昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

エッセイ(389)政治生命をかけた冒険

2017-07-30 03:45:24 | エッセイ
 田原総一朗氏が安倍首相に意味深な提言をした。 
「政治生命をかけた冒険をしてみないか?」
 お友だち問題で野党のみならず、マスコミや国民一般から顰蹙を買っていて、政権の支持率も急低下。
 思い悩んでいた安倍首相はこの提案に関心を示したという。          
 さて、いかなる提案だったのだろう。

 (1)北朝鮮を電撃訪問して、世界外交に風穴を開けるか? ・・・絶対<核兵器放棄>をしないあの人相手ではムリ!
 (2)戦後レジームからの脱却を目指して一気に<憲法改正>、<自主憲法制定>へと突き進むか?
 
  ・・・アメリカの制定した<平和憲法>に慣れ親しんだ国民が現状を変えることを良しとするか?
 
 アメリカの庇護を離れ、理想的な平和国家を樹立するするなんて、<力>のないわが国には非現実的! アメリカのオバマ大統領でさえ失敗したんだから。
 (3)国民に人気のある新たな提携先を求める。たとえば小池百合子新党と・・・。
 時期尚早だな。
 (4)日本の最先端技術にかける。例えば水素燃料を活用する究極のエコカー、FCVの普及促進。
 (5)それとも、日本としては真っ当な外交戦略<積極的平和主義>に徹する宣言をするか?
 発言力の重みという点で、核兵器保有能力維持が必須の条件となるが・・・。
 <核抑止力>で支えられている現実は甘くない。

 その先に初めて、唯一の被爆国として、人類の悲願<核兵器廃絶>を訴えることが見えてくるかもしれないが・・・。

 <好奇心コーナー>
 
 田原氏曰く、「民進党も共産党も反対ではない」ことだそうです。

 



三鷹通信(209)第24回読書ミーティング(7)故人サイト

2017-07-29 03:34:18 | 三鷹通信
 最後、参加者Sさんから推薦本古田雄介「故人サイト」が紹介された。
 これもまたユニークな本である。
 なお、「東京β」では他にも<副都心の系譜>、<水運都市・東京>、<接続点としての新橋>、<空の玄関・羽田空港の今昔>など、魅力的な項目が取り上げられているが、ここでは割愛する。
 
 「故人サイト」の内容。
 ネット社会になって、一般人が自らの死を予期しないまま書き込んだ文章がネット空間に無数に残されるようになった。それらの中から特に印象的・特徴的・衝撃的な103サイトを紹介している。
 *突然停止したサイト
 *死の予定が隠されたサイト
 *闘病を綴ったサイト 
 *辞世を残したサイト
 *自ら死に向かったサイト
 *引き継がれた、追憶のサイト

 ブログ、Twitter,Facebookなどのネットサービスは、書き手が亡くなった場合、どうなるのだろう。
 ほとんどの場合、消滅する。
 一つはサービス提供側がブログスペースを閉鎖するなどしてサービスを終了してしまう場合。
 もう一つは有料サービスを使用していたが、支払いがなされないため、規約に基づいて一定期間経過後に契約解除のためブログを削除する場合。

 本人が亡くなってしまっているため、削除もできないで荒らされているものもある。
 ボクもこうしてブログを書いているが、そんなときのことを考えてもいなかった。
 
 ところで、そんな「故人サイト」を見るのは不謹慎だろうか?
 作者の古田氏は、「マナーを守れば、倫理に反しないばかりか、学ぶべきことも多い」と力説する。
「残してくれた<生きていた証>、その情報は非常に貴重なわけですから、無視することなく、わたしたちはそれを見つめていく、そんな意識が必要なんじゃないかとなと思います」

 作者、古田雄介は、フリーの記者であるが、なかなかユニークな経歴の持ち主である。
 名古屋生まれの名古屋育ち。
 名古屋工業大学卒業後に上京し、建築系現場監督と葬儀社スタッフを経て、5年間編集プロダクションに勤務したのち独立し現職。
 編集プロダクション時代は電気街量販店探索とPCやデジタル機器のレビュー、インターネット関連の調査やインタビューが中心だったが、独立後は死生や終活、ライフエンドにまつわる仕事にも携わるようになった。
 また、2016年8月に、一般社団法人デジタル遺品研究会ルクシー(LXXE)を株式会社フレイバー代表の阿部勇人とともに設立し、デジタル遺品の適切な取り扱いについて研究と普及活動にたずさわるようになった。

 <好奇心コーナー>
 
 今回の読書ミーティングでは、「劇場」「応仁の乱」「水燃えて火」「東京β」「故人サイト」とユニークで話題性のある5冊が取り上げられた。
 しかし、講師によれば出版業界は儲からない、特に書店は存亡の危機にある。
 書店で採算がとれているのは新宿の紀伊国屋書店だけではないかという。
 たしかに、ボクの先輩なども最近本はネット書店「アマゾン」から買っているという。
 (最近、文芸社からまた自費出版の誘いがあった。出版社も儲けるためにいろいろ工夫しているようだ)

 

 
 
   







三鷹通信(208)第24回読書ミーティング(6)東京β(3)

2017-07-28 06:01:59 | 三鷹通信
 「東京β」東京のランドマーク変遷史。
 明治時代の東京におけるランドマークは、エッフェル塔完成の翌年、1890年に完成した浅草の凌雲閣、通称「浅草十二階」である。
 江戸時代の猥雑さを残した庶民の盛り場「浅草六区」に隣接した場所に建てられた。
 当時では圧倒的な52メートルという高さを誇っていた。
 江戸川乱歩の「押絵と旅する男」に登場する。
「雲が届きそうな低いところにあって、見渡すと、東京中の屋根がごみみたいに、ゴチャゴチャしていて、品川のお台場が、盆石の様に見えて居ります。目まいがしそうなのを我慢して、下を覗きますと、観音様の御堂だってすっと低い所にありますし、小屋掛けの見世物が、おもちゃのようで、歩いている人間が、頭と足ばかりに見えるのです」

 1923年の 関東大震災で倒壊したのを機に、浅草の凋落は急速に進む。
 当時の本所や深川などの<貧民窟>の住人たちの生活も大きく変わっていく。
 第一次世界大戦を機に、日本は造船業などを中心とした産業の急速な発展期を迎え、この地は工場地帯として急速に発展していった。
 東京電燈の千住火力発電所の四本の巨大煙突、通称「お化け煙突」が完成したのは、1926年。
 煙突の高さは83メートル。浅草十二階より高かったので、ランドマークとして機能したことは間違いない。 
 
 1953年の五所平之助監督作品「煙突の見える場所」では、冒頭に煙突の姿が象徴的に映され、騒々しい下町での生活が描かれる。
 
 高さ333メートルの東京タワーが完成したのは1958年。
 戦後、電気炊飯器や冷蔵庫といった家電の普及がひと通り進むと、今度は娯楽の道具であるテレビが家庭へと浸透していく。
 その新時代を象徴する電波塔=東京タワーが、新しいランドマークとして、高度経済成長を成し遂げる日本経済の中に君臨するのである。

 2005年に公開された映画「ALWAYS 三丁目の夕日」の舞台は、騒々しい商店街、高度経済成長が始まろうとしていた矢先の1958年である。この年に東京タワーが完成した。 日本人が心を一つにして成し遂げた戦後復興を象徴するモニュメントとして東京タワーは描かれた。
 
 1993年に刊行された岡崎京子「東京ガールズブラボー」で、主人公のさかえは沢田研二「TOKIO」の中で描かれたような未来都市のイメージのままに東京を頭に描いている。
 だが実際に東京、巣鴨の親戚の家で生活を始めたさかえの周りには、ニューウエーブもナウもなく、現実と想像の東京の違いの大きさに幻滅する。

 東日本大震災の後、2012年2月29日に竣工した東京スカイツリーは、東京タワーに代わるテレビ塔として現在では新しいランドマークとして定着しつつある。
 「踊る大捜査線」最終編では、お台場と芝浦をつなぐレインボーブリッジを大写しにし、お台場の街の発展という作品のテーマを一つの絵として提示した。
 今後、スカイツリーが何を象徴する存在になるのか。
 それを見出すには、まだ少し時間を要するだろう。

 <蛇足>
 満月の夜、東京スカイツリーの展望台から消えた「レロレロ姫」は再び地球に戻って来るのだろうか?

 
 





三鷹通信(207)第24回読書ミーティング(5)東京β(2)

2017-07-27 02:12:13 | 三鷹通信
 近年、東京湾は急速にその姿を変えつつある。
 この変化は2020年の東京オリンピック開催と結びついたものとして語られることが多いが、江戸時代、一部はそれ以前からすでに埋立てが進められてきたもので、思いのほかその歴史は長い。
 湾岸の光景を大きく変えている要因は、湾岸の埋立地に次々と立ち並ぶようになったタワーマンションにある。

 日本住宅公団が設立されたのは、大都市への人口流入が本格化し始めていた高度経済成長期初頭の1955年だった。
 公団が1958年に竣工した「晴海団地高層アパート」は、まさにその実験的な意味合いの強い10階建てという高層住宅の試みだった。          
 この4年後の1962年にここを舞台とした映画「しとやかな獣」が公開されている。 団地の生活は一般の庶民にとってはまだ憧れの対象だった。特に晴海団地は作家や芸能人が住むようなランクの高い住宅として知られていた。
 この映画の前田家は、がむしゃらに貧困から抜け出し、戦後の新しい消費生活にしがみついている戦後家族のカリカチュアである。エンディングには、豊洲側から見た晴海の遠景が映し出されている。 この映画の監督である川島雄三は、「新しい生活」にしがみつく家族の必死さ、そして空疎な人工物で埋め尽くされた埋立地の光景の二つに象徴させたのだろう。
 この20年後に映画「家族ゲーム」が公開された。 どちらも湾岸の団地を舞台とした核家族の物語である。
 「家族ゲーム」の時代には、団地=高層住宅での生活は、もはや日本人にとって当たり前のものとなっている。そして、ごく普通に見える家庭が、ふたを開ければ崩壊寸前というタイプの映画だった。
 ・・・住人たちの大半が朝とともに吐き出され、夜とともにそれぞれの部屋に詰め込まれ、団地は再び日々膨らんだり萎んだりするコンクリートのポンプと化している。・・・

 さらに4年後の「男女7人夏物語」に登場する高層住宅は、「独身者向けマンション」である。
  主として1970年代以降に増えるタイプのものである。
 この登場人物たちの基盤は、家族ではなくあくまでも職業であり、バブル経済突入の先駆けとなった。

 1998年に直木賞を受賞した宮部みゆきの「理由」の舞台は、清洲橋から5キロ以上上流の隅田川沿いに建つタワーマンションである。 身の丈を超えた額のローンを組んでこのタワーマンションに住むタワーマンションで起きる「怪異」を描いている。
 時に、バブル経済は崩壊していた。

 ─続く─ 



三鷹通信(206)第24回読書ミーティング(4)東京β(1)

2017-07-26 05:00:23 | 三鷹通信
 Aさんの推薦本 速水健朗「東京β」
 <東京β>? βって?
 著者、速水健朗は、東京という街が常に変化と開発、そして消失を繰り返し、いつまでも完成しない状態にあるとして、PCソフトの製品としてきちんとできていない「β版」(試用版)から引用し「β」を付している。
 ヨーロッパの歴史ある都市ならば100年前の姿でも残っているが、東京の場合は50年前であってもその姿はまったく違うものになっている。
 その変化を、映画、ドラマ、小説、マンガを通じて描いているところが、またユニークな作品である。
 *「東京湾の日常」「副都心の系譜」「東京ランドマーク変遷史」「水運都市・東京」「接続点としての新橋」「空の玄関・羽田空港の今昔」という六章の視点から描かれているが、そのうち何点かピックアップしてみたい。
 
 その前にひと言。
 こんなユニークな本を紹介してくれたAさんに対しては、・・・まさに東京造形に仕事の面で関り、生活に根差しているからこその愛ある目線だなあ・・・と敬意を抱かざるを得ない。      
 これまでにも、「ゆりかもめに会いに行こう」「東京湾諸島」「吉祥寺だけが住みよい街ですか?」などの本を推薦していただいている。
   

 まさに変化し続ける大都市「東京」
 そして翻弄される住民。
 我々はどこへ向かっているのか?


 ─続く─




三鷹通信(205)第24回読書ミーティング(3)水燃えて火

2017-07-25 01:22:14 | 三鷹通信
 ボクの推薦本 神津カンナ「水燃えて火」
 実は、神津家に関係するという先輩から「読んでみて下さい」と手渡された。
 今年の3月10日初版である。
 タイトルの副題に「山師と女優の電力革命」
 帯に『福沢諭吉の女婿・桃介と女優第一号・貞奴が木曽山中に「水力オペラ」の波乱万丈』とある。

  母は女優の中村メイコ・父は作曲家の神津善行・弟は画家の神津善之介・妹の神津はづきは俳優杉本哲太と結婚している。
 東洋英和女学院高等部を卒業後渡米、サラ・ローレンス大学を中退、帰国後に発表した「親離れするときに読む本」を機に作家活動を始める。「見えないオシャベリ」、「カンナの同級生気分」、「男と女の交差点」などエッセイが多い。

 福沢諭吉の女婿で山師と呼ばれた福地桃介。
 それに日本初の女優。川上貞奴。
 「水燃えて火」は、その異端の交わりが水力発電の時代を開いた近代史の一面を描く、著者新境地のダイナミックな長編小説。
 第一章 水然而火
 第二章 恩河深而無底
 第三章 天禄永昌
 第四章 普明照世間
 第五章 葆光
 ・・・目次にも重い思いが込められている。

 産経新聞インタビューに彼女が語っている。
「20代の頃から各地の発電施設を見てきました・・・生活と切り離せないエネルギーの話をいつか書きたいと思っていました」

「横で”伴奏”してくれた貞奴がいたから、桃介も大事業に取り組めたのでは・・・。実録ではなく、あくまでも小説なので、こうだったらいいなと思うことを貞奴に言わせました」

「(環境破壊・反対運動・女性の地位・演劇の改良運動・林業の歴史など)いろんなテーマが一つの川にながれている感じにしたかった。私自身は、母(女優の中村メイコ)が芝居をやっていることや大学で演劇を学んだこともあり演劇にまつわる話は書いていておもしろかった。人によって興味をもつところは違うと思うので、是非読んで楽しんでほしい」

 ボクが印象深かった個所をピックアップしてみる。
 *(貞奴は)物事の本質を掴むのにも長けている。桃介はたまに、貞奴の知らぬ仕事の世界の話をしても、返ってくる言葉は的を射ていた。ダムの話をすると「人もね、いい時と悪い時の落差で力が出るもんです」と言い、互いに相容れない反対運動の話をすれば、「相手のことなんざ所詮、理解はできない。でもね、わからなくていいんですよ、相手を信じられれば」と答える。桃介はそういう貞奴との会話がかたわらに欲しかったのである。

 *「・・・あの人(桃介)は私のもとへもどってきたのではありません。でも、あちら(桃介の正妻)と寄り添いつづけようともおもっていないでしょう。あの人は行き場のない人なのです。あの人は自分のなかにしかいられない。誰とも一緒にいられない・・・」「それであなたはよしとするのですか」「良いも悪いも、どうしようもありません。それに私も、形を整えることに疲れました。・・・たぶん私も。もしかしたらあの人と同じように、誰とも一緒にいられない、行き場のない人間なのですよ・・・」

 *(桃介)「水は不思議だなあ。あらゆるものを作る。だからそんな水をみんなが利用するのを止められない。水を独占しちゃあ、他の者を殺すことになる。俺は使いたいが、おまえは使うなとは言えない。それに火だってなければ立ちゆかない。しかも火は水のように、そこに端からあるわけじゃない。作らなきゃしようがないわけだ」

 *(桃介)「貞さんは触媒みたいなもんだなあ・・・。簡単に言えば、それに触れるとみんな不思議とね、何か別物になる。触媒はずっと変わらないんですけどね・・・」

 <ボクの読後感> 表紙から受ける稀有な男の女の愛のドラマというより、どちらかというと<目次>から受けるちょっと理屈っぽい、エネルギー開発事業と近代演劇の歴史にからむ稀有な男と女のノンフィクションと言ったほうがいいかも。
 そういえば、この作品は「電気新聞」に連載された「風のゆくえ」をベースにしているそうだ。
 
 一般受けと言うより、歴史記述がけっこう詳細なので、エネルギー関連に従事する人たちに受けそうだ。


三鷹通信(204)第24回読書ミーティング(2)応仁の乱

2017-07-24 04:30:46 | 三鷹通信
講師推薦本(2)呉座勇一「応仁の乱」
 室町時代後期に発生し、戦国時代への転換点となった応仁の乱。
 知名度こそ高いが、詳しい内容は一般によく知られていないこの大乱を概説した硬派の歴史書が、異例の37万部というベストセラーに!
 「応仁の乱フェア」として関連本を扱う書店もある。       
 高校の教科書では、8代将軍足利義政に息子がなく、弟の義視を後継者にしたが、義政の妻、日野富子が男児(のちの9代将軍義尚)を出産。富子がわが子を将軍にしようと乱を起こしたと記述されているだけ。
 しかし本書では、総勢300人が登場。
 複数の守護大名の家督争いや将軍の後継問題。
 有力大名の細川勝元と山名宗全の幕政をめぐる主導権争いで全国大名が東西両軍に分かれた上、双方で寝返りが相次ぐなど混迷を極めた11年の戦乱だったことを、興福寺の僧の日記をもとに読み解く。
 応仁の乱がわかりにくいことが分かる本。

 著者、呉座勇一は国際日本文化センター助教。
 インタビューを受けて語っている。
「現代が複雑であるから、複雑で混沌としたものをそのまま理解しようとしていかないと。単純なモデルでお手軽に手に入れた指針で複雑な社会を生きようとするのは、かえって危ない。生兵法はけがの元です」
「右も左も成功物語、そもそもそこが良くない。学ぶべきは失敗だ」

 複雑さを一覧にしてみると、
 
 ヒーロー不在で歴史好きにはむかない、複雑で大義なき<応仁の乱>が今、なぜブームになっているのか?
 現在、中東や東アジアで起きている世界の混迷に通じるものがあるのでは? という関心なのだろうか。
   
  
 
 <好奇心コーナー>
 
 昨日は三鷹三田会麻雀分科会第234回麻雀大会だった。
 幹事長役を後輩に譲って、今年はゲームに専念している。
 ところが今回、第1回戦にドンビリを喰らう。
 その時モデルでプロ雀士岡田彩佳さんの言葉が浮かんだ。「ぜったい、ツキは回ってくる。前を向いて諦めないこと!」
 最終的にプラスまで持ち込み。52名中23位、当日賞というおまけもいただいた。
 半年を経過して、成績は67名中第7位。

三鷹通信(203)第24回読書ミーティング(1)

2017-07-23 03:32:02 | 三鷹通信
 昨日は現役編集者が主宰する読書ミーティングだった。
 講師推薦本(1)又吉直樹「劇場」
 演劇を通して世界に立ち向かう永田と、その恋人の沙希。
 夢を抱いてやってきた東京でふたりは出会った。・・・
 「火花」より先に書き始めていた又吉直樹の作家としての原点にして、書かずにはいられなかったたったひとつの不器用な恋。
 夢と現実のはざまでもがきながら、かけがいのない大切な誰かを想う、切なくも胸に迫る恋愛小説。
 前作の「火花」で獲得した読者が発売後すぐに購入することを見込んで異例の初版30万部で刊行。
 新潮社創業120年の歴史て、単行本としては村上春樹作品に次ぐ史上2番目の初版部数。
 5月22日付の「オリコン週刊ランキング」で総合1位を記録。
 また、紀伊国屋書店、三省堂書店、TUTAYA BOOKSをはじめ、国内主要書店チェーンでも軒並みランキング1位を独占。
 ちなみにデビュー作「火花」の売り上げは累計283万部!
 芥川賞受賞作品としては村上龍「限りなく透明に近いブルー」を抜き、歴代第1位!
 文芸春秋刊行物としては歴代2位の単独発行部数となった。
 1位は? 「マジソン群の橋」なんだって。
 又吉直樹
 新潮社は、時代を代表する作家にしたい1番手だという。
 これまで、川端康成、三島由紀夫、大江健三郎、村上春樹と、新潮社が育てたその時代を代表する純文学のスターにしたい作家だというが・・・。
 スゴイ期待値だね。
 次作が問われるところだ。     

 「劇場」に対する感想。
 *講師によれば、読んでいてつらくなる。
 演劇の脚本を書く主人公の自意識過剰、コンプレックス、弱さ、他人の才能への嫉妬。自分の難しさをあたりちらす身勝手な人となり。
 女の子には愛想をつかされる。女の子は心を痛み、二人に未来はない。
 しかし、作品の奥底にはピュアな印象が確かにある。

 *Amazonレビュー
  主人公の永田に愛せるところがひとつもなかった。
  言葉の使い方も不誠実に見えて不快だった。
  登場人物の存在感、説得力が希薄で期待外れだった。
  リアリティがないので物語に入り込めない。
  有名人が知名度を利用して売っているだけなんだ。

  ・・・きびしいね、これではボクも読む気はしない。

  最初の3行に作者の深い黙想の姿が窺えました。
  こんなに切なくて、こんなに美しい恋愛小説は久しぶり。
  
  ・・・なんて好意的な評価もあるようだが。・・・


エッセイ(388)暑くて、忙しい一日

2017-07-15 05:16:49 | エッセイ
 朝早く三鷹市民大学運営委員Y氏から電話があった。
 9時半から講義の前に運営委員に集まってほしいというのだ。
 会場の創造プラザまで、歩いて40分あまり。
「暑いんだからバスで行きなさい!」
 いつもなら歩いて行くのだが家内に止められた。
 五人の運営委員がそろったところで、Y氏が言った。
「今日、総合の運営委員会があります。<自主学習>の一つとして年末にある<つどい>に対するわが哲学コースの意思を固めておきたいんですが」
 「去年までは社会教育会館で行われたが、今回はここ、創造プラザで行われる予定です。我々受講者の間の交流行事なのか、一般市民に対するアピールが趣旨なのか」
「従来のような、細かな独りよがりの表現方法でなくシンプルなものを目指したほうがいいと思うが」ということでまとまった。
 
 今日は合田正人講師の5回目「言葉と意味の深淵を見る」と題して2時間。 いつものように、真面目な学者の姿勢で、分かったような分からないような、哲学の神髄を語られた。
 今日は鶴見俊輔とパースに焦点を当てられた。  
「言葉とは人間の道具としての側面を持つ一方、人間が言葉に繰られているという面もある」
「人間とは記号(サイン)である」 
「人間の仕事はサインを読み解くことにある」
「意味とは何か?全然違う意味で使っている場合もある」
「意味も変わっていくというのがプラグマティズムの考え方。取り敢えず暫定的に決めておく」
「言葉をお守り的に使うことを鶴見氏は戒めている。勅語という形で国家が動かされた事実」
「文字は不平等を作り出した」
「文字は殺し、霊は生かす」
「人間は直立歩行で、前足が手になり、顔が立ち、前方を見る」
「手で壁に刻印した。象形文字、線文字の存在。未だ判読されていないものがある」
「文字と言葉は同時発生ではないのか}
 
 終わってから他のコースの運営委員を含めて総合運営委員会が開催された。
 その間、近くのサミットでカツサンドを買って昼食を摂る。
 

 総合運営委員会では行政サイドが司会をした。
 年末に開かれる<つどい>の件だった。
 前回の反省と、今回への意見交換がなされた。

「次に三鷹市立第一小学校のスマイルクラブの囲碁指導が控えていますのでお先に・・・」
 すると、Kさんが「第一小学校のスマイルクラブ? わたしもアートの指導をしているんです」
 なんという偶然!
 
 
 囲碁教室で、この偶然を確認すると
「先生、アートのK先生知ってるんですか?」と生徒。
「アートのK先生は人気なんですよ」と父兄のお母さん。

 ・・・この三鷹でいろいろな交流が構築されつつある。
 忙しく暑い一日だったが、ボクにとって何となく幸せな気分になった。 
 

 
         



なるほど!と思う日々(493)<啓蒙の弁証法>と<日本の現状>

2017-07-10 11:06:20 | なるほどと思う日々
 今年もベランダに月下美人が花を開いた。
 年に一度、しかも真夜中にしか開かない。
 芳しい香りを漂わせている。

三鷹市市民大学・西谷修講師から紹介いただいた<啓蒙の弁証法>を読んでみた。       
 
 冒頭の認識と課題。
「何故に人類は、真に人間的な状態に踏み入っていく代わりに、一種の新しい野蛮状態へ落ち込んでいくのか」
 執筆されたのは1939年から44年にかけて、ちょうど第二次世界大戦の火ぶたが切られた年だった。
 市民文明の崩壊という現状認識のもと、学問そのものの意義が疑わしいものになっていた。
 筋金入りのファシストたちがしたり顔に喧伝し、順応力に富むはずのヒューマニティのエキスパートたちが行っていることは金儲け以外の何ものでもなかった。

 人間は「外なる自然」を科学技術によって支配し、「内なる自然」を道徳や教育によって支配することによって、さらにそれらを社会的に支配することによって、自己を確立しようとしてきた。
 しかしそれらが見失われ、「自己保存のための自己保存」という自動的反復運動だけになっている。
 自己保存を旨として成長をとげた悟性が生の法則を認めることがあるとすれば、それは強者の法則である。

 人種とは、本来、民族主義者が欲するような、そのまま自然がもつ特殊性ではない。
 むしろ自然のままのもの、むきだしの暴力への還元なのであり、現在の状態のうちではまさしく普遍的なものとして現れている頑迷な部分性への還元なのである。
 つまり、野蛮な集団のうちに統合された市民個人の自己主張である。

 現代世界の混乱を極めている政治、経済状況を鑑みるに、深刻になったと言えても、何も光明が見えてこないのが現状である。
 むしろトランプ現象などで、<野蛮状態>へと逆戻りしているとさえいえる。
 ・・・はたして<哲学>に期待する価値があるのだろうか?・・・


 ところで、安倍一強体制と言われている日本はどうなっているか? 
 先日フジテレビのプライムニュースでの、西部邁X佐伯啓思・「安倍一強と<実態なき空気>」が興味深かった。
 佐伯「国民は民主主義において、<快>ばかり求める。<善>を求めるのが政治家だが、民主主義のもとではそれができない」 
 西部「近代史を振り返ればデモクラシーが危険なものなのかが分かる。それが分かっている人たちによるデモクラシーだけがどうにかこうにか大人のものに近づくということがそろそろ分からないと困る」

 ・・・都知事選の結果を振り返って・・・
 佐伯「小池都知事は人気取りの面が強い。民主主義の中にガラガラポン願望がある。改革願望が強すぎて何か新しいことが起きるのかと幻想がふりまかれている」
 西部「現代でスマホを持って歩いている奴らは、要するに内心は空虚だ。そういった状態の時に、こうした小池都知事や小泉元首相、橋下前大阪市長のような人たちが、ふと現れると”なんか面白そうだな”と思って投票しているだけだ。そもそも民主主義がここまで腐敗すれば、そんなところに立候補する人間100人のうち90人は、最初から人間的にぺけ印が付いていると思わなければならない」