろと言うようにピーピーとかわいい声を上げる。もっと離れるとジャージャーと戻って来いとばかりに威嚇する。雀でも<意志表示>するんだ。
 外の雀を見ると固まっている。自分は人間だと思っているらしい。 

 ヨーロッパのスズメは人に近寄ってくるのに日本のスズメは警戒心が強い。焼き鳥にされると思っているのかしら。
 杉本章子さん(直木賞作家)の庭には何十羽のスズメが毎日やってきて、餌を与え、スズメは子どもを生んで見せにくるそうだ。1羽、1羽名前もあるそうで、識別出来るのだそうだ。彼女の前では焼き鳥の話は厳禁です。

 ミャンマーのお寺の周辺で、スズメを<放す>ために売っているそうだ。放されたスズメが戻ってきて、籠に入れられ、又売られ、放され、戻ってきて・・・
 などといろいろコメントをいただきました。
  
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ペット(7)雀のチュン太5

2008-12-24 04:53:42 | ペット
 妻の掃除機を繰る音が聞こえる。
 チュン太が「ジャー、ジャー」と威嚇している。
 そろそろ寒くなってきた。
 チュン太の巣を新しいものに交換してやらなければならない。
 ぼろぼろだ。
 夏のうちチュン太が間引いてしまったのだ。
 スカスカで後ろから覗けるほどだ。
 
 最近落ちた藁を一生懸命巣に運んでいる。
 巣作りをしているつもりなのだ。
 見ていると、入れたり出したりしているだけだ。
 
 今までより大き目の新しい巣を買ってきた。
 ところが頑として新しい巣に入ろうとしない。
 今まで、ぼくが部屋に入って行くと、照れたように慌てて隠れるように巣に入ったのに入らない。
 手で脅しても入らない。
 二、三日頑固に入らなかった。

 止まり木に乗ることも少なくなった。
 元気のない這いずり鳥になってしまった。
 拗ねているのかもしれない。

 それがいつの間にか入るようになった。
 何がきっかけになったのかは分からない。

 チュン太の様子がおかしい。
 口を半開きにして、バタバタとイラついている。
「おとうさん! 何か変なもの食べさせたんじゃないの!」
 妻が抱いたり、水を含ませたりするが、一向に口の半開きが直らない。
 そのうち口を開いたまま、目を瞑っておとなしくしている。

 「このまま死んだらおとうさんの所為だからね!」
 もう歳だし、だいたい雀が十年も生きているのはおかしい。
 これがきっかけで死んでしまうことを半ば覚悟した。

 「チュン太、治ったよ」
 書斎に引っ込んでしばらくしたら妻が言いに来た。
 何か吐き出したと言うのだが、ひょっとしてうどんに餅がくっついていたのかもと思い浮かぶ。
「これで、死んでもぼくのせいじゃないな」
「何言ってんの。変なもの食べさせないでよね。おとうさんがわるいんだからね。私が治したんだからね、チュン太!」
 ともかくほっとした。
 
 <我と来て遊べや親のない雀>

 2000年に噴火した三宅島では、人びとが島から避難すると雀も消えたそうだ。
 天敵から身を守りやすく、餌も豊かだから人の近くに住む。
 人と寄り添い生きる雀も最近減っているそうです。
 雀にとっても受難の時代となっている。 
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ペット(6)雀のチュン太4

2008-12-23 05:22:16 | ペット
 何日か経過して、驚いたことに、チュン太が息子の裸の肩に乗っかっている。
 あの乱暴に扱う息子の肩に!
 乱暴に扱われても、毎日のように自分の住処を綺麗にしてくれる愛情に、チュン太もようやく応える気になったようだ。

 息子が独立して、たまに家に現れるとチュン太は羽ばたき、かごに足で取り付き、腹を見せ、狂気の様で歓迎する。
 息子はチュン太をかごから出してわしづかみにすると、ブファーと生暖かい息を吹きかける。
「やめなさい、死んじゃうじゃないの」
 妻が悲鳴を上げるぐらいだ。
 チュン太はマゾか。

 チュン太はちゃんと人を識別する能力がある。
 他人にははしゃいだそぶりはしない。
 たまに来る孫などは予測不可能な行動をするから怖がって巣から出てこない。
 

 最近、食事の時、ご飯を与えるのはぼくの役目になっている。
 ご飯や野菜、うどん、たまご、場合によっては魚など動物性のものも与える。

 その所為か、ぼくが部屋から出ようとすると、必ず呼び止める。
「チュン、チュン」と。
 階段を降り出すと、「ジャージャー」と威嚇し、そのうち「ピイ、ピイ」とおべんちゃら声を出し、いよいよ戻ってこないとなると、また「ジャージャー」と不満の声を上げる。
 不思議なことに妻や息子にはこんな反応はしない。

 泣き声はこれだけではない。
「ピヨ、ピヨ」と甘え声を出すかと思えば「ピロロ、ピロロ」と満足の囀り声を上げる。
 雀は「チュンチュン」だけではない。

 「ピーッ」チュン太が悲鳴を上げている。
 妻がテーブルクロスを緑色のものから葡萄色のものに代えたからだ。
 赤いバッグなどを近づけると、「ピーッ、ピーッ」と悲鳴をあげて逃げ惑う。
「変な鳥!」と妻はバカにするが、チュン太は狭い世界で暮らしているのでちょっとした周囲の色などの変化にとても弱いのだ。

 -続くー

  
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ペット(5)雀のチュン太3

2008-12-22 05:18:37 | ペット
 きれいになった巣に戻すと、チュン太は必ず新しい水を一口、二口、時には五口も六口もおいしそうに飲む。
 自分の糞や藁くずの入った汚い水は嫌なのだ。
 そして糞の落ちていない新しい新聞紙の上で羽を広げ腹を擦って新聞浴びをする。

 たまに水浴びもする。
 狭い水入れの中に少しずつ、恐る恐る、何度も入ったり出たりしながら徐々に身体を浸し、全身を水浴びする。
 水から出ると、濡れ鼠のようになって寒そうに震えている。
 そして妻の掌を要求する。
 
 温かい妻の掌の中で落ち着いて毛づくろいする彼にとって至福のひと時だ。

 ぼくの掌には載らない。
 巣をきれいにしたり、食べ物をやったりぼくも結構世話をしてやっているのだが。

 チュン太は不思議なくらい人を差別する。
 妻が掌を上に、指先を動かして「チュン、チュン」と挑発すると、身を剣のように細くし、羽をジェット機のように尖らし、首を伸ばして上下左右に振りながら、盛ったように挑んでくる。

「そんな尖ったスタイル嫌い! ふっくらしたほうがいいのに」
 妻が言い寄られた女の子のように言う。
 そして「おとうさんもやってごらん」とぼくに振る。
 
 ぼくが同じ仕草をすると、お前は嫌だとばかり巣の中へ逃げ込む。
 男だから、女だからというわけでもなさそうだ。

 息子の俊には妻と同じ反応をする。
 妻も息子もぼくに何度もやらせて笑いものにする。
「おとうさんは召使だと思ってるんだよ」

 -続くー 
 
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ペット(4)雀のチュン太2

2008-12-21 05:40:25 | ペット
 「ほら、お父さん、見てごらん」
 なんと、チュン太が妻の肩にとまっているではないか。
 しかも妻の吹くハーモニカの音に合わせて囀っている。
「すごい!」
 ついに妻の努力が実って野生がペットになった。

 しかし、一日でも間をあけると、そんな習慣は忘れて部屋の中を逃げ回り、カーテンレールに止まったり、果ては我々の手の届かないクーラーの上に安住の場所を得て、ジュルジュ、ジュルジュと勝ち誇った満足の声を上げる。

 手を上げて箸を振りかざして脅すが、尻尾を立てて羽を広げてチチ、チチと応戦してくる。
 なんとも小憎らしい。
 最後の手段と、ハンガーに赤い手袋をつけて威嚇する。
 驚いて鴨居に飛び移ったところを頭から押さえ込んで捕まえる。
 敵は最後の抵抗とばかり思い切り噛みついて来る。

 十姉妹の<チュイぼん天>がおとなしい隠居じいさんなら、<チュン太>は我が家の腕白坊主である。

 半年ほどすると、もう色気づいてきたのか、妻が巣箱の外からお出でお出でをすると、尻尾を立てて首を伸ばし、ミュウ、ミュウと猫のような甘えた声を出して迫ってくる。
「可哀相に、ウチはチュイぼん天もオスだし、俊もまだ独身だし、おとうさんだって同じようなもんだし、独身一家だね」と妻は言う。

 妻は巣箱の清掃役を俊に命じた。
 俊はチュン太を乱暴に扱い、ぎゅっと握って、チュン太を蛍光灯から下がっているヒモに近づけて嫌がらせをする。
 チュン太はヒモのような長いものは嫌いなのだ。
 嫌がらせをするから俊が嫌いだ。
 俊が巣箱に近づくだけでバタバタと逃げ回る。

 俊が不在なので、久しぶりにぼくが巣箱を清掃するために二階の部屋に入る。
 ぼくの顔を見、声を聞くとさっと巣の中へ隠れてしまう。
 巣箱の前で新聞紙を用意しだすと、巣から出てきてチュンチュンと嬉しそうに鳴く。
 巣をキレイにしてくれるのが嬉しいよ!と言うように。

 久しぶりで水を替える際に巣箱の外へ飛ばした。
 所定のカーテンレールに止まった。
 そのままにして水を取りに階下に降りて、戻ってくるとピヨピヨと鳴いている。
 放っておかれて寂しいよと言っているのだ。
 ドアを開けた瞬間、ぼくの顔をめがけてすごい勢いで飛びかかって来た。
 ・・・なんで放って行ってしまうんだよ!・・・
 そう文句を言っているようにこつく。
 イタイ、イタイ!

 ー続くー

  
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ペット(3)雀のチュン太1

2008-12-20 06:57:40 | ペット
 ウチのペットは会社の倉庫に飛び込んできた十姉妹だったり、娘婿に押し付けられたハムスターだったり特別の経歴の持ち主だった。
 その昔、家の庭に銀色のミンクがやってきたことがあった。
 これはすばしこくて、さすが捕まえてペットにするわけにはいかなかった。

 しかし今一緒に住んでいる雀も家の庭に紛れ込んできたものだ。
 まだ充分飛べない幼鳥のくせに捉えられまいと、庭の隅をバタバタと這いずり回っていたのを妻が捕まえた。

 「このままでは生きていけない」と既に死んでしまって空いていたハムスターの籠に収納して育てることになった。
 最初はものを食べさせるのが一苦労だった。
 すでに6年余り先住している十姉妹<チュイぼん天>の食べている剥き餌などを、むりやり口をこじ開けて食べさせようとするが、人間のくれるものなど食えるかとばかり、野生は強情に口をつむぐ。
 
 食べなければ死んでしまうので妻は必死だった。
 スポイトを買って来て牛乳と混ぜて流動食にしてようやく飲み込ませることに成功した。
 そうこうしているうちにご飯粒なども食べるようになり、彼が我が家で生きていく目途は立った。
 <チュン太>という名も付いた。

 しかし、手乗りにしたりして飼い慣らすのは、十姉妹のようにはいかなかった。
 チュイぼん天は手を差し入れると、チュチュクチュ、チュチュクチュとひと囀りして、頭から掌に飛び込んでくる。
 掌にぽっこりと座り込んで、頬や首や胸を書いてもらうのが大好きだ。
 完全に身を任せて、極楽でお釈迦様の掌に憩う風情だ。

 ところがチュン太はそうはいかない。
 手を突っ込むと絶対に捕まらないぞと、ギャーギャー鳴きわめいてバタバタと逃げ回る。
 捕まりそうになると、その硬いくちばしでがぶりと噛みついてくる。
 これがかなり痛い。
 だから娘などは怖がって絶対触らない。

  たかが雀である。
 その辺にいっぱい飛んでいる雀にすぎない。
 家に来るお客にも人気がない。
「雀ねえ」と蔑んだ目で見られる。
「長生きなのね」ぐらいしか評価されない。
 誰も可愛いとは言わない。
 文鳥のように可愛くないし、カナリアのように可憐な姿と声があるわけでもない。
 インコのようにしゃべる芸があるわけでもない。

 それからかれこれ十年経つ。
 その間に<チュン太>は我が家の家族の一員として不動の地位を占めることになる。
 たかが雀も、愛すべき我が家のペットとして成長する。
 酉年には我が家の<とり>として年賀状にものせた。

 -続くー 

 

  
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ペット(2)ハムスターのバブ2

2008-11-18 06:03:02 | ペット
 ハムスターの<バブ>、今では十姉妹の<チュイ梵天>以上にわが奥方の愛情を引きつけている。
「バブラシテ、ママちゃんですよ。ママチュリのバブ」
 妻は外出から帰ってくると、何はさておき、バブが就寝中であろうとおかまいなしに巣の中から引っ張り出す。
 ご当人は迷惑そうに目をつむったまま、妻の手のひらからピンクの足をだらりとぶらさげたままになっている。
 
 「ほら、バブ、みかんよ」
 ひざの上に納まると、ピーナッツに、パン、ごはん、ハムに油揚げ、なんだって食わしちゃう。
 目をつむったままムシャムシャ食べている。
 食べ飽きるとプイッと横を向く。
 油揚げみたいに好きなものだと、がばっと起きて喰らいつき、小さな手で押えて夢中で食べる。
 手を出すとツッと横を向き、それでもしつこくちょっかいを出すと、グッと呑み込んでしまう。
 ほっぺのえさ袋はパンパンになっている。

 食べ終わると、ひとしきり小さなピンクの両手を使って顔を洗う。
 とても清潔好きだ。
 途中で黒い小さな丸薬のようなフンをすることがあるが、鼻でプイッとからだから遠ざけるように弾き飛ばす。
 巣の中のフンもこうして全て外へ出す。
 おしっこがしたいときは、手から逃げるようにからだをくねくねさせるのですぐわかる。
 ケージへいれてやると一目散に砂場に走っていく。
 それもいつも同じコーナーで用をたす。
 たまに意志が通じなくてケージに戻れない時など、テーブルなど冷たい所へ置いたりすると、そこでおもらしすることはあるが。
 
 寝て食べるだけが彼の生活ではない。
 たまに畳の上に放すと、最初はおずおずと様子を窺っているが、やがて慣れると、あの短い足でよくそんなにと思うほどのスピードで、あっという間に隅っこへ行き、タンスの裏へと入ってしまう。
 この時ばかりは、獲物に喰らいつく時とともに、彼に野生を感じる。
「ぼん天と一緒に手で掴んでみたい」
 妻は言うが、とんでもない。
 一発でぼん天はのどもとに食いつかれちゃうよ。恐ろしい。

 チュイぼん天は、声をかけたり、ごはんつぶをやると、「チュイ」と声を出し敏感に反応する。
 妻が咳をすると、どうしたどうしたとばかり巣から飛び出してきて「チュイ、チュイ」と鳴く。
 そのうち咳が止まるとよかったとばかり、「チュークリ、チュークリ」と声高にさえずる。
 
 それに対し、バブは声をかけても知らん顔。
 自分の名前も分からないようだ。
 買ってやった感想野菜や、栄養十分との謳い文句のハムスター用の餌も、ヒマワリの種以外はプイと横を向いて憎たらしいほど見向きもしない。
 外の餌が欲しい時はゲージの入り口を歯でくわえてガタガタと音をさせ、出せと要求する。
 朝方など、放っておくと一時間でもガタガタしている。
 もっとも歯が伸びるのを防ぐために磨いているのかもしれないが。

 昼はほとんど寝ている代わりに真夜中回転車で運動する。
 何キロにもなるという。
 こんな時は外へ出ておいでと呼んでも、餌をやろうとしても見向きもしない。
 身勝手ボーイだ。

 それでも、シルバーにグレーの背すじ、あるかないかのしっぽのついた丸いお尻。
 からだを丸めて大きな真ん丸い目を見開いて、かわしい手で餌をつかんで食べる様は何とも可愛らしい。
 息子も妻に似て帰宅すると必ず「バブラシテ、ダメでちゅ」などと顔を突き合わせて挨拶している。
 ぼくがたまにいじっていると「お父さんまで」と笑われる。
 物は言わねど、今や我が家の人気者。
 出て行くことは考えられない<我が家の居候>だ。
  
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ペット(1)ハムスターのバブ1

2008-11-17 06:20:30 | ペット
 妻のひざの上、エプロンの中でウチのハムスター<バブ>は丸くなって眠っている。
 シルバーグレイの、ビロードのようなすべすべした毛ざわり。
 柔らかい大福もちのようだ。
 

 「ほら、チュッと言わそうか?」
 妻はいたずらっ子のように顔をほころばせて、指をバブの口に近づける。
「チュッ!」
「言った。もう一度」
 うれしそうに何度も繰り返す。
 その度にバブは、いい迷惑だと言わんばかりに顔をぷいっと横へ向ける。
 調子に乗って「十チュッするまで」なんて言ってる。
「いいかげんにしろよ。こっちへ貨しな!」
 ぼくがチョッカイをかける。
「ダメ! ママのバブだもんね」

 バブは娘が去年の秋買ったハムスターだが、亭主のアレルギー反応を理由にウチヘ<居候>として預けられることになった。
「ちょっとだけよ、世話がたいへんなんだから。早く持って帰ってよ」
 彼らが顔を出すたびに妻は言っていた。
 ところが、人が手を出すとすぐ噛みついていたバブを、妻はいつの間にか一切噛みつかないように手なずけてしまった。
「持って帰るとおかあさんが可哀そうだから」
 娘婿からそう言われるほど愛情をそそいでしまった。
「ほら、見て、かまないでしょう?手の中で眠るのよ」と自慢している。

 「警戒心の強いハムスターは馴らすのがむずかしく、人の手で眠るのはまれです」
 NHKの小動物の飼い方というテレビ番組で言っていた。
「噛まれたからこわい」
 以前飼っていたという山瀬まみも言っていた。
 妻はそんなハムスターを自家薬籠中の物にしてしまった。

 妻はまた、十姉妹も手の中で落ち着かせると言う実績の持ち主だ。
 ぼくの会社の倉庫に飛び込んできた茶色の貧相な十姉妹をもらってきて、今も飼っている。

 <チュイ梵天>という名前だ。
 
 頭の毛が三本ほど逆立っているのが梵天さまみたいで、チュイと鳴くことから妻が命名した。
 最初、その姿から<オソマチュ>だったのが昇格した。

 <バブ>も妻がつけた名前だ。
 最初、妻がこのハムスターを見た瞬間に<かわいい、バブラシテ!>と発したことから来ている。
 バブバブと赤ちゃんが言ったとかいうが、そのあたりからきているのだろうか。
 ともかく妻は変な名づけの名手なのだ。
 チュイ梵天のことも、最初、<ピチュクリ>とか言っていた。
 
 結局バブは、返す、返すと言われていた居候の身から、ぼん天と並ぶ我が家の一員としての座をしっかりと確保してしまった。

 ─ 続く ─
 
 

 
 
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