スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

対応&優劣

2021-07-03 18:59:21 | 将棋トピック
 処分が発表されたときに僕が考えたことを詳しく説明していきます。まずはこの間の,日本将棋連盟,とくに執行部の対応に関してです。
 この発表からは,竜王戦の挑戦者決定戦が行われる以前に,三浦九段に対する疑惑が,執行部には伝えられていた筈だと思えました。これは後に判明したことですが,第三局では三浦九段の行動が秘密裏に監視されていたのですから,少なくとも第三局の前に執行部が疑惑を把握していたことは確実で,僕が推測したことは,完全ではなかったかもしれませんが,的外れではなかったことになります。
 僕がこれに関して思ったのは,それならなぜ挑戦者決定戦の前に,三浦九段に聴取をするなり行動に対する注意をするなりしなかったのかということでした。さらに,第三局が指されてから1ヶ月も経過した後に聴取をして,その聴取だけでいきなり処分を下すということも疑問に感じられました。僕はこのことを合理的に説明できるとすれば,竜王戦の第一局が迫っていたからだとしか考えられませんでしたので,竜王戦の処分に関する記事の中では,そのような主旨のことを記述したのです。
 この推測については誤りであったということが後に判明しています。執行部がこの時期に処分するに至ったのは,この疑惑についての報道が週刊誌に掲載されるということが明らかになり,そのことを心配した棋士が執行部にその事実を伝えたからでした。処分に関する記事の中で,僕は当時の渡辺竜王が聴取に参加したようだと記述していますが,この報道に対する対応のために中心になって行動した棋士が渡辺竜王であったのは間違いのない事実だということも,後に明らかになっています。渡辺竜王は竜王戦の当事者ですから,このような心配をしたのは当然のことであって,執行部に対して何らかの対応を求めたのは当然のことでしょう。
 時間的な余裕がなかったため,執行部は三浦九段に挑戦の辞退という無理な要求をし,その要求が受け入れられなかったために強引に処分したというのが,このときの真相ではなかったかと僕は今では考えています。週刊誌は竜王戦の開幕に合わせて記事にすることを狙っていた筈で,それが不幸な結果を招く要因になったともいえるでしょう。

 どのような事物にもその事物に固有の本性essentiaがあり,その本性は完全性perfectioを意味するということから帰結するのは,スピノザの哲学においては,完全であるか不完全であるか,いい換えれば存在するか存在しないか,あるいは存在し得るか存在し得ないかという点で差異をつけることが可能ですが,存在するものあるいは存在し得るものについては,より完全であるかより不完全であるかという差異をつけることは不可能だということです。なぜなら,仮にAとBという本性が異なるふたつの事物が存在する場合に,AはAの本性において完全で,またBもBの本性において完全ですから,どちらも完全であるということはできますが,Aの方がBより完全であるということはできませんし,Bの方がAより完全であるということもできません。Aの本性とBの本性が異なる分だけAの完全性とBの完全性は異なるのですが,Aの本性とBの本性との間で優劣をつけることができないので,Aの完全性とBの完全性の間に優劣をつけることもできないのです。
                                   
 これはAとBというふたつの事物の間での説明ですが,この説明は普遍的なものであって,事物がいくら存在したとしても成立します。したがってあらゆる事物の間で,すなわちすべての様態modusの間に,完全性の差異はないのです。このことが,様態の間で優越性があるということを認めないということに直結します。つまり,あるものが別のものに対して完全であるということができないのであれば,あるものが他のものに対して優越的であるということもできないということになるのです。よってほかのものに対して何らかの意味で優越的にeminenter存在する事物というのは存在しません。人間は馬よりも完全であるとはいえないがゆえに,人間は馬よりも優越的な存在ではあり得ません。同様に,人間の本性と三角形の本性の間に完全性の差異はないために,人間は三角形よりも優越的に存在するということはないのです。もちろんこのことは逆もまた真verumなのであり,馬が人間よりも優越的に存在するわけではありませんし,三角形が人間よりも優越的に存在するというわけではないのです。
 このことをスピノザのテクストで確認します。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする