唯識に学ぶ・誓喚の折々の記

私は、私の幸せを求めて、何故苦悩するのでしょうか。私の心の奥深くに潜む明と闇を読み解きたいと思っています。

第三能変  受倶門・重解六位心所(40) 別境・独並門

2013-04-06 00:08:24 | 心の構造について

10192_495297480518956_2127555267_n
 4月8日は降誕会(灌仏会)

別境の心所が三つ生起する場合・四つ生起する場合・五つ生起する場合について述べる。 

 「或る時には三を起す。謂く、所楽(しょぎょう)と決定(けつじょう)と曾習(ぞうじゅう)との於(うえ)に欲と解と念とを起す。是の如く乃至曾(ぞう)と所観(しょかん)との於に念と定と慧とを起す。合(ごう)すれば十の三有り。」

 「或る時には四を起す。謂く、所楽(しょぎょう)と決定(けつじょう)と曾習(ぞうじゅう)と所観(しょかん)との境の中に於て前(さき)の四種を起す。是の如く乃至定と曾習と所観との境の中に於て後の四種を起す。合すれば五の四有り。」

 「或る時には五を起す。謂く、所楽(しょぎょう)と決定(けつじょう)と曾習(ぞうじゅう)と所観(しょかん)との境の中に於て具(つぶさ)に五種を起す。
 是の如く四が於に欲等の五を起す。総と別と合すれば三十一の句有り。」(『論』第五・三十三右)
 

 あらゆる場合を総合すると三十一の場合があるということです。起こる場合もあるし、起こらぬ場合もあるということで不定というのですね。『述記』には詳細が示されています。また総・別については『演秘』(第五本十六右)に、二つの解釈が示されています。

 十の三について

 「論。或時起三至合有十三 述曰。此説於四境起三數。初以所樂爲首合餘有六。論但擧一。謂於所樂・決定・曾習合起欲・解・念三。復以所樂・決定・所觀合起欲・解・定三。復以所樂・決定・所觀合起欲・解・惠三。復以所樂・曾習・所觀合起欲・念・定三。復以所樂・曾習・所觀起欲・念・惠三。復以所樂・所觀起欲・定・惠三。如是以決定爲首有三。謂於決定・曾習・所觀起解・念・定三。復於決定・曾習・所觀起解・念・惠三。復以決定 ・所觀起解・定・惠三。如是於曾習・所觀起念・定・惠三。合總四境起欲等有十个三也。此中但擧初一後一。」(『述記』第六本上・二十一左。大正43・432a)

 (「述して曰く。四境に於いて三の数を起すことを説く。初めは所楽を以て首と為して余に合すれば六有り。論には但だ一を挙げたり。謂く(1)所楽と決定と曾習とに於いて、合して欲と解と念との三を起す。(2)復た、所楽と決定と所観とを以て合して欲と解と定との三を起す。(3)復た、所楽と決定と所観とを以て、合して欲と解と慧との三を起す。(4)復た、所楽と曾習と所観とを以て、合して欲と念と定との三を起す。(5)復た、所楽と曾習と所観とを以て、合して欲と念と慧との三を起す。(6)復た、所楽と所観とを以て、欲と定と慧とを起す。是の如く決定を以て首と為すに三有り。謂く(7)決定と曾習と所観とに於いて、解と念と定との三を起す。(8)復た決定と曾習と所観とに於いて、解と念と慧との三を起す。(9)復た、決定と所観とを以て、解と定と慧との三を起す。是の如く(10)曾習と所観とに於いて、念と定と慧との三を起す。合すれば総じて四境に於いて欲等を起すこと十ケの三有るなり。この中には但だ初の一と後の一とを挙げたり。)

 五の四有りを説く

 「論。或時起四至合爲五四 述曰。謂於四境更互除一。謂初於所樂・決定・曾習・所觀起初四除惠。如是於前四境除定取惠。如是於前四境中除曾習。即於三境起四。除念取定。如是四境中除決定。於三境中起四。除解取念。如是四境除所樂於三境起四。除欲取勝解。即互除一。合四境起亦有五个四也。此中但擧後一初一。一一料簡如前可知。」

 (「述して曰く。謂く四の境に於いて更互に一を除く。謂く初に(1)所楽と決定と曾習と所観とに於いて初の四を起す。慧を除く。是の如く(2)前の四境に於いて定を除いて慧を取る。(3)是の如く四境のうち曾習を除く。即ち三境に於いて四を起す。念を除いて定を取る。(4)是の如く四境のうち決定を除く。三境のうちに於いて、四を起す。解を除き念を取る。(五)是の如く四境のうち所楽を除く。三の境において四を起す。欲を除き勝解を取る。即ち互に一を除き、合すれば四境に起すに亦五ケの四有り。この中には但だ後の一と初の一のみを挙げたり。一一料簡することは、前の如く知る可し。」)

 『論』には初の一句と後の一句を挙げて、後はこれと同様であると、初・後に代表させて述べています。最後は別境の心所が全部同時に生起する場合について述べています。これは一種類になり、五つが倶起する場合が一通りです。総・別は1~4の説明が総で、最後の5が別とする、と説明されています。

 「論。或時起五至具起五種 述曰。文易知故」

 「論。如是於四至三十一句 述曰。合前一一別起乃至起五。總有三十一句。此中所説皆據因位。」(『述記』第六本上・二十一左。大正43・432a)

 総・別についての『演秘』の説明

 『論』(巻第五・三十三・右)欲等の五は独或いは並生することを明かす中、護法の正義の中の文。総・別の言は伝に二釈有り。一に云く、ニニより五に至るをこれを名づけて総と為し、一々に別に起こすを説いて名づけて別と為す。二に云く、一のみ起きて四に至るをこれを名づけて別と為す。合して五種を起こすを説いて名づけて総と為す。詳らかにして曰く、後の解を正と為す。 (『演秘』)

 即ち、一つの別境の心所が生起する場合の五通りを「別」とし、その他の四を「総」とするのが第一説であり、第二説は、五つの別境の心所が生起する場合の一通りを「総」とし、その他を「別」とする。そして第二説を正義としています。

 『演秘』の所論は次回に譲ります。

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿