漂着の浜辺から

囁きのような呟き。

「送り火」と「点と線」

2013年04月15日 | 読書録

「送り火」 重松清著 文藝春秋刊

を読む。

 武蔵電鉄富士見線という、京王線と小田急線が適当に混じった感じの、新宿から出ている架空の路線を舞台にした連作短編集。帯にはホラーと書かれているが、怖いというよりは、ハートウォーミングな作品が並んでいる。
 重松清は、上手い作家なので、どうしようもなくつまらない、という話は一つもない。どれもよくできた、面白い作品だった。ただし、どの作品でもしんみりとした気分になるが、それだけに、長く印象に残り続けるというわけでもないというところもある。手慣れた作家による作品集という感じが、多少あるということ。悪いことではないけれども。
 


「点と線」 松本清張著
新潮文庫 新潮社刊

を読む。

 僕は結構本を読んでいる方だと思うけれども、松本清張の本は、実は一冊も読んだことがなかった。読む本が偏っているので、そういう感じで、結構有名な作家や作品に未読のものは多い。清張作品も、そうしたもののひとつ。
 この作品は、時刻表を使ったトリックを暴くというもの(「送り火」とは、電車つながりですね)。松本清張といえば、読んだことも、映画をみたこともなかったけれども、社会派の本格的な推理小説を書く作家というイメージがあったが、この「点と線」に関していえば、そうした深さは皆無だったように思う。もしかしたら、もっと後になって書かれた作品には、そうした深みがあるのかもしれないが、少なくともこの作品に関して言えば、あまり面白い小説ではなかったとしか言えないし、なぜそれほどもてはやされるのか、わからなかったというのが正直なところ。「砂の器」か何かを、もう一冊、読んでみようかな。

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