昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

運が悪いことから全てが始まった(66)貿易会社(24)

2013-12-18 05:25:21 | 小説、運が悪いことから全てが始まった
 入社早々予期せぬ事件に翻弄されながらも、担当となったソ連向けタンカーの艤装品輸入の仕事は順調に運び、吉原専務のお供で進水式にも出席できるという幸運もあった。
 
 その後吉原専務は年齢を理由に勇退され、岩田常務が専務の地位についた。
 ・・・そのうちキミと一緒に仕事をしようや・・・
 岩田専務はその言葉通り、新たなソ連向け<パルプ製造プラント>の仕事にボクを関わらせてくれることになり、ボクの先行きは順風満帆に思えた。

 しかし、入社して3年目の秋、あの衝撃的な事件が起きた。
 いつもの通り会社に出社すると、会社の前は異様な雰囲気だ。
 パトカーが赤色灯を点滅させ、警官もいる。
 
「どうしたんですか?」
 呆然と立ちすくんでいる大崎に会ったので訊いてみた。
「例のヤツが摘発されたんだ・・・」
「例のヤツ?」
「ダニチさんのヤツがココム違反で」
「えっ? あの中国向けのプラントですか?」
「いや、実際は中国向けじゃなくてソ連向けだったんだ」

 機械2課の高木課長が、・・・お前、担当にならなくてよかったな・・・と言っていたヤツだ。
「ダニチさんと岩田専務が逮捕されちゃったよ・・・」
 岩田専務はこのプラントの輸出で会社に膨大な利益を与えた功績が評価されて専務になった、と噂されていた。
 その件が今回、神奈川県警からココム違反疑惑で摘発されたのだ。

「垂れ込んだヤツがいるな」
 大崎は腕を組んでつぶやいた。
「垂れ込み?」

 ─続く─

 昨日のブログで書いたように世界農業遺産の五分の一、つまり25の内5つ日本から選ばれている。
 自然と共生する幸せな日本を現している。
 一方、世界には自然を食いつぶして生活せざるを得ない国もある。
 <世界で最も乾いた大地・アタカマ砂漠>のチリだ。
 
 そこを流れるロア川の流域のオアシスに、世界で最大の露天掘りの銅山の開発で潤うカラマという街がある。
 
 
 
 雨が40年で3回しか降らないというこの不毛の土地に唯一水を供給しているのはロア川だ。
 その畔で細々と農業に携わってきた老人は語る。
「雨なんて、50年このかた見たこともないよ。それでも昔はロア川の水を引いてトウモロコシやニンジンが採れたんだ。今では雑草しか採れない。その雑草をヤギに喰わして生計を立てているんだ」
「今日は息子が銅山の仕事の休みで帰ってきて雑草取りを手伝ってくれたけど」
 ロア川の水量はどんどん少なくなっている。
 銅山の精錬のため大量の水が必要なので、巨大なパイプラインでロア川から引いているからだ。
「チリは銅山で食いつないでいるんだからしょうがないんだけど・・・」
 息子はオヤジの顔を見ながら言った。
 (NHKテレビ<地球イチバン>から)