昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

エッセイ(155)ささやかな達成感

2013-01-31 04:03:16 | エッセイ
 先日の雪がウソのような気持ちのいい好天だ。
 ぼくは図書館から借りて枕の下に残していた本を返すため出かけた。
 昨日の優しい係りの女性はいなかったが、これで心の底に引っかかっていたもやもやは晴れた。
 これだけで家へ戻るのはもったいない。
 東八道路に出て、懸案の写真を撮りながら帰ることにした。
 
 三鷹市の南端を東西に走るこの30メートル道路には車の販売店が多い。
 トヨタ関連だけでも、東京トヨペット、レクサス、ネッツ、トヨタ中古販売と軒を並べている。他に東京日産、日産中古車販売、スズキ、ヤマハ、そしてボルボやフォルクスワーゲン、ジャガーなどの外車の販売店もある。
 それらを撮ろうというわけだ。

 天気はいいし、手袋を外して、カメラ片手にパチパチと撮りながら歩いた。
 
 図書館からウチまで約1キロ強ある。
 7割がた戻ったところで、片一方の手袋が無いことに気づく。
 牛革の手袋だがそんな高価なものではない。
 ・・・まあ、いいか・・・
 どこかで写真を撮る際に落としたのだろう。
 戻るのもしゃくなので一瞬手袋を諦める気になった。

 ・・・しかし、待てよ・・・
 こうして諦めていくつ手袋を失くしたろう。
 以前、失くした手袋の片方がバス停の雪道に埋まっていたこともあった。
 ・・・今や忙しい身でもないし、こうやって安易にあきらめる体質が問題だ。人生も残り少ない。ひとつひとつ課題を着実に解決していく決意が必要だ!・・・
 ぼくは思い直して戻ることにした。
 
 ところが、東八道路沿い、写真を撮ったと思われるところには手袋は見つからなかった。
 少し北に歩いて、人見街道に出る。
 このまま西に歩いて家に帰るのが図書館から家へ戻る順路だ。
 今度こそ手袋は諦めることにした。
 ・・・しかし、図書館の前で最初の写真を撮っている。そこを残したまま帰るのは、この決意に画竜点睛を欠くことになる・・・
 再度思い直して。さらに北へ歩いて図書館前に出た。

「あった!」
 誰かが置いてくれたのだろう、図書館前の花壇の上に手袋がぽつんと待っていた。
 

 小春日和の中、2キロばかり余分に歩いて汗ばんだが、こころよい達成感を味わった。
 
 

エッセイ(154)優しき思いやりの社会

2013-01-30 06:26:24 | エッセイ
 図書館で本を借りようとして、貸出カードをカードリーダーにかけたら、返したはずの本が残っている。
 
 おまけに新たに借りる本の冊数がエラーになって処理できない。
 他のカードリーダーでも、他の人が処理できないとクレームをつけている。
 今までになかったことだ。

 最新の機械もこんな故障が生じるんだ。
 返したはずの本の処理も、たぶん機械の不具合に起因するんだ。
 ぼくは係りの女性にクレームをつけた。
「2,3日前に他の本と一緒にまとめて返却したんですけど・・・」
 係りの女性はていねいに貸し出しカードを機械にかけてチェックし、その本が書棚に戻っていないかどうかも調べてくれた。

「戻っていませんね。取りあえず消しておきますが、もしお手元に残っているようでしたらご返却ください」
 その女性はとても優しく対応してくれた。

 もし、彼女がふくれっつらで、「そちらのうっかりじゃないんですか?」って返してきたら「そっちだって、他の書棚にうっかり入れ間違えることだってあるだろうし、機械だってエラー動作するかもしれないし・・・」て言ってやろうと思っていたが、借りるべき本の処理も即座に対応してくれて、とても優しい態度に感銘さえ受けて家にもどった。

 ところが、念のため、枕の下を探ってみると(ぼくは読むべき本を数冊、いつも枕の下に置いて、寝る前に読むのを習慣にしている)なんとその本があるではないか!
 そのとき痴ほう症に罹っていたおふくろのことを思いだした。
 しょっちゅう預金通帳を失くし、セーフティボックスの鍵まで失くして、銀行に再発行してもらったことを。
 (おふくろは、それらを失くしたのではなくて、変な所に隠して、隠し場所を忘れてしまうのだが・・・)
 係りの女性は、「再発行いたしますが、もしお手元に見つかりましたらご連絡下さい。早めにご連絡いただければ再発行費用はかかりませんから」と優しく言ってくれたのを思い出した。

 ついにぼくもおふくろの域にまで達したか・・・。
 
 

三鷹通信(69)囲碁教室、打って返しの法

2013-01-26 06:58:00 | 三鷹通信
 ぼくは小学校の課外クラブの囲碁教室のサポーターをやっているのだが、前回とんでもないことをやらかした。
 
 主宰者のAさんが3月まで海外に出かけるので代役を仰せつかったのだが、その第一回目をすっぽかしてしまったのだ!
 
 もうひとりの代役の先輩にお詫びの電話をしたら、彼も忘れていた。
  しかも昨日の予定日は、先輩が風邪を引いて出られないという。
 たぶん、今回は生徒たちも出てこないだろうなとひとり暗い気持ちで出かけた。
 クラブの係りの女性といつも顔を見せる近所のオジサンが来ていたので、ともかくお詫びをする。

 前回はオジサンが道具を用意して指導は出来なかったけど対局をさせましたと言われちょっとホッとする。
 それでも今回生徒の参加者が出てこなかったらどうしようと思っていたら、ぽつりぽつりと少ないながらも男子4人、女子1人が現れた。

 Aさんのような正統な指導は出来ないので、ぼくらしく囲碁というものを斜めから見た指導を始めた。
「囲碁はいわゆる勝負を争うゲームだけれど、他にもいろいろなゲームがあるね? キミたち他にどんなゲームをやっている?」
 という問いかけから始めた。
 しかし、「どういう目的で囲碁をやる気になったの?」と聞いたが反応は鈍い。ほとんどが「何となく・・・」だ。

 これから大人になる彼らに社会生活が厳しいものだという例として、<トゲアリ>の話をする。 
 
 動物でも昆虫でも、生きるためにいろいろな努力をしている。アリは子どもを産む女王アリを中心に働きアリ、戦うアリなど役割分担して一族を守り、大きくしていく。
 その中で、トゲアリという特異な行動をするアリがいる。
 策略をもって相手の巣窟を乗っ取ってしまうのだ。
 アリは目が見えないので臭いで食料を集めたり、敵味方を見分ける。
 トゲアリは標的とするムネアカオオアリの働きアリに近づき身を擦りつけて彼らの臭いを自分にくっつける。
 
 そして味方と思わせて彼らの巣に忍び込み女王アリに戦いを挑む。
 アリの弱点、頭と体を繋ぐ細いところに噛みつき切断してしまうのだ。
 トゲアリより大きいムネアカオオアリに勝てるのは、トゲアリにはトゲという武器がある。
 まんまと女王アリを殺したトゲアリがムネアカオオアリの女王になりすまし自らの子どもを生み、彼らの巣を乗っ取ってしますのだ。

 囲碁において戦略的な考え方を学んでみよう! と締めくくり、
 身を捨てて、相手を葬る<打って返し>の法を指導。
 それから後は各自実戦対局を楽しみ何とか一時間半の授業を終えた。
 

エッセイ(153)多情な仲間のささやかな新年会

2013-01-24 05:06:21 | エッセイ
 金沢の中学校を卒業して、現在東京に住まう男4名、女5名が新橋の居酒屋<南洲>でささやかな新年会を開いた。
 

 今回ささやかに集まったのは9名だが、毎年1回、湯本とか熱海の温泉場でひらかれる<あじさい会>には金沢からの参加もあって、20名ほど集まる。
 5年前伊香保で開催した<古希を祝う会>には30名も集まった。
 地方の中学校出身者で、東京近辺で開かれる同窓会に、これだけの数が集まって、この歳まで30年近くも続いているケースは珍しいのでは?
 
 これはひとえに幹事に人を得たからだ。
 今回の新年会を招集したEくんもその幹事役の一人だ。
 しかも彼は左腕を吊ってやってきた。先の東京の雪ですってんころりんやっちゃったのだ。
 それでもへこたれない彼の幹事魂に乾杯!

 参加者はみんな70歳をはるかに超えたがみんな元気。
 特にお嬢さん(昔の)方がスゴイ!
 宮古島で3日連続、ハワイでもというゴルフレディ。
 ラジオ体操祭で何百人という参加者を取り仕切ったという地域活動ウーマン。
 今でも、これからも山歩きという山ガール。

  

 しかし、今回の極めつけは、こんなささやかな新年会にわざわざ金沢からはせ参じた元マドンナ!
「まさか来るとは思わなかったけど誘ってみたんだ」
 彼女が初恋の相手だったことを告白した男が言った。
「それでわざわざやってきたんだ・・・」
「違うのよ。そんなこと言われたことあったけど、彼のことは小学校からのお付き合いで子どもだと思っていたから」
 たしかに彼はその頃は小さくて引っ込み思案のぼうやという印象がある。今では一流証券会社で鍛え上げられ、会社経営もこなして、背も高くイケメンの立派な大人に成長したが。

「彼から誘われたけど東京の雪が心配だったし思い悩んでいたの。でもみなさんに会いたかったし、特にXくんが参加すると言うので・・・」
 何? Xくん? Xくんて誰だ! 幸せ者め!
「60年ぶりだね。それにしても当時とはイメージががらっと変わっちゃったね」
「そうなの。小学校のころはよくおしゃべりしたんだけど、中学校に入ったら思春期の所為か人としゃべらなくなったの。顔ももっと丸かったし・・・」
「憂いを秘めた乙女という感じで近寄りがたかった。今はスマートになってがらりと明るくなった」
「わたしって、もともと多情だからいろいろな人が好きになるの」
 ・・・なんじゃそれ!・・・
「今回のように、思い立ったら行動する! それが若さの秘訣かな・・・」

 この他にも多情多感な乙女、少年時代の暴露話が飛び交ったが、今回はこれまで。
 幹事役の一人で、今は病の床に臥せっているHくんを偲びながらも、楽しいひと時でした。


三鷹通信(68)幸福度をはかる経済学

2013-01-18 09:25:39 | 三鷹通信
 昨日のFサロンでは、最近評判のブルーノ・S・フライ<幸福度をはかる経済学>を取り上げていただいた。
 
 
 <幸せ>は人間が生きる上で欠かせないが、主観的な概念で漠然としている。
 そこで、従来の経済学は幸せの範囲を限定的に扱い、<豊かさ>をその指標としてきた。
 具体的には国の幸福度はGDP(国民総生産>をその指標とし、日本もその拡大に向けて努力してきた。
 
 ところが、最近、GDPは拡大しても生活満足度は必ずしも上がっていかないという<幸福のパラドックス>に陥っているよう。
 つまり、人間の合理性を前提とする従来の経済理論と、現実の生活実感が矛盾していることに気づいたのだ。
 もっと多くの収入をと望む一方、他の人と比べると不平等だとか、自営業はいいけど、人に使われているのは嫌だとか、お金はあるけど結婚してないから不幸だとか、いろいろな要素を<幸福度>の条件とするようになってきた。

 この著者は「政府が国民の幸せのための選択を代行する<慈悲深い独裁的>な手法には反対だ。たとえ時間がかかっても国民的な議論を通じて政策を決定していく民主主義的なプロセスが国民の幸福度を高める。幸せは結果だけでなくそこに至るプロセスの公正さからも影響を受けるから」と述べている。いずれにしても、金銭的にはかれる<豊かさ>だけでないもろもろの要素を加味しなければならなくなった。
 
 昨年11月ブータンのワンチュク国王が来日された時、この<幸福度>が話題となった。その時の国王の国会演説が興味深い。
 
「ブータン人は人々の間に深い調和の精神を持ち、質素で、謙虚な生活を続けている」

 日本の県別幸福度をはかったら、北陸三県がトップで大阪が最下位だった。
 

 いずれにせよ、<マルクス経済>を論拠に建設されたソ連が崩壊し、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者が設立したヘッジファンドが潰れたりして、現代経済学はある意味、不毛な学問に成り下がった。
 アメリカ、EU,日本など世界経済を支えるべき巨大国が大きな財政赤字を抱え、問題先送りで目途が立っていない。
 学問として成り立つかどうかはよく分からないが、この新しい視点に立った<幸福度をはかる経済学>が注目される所以であろう。
 
 

三鷹通信(67)東京の雪

2013-01-16 05:07:43 | 三鷹通信
 14日(月)乾燥していた東京に初雪が降った。
 久しぶりのお湿りだと喜んでいたが、急に勢いを増し、風も伴って吹雪となり、あっという間に銀世界に変わった。
 
 三鷹駅前のイタリアンレストラン<馬車道>で新年会らしき、飲み会をと地域活動グループの若手から誘いを受け行く気まんまんだったが・・・。
 外を見ると、かなり積もっている。これからも降るという予想に、長靴もないし・・・と断念した。
 
 報道によれば東京では200人以上の人が、すっ転んだりしてけがをしたという。もし出かけていればあるいはその一員になっていたかも・・・。
 翌日は雪も止んで、晴れてきた。
 図書館から借りた本の期限でもあるので敢えて出かけた。
 田舎侍が歩いていそうな名前の旧道<人見街道>はタダでさえ狭い歩道が雪で歩けない。
 
 杖を二本ついたじいさんが車道で立ち往生していた。
 
 <人見街道>は杉並区浜田山駅から三鷹を通って府中市の若松若松町で甲州街道に至る旧道である。府中市の北東部に住いした一族<人見氏>からその名が由来しているという説もある。
 三鷹市は30メートル道路の東八道路のような、街を縦横に走る自転車道も併設した大きな道路が開発されて見違えるようになっている。
 図書館へ行くにも東八道路から大回りすればいいのだが・・・。

 彼女が高校生のころからファンとして応援している42歳のクルム伊達公子さんが、全豪オープンテニスで世界ランク12位のナディア・ペトロワ(ロシア)に快勝した。
 最年長勝利記録だそうだ。
 
 「カモン!」と活躍する伊達ちゃんに乾杯!

 
 

三鷹通信(66)三鷹跨線橋

2013-01-11 06:39:13 | 三鷹通信
 三鷹に住んでから50年以上、初めて知る人ぞ知るという<三鷹跨線橋>を渡った。
 三鷹駅から西方徒歩7分の所に上り口がある。
 
 案内板があって、昭和4年建造され、そのままの姿を今に保っているとある。
 
 砂利石むき出しのコンクリートの階段を上る。
 
 鉄骨造りの素朴なものだ。所々錆びついている。
 
 お正月、日の出を見ようとかなりの人たちが上ったようだが、今は誰も通っていない。
 近くに地下道もあるし、南北を渡る手段として利用する人はあまりいないようだ。
 
 案内板にも記してあったが、かの太宰治も友だちを連れてここを何回も訪れているようだ。
 三鷹駅の北側にそびえる超高層マンションの住人であるぼくの友人の作家先生に、「どうだ、富士山も見えるんだぞ」と見せられたことがあったが、太宰もそんな気持ちで友人を案内したんだろう。
 
 東京タワーも、東京スカイツリーもなかった当時としてはかなり魅力的な所だったのかもしれない。
 中央特快やスーパー特急・あずさ10号などが眼下を通り過ぎて行った。
 中央線の車両基地にもなっている。
 
 夕方には夕焼け富士が見えることもあるそうだ。
 

 今でも、知る人ぞ知る三鷹の名所だ。

 NHKのあさイチで、宮崎県の天岩戸神社を訪問していた。
 
 
 天照大御神が高天原の天の岩戸に隠れたとき、天手力雄命(たじからをのみこと)が強力で岩戸を開け、世に光を取り戻したという神話で有名な所だ。
 なんとその時投げ飛ばした岩戸は信州の戸隠山まで飛んだという。
 

エッセイ(152)これからの日本

2013-01-05 05:14:18 | エッセイ
  3日、新年早々に麻雀をやった。
 勝った者が寿司屋で一杯奢るという趣向で、昨年末はぼくが奢らせてもらったが、今回はお相伴に与った。
「ところで、安倍政権の出だしは順調なようだが、これからの日本はどうなるかね?」
 
 飲むほどに、大先輩から大きなテーマを出された。
 我々の世代は戦後の日本経済を担って、日本を世界有数の経済大国に押し上げたという自負がある。
 その目から見ると、このところの日本は足元がふらついているように見える。

「ソニーとかパナソニックとかシャープとかの名だたる企業が韓国に負けてるしなあ・・・」
 
 ・・・京セラなどを経て韓国のサムソン電子の顧問を10年間務めた福田民郎氏が昨日の読売で語っている。
「サムソン電子の強みは李健煕会長の強力なリーダーシップだ。トップダウンで物事を決め、それが末端に届くようにしている。日本のように稟議書が何枚も必要などということはない。人事の信賞必罰も厳しい。結果を出せない役員はすぐ首がとぶ。私が商品のデザインも悪いと酷評すると、李会長は数日のうちに経営幹部を集め、『妻と子ども以外はすべて変えろ』と指示し、組織を抜本的に変革した」・・・


「我々の時は、リーダーなんか誰でもよかったが、これからは誰がリーダーになるかで決まるな」
「インフレターゲットだって言っても、ただ紙幣を大量に刷ればいいってもんではないんだ。その金がちゃんと実のある投資に回ればいいが、禿鷹ファンドが狙ってるからね・・・」
「インドで工場を作ってくれと言われて現地へ行ってみたら、索漠たる荒地なんだ。こんなインフラも何もないところでムリだと思ったね。ところが当時首相になったばかりのインディラ・ガンディー首相が何万という群衆を連れてきて、櫓の上から彼らを鼓舞したんだ。すごい熱気だった。そして彼らの力で道路や学校までできて工場が完成したんだ」
「この岐路に差しかかった日本にも優れたリーダーが必要だということだ」

・・・現代日本に職業としての武士は存在しない。しかし、いつの時代にも責任をとって切腹する人間は必要なのである。そして、その責任をとる人間は、幼いときから責任ということについて根本から教育されていなければならない。それがすなわちエリート教育なのである」(ポール・ポネ<不思議の国ニッポン>より)

 ・・・企業には、その国に応じてさまざまな意思決定のプロセスがあります。
 トップダウンもあれば、ボトムアップの傾向の強いところもある。
 その点、日本では中間管理職に比較的権限が集中している。・・・
 しかし、逆境に陥った企業には、トップダウンが必要です。
 (カルロス・ゴーン<文芸春秋03年8月)から 


「しかし、今の日本にそんな覇気のある、腹を切る責任感のある若者がいるかね?」
「教育という点でも戦後から脱皮しないと」

 ・・・上記の福田氏は言っている。「大事なのは、ただ性能が高いものではなく、消費者が本当に欲しいもの、感動を与えられるもの、それがないと毎日の生活を送れないとまで思わせるものを作ることだ。アップル社のiPodがそうだし、ソニーのウオークマンもそうだった。
 2年前に国内の大手電機メーカーに就職した教え子の話を聞いてショックを受けた。中国向けの冷蔵庫を開発しているのに中国には一回も行ったことがないという。現地からのリポートを読んでいるだけでは感動を与える商品を作れるわけがない。・・・


「ともかく、若者よ外へ出ろ! だな。内向き志向の若者を代えなければこれからの日本はありえない!」
「しかし、ただ掛け声をかけるだけでなく、留学資金を国が出すとか、そうなるように制度的システムを構築するってことだな!」

 さて、すでに引退して年金生活の我々に何が出来るか考え込んでしまった。




  

エッセイ(151)盛り上がったお正月

2013-01-02 07:05:52 | エッセイ
 松茸は秋の、筍は春の食材の王であるとすれば、我が家の正月の王は、香箱カニ、鱈、甘エビである。
 
 
 

 年末になると、「今年は来ないかも・・・」と当てに出来ないながらも期待して待ち望んでいるのが上記の食材である。
 そして、今年も31日の午前10時過ぎ、これらは届いた。
「これが来ないとウチのお正月は明けないんです…」とお礼の 言葉として言ってしまった。
 鱈はあらかた捌いてあるが、家内が奮闘して硬い骨を切り、煮つけ、そして鱈鍋用に細かく処理する。
 本身は昆布しめにする。白子や真子もある。
 そしてやってきた息子と3人で紅白を見ながら「やっぱり美味しいね」ととりあえず香箱カニを食べる。

 今年のお正月は家内にとって格別に忙しい一日となった。
 
 朝、3人でおせち料理で祝い、昼には横浜から車でやってきた家内の母親と妹を迎える。
 暮れにはお腹が痛い、手術をしなければならないのではと心配していた義母は、91歳になるが、歩けるし声に張りがある。
「お元気ですね・・・」
「元気なんだけど、頭がぼけてきて・・・」
 息子に「会社はいつまでお休みなの?」と3,4回聞いていた。
 しかし、若かりし頃のことは鮮明に覚えていて、会社のモデルにもなったことがあるという華やかなりしころを語ってくれた。
 今でもその名残か、背筋はぴんとしている。
 カニや甘エビ、鱈の昆布しめ、白子のお吸い物を美味しい、美味しいと食べてくれた。
 片付けはぼくの役目なのだが、横浜に行った時も動きづめの家内の妹が、ここでも「いいのよ! わたしがやるから」と言ってやってくれた。

 彼女たちを送り出した後、夕方、今度は娘一家がやってきた。
 鱈鍋を囲みながら、カニや甘エビを賞味する。
「この蟹のミソは最高ですね。身も味が濃い。白子は美味しいし、肝臓も鮟肝みたい・・・」 娘の旦那が差し入れてくれた<こしのはくせつ・梅酒>を氷で割って飲む。
 美味い! どんどんいけそう。
「お父さんはもうダメ! 顔が真っ赤じゃない」と娘と家内から止められてしまった。
 ドイツで白ワインを飲み過ぎて腰が立たなくなったことを思いだした。 
「お母さん!もう座って下さい」
 娘の旦那が叫ぶ。
 家内はキッチンを出入りしていて落ち着かない。
 やっと座ったと思ったら、みんなの食べるのをニコニコと見ているだけだ。
 そして食べ疲れた孫娘の相手をして本を読んであげたりしている。
 9時過ぎ、娘一家を送り出した後、大量の洗い物を処理しようとしたら「今日はいいの!わたしがやるから」と言われた。
 家内にとっては最高に忙しい、たいへんな日だったろうに・・・。

 しけた一年が明けて、ぼくにとっては最高に盛り上がった一日だった。
 今日だけかもしれないが・・・。
 

エッセイ(150)賀春

2013-01-01 05:28:35 | エッセイ
 <巳年の春>
 
 よく考えてみると、人生も残り少なくなってきた。
 しかし、枯れた境地にはなれず、未だ悶々と刺激を求める日々を送っている。

 昨日は恒例の国民的テレビ行事、<紅白>を見た。
 昔は、すべての出場歌手を目を凝らして見ていた。
 しかし、最近は適当である。
 他局のボクシングを見たり、パソコンでネット囲碁をしたりしながら、たまに見る。
 しかし、幸運にもぼくの大好きな<いきものがかり>を見れた。
 
 第一に名前がいいじゃない!
 小学生が校庭でうさぎを飼っている姿が目に浮かぶ。
 それに彼女のおおらかに歌う姿がいい!
 歌詞がいい!
 
 風が吹いている 僕はここで生きていく
 晴れわたる空に 叫びつづけよう
 新しき日々はここにある


 ぼくは小学校で囲碁を教えている。
 今年は<魔の小学4年生>に悩まされた。
 ちょっと目を外すと、彼女は「ちょっと校庭を走ってきます」と言って出て行ってしまう。
 講義している間に漫画「ヒカルの碁」を読んでいる。
 飽きてくるとカバンからリコーダーを出してきて吹こうとしたりする。
 関心が次々と移っていく。
 礼儀作法などのマナーを教えることも大切なテーマだが、才能のありそうな彼女のことは大目に見ている。

 毎朝4時ごろ起きて、このブログを書いている。
 こんな猫も犬も出演しない地味なブログを毎日、200人以上の人たちが訪問し、閲覧数も毎日500回を超える。数からいくと、大半はぼくの知らない人だろう。
 この<見てもらえること>がぼくにとって最大の刺激だ。
 昨日はなんと、訪問者数480人、閲覧数948回。
 GOOブログ1、806、116のうちの第900位と、4年半つづけているが、過去最高を記録した。

 戦後経済成長期のサラリーマン生活を描いた<昭和のマロの憂鬱>、ふと知り合った魅力的な女性との出会いを描いた<仮面のツアー>、難病に生まれた子が実は傲慢な人類に警告を与えるために自然界からから派遣された使者だったという<レロレロ姫の警告>、戦後の特殊な状況下に存在した共産圏貿易専門商社を描いた<ハザマ・トレーディング>を掲載中ですが、さらなる刺激を求めて、他にも医療の現状の問題点を描いた<手術室から>、介護問題を描いた<雪舞う日>や<不良老人日記>なども掲載したいと思っています。
 たまにはエッセイも挟んで書き続けるつもりです。
 今年もよろしくお願いいたします。 
 <昭和のマロ>