<落語談義12>
熊さん:安倍首相が靖国に参拝しましたね! 何で今どきなんですかね?
ご隠居:ちょとびっくりだったね。
熊さん:中国や韓国との仲にさらに火を注ぐようなもんじゃないですか!
ご隠居:安倍さんに信念として今年中に挙行しなければ、という強い想いがあったんだろう。
熊さん:友党の公明党の反対も押し切っての行動らしいじゃないですか。
ご隠居:秘密保護法も押し切って自信をもったのだろう。朝日新聞の世論調査なども見て、時は今! と思ったんじゃないか。
熊さん:中国や韓国だけでなく、アメリカも遺憾だ!と言ってますぜ。
ご隠居:そりゃそうだろう。今、アジアで事が勃発しては困るからな。それに・・・。
熊さん:それに?
ご隠居:今回の安倍さんの行動は一つの方向を向いているのがアメリカにとって気がかりなんだよ。
熊さん:一つの方向?
ご隠居:つまり、安倍さんとしては今後、集団自衛権行使、そして憲法改正と、戦後レジームからの脱却を目指しているのがアメリカの意向にそぐわないんだ。
熊さん:戦後レジームからの脱却?
ご隠居:中国や韓国も懸念しているところなんだが、東京裁判を受け入れて国際社会に復帰したはずの日本なのに、安倍さんはそれを否定する動きをしているというわけだ。
熊さん:東京裁判?
ご隠居:戦争末期アメリカのコーデル・ハル国務長官はルーズベルト大統領に「日本をアジア解放に殉じた国と思わせてはならない」と進言し、東京裁判で彼の狙い通り、日本は私利私欲に走った侵略国家として仕立てられ、東條英樹ら7人を平和と人道に対する罪で処刑されたのだ。それが日本を巡る戦後国際体制なんだ。
熊さん:安倍さんは日本が歴史的にそんな破廉恥な国家と見られることに我慢できず、敢えて今回靖国参拝に踏み切ったと・・・。
ご隠居:国際世論はそうした戦犯を祀ってある靖国を参拝するのがけしからんと言っている。しかし、日本人の宗教観からすれば、罪を犯した者も死ねば仏になるという考え方があるんだ。つまり死ねば罪は問われないと・・・。他の国では中国などもそうだが、時の政権にとって悪人だった者の墓にはつばを吐きかけるらしい・・・。
熊さん:日本では、西南戦争で時の政府に反逆した西郷隆盛が死んだ後は銅像まで建てられるという・・・。
ご隠居:そうだね。こういう宗教観は世界でも異質だとオーストラリアの国際政治学者グレゴリー・クラーク氏は言っているんだ。
熊さん:でもアメリカは日本は「実利的な外交から脱却か?」などと懸念を示していますよ?
ご隠居:たしかにポチと言われても実利的な外交に専念してきた日本だが、安倍さんはこれからの日本はポチに甘んじることなく自主外交を目指さねばと思っているんだろう。だからと言って、戦前のような軍事覇権国家を目指すことなど出来るわけもない。少なくとも現在の泥沼的国際状況を打破する日本独自にアピールできるものがあるのではという信念から今回の行動が行われたと思いたいね。
熊さん:ちょっとカッコつけ過ぎなんじゃないの?