昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

三鷹通信(24)三鷹オスカー一日だけ(2)

2010-03-24 06:03:50 | 三鷹通信
 監督クロード・シャブロルの<いとこ同志>
 

 金持ちのいとこ、ポール(ジャン・クロード・ブリアリ)の豪華なアパートに田舎からシャルル(ジェラール・ブラン)が大学を受験するためにやってきた。

 愛する母親の激励を受けてやってきたシャルルは純情で超マジメ人間。
 借りた部屋にこもって勉強ひと筋。勉強以外でやることといえば母親に手紙を出すくらい。
 
 一方のポールは同じ大学の受験生とは見えないハチャメチャな生活態度。仲間と連日パーティを開き乱痴気さわぎ。シャルルにも勉強ばかりじゃ身体を壊すと引っ張り込もうとする。ついにシャルルも一見マジメそうな女にほれ込む。ところが、ポールが割り込んで、男の魅力は活力だとばかり女を説得、奪ってしまう。
 
 シャルルは女に幻滅して勉強に集中しようとする。しかし相変わらずのドンチャン騒ぎの生活環境はそれを許さない。
 ポールはそんなに勉強しなくても受かる手段はあると豪語し、金を使ってカンニングで合格する。一方シャルルは疲れ果てて力を発揮できず不合格。

 当然受かると思っていたいとこ、シャルルが不合格となって、ポールは「キミなら力があるからきっと復活するさ」と励ます。
 本当はシャルルのことが好きだったんだ。ただ男としてもっと強くなってほしいと願っていたのだ。

 そして信じられないラストシーン。
 ・・・なぜ、こんなことに?・・・という顔で持ったピストルを眺めるポール。
 その先にはピストルで撃たれて仰向けに倒れているシャルル。

 ぼくは興奮を胸に会場を出た。
 残念ながら急用で最後の<死刑台のエレベーター>は観ることができなかった。
 

 不倫相手が夫の社長を射殺して、完全犯罪を成し遂げたかに見えたが、若い不倫相手はエレベーターに閉じ込められる。
 現れない彼を待つジャンヌ・モローの不安気な、しかし魅惑的な表情がマイルス・デービスのトランペットの音とともに、映画といえばこの作品を思い出すぼくの胸に今でも深く潜んでいる。

  
 

三鷹通信(23)三鷹オスカー一日だけ

2010-03-23 07:19:06 | 三鷹通信
 三鷹市芸術文化センターで、<三鷹オスカー一日だけ、復活>というフランス名画三本立ての興行があった。
 

 <地下室のメロディー> <いとこ同志> <死刑台のエレベーター>の三本。
 <死刑台・・>は学生時代観たことがある。アンニュイなジャンヌ・モローに深く魅了された記憶がある。他は初めてだ。
 白黒だし、三本立てなんて堪えられるか。途中で眠ってしまうのでは・・・。

 しかし、そんな懸念は<地下室のメロディー>の冒頭、パリの駅前の雑踏、バスに乗り換えたジャン・ギャバンの姿を見た途端に吹っ飛んでしまった。
 

 彼の周りの乗客が最近旅行した自慢話を騒々しくしゃべっている。とつぜん一人が「オレなんか最近ギリシャに行って来たんだぜ、いくら掛かったと思う? 8万フランだぜ。ローンを組んで行ってきたんだ」
 ジャン・ギャバンがつぶやく。
「ローンで旅行? あとでセコセコ働いて返す? そんなサラリーマン的生活なんて真っ平だぜ」
 バスを降りて町の変わりように驚く。「昔は緑に囲まれた豊かな町だったのに。ちんけなアパートばっかりじゃないか・・・」昔、と言っても5年前だが、町名を聞いても分からない。変わってしまったのだ。・・・ああ、彼はムショ帰りなんだ。

「あら、早かったのね?」迎えたのは美人の奥さん。「行かなくって悪かったわね、他に男を作っていると思ってたんでしょ?」「いや、ぜんぜん。あんな所へお前なんか来たら大変だよ。何をするか分からない連中ばかりなんだから・・・」
「わたし、考えていたの。この家を売ってあなたの残していったお金を加えれば地方でホテルが買えるのよ」「どれほどのホテルが買えるというのだ」「もうあなたも歳だし、こんどやったらもう帰って来られないわよ。地道に暮らしましょう」「冗談じゃないぜ。おれはでかい山を考えているんだ。大富豪になってオーストラリアあたりで暮らすんだ」

 ギャバンは、ムショで知り合ったアラン・ドロンとカジノの何億という大金を狙う計画を練る。
 ムショ帰りで母親と角突合せやさぐれていたドロンは、ギャバンに誘われ彼の指図でカジノのある大ホテルへ金持ちのイケメンぼんぼんとして入り込み、次々と女をたらしこんでホテル内の情報を集める。 格好いいね! 若きドロン。身のこなしも軽快だし。・・・
 まんまと大金をせしめ、そしてかの有名なラストシーン。
 プールに浮ぶ大量の紙幣。

 ─続く─

三鷹通信(22)高尾山は世界一

2010-03-19 06:33:52 | 三鷹通信
 お彼岸が近づいたので高尾へお墓参りに行ってきた。
 混みあわない日、しかもボランティアで忙しい妻のスケジュールを考慮して、早めの16日(火)に設定した。
 天気予報が雨模様で心配したが、幸運にも小春日和の好天気に恵まれた。
 高尾駅から2キロほどの登り道、歩きを覚悟していたがバスが利用できて助かった。
 
 余裕が出来て、高尾山へ登ってみることにする。
 会社へ入ってすぐ仲間たちと相模湖まで縦断して以来だから半世紀ぶりだ。
 

 今はとてもそんな元気はない。
 京王線に乗り換えて高尾山口で降り、駅前の高橋家で名物のそばを食べる。
 

 妻はとろろそば、ぼくは鴨せいろ。うまい。

 ミシュランガイドで最高ランクの三ツ星観光地に選出されてから高尾山はたいへんな人気で、年間登山者数260万人というのはダントツの世界一だそうだ。
 今日はウイークデイだし、天気予報が良くなかったので幸いにも空いている。

 山の中腹(470M)までケーブルカーに乗る。
 

 斜度31度は日本一の急勾配。
 山側はともかく、崖側は絶壁で強風でも吹けば紅葉樹林に真っ逆さまに転げ落ちそう。
 しかし、新緑の頃、秋の紅葉のころは素晴らしいだろうなと思われる。
 さらに上へ登れば猿山や野草園があるが、我々は中腹の展望台から東京の街並みを一望する。
 遠く新宿のビル群は春霞にかすんでいた。

「河口湖の山荘へ行っても、すぐ帰ろうと言うんだから・・・」
「47分に準急があるから、それで帰ろう」と言ったら妻に言われた。
 電車も空いている。
 さて調布までひと眠り。
 二つ目のめじろ台でふと忘れ物に気づいた。
 ヘンケルの万能はさみが二丁、水筒にお供えした果物やお菓子が入っている袋を高尾山口駅のベンチに置き忘れたのだ。
「まあ、いいか・・。」と言ったら、「とんでもない、取りに戻りましょう」と言われてしまった。
 
 電車を乗り換えて戻ったが、ベンチにはない。
 駅の事務所に行ったら届けられていた。
 ボケ老人のとんだおまけ付きお墓参りだった。
 
 

 

 

有名人(33)女の魅力(29)

2010-03-03 06:01:58 | 女の魅力
 NHK<この人にトキメキッ!>は二胡奏者の<チェン・ミン(陳敏)>

 

 背が高い。スマートな肢体。明るく輝く目。引き締めた唇には強い意志が窺われる。

 上海音楽院教授で二胡奏者でもあった父親と越劇女優だった母親のもと、幼くして二胡を習得。
 上海のオーケストラで二胡のコンサートマスターにまで上り詰める。
 しかし、
 ・・・このままではいけない。自分はもっといろいろと経験しなければならない・・・
 そう思った彼女は安定した地位を捨ててまで、日本留学を決意する。

 「なぜ日本を選んだのですか?」
 問いかけにこう答えた。
「周囲の年配の人たちから聞かされた戦中の日本と、戦後の日本からの情報との落差に関心を抱いたのです」

 しかし、22歳で単身日本へやってきた彼女は涙する日々を送ることになる。
 日本語学校で日本語を学ぶかたわら、アルバイトを探した。
 時はバブルが崩壊した時期で日本人でも職を得るのが難しかった。
 <アルバイト募集していますか?>
 彼女はこの一言を何べんも繰り返し、徹底的にマスターし、日本人に間違えられるほど流暢にしゃべれるようにした。
 そして満面の笑顔で自分を売り込みレストランのアルバイトにありついた。
 しかし、メニューの内容は聞き慣れないものが多く、客の注文を間違えて幾度も涙を流した。

 それでも頑張って2年後共立女子大学に入学、仲間内で披露した二胡演奏が評判となり、コンサートの依頼が入るようになる。
 久しぶりの演奏は手に汗をかいて、指は滑るは、満足のいくものではなかった。
 四畳半の狭いアパート住まいで練習もままならない。
「とても素晴らしい音色ですね。でもやめて下さい」と言われた。
 なにしろドアが揺れるほど響くのだ。

 しかし、学業の合間、卒業してからは帰郷して父親の猛特訓のもと猛練習に励む。
 国際電話で父親のひと言のアドバイスが効いたこともあった。
 その当時の練習風景を細かく記した父親の愛情いっぱいの記録が残されている。

 紅白歌合戦で<すばる>の曲で競演した谷村新司は彼女について語っている。
 

 ・・・演奏は、音に芯があり、強さがある。一方、艶やかさと変幻自在な魅力に溢れている。
 そして流暢な日本語をしゃべる。
 国を越え、乗り越えてきた彼女の強さであろう。・・・

 <得られるものは弦の外>
 父親から贈られた言葉だ。
 まさに、彼女が体現してきたことだ。

 そして、
 <夢は、きっと、かなう>
 番組の最後に演奏された彼女のヒット曲である。

 ちなみに昨今は日本での活動が大半だそうだが、中国における評価も高く、今年5月の上海世界万国博での演奏が予定されている。
 

金沢便り(22)蘭のひな祭り

2010-03-01 06:21:30 | 金沢便り
 三月、春です。
 能登半島・七尾<のと蘭の国>から春の便りが届きました。

 蘭の花たちも雛祭りに誘われて盛装しました。
 
 
 雛壇。

 
 内裏雛。

 
 クマさんも。

 
 紫の花。

 
 シャリーベビー

 
 チョコレートの香りがするんですって。

 以上、<金沢の山ちゃん>からのフォト便り。