昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

運が悪いことから全てが始まった(63)貿易会社(21)

2013-12-12 04:25:19 | 小説、運が悪いことから全てが始まった
「ともかくそういうわけですからよろしくお願いします・・・」
 Y汽船の応接間で、現れた若い男にボクは深々と頭を下げた。
「沖仲士っていうのはやくざな連中なんですよ・・・」
 
 若い男はボクをバカにしたような目で見た。
「・・・」
「やつらを仕切っているのはY組だよ?」
「Y組?」
 
 その名を耳にするだけで震えがくるという暴力団Y組?
「あなた、交渉に行ってみますか?」

 一瞬、自分が行かなくてはならないのかと思ったが、・・・バカなことを考えるんじゃないよ。先輩の会長がいるY汽船にひたすらオネガイシナサイ!・・・と言っている山川課長の顔が浮かんだ。
「いえ、いえ私なんぞはとても・・・。そちらさまでよろしくおねがいします」
 ボクはひたすら平身低頭でその若い男に頭を下げた。
「一応お願いしてみるけど、どうなるかわかんないよ・・・」
 男はY組の一員みたいにそっくり返って応えた。

 ─続く─

 パリで一流テーラーの地位を獲得した鈴木健次郎氏。
 
「電車に乗ってもぼくのそばに人は寄ってこないんです。お店に行っても相手にされないし。いろいろと嫌がらせもされて・・・」
 修行時代は人種差別をいやというほど感じたそうだ。
 モデリスト養成学校AICPを主席で卒業、いろいろな店での修行を経て、超一流テーラー、スマルトに採用され、日本人初のチーフカッターに就任する。
 その間、なかなかカッターとして採用されない時期があった。
「キミのような外人がカッターをやっていると知ったらお客が来ないだろう」と言うのだ。
 そんな彼も9年後には独立。
 ・・・採寸、型紙づくり、裁断、仮縫い、縫製、仕上げまですべてやります・・・
 今では超一流の客を相手に活躍している。
 彼の考えるプロフェッショナルとは「自分の世界観を持って、実現に向けて努力する」だ。(NHKテレビより)