[雑感]
池波正太郎氏と逢坂剛氏の長谷川平蔵捕物帳を各々1冊(短編数点)を読んでみての内容比較なので、十分な比較はできなかったが、以下、6項目に分類して、特徴を比較してみた。
なお、両氏は、あとのシリーズの中などで、文体等が変化しているのかどうかも興味があるところなので、逢坂剛の「平蔵狩り」(吉川英治文学賞受賞作品)と池波正太郎の「鬼平犯科帳(2)~(21)」の短編集と「鬼平犯科帳(22)から(24)」の長編から1巻、それに「真田太平記(1)~(12)」を数巻読んでみたいと思っている。
1. 池波正太郎は、
「 ( ) 」を使い、登場人物の心情(気持、考え、感じたこと)を、作品の中に多く表現させている。
逢坂剛は、
このような表現は取ってなく、強いて言えば、やり取りの言葉の中で表現している。
2. 池波正太郎は、
「〔 〕」を使い、固有名詞を表現している。
逢坂剛は、
「< >」を使い、固有名詞を表現している。
3. 池波正太郎は、
密偵・狗、 お盗(ツトメ)・急ぎ盗(バタラキ)・鼡盗(ネズミバタラキ)、 御頭・長官、
火付盗賊改方・盗賊改方、 という独特の固有名詞を使っている。
逢坂剛は、
手先、 お勤め・盗み、 殿さま・殿・頭領、 火盗改方、
と池波正太郎が使っていない一般的な名詞を使っている。
4. 池波正太郎は、
登場人物の生い立ちや、例えば「盗人宿」や「急ぎ盗」の解説、「島田宿」の様子、
場所の場景、 を詳述している。
逢坂剛は、
それらの表現が少ない。
5. 池波正太郎は、
捕物自体に、そんなに凝った状況を創っていない。 いわゆる〔謎解き〕の捕物帳でない。
逢坂剛は、
影武者や替え玉を使ったり、変装したり、盗人一味に平蔵の手先を潜らせたり、
と捕物に技巧を取り入れている。
6. 池波正太郎は、
長谷川平蔵を自然体の姿で世間に晒している。
逢坂剛は、
長谷川平蔵の顔を見せまいと、外へ出たときは、できる限り深編笠を被せたり、
めったに、本人が盗賊の詮議をしないとか、世間から顔を隠す構成になっている。
いわゆるキャラクターが違っている。
終