昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

運が悪いことから全てが始まった(76)貿易会社(34)

2013-12-31 05:04:36 | 小説、運が悪いことから全てが始まった
 ・・・自分の彼女を見せたかっただけじゃないか・・・
 ボクは西荻窪の藤原の部屋のふたりを思い出していた。
 <新居浜の水上飛行機> <神戸のエコーサウンダー事件> <ココム違反事件>
 <ソ連使節団の接待> この会社に入社して3年目、今は次の仕事が決まっていない。
 永野の仕事を手伝っているだけだ。

「今井さんがダニチさんと結婚するらしいわよ・・・」
 仕事が手に付かなくってボーっとしているボクに永野が顔を近づけて言った。
 
 
 今井さん?
 総務部の今井女史だ。
 入社早々ジアゾ式コピーの撮り方が分からなくてまごまごしていたボクに代わって撮ってくれた優しい人だ。
 永野に「自分でやらないと覚えないわよ!」と怒られたことを想い出した。
 今井女史とダニチ課長の仲はうすうす感じていたから、やっぱりと受け止めた。

 それにしても最近の永野はボクに優しい。
 この間も「これいいわよ・・・」とジュリー・ロンドンのレコードを貸してくれた。
 
 ハスキーなラブバラードに、たちまちボクは惹きつけられた。
 今井女史のことを報告してくれる彼女の目を見て、<our day will come>の歌詞がとつぜん頭に浮上した。
 ・・・私たちの時は来るから すべてを手に入れて 喜びを分かち合う 恋に落ちることで手に入る・・・

 ─続く─

 今年も今日で終わりだ。
 毎日、大半の時間を付き合ってくれたパソコンに門松を飾った。
 
 


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