昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

運が悪いことから全てが始まった(55)貿易会社(13)

2013-12-01 05:28:09 | 小説、運が悪いことから全てが始まった
 <以下、佐賀係長の語る浅井さんのデビュー戦>

 ・・・始まったら何巡もしないうちに、落合さんが振った二万に浅井が「当たり!」って、うれしそうに言ったんだ。
 一瞬、みんな唖然としたね。
 あまりにも早くて、しかも新米が上がった、と言ったんだ。
 手を開かせてみるとたしかに牌は上がりのかたちをしている。
 
 
「おい! ダメだよ! チョンボだ! だって、タンヤオでもないし、ピンフでもない。役牌もついていない・・・」
 落合さんが目をむいて指摘した。
「だな、一翻(イーハン)もついていない・・・」
 山川課長が確認した。
「一翻しばりなんだ。役がないと上がれないんだよ!」
 ぼくがダメを押した。

「そうか、家庭麻雀ではしばりがないんや。今回はビギナーだし、許してやりましょか?」
 山川課長がへんな関西弁で、お客さまのM造船落合係長にご容赦願うように言った。
 ところが、落合さんは言ったね。
「いや、ダメだ。やっぱりチョンボだ! こうやって痛い目に合わないと覚えないんだよ! 悪いけど浅井くん、チョンボ代払いたまえ。これでキミも一人前の麻雀道を歩くことができる!」 
「厳しいね・・・」
 思わずぼくも浅井くんの顔を見て同情しちゃったよ。
「そうなんだ、世の中厳しいんだよ」
 落合さんは浅井くんの肩を抱くようにして言ったんだ。

 ─続く─

 「定期検診は人を不幸にする」
 かの近藤誠先生は言っている。
 定期健診で、ガンとか、高血圧とか糖尿病などいろいろな病気が発見される。
 定期健診を受けるのはそれらの症状をもたない<無症状者>だ。
 しかし、これで病気が発見されて治療しても寿命が伸びるという保証はないというのだ。
 介入したからといって、放置しておいた人よりよくなったというデータがない。
 

 ボクの麻雀仲間で、健診で<動脈瘤>が見つかり手術した人がふたりいる。
 
 いずれも著名な病院で、有能な医者の手術を受けて手術自体は成功したと言われた。
 しかし、一人は手術の際の飛沫が脊髄に付着し下半身まひになり、もう一人は脳に行き、植物人間になってしまった。
 手術をする前は元気いっぱいで「ピンピンコロリ」といきたいね、と言っていた80と70のお年寄りだった。
 知り合いの医者が本音で言っている。
「特に、お年寄りは、痛いとか苦しいとかの症状がないかぎり手術はしない方がいい」と。