T.NのDIARY

写真付きで、日記や趣味をひとり問答で書いたり、小説の粗筋を纏めたブログ

1127話 [ 「平蔵狩り」を読み終えて -3/3- ] 1/25・月曜(曇・晴)

2016-01-24 16:10:21 | 読書

「平蔵狩り」 

 本作一の快作と思ったので、別稿の「短編・平蔵狩り」で、少し詳細に粗筋を記述することにした。

「鬼殺し」 オランダ人が江戸の天竺屋と取引するために持ち込んだ秘薬を、

       強盗の一味が横取りしようとしたが、

       別のルートで、そのことを知った火盗改に捕縛された話

 日本橋の唐物問屋天竺屋が押し込みに襲われ、主人の藤兵衛が斬殺された。

 番屋に駆け込んだのは、藤兵衛の内妻・はるだった。はるは、藤兵衛が上方で馴染みになった女で、店の誰もが素性を知らなかった。

 はるの話では、夜中九つごろ主人に誘われて一夜を楽しむため土蔵に入った。そのとき、覆面をした強盗一味が土蔵に入ってきて、主人は殺され、自分は奥のほうに隠れていて、静かになったので、裏の木戸から外へ出て番屋に駆けたと言う。

 火盗改の同心と手先が店に急行した。

 もう一人、番頭の勘右衛門が藤兵衛と同じ切り口で殺されていた。それを見て、手先の歌吉が、赤鞘の重四郎の仕業だと言う。

 一味の顔を見た者はと問うと、下働きのおちよは、炎のような赤い髪と青く光る眼をした鬼のような人間を見たと言う。

 少し遅れて天竺屋に来た与力の公家憲一郎は、ちよから、鬼のような人間は小柄だったと聞き、また、他の者から、身元の不確かだった手代の徳蔵が1人だけ姿を消していることを知り、それらのことを平蔵に報告する。

 憲一郎は平蔵から、はるの言動と徳蔵の身許を再度確かめろとの指示を受けた。

 はるは、京の島原にいるときに、藤兵衛に知り合い、女将さんが亡くなられて身請けされたとのこと。そして、裏木戸の閂が外れていたのでそこから番屋に駆けつけたと言った。しかし、赤鞘の一味も誰も裏木戸を開けてなく、土蔵の中には、藤兵衛と楽しむための様子が何も見られなかった。

 オランダ通詞の吉村治之進は、在府の長崎奉行にオランダの献上品を届ける仕事が済んだので、骨休みで吉原に行った。その帰り、赤鞘の重四郎から掘立小屋に連れ込まれ、責め立てられて、ウィレムという小柄のオランダ人が、島津家の家中とつなぎを取り、江戸の薩摩屋敷に来ていることを白状する。

 重四郎は、懐から薬包を出し、この「マンドロガ」をウィレムが大量に隠し持っているので、貰い受けたいのだ。ウィレムを薩摩屋敷からおれのところへ連れて来いと言う。

 手先のりんと歌吉は、平蔵から、薩摩の下屋敷を見張れとの指図を受けていた。

 歌吉らが見張っていると、長羽織の男と深編笠を被った異国の男が出てきたので、後をつけ、ある寺に入ったところで、りんは同心の小源太へ知らせに走った。

 重四郎は、三田の浄仙寺で、治之進の通弁でウィレムと取引をした。金銭面の話がつき、ウィレムが、隠し場所へ行き品物を確かめたいと言うので、手下の徳市をつけさせた。

 徳市は天竺屋手代の徳三だった。

 途中、徳市が油断した隙に、首を締め上げて気絶させて、ウィレムと治之進は天竺屋に向かった。

 赤鞘一味が押し込みに入ったときに、偶然にも、藤兵衛とウィレムは、はるの仲介で、「マンドロガ」の取引をしていたのだ。

 はるは、以前は、長崎の丸山の遊女で、その後、京都で藤兵衛に金で買われたのだ。

 その話が出島にも届いて、ウィレムも取引の仲介をはるに頼んだのである。

 ウィレムは、治野進に案内料百両を渡すことで、番屋や木戸のない道を急いだ。

 ナマコ塀を越えて天竺屋に入り、ウィレムが鍵束を持ったはるを連れてくる。

 土蔵に入ったウィレムは、はるに、トウベエが死んでも取引の話は残っているので、金を用意するなら薬はそのまま置いていくが、どうだと言う。はるが、盗人に入られて金は一文もないと言うので、ウィレムが、それじゃ持って帰るかといったとき、突然背後から声がかかった。

 マンドロガはおれが貰っていくぞと、黒装束の影が二つ立ち塞がっていた。赤鞘の重四郎と手下と分かって治之進は言葉を失った。

 こんなこともあろうかと後をつけて来たのだ、マンドロガは何処にあるのかと、重四郎が抜身を突きつけると、ウィレムが刃向かったので、一瞬に斬り殺した。

 重四郎は、はるに隠し場所を言えと抜身を突きつけたとき、木箱の一つの蓋が開き、中から火盗改の一人が立ち上がった。

「赤鞘の重四郎、ここへ戻ったが、運の尽きだ。神妙にお縄を頂戴せい」

 この声を合図に、あちこちの木箱や長持の蓋が開き、捕り手が姿を現した。

 憲一郎が、平蔵に謎解きを聞くと、

「オランダの鬼だけが、素顔をさらし覆面をしていなかったので、赤鞘一味とは全く別用で来ていたと考えたのだ。出島のオランダ人が、禁制品のマンドロガを薩摩より高くさばくために、はるを伝手に天竺屋へ話を持ち込んだのだと思ったのだ。それを確信させたのは、小源太がはるの口を割らせたことだ」と小源太を褒めていた。

「法師」 窃盗の頭領・法師の囲い女と駆け落ちしたいために、

       法師一味の押し込みを垂れ込んだ盗人・半助当人も、

       押し込み先で仲間(法師の娘)に差し違えられた話

 手先の美於は、以前、蝦蟇の麓蔵という盗人の一味に身を置いていた。

 その麓蔵の一味だった遠耳の半助は、美於が料亭の使い走りで長谷川平蔵の役宅に出入りしていることを知っていて、美於に相談したくて後をつける。

 半助は、麓蔵の捕縛によって一味がバラバラになり、いまは、信州一帯で豪農、豪商を襲っている坊主崩れの法師を頭とする一味に加わっていた。

 半助は、手荒な仕事をしてこなかった法師が、押し込み先で、一味になっていた自分の娘のおたよが殺されたことをきっかけにして、最近では容赦なく人を殺すようになってきた(半助の作り事)ことから嫌気がさしてきた。都合よく、今度、江戸で押し込みをすることになったので、そのことを、美於から火盗改に知らせて捕縛してもらい、それを契機に足を洗いたいと言う。

 実際は、法師のすぐかっとなる女房が死んで、法師が、囲い女で手引き役をやらせている、優しいおふじと、半助は駆け落ちしたいので、火盗改に、法師と、半助が昔惚れていたが、気性が荒くなり人を殺すことも平気でやるようになったおたよを亡き者にしてもらいたいのである。

 半助は、押し込みの場所と時間を美於に伝え、火盗改は、押し込み先に詰めていて、一味を、半助とおふじとおたよを除いて、捕縛した。

 半助は、一味が踏み込んだすきに、おふじを連れて、塀の外へ逃げ、おふじを待たせて船を捜しに行って帰ってきたら、おふじはおたよに斬られていた。

 おたよは、こいつは、おかっさんからとっつぁんを盗んだ上、今度は、あたしからあんたを横取りしたんだと怒りをあらわにしていた。

 抜身を持ったおたよと匕首を持った半助は、お互いに突進して、刺し違えて死んだ。

 法師は、一味の誰か(母親を裏切った父を怨んでいた娘おたよ)に斬られて酷い傷を負っていた。

                                                        

                                     終

 

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