漂着の浜辺から

囁きのような呟き。

怪談

2008年08月01日 | 汀の画帳 (散文的文体演習)
 ブログも長く続けていると、くだらないことならいくらでもかけそうだけれども、特に書きたいというようなこともないなあと、妙に思弁的な不可能性の壁を感じたりすることがある。
 要するにちょっと飽きているのだろう、と思う。
 でもまあ、そんな波はよくあるわけで。

 夏だし、何かくだらない怪談でも、と思う。
 今はまだ何も思いついていない。これから考える。リアルタイムである。
 周りを見回す。
 ・・・
 ・・・・
 三分経過。
 ・・・・・
 
 明日までに、レポートを完成させなければならない。
 だが、資料が見つからない。立ち上がって、パソコンデスクの近くの古い書架を探る。確か、このあたりにあったはずである。
 ふと、一冊の古くて重い本を手にしたところ、何かが床に落ちた。見ると、それは耳掻きである。拾い上げて、しばらく考える。どこから出てきたのだろう。いくら考えてもそれは本の間に挟まっていたとしか思えない。だが、有難い。ちょうど耳が痒く感じていたところだ。
 耳かきをそっと耳の中に入れる。だが、不思議なことに、全く痛みを感じない。勇気を出して、もう少し入れてみる。やはり何の感触もない。
 気が付くと、耳掻きはすっかりと根元まで耳の中に入ってしまっている。我に返り、出そうとするのだが、今度は何かに引っかかってしまっているようで、出てこない。「ささくれ」でも出来ているのか、強く引っ張ると痛い。それとも、耳の中で耳掻きが根を張ってしまっているのか。
 耳掻きの先を指でつまんだまま、僕はどうすることもできないでいる。



 

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