昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

エッセイ(195)人類は文明の進化路線に逆らえるか(48)積極的平和主義

2014-01-29 06:44:32 | エッセイ
 <落語談義15>

 熊さん:アルゼンチン・ペソが下落して世界の金融市場がショックであたふたしましたね。
 ご隠居:トルコ・リラとか新興国経済への警戒感が一気に噴出したようだね。
 熊さん:円は逆に102円まで高騰したらしいじゃないですか。
 ご隠居:弱い通貨を売って、強い通貨を買うという市場メカニズムが働いたんだね。
 熊さん:実際の経済じゃなくて金融市場のバクチ的な行動で実質経済が左右されるんじゃたまりませんね。何でこうなるんですか?
 ご隠居:財政難で崖っぷちのアメリカがじゃぶじゃぶ発行していた紙幣を縮小するという憶測だけで世界経済は右往左往するんだ。
 
 熊さん:大国アメリカも金融市場を健全にコントロールすることは不可能なんだ・・・。
 
 ご隠居:フランスの経済学者ジャック・アタリが予測しているんだが、市場のグローバル化によってアメリカ帝国は打ち負かされ、金融面、政治面で疲弊し、世界統治を断念せざるを得ない状況にあり、世界は一時的に<多極化>するだろうと。そして国境を持たない市場は民主主義に打ち勝ち、民主主義は制度的に地域に封じ込められ国家は衰退すると・・・。
 
 熊さん:国家が衰退して・・・
 ご隠居:世界唯一の絶対権力と化した市場が<超帝国>を形成する。
 熊さん:<超帝国>?
 ご隠居:具体的には保険会社が<監視規制>を課し、国家・企業・個人が従う規範を世界に制定して行く。
 熊さん:・・・
 ご隠居:そして<超帝国の>支配者とは、ノマドとして資産を保有する者、金融業や企業の戦略家、保険会社や娯楽産業の経営者、ソフトウエアの設計者、発明者など。彼らをアタリは<超ノマド>と呼ぶ。
 熊さん:<超ノマド>?
 ご隠居:彼らは良くも悪くも、脆弱で、のんきな、そしてわがままな、かつ不安定な地球規模の社会を作り上げていく。エレガンスの決定者であり、富とメディアの支配者である彼らは、自分の国民性の欠如や政治的・文化的軽薄さを一切認めようとしない。
 熊さん:なんか恐ろしい世界になりそうですね?
 ご隠居:エネルギーや水資源が極端に不足し、気象変動が激しくなりいろいろな形で紛争が激化するかもしれん。
 
 (砂漠の中のイエメン)
 アタリはこれを<超紛争>と呼んでいる。
 熊さん:そんな紛争にならないようにできないもんですかね?
 ご隠居:反対に地球規模の問題に対して鋭い意識を発展させる者たちも現れる。
 彼らは自らの財産を人道的活動に投じる。つまり利他主義者となる。彼らは調和重視企業のリーダー格であり、地球規模の民主主義の支持者となる。
 熊さん:なるほど! オバマがアメリカの大統領として<チェンジ!><力から調和へ!>と唱えて登場したときはそれが期待できたのに!
 ご隠居:そうなんだ。残念ながら、彼はグローバル市場の圧力に今や挫折してしまっているように見えるが・・・。
 熊さん:じゃあ、安倍首相の<積極的平和主義>にその思いが込められているといいですね!
 
 ご隠居:もともと<和>の精神を尊重する気風が日本にはあるからね。
<もったいない>、<おかげさま>、<おもてなし>などの心が根づいているから。
   
 いつまでも戦後の自虐史観に囚われていないで、これからは自然と共生し、みんなに気配りするソフトパワーの威力を日本が世界に発信していかなければ。

三鷹通信(81)三鷹市長・三鷹中央通り商店会会長へ提言

2014-01-28 04:57:33 | 三鷹通信
 読書ミーティングを終え、<馬車道>へ向かって、社会企業家のレディSさんと三鷹中央通りを歩いた。
 
「この商店街なんとかならないかしらね・・・」
 この近辺に住まう彼女がつぶやいた。
 この周辺には、三鷹の森ジブリ美術館とか、太宰治や山本有三記念館、太宰や森鴎外のお墓がある禅林寺など文化施設を求めて訪れる観光客は多いが、ここの商店街は素通りだ。
  
 
「ここの煙草屋さんみたいな個性的な商店が多いといいんだけど・・・」
 
 なるほど、奥にいろんなパイプが並んでいる。

 三鷹市は花と緑と水の街を標榜している。
 
 水車のある野川公園や、地元のボランティアの活動により街のあちこちに花壇なども多い。
  
 井の頭公園の景観、国際基督教大学の桜並木は一見の価値がある。
  

「この商店街の街灯の柱に<ハンギングバスケット>を吊るしたらどうだろう・・・」
 ぼくはカナダのビクトリア市やイギリスのオックスフォードの大きな花かごを思い出した。
  
「三鷹阿波踊りだけでなく、ちょっとした努力でこの商店街に常時客を惹きつけるタネになるかも・・・」
  
 煙草屋さんのように個性的な商店も多くなるかもしれない。
 
 昨日の朝日の夕刊に<虎の門、パリ気分!>というPRが一面を飾っていたではないか。
 
 三鷹中央通り商店街もカナダのビクトリア市気分! と行こうぜ。
  

三鷹通信(80)読書ミーティング(5)

2014-01-26 04:35:35 | 三鷹通信
 昨年11月のプレミーティングに続いて、「あなたが、”あなたのために書かれた”本に出会うためのものです」という現役編集者が主宰する読書ミーティングが、一年ぶりに本格的に開催された。
 あらかじめ参加者から推薦図書が5冊挙げられていた。

 筆頭でぼくが指名された。
 村上春樹の<象の消滅>との出会いは、彼の<ノルウエイの森>が爆発的に売れ出した頃、<パン屋再襲撃>という変なタイトルの短編集を手にした時だった。
 
 ぼくは内容を逐条的に説明し出して、ヤバイという感覚が襲ってきた。
 こうなると頭が真っ白になって話にまとまりがなくなる悪癖がある。
 人前で話すことが苦手なぼくは退職後敢えてこうしたミーティングに出て克服しようとしている。
 最近慣れてきたと思っていたのに、編集者、出版関係の専門家が多数いることを意識して、突然その悪癖が頭をもたげてきたのだ。
 幸い講師が救いの手を差し伸べてくれてまとめていただいたが・・・。

 言いたいことは次のことだった。
 具体的な社会事件としてまじめに語りだしたのに、不可解で不条理な要素を組み込んで、未解決なまま終わるという、不可思議な作品という魅力だった。
 つまり象という巨大な動物とその老飼育員がある日突然消滅してしまう。
 そこで名探偵が登場となれば推理小説だが、そうはならない。
「何?これおかしいじゃん!」となる。
 しかし、村上春樹はここで若い女性の雑誌記者を登場させる。
 そして、キッチン関連商品営業マンの主人公に語らせる。
 「色の統一、デザインの統一、機能の統一、それがキッチンに最も重要なことなんです。それが今のキッチンに最も重要なことなんです。この便宜的な世界にあっては商品にならないファクターはほとんど意味がない・・・」
 その彼がうかつにも象の消滅という話題を出してしまいその不条理さについて説明ができない。
 彼の内面で何かのバランスが崩れてしまったのだ。ふたりはそれ以来会うこともない。

 先の見通せない世界経済、終わりない宗教対立、現在の不安定な社会の中でデタッチメントとして、超然とせざるをえない若者の姿を描く村上ワールドが、世界で共感を得る要素がこの作品に象徴されているようだ。
 

 この作品はゲーリー・フィスケットジョンが発掘、<The Elepaht Vanishes>はアメリカで最初に出されたアンソロジーのタイトルになっていると講師から説明があった。
 
 続いて参加者から渡辺淳一の<光と影>が推薦された。
 
 戦場で右腕を同じように負傷した二人の若き兵士が、一人は腕を従来通りの切断という手法で治癒、他方は医師の気まぐれで切断しない方法で治療される。
 不自由ながらも腕がある方は軍に残り、陸軍大臣から総理大臣にまでなるが、腕を失くした方は社会的差別もあり軍から離れ悶死することになる。

 自らの説明失敗で落ち込み、この場から去りたい気分だったぼくは敢えて発言を求め、同じように医師の判断で棒のようになった右足で人生を送る男の<運が悪いことから全てが始まった>という小説をブログに掲載していることに触れる。

 心理療法に関わっていられる参加者から「運は変えられないけれど、縁は変えられる」ということについて説明があったのが印象的だった。

 池井戸潤の<おれたちバブル入行組>
 
 民放のテレビドラマ史上最高の視聴率を得た「倍返しだ!」で有名な<半沢直樹>の原作だ。
 日本人は人間関係のしがらみと勧善懲悪の物語が大好きとの補足が講師よりあった。

 生田興克<たまらねえ場所 築地魚河岸>
 
 築地のマグロ三代目が、魚河岸の内側、そこで働く愛すべき人々、魚と魚文化の未来について、江戸っ子口調で熱く語る本。
 推薦者は生田さんが食品偽装のテレビ番組でベランメイ口調で語る彼のオーラに撃たれて、即アマゾンで注文したそうだ。

 夏目漱石<こころ>
 
 講師の推薦。我が国最大の発行部数を誇るロングセラー。
 ほとんどの参加者が読んでいるが、不思議なことに内容について深く知る人は少ない。
 ぼく自身は主人公と奥さんとの微妙なこころの通い合う表現に魅了された記憶がある。

 <文豪夏目漱石>という作者名、<世間の評判>そして何より<こころ>という題名につられ、一度は手にしてみようと思う連鎖がロングセラーを生むのだろうか。

 <水の東京を歩く>
 当日持ち込みの推薦本。
 
 船の目線で見る東京の魅力を写真とともに表現。
 推薦者自身船を持ち運転する。
 自動車と異なり自由に航行できる。
 東京は水の都としての魅力満載だそうだ。

 二時間半、目いっぱいのミーティングが終わって講師から「馬車道でお茶して行きませんか」という誘いがあった。
 いつもなら失礼するところだが、今日は敢えて同道することにした。
「運は変えられないけど、縁は変えられる」という言葉を思い起したのだ。
 

エッセイ(194)シニアな一日

2014-01-24 03:46:50 | エッセイ
 金沢の中学を出て東京近辺に住んでいる連中の新年会の案内がメールされてきた。
 集まる場所は東京駅八重洲口の近くの居酒屋だ。
 「みずほ銀行の看板のあるビルの右の細い道を入って・・・」と幹事役のEくんは道案内をくどいくらい何回もしてきた。
 1954年に卒業して、20年ほど前彼から声をかけられそれ以来東京駅近辺に住む同窓生と集まっている。
 毎年、近くの温泉場とか、ゴルフ場とか、今日のような居酒屋で。
 卒業して60年だからみんな70歳をはるかに超えたじいさん、ばあさんだ。
 声掛けもしつこくなるわな。

 道順は頭に入った。そういえば、このところデジカメが不調だ。
 このブログでもご覧のように赤くなったり、白い光線が入ったりする。
 近くにニコン銀座がある。寄ってみようと早めに家を出た。
 バス停でポケットに手を入れると財布がない! またやっちゃった!
 ともかくニコン銀座に到着。2階の修理サービスのコーナーへ。
 
「これ調子悪いんですが・・・」とカメラをさし出す。
「これ、他社の製品ですね」
「えっ? うそ!」
 改めて見るとASAHIPENTAXではないか!
 息子に喜寿祝いでもらったものだが、今の今までニコンと信じて疑っていなかった。
「旭は今リコーと一緒になったんですが、近くにありますから・・・」
 男性受付の指示で女子社員がパソコンを操作して案内マップをコピーしてくれた。
 他社のことなのに何と親切! 今度買う時はニコンにしようと決めた。

 でも、リコーの修理サービス受付は板橋とかで目的は達せられないまま、新年会の場所へ向かう。10分前に無事到着。
 
 気配りの幹事Eくんが待ち受けていた。
「上階にもあるので間違うといけないので・・・」というわけだ。
 ところがあれだけ懇切丁寧な道案内にもかかわらず間違えたやつが二人いた。
「みずほの看板が二つあって・・・」と言い訳しながら遅れて来たイケメンの弁護士くん。
「ここに座って」ふたりのおばさん(あっ! この言葉は使っちゃいけないんだ。このブログで使って、未熟者!ってコメントいただいたじゃないか)、レディーから言われて逡巡する彼。
「怖いの?」「いやそんなこと・・・」と言いながら間に座る。ちょっとふらつく。
「最近足が弱ってきて・・・」
 ごく最近までバリバリの現役だったのに今は、家でごろごろ孫と寝ているという。
「だめよ!歩かなきゃ。わたしなんか日に5000歩は歩く」と元気なA嬢。

「あちこち痛くって」と言いながら社交ダンスに、お茶にと毎日が忙しいY嬢。
 保険事務の専門職で今も現役のH嬢。毎週ゴルフというE嬢。
 四人参加したレディーはみんな元気だ。
 欠席したK嬢も昔、日本代表クラスの体操選手で今日も若手指導だという。
 その点じじい?は・・・。
 いつも大幹事として「ほら、飲み放題なんだからみんな飲まなきゃ!」と酒を勧めまくるMくんの元気がない。まだ徳利1本しか空けていない。
「ちょっと熱があるんだ。この間寒い日にお餅つきで張り切りすぎて。インフルじゃないよ・・・」
 そのくせ、明日はゴルフが予定されていて「ドタキャンが嫌いなんでなんとか行きたいので今日はおとなしくしている・・・」ってわけだ。
  
 それでも彼の手土産・<リーフメモリー>をつまみながら、みんな子どものころの話で盛り上がったね。
 犀川でモリを自作して鮎を獲った話とか。
「パンツで泳いだんだろう?」とY嬢に話を向けると、「パンツじゃないわよズロースよ。こっそり隠し持っていて、よく泳いだ」と言う。
 他の女性群も「私も、私も」
 今どきの女の子では考えられない。
「最近の言葉づかいは変だね」とMくん。
「ずぼんのことパンツなんて・・・」
「パンツじゃなくて、パンツ↑」とアクセントをレディたちから修正される。

 また、技術系のYくんからは「加賀藩は江戸時代、バイオテクノロジーを使って、つまりウンコやおしっこを使って、火薬を作ったんだぜ」などという郷土自慢話も出た。
 ともかくいろいろとしゃべった二時間。

 帰ってから早速Eくんから写真が送られてきた。
 
 何じゃこの頭! 家内からしょっちゅう言われていたがこれほどとは!
 
 それにしてもEくんの白髪の素晴らしさ。
 
 プラチナホワイトだ! 壮年時代からこの頭髪とでかい声がトレードマークで、大会社の工場長を経験、イギリスの子会社の社長も務め、退職後もベトナムへ経営指導で出かけた。
 その彼にデジカメの不調を訴えたら、同じ銘柄を修理代より安く手に入れることができるからと手配までしてくれた。
 素晴らしきかなわが友よ!
  

  
 

エッセイ(193)戦争責任の取り方

2014-01-17 05:27:41 | エッセイ
 恒例のFサロンにK元ドイツ大使をお招きして、<あの戦争はなんだったのか、日本の場合、ドイツの場合>について語り合った。
 太平洋戦争の宣戦が布告された日、当時中学生だったK氏は子どもながらに高揚感を覚えたという。
 
 この日の興奮と歓喜は知識人の文章にも表されている。
 「真剣になれることはいい気持ちだ。・・・くるものなら来いという気持ちだ。自分の実力を見せるという気持ちだ」(武者小路実篤)
 「神々が東亜の空へ進軍していく姿がまざまざと頭のなかに浮かんできた。・・・私はラジオの前で涙ぐんで、しばらく動くこともできなかった」(火野葦平)
 「世界は一新せられた。時代はたった今大きく区切られた。昨日は遠い昔のようである。・・・私は不覚にも落涙した」(高村光太郎)
 「日本も、けさから、ちがう日本になったのだ。・・・目色、毛色が違うということが、之程まで敵愾心を起させるものか。無茶苦茶にぶん殴りたい」(太宰 治)
 戦後<堕落論>で軍国日本を冷徹に斬ってみせた坂口安吾も、「東条首相の謹話があった。涙が流れた。言葉のいらない時代が来た。必要ならば、僕の命を捧げねばならぬ。一兵たりともわが国土に入れてはならぬ」と興奮を抑えきれなかった。

 帝国主義的植民地支配という歴史的流れに遅ればせながら参入した日本は、大陸に進出、日本人、漢人、朝鮮人、満州人、蒙古人による五族協和と王道楽土を掲げて満州国を建国する。ところが、盧溝橋事件で当初良好な関係にあった蒋介石の南京政府と対立、支那事変の泥沼に突入。
 そして大陸からの撤退しなければ、石油を止められるという経済的に死活の状況に追い込まれ、敢えて不毛な戦いに見境もなく突入することになった。
 結局、ミッドウエイ海戦、ガダルカナルの攻防を機に敗戦へと追い込まれていった。

 ドイツも日本と同じように世界近代史に遅れて参戦してきた強豪国だった。
 ヒットラーという国民を統合するカリスマを得て、当初はあっという間にフランスを始めとする周辺諸国を屈服させ、イギリスやソ連をも圧倒する勢いだった。
 ドイツにとって不幸だったのは、巨大な資源と軍事力を持ったアメリカの参戦だった。
 結局日本もドイツも巨大な軍事力に敗れたのである。
 戦い合えば力の強い方が勝つのは当たり前である。

 戦後、戦争責任について、ドイツはニュルンベルグ裁判、日本は東京裁判で裁かれた。
 所詮、勝者による裁判であり、例えばハーグ条約では戦争手段は無差別、無制限であってはならないとされているが、ドレスデンや東京の大空襲や広島、長崎の原爆投下などの無差別殺戮は断罪されることはなかった。
 
 勝てば花輪、負ければ吊るし首なのだ。
 
 しかし、日独で戦争責任に対する対処の仕方に違いがある。
 
 「過去に眼を閉ざす者は未来に対してもやはり盲目となる」
  ・・・ドイツのヴァイツゼッカー大統領
  
「一億総懺悔」
  ・・・日本の東久邇総理大臣

 ドイツはユダヤ人虐殺という、戦争遂行とは別の人道的罪に問われていたこともあり、その政権に携わっていた者は厳しく糾弾され教育的にもこれからの戒めとされた。
 ところが日本の場合<一億総懺悔>に見るように、責任者がぼかされている。
 実際に、政府なり軍なりの指導者の具体的な戦略の下でこの戦争が遂行されたというより、例えば関東軍の末端組織の暴走から事は生じ、上部が追認したという構図が見られる。
 
 ここで<奥ノ院>と称せられ、参謀総長もコントロールされていたという参謀本部作戦課作戦室のエピソードを紹介する。
 杉田参謀が惨憺たるインパール作戦の現状を視察し、作戦軍を撤退させるべきという意見を電報で具申した。
 
 彼が帰国し、作戦室に足を踏み入れるや、激昂した瀬島(龍三)は、「この馬鹿野郎! なんちゅうことを言うんだ」と罵声を張り上げるや否や、矢立を投げつけるんだ。・・・
 おとなしい人格者の杉田さんは(権力を持っていた瀬島に)言葉を返すことはなかった。
 ・・・インパール作戦は戦況極めて不利だったが、作戦要務令に書いてあった「戦略不利なる時は敵も同じと思え」というのを瀬島はそのまま言ったのだ。
 (三根屋久大<陸軍の本質>より)
 ・・・ちなみに司馬遼太郎曰く「東条英機という人は成規類聚(陸軍の社規社則)の権威でしてね。それを盾にして人びとの違反を追及して権力を握っていった人ですな、あれが一番こまります」と。
 
 では、日独を裁いたアメリカに正義はあるかといえば、インディアンに対する虐殺やハワイ王国侵略、フィリピンに対する虐殺行為などの違法行為は勝利を収めた事実に覆い隠されているのが現実だ。
 
 私見であるが、日本やドイツが自らの歴史を自虐的に振り返るだけでなく、今こそ人類の問題として、歴史を勝者のケースも含めて精査し、これからいかにあるべきかを世界に問いかけるべき時だと思うが・・・。
 帰り際に、K元大使が同伴された奥さまを見ながら、「これからは女性の時代だよ」とおっしゃったのが心に留まった。
 <力>が全てと思っている男には治まらない時代になったのか。
 

 

運が悪いことから全てが始まった(80)貿易会社(38)

2014-01-06 06:01:00 | 小説、運が悪いことから全てが始まった
 彼女のことは、一昨夜の送別会で初めてボクの意識にプリントされた。
 機械部だけの彼女の送別会に、紹介者ということで岩田専務が現れた。
 仲間内だけの集まりに専務が参加するなど甚だ異例なことだった。
 みんなが緊張する中、専務は彼女のことについて説明した。

 専務と彼女のお父さんは戦前満鉄で同僚だったこと。
 そのお父さんは軍に徴用され戦死したこと。
 お母さんは満鉄の秘書課の華だったこと。
 終戦になり、まだ幼かった彼女はそのお母さんと二人で引き揚げてきたこと。
 たまたま別に引き揚げてきた専務が、彼女たちが滋賀県の父方の実家の祖母の所にいることを知りお付き合いが始まったこと。
 ちなみに専務の奥さんは彼女のお母さんと秘書課でお友だちの関係にあった。
 祖母が亡くなられた後、お母さんが就職された横浜に引っ越してきて、彼女も大学を卒業したのを機にこの会社へ招いたこと。
 
 しかし、最近お母さんの体調がよくなく、しかも彼女のここまでの通勤時間が往復3時間もかかる。近くに彼女の新しい就職先が見つかったので残念ながら退社することになったこと。

「彼女が退社するにあたって、彼女の思い出として、ぜひみんなに彼女の歌を聴いてもらいたい!」 
 専務は強調した。
 しぶる彼女を説得して、歌ってもらったのが<からたちの花>だった。
 
 さすが、中学で県代表になり、全国大会に出場しただけの感動的な歌声だった。
 専務は自分の言いたいことだけを言い残すと退席した。

 -続くー

 久しぶりで高田みづえをテレビで見た。
 
 <硝子坂>の澄んだ歌声がまだボクの脳裏に滲みこんでいる。

 ・・・いじわるなあなたは
    いつも坂の上から
    手招きだけをくりかえす
    私の前には硝子坂 
    きらきら光る硝子坂・・・

 若嶋津元大関の優しい目に誘われて、華やかな芸能界から引退し、今は松ケ根部屋のおかみさんとして幸せな生活を送っていることに乾杯!
 
 
 
 

運が悪いことから全てが始まった(79)貿易会社(37)

2014-01-05 04:31:56 | 小説、運が悪いことから全てが始まった
「コーヒー、ブラックでお願いします・・・」
 昼時はいつも混んでいるこの喫茶店も、誰も客がいない。
 ボクは一番隅に席を占めて彼女を待った。
 
 ・・・これでよかったのだ・・・
 発作的な我が行動を振り返りながらボクは温かいおしぼりで顔を拭った。
 足を悪くして離れに閉じ込められていたころを思い出していた。
 同居していたあの魅力的なお姉さんに挑発されて性に目覚めた頃を。
 
 少女小説や少女雑誌に読みふけり悶々とした日々を。
 中学生になってからは清楚で賢そうな竹内に好感し、
 
 高校生になってからはバラのような山室を主役に<袈裟と盛遠>を演出したことを。
 
 そして大学時代、下宿の奥さんと<酉の市>に出かけた思い出。
 

 社会に出てからは、優しい今井、ちょっと意地悪だったが最近優しい永野。
  
 そして指をからめあったダルタニアンの幸子。
 しかし、右足が棒になったボクには、女性はあくまでも憧れであって、それ以上のお付き合いに踏み込むことはなかった。
 モーツアルトの<アイネ・クライネ・ナハトムジーク>を聴いたとき感動したのと同じで、文化的鑑賞の対象に過ぎなかった。
 

 それが入社してわずか1か月で退社する伊藤の送別会で、彼女の歌声に頑なに閉じられたわが胸の扉がこじ開けられたとはいえ、別れの挨拶に現れた彼女の姿を見たとたん、ボクの動物的本能が掴みだされたように躍動しだしたのだ。

「おまたせしました」
 彼女は何の屈託もない、営業部の扉を開けて現れた時の表情のままで現れた。
 
 ・・・これでよかったのだ・・・
 ぼくは今までにない幸せを予感した。

 ─続く─
 
 今、NHKテレビであの佐高信が三遊亭小円歌と対談していた。
 
「女好きでしょう?」と小円歌。
 
「女性とはガールフレンド以上のお付き合いがないんだよね」
 照れたように応える。
「ガールフレンド以上?」
「このままんま人生終わっちゃうのかと思うと寂しいね・・・」
 佐高信のカワイイ一面でした。
 
 

 
 

運が悪いことから全てが始まった(78)貿易会社(36)

2014-01-04 04:58:56 | 小説、運が悪いことから全てが始まった
 その日、明るく射し込んでいた西日が落ちる頃、伊藤はさっきまで仕事をしていた営業部の二階のドアを開けて入ってきた。
 
 上の階から順に退社のあいさつ回りを行っているのだ。

「何でもう辞めちゃうの? 入社してからまだ1か月も経っていないんだろう」
 物資部の池田デブチカが大きな声で咎めている。
「申し訳ありません、ようやく慣れてきたところだったのに・・・」
 伊藤は小さな声で頭を下げている。

 すらっとした体形、目じりが下がった優しそうな顔で、ひとりづつ挨拶をしながら彼女はボクに近づいてきた。
 急に胸の動悸が高くなってきた。
 ・・・ここで何かを言わなくては・・・
 何かがボクを圧迫して決断を迫っている。
「もう、帰られるんですか?」
「ここで挨拶をさせて頂いたら・・・」
「ちょっとお話したいことがあるんですが・・・。<憩い>で待っていますから・・」
 彼女はびっくりしたように目を見開いたが「わかりました」と小さくつぶやいた。

 機械部から金属鉱産部の方へ移って行った彼女を見ながら、あわてて机の上を片づけると、近くの喫茶店<憩い>へと立ち上がった。
 じっと見つめている永野の視線はまったくボクの視野にはなかった。

 ─続く─
 
 新年早々、我が家ではちょっとした事件が発生した。
 大晦日、久しぶりにやってきた息子と家内の指揮の下片づけをし、家内は料理に専念、すべて新年のための用意を滞りなく終え、紅白を見て、年越しそばを食べてめでたく新年を迎えた。
 
「そんなねぶったお箸で取らないで!」 
 久しぶりでお神酒も入り、機嫌よくしていたのにボクはこのひと言で切れた。
 このところ家内の文句には「ハイハイ」ときわめて従順なのだが、「裾を引きずらない!」「背中が丸まっている!」「こぼすな!」とか元旦早々からの文句の連ちゃんにさすが忍従のボクも切れた。
「じゃあ、たべない!」と言ってしまったのだ。
 すると彼女も「たべなくていいから!」と返してきた。
 ボクは即座に席を立って部屋に閉じこもった。
 こんな行為は何年ぶりだろう。

 まもなく、息子が外へ出ていく気配がした。
 散歩にでも出かけたのかなと思っていたがなかなか帰って来ない。
「どこへ行ったんだ?」
 気にしたボクは夕方来るという娘一家のためにキッチンで料理を作っていた家内に訊ねた。
「だらだらテレビばかり観ているから怒ったら出ていったの」
 彼女は料理しながら言った。
 
 ボクは部屋へ戻って息子に電話した。
「明日、早くから仕事があるから遠慮するわ・・・」だと。
 そりゃまずい。一家団欒が崩壊する。
「夕食だけでも一緒しろ!」ボクは彼を説得した。

「戻って来るって・・・」
 ボクはキッチンの家内に報告した。
「さすがお父さん!」
 初めて家内に褒められ気を良くしたボクは蟹を捌くのを手伝った。

    

運が悪いことから全てが始まった(77)貿易会社(35)

2014-01-03 05:46:11 | 小説、運が悪いことから全てが始まった
 この会社に入って3年目、振り返ってみればいろいろと動き回っていたかもしれないが、先輩たちに振り回されていただけで仕事らしい仕事をしたという実感はない。
 今は次の仕事の担当待ちで、忙しそうに立ち働く周囲のひとたちをぼんやりと眺めている。
 公園の陽だまりに佇んでいるように・・・。
 

 そんな時、藤原の彼女に会い、今井女史の結婚のうわさが入り、永野がジュリー・ロンドンのレコードを借してくれたりして、仕事だけではない人生の別のステップを意識するようになった。
 そしてたたみかけるようにボクの人生を左右する事件が起きた。
 というより、ボクの中で何かが弾けた。
 
 1か月ほど前、機械第2課に新しく伊藤という女子社員が入ってきた。
 2課の課長は高木氏がココム事件で退社し、新たに専務が通産省から引っ張ってきた磯田機械部長が兼務していたが、そこにさらに岩田専務の紹介ということで入社してきたのだ。
 岩田専務が満鉄にいたころ縁があったのだと聞いている。
 その入社まもない伊藤が退社するというのだ。
 彼女に関してはほっぺたの赤い、明るい女の子という印象だけでボクにとって特別関心を引く存在ではなかった。
 ところが、送別会で彼女が歌った<からたちの花>がボクの琴線に触れた。
 
 岩田専務の紹介によれば、彼女は中学生の時県代表として全国歌唱コンクールに出場した実績の持ち主だった。

 ─続く─


 
「何で、箱根駅伝はおばさんに人気があるんですかね? ウチの会社のおばさんにバカ受けなんですよ」
 新年に我が家にやってきた娘婿がテレビを見ながら言った。
 たしかにウチの家内も大好きだ。
「健気で一途なところがいいんだよ」
 
 ぼくは宮崎駿監督の好みだという女性を思い出しながら答えた。


 
 

エッセイ(192)新年に想う”歴史認識”<落語談義>

2014-01-02 04:24:16 | エッセイ
<落語談義14>

 熊さん:あけましておめでとうございます。
 ご隠居:おめでとう。
 熊さん:昨年はアベノミクス、2020年オリンピック東京招致で沸き、安倍首相の靖国で落ち込みましたが・・・。
 ご隠居:今年は、国際的に日本の立場が問われる年だな。
 熊さん:世界的にアベノミクスが経済的に評価される一方、靖国問題で中韓のみならずEUなんかからも<失望>なんて言われましたが、このところ「中韓に温度差」なんて報道もありますね?
 
 ご隠居:年末に行われた中韓外相電話会談での内容を、中国では中韓共に安倍首相の靖国参拝を非難したと発表したのに、韓国はそれには触れず、むしろ、歴史問題で中韓が連携しようという中国の提案に「韓米日協力の立場で中国と連携するのは望ましくない」という考え方を示したということらしいね。
 熊さん:歴史認識問題については中韓一致してるんじゃないんですか?
 ご隠居:たしかに、戦後体制維持という立場では中韓共に心情的には一致しているんだが、具体的な姿勢は根本的に違うようだな。
 熊さん:具体的な姿勢?
 ご隠居:つまり日本は戦後サンフランシスコ講和条約で東京裁判を受け入れたのだから、戦争を引き起した責任を強く認識して行動すべきで、決して戦前の帝国主義的な軍国主義に立ち戻るべきではない、という考え方では一致しているんだ。
 熊さん:その意味ではアメリカもそういう立場ですよね?
 ご隠居:たしかにそうだ。しかし中国は・・・。
 熊さん:中国は違うというんですか?
 ご隠居:過去の日本を批判する面では同じなんだが、中国の現在の行動姿勢を見るとちょっと違うな、と思うんだ。
 熊さん:・・・?
 ご隠居:中国の歴史認識は、むしろ過去の日本と同じなんだよ。つまり、世界は<力>で動いているという認識なんだ。
 熊さん:力で動いている?
 ご隠居:特に近代世界史をひも解いてごらんよ。スペインやポルトガルに始まり、イギリスやフランスなど列強が弱い国を蹂躙した歴史を。
 

 熊さん:遅れて世界史に登場した軍事強国日本やドイツがそれと同じことを行った?
 ご隠居:そうなんだ。そして戦後は、米、英、仏、ロ、中の勝者が国際連合の常任理事国として世界を牛耳っている。勝った者の論理、<力>こそ世界をコントロールするという考え方の証左なんだ。
 
 そして今や軍事大国化した中国がその流れを踏襲しようとしている。
昔みたいに軍事力で土足で踏み込むというやりかたではないかもしれないが・・・。少なくとも巨大な軍事力を背景に脅しをかけつつ、経済購買力を武器にするという狡猾な手段も加味しながら覇権的な行動をしている。
 熊さん:その点が韓国とは違うと・・・。
 ご隠居:日本が右傾化して昔のように帝国主義国家になろうとしているというプロパガンダを繰り広げているが、過去の苦い経験を持つ日本は、安倍さんと言えどもそんな考えは持っていないだろう。むしろ現在の中国が非難されるべきだ。
 熊さん:でも、日本のマスコミも秘密保護法や、靖国参拝などいずれは憲法改正にまで持って行こうとする安倍さんの姿勢に疑念を持っています。
 ご隠居:希望的観測をもってすれば、安倍さんと言えどもそんな帝国主義的な考え方ではなくて、<力>の支配する現実にはある程度の軍備を備えた上で、今後の日本の役割、つまり<力>によらない国際政治を模索して行こうという提案をしていくことを期待したいね。
 熊さん:だったら、あくまでも平和憲法を盾に非武装中立の立場を貫いた方が効果的なんじゃないんですか?
 ご隠居:戦後そうやって来たんだが、遅れて登場してきた中国の覇権的な行動をみると、結局、軍事大国アメリカと中国の狭間で韓国みたいな屈辱的な立場に貶められる恐れがあるんだな・・・。
 熊さん:その結果韓国のように<恨み>を触れ回る国にもなりたくないし・・・。ムズカシイですね。