ダイニング・ウィズ・ワイン そむりえ亭

料理にワインを
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 樋口誠

「味」の構成要素

2013年03月22日 02時38分11秒 | ちょっと休憩

例えばお饅頭は甘い、のですが砂糖だけで出来ている訳ではありません。

レモンスカッシュは酸っぱい飲み物ですが、砂糖も沢山使っています。

というように、何か一つの要素だけで出来ている飲食物はありませんね。

昔から「五味」という言葉を使います。

甘味、酸味、渋み、苦み、辛味、塩味です。

最近では、これに「UMAMI」=旨味を足す場合もあります。

殆どのものは少なからず、五味が関わっているのだろうと思いますが、ビールや日本酒など穀物系のお酒では酸味の要素は少ないですね。

お茶もそうです。酸味はほぼ感じません。

辛味はワインにもビールニも日本酒にも無縁と言っていいかもしれません。

塩味は時折ミネラルの強いワインに見かけられますが、多くはありません。


しかし、単独の味わいの飲み物なんてないですよね。

ワインはそういう点では、他の飲み物に比べて構成要素は複雑と言えるのではないでしょうか?

渋み、苦み、甘み、酸味そして旨味は多かれ少なかれ感じます。

では何が突出しているかと言えば間違いなく「酸味」です。

何故なら原料が葡萄と言う果実だからで、穀物原料のそれとは一線を画すのです。

ワインも色々です。

「このワインは渋みがシッカリ」「あのワインは旨味がタップリ」「こないだのは甘い」「2003年のは酸が少ない」などと言います。

ワインを覚えれば覚えるほど、その辺のセンサーは確かになっていきますよね。

しかし、ワインビギナーがワインを探すとき「スッパイのが苦手」とか「ギチッと渋いのが好き」などと言われて

前者に酸の少ないニューワールドの赤を勧めても「酸っぱすぎる」と言われたり、

後者に若いカベルネのタンニンの濃いのをお出しすると「全然ギチッと来ない」と言われたりすることも多々あります。

それは何故か?

私の経験上、前者に酸の強いピノノワールをお出しすると「これイケルやん」、後者にタンニンの少ないピノノワールを勧めると「ク~~ッ、ギチッと来るねえ!!」と受けたりすることが少なくありません。

これは全て「酸」の感じ方に起因します。

つまりワインはどれだけ酸が少なくても「ほかの飲み物より有る」のです。

また普段他の飲み物=ビールは酒を飲んでいると「酸」という言葉は眼中にはありませんので、渋みと酸味が混在していることに「酸っぱい」といってしまい、酸が口の横の部分に「ギチッ」と効いてくるのを「渋い」と表現してしまうのですね。

勿論、全ての方がそうだとは言いません。

しかし、ピノノワールの酸味はグラスによっては酸っぱく感じませんし、少なくてもタンニンと共に攻めてくることも少ない。

また他の飲み物にない酸を「ワインらしいもの」と捉える場合、タンニンだけだと物足りないのではないでしょうか?

だってお茶にもビールニもコーヒーにも紅茶にもタンニンはあって、ある意味慣れていますから、「らしいもの」は酸なんでしょう。

難しいですね・・・・

何故、こんなことを書いているのかと言えば、先日ある後輩の店で「酸っぱいワインは苦手」と言って次から次に「酸の少ないワイン」にダメだししているのを見たのです。

その後輩の出しているワインは全くその通りのいい選択ですが、なのに・・・・です。

「私にもそういう経験あったなあ・・・」「今でも時折似た例があるなあ・・」と拝見しておりました。

そのお客様は一体どんなワインで納得されるんでしょうか?

その若きソムリエの同じお客様へのチャレンジが楽しみです。

そむりえ亭は料理に合わせてお出しする形ですから、このような事例は少ないのですが、人間の味覚の表現の難しさを改めて知らされた形です。