唯識に学ぶ・誓喚の折々の記

私は、私の幸せを求めて、何故苦悩するのでしょうか。私の心の奥深くに潜む明と闇を読み解きたいと思っています。

第三能変 煩悩の心所 諸門分別 (34) 自類相応門 (20) 

2014-08-10 16:13:16 | 第三能変 諸門分別 自類相応門

 第六は、癡について説明されます。癡はその他の九種の煩悩と必ず相応することを明らかにします。此の中で、癡は無明と云われているわけですが、相応無明と独行無明のあることが明かされます。

 「癡は九種と皆定んで相応す、諸の煩悩の生ずることは必ず癡に由るが故に。」(『論』第六・十七左)

 本科段は、相応無明について一切倶起であることを明らかにし、一切の惑(苦悩)の生起するのは必然として癡に由るのである、と。

 

           貪
           瞋
           慢
 相応無明 {  疑      }  すべての煩悩の生起は癡に由る。
           薩迦耶見
           辺執見
           邪見
           見取見
           戒禁取見

 独行無明(不共無明)は二種に分けられます。

 

          恒行不共無明(末那識と相応して働く無明)
 独行無明 {
          独行不共無明(意識と相応して働く無明)

 

 「論。癡與九種至必由癡故 述曰。下第六無明有二種。相應無明與一切倶起。一切惑生必由癡故。獨行不然。但與諸論相違。此中皆會訖。」(『述記』第六末・三十七左。大正43・451a)

 (「述して曰く。下は第六に無明に二種有り。相応無明は一切と倶起す、一切の惑の生ずることは必ず癡に由るが故に。独行は然ず。但だ諸の論と相違すること此の中に皆会し訖る。」)

 尚、『論』に、いままで述べてきました十煩悩について『論』第六・十六左に問いが設けられていました。この問いについて『演秘』は簡略にまとめていますので、『演秘』の所論に学びます。少し長文ですが最後まで読んでみてください。『演秘』には問いのすぐ後に釈文があるのですが、会本には自類相応門の結文として取り上げられ、第三の識相応門への問いにつながっていきます。

 「論。此十煩惱誰幾相應者。諸論辨此相應不同。今略引之。五十五云。無明與一切。疑都無所有。貪・嗔不相應。此或與慢・見。謂染愛時或高擧或推求。如染愛憎恚亦爾。慢之與見我更相應。謂高擧時邪復推構 五十八云。五見是惠性故互不相應。自性自性不相應故。貪・恚・慢疑更相違故互不相應。貪染令心卑下。憍慢令心高擧。是故貪・慢更互相違 對法第六云。貪不與嗔相應。一向相違法必不倶故。又貪不與疑相應。由惠於境不決定必無染著故。餘得相應。如貪嗔亦爾。謂嗔不與貪・慢・見相應。若於此事起憎恚。即不於此生於高擧及推求。與餘相應如理應知。慢不與嗔・疑相應。無明有二。相應・不共。不共不與嗔・疑相應。疑不與貪・慢・見相應。會如此論及疏。故不重云。」(『演秘』第五末・七右。大正43・921c)

 (「論に、此の十煩悩において誰は幾ばくとか相応するやとは、諸論に此の相応を弁ずること不同なり。今略してこれを引く、五十五(『瑜伽論』巻第五十五。大正30・603a)に、無明は一切と與なり。
 疑は都て所有無く、貪と瞋と相応せず、此れ或は慢・見と與なり。謂く染愛する時に、或は高挙し、推求す、染愛の如く憎恚も亦爾なり。慢と見とは我は更に相応す、謂うく高挙する時、邪に復推搆(スイコウ)すと云へり。五十八(大正30・623a)に、五見は是れ慧の性なるが故に互に相応せず、自性と自性は相応せざるが故に。貪と恚と慢と疑は更に相違するが故に互に相応せず。
 貪・染は心をして卑下ならしめ、憍慢は心をして高挙せしむ、是の故に貪と慢とは更互に相違すと云へり。
 対法第六(『雑集論』巻第六。大正31・723a)に、貪は瞋と相違せず、一向に相違の法にして必ず倶ならざるが故に。また貪は疑と相違せずとは慧が境に於て決定せずんば必ず染著すること無きに由るが故に。余は相応することを得、貪の如く瞋も亦爾なり。謂く瞋は貪・慢・見と相応せず。若し此の事に於て憎恚を起こさば、即ち此れに於いて高挙を生じ、及び推求して余と相違せず。理の如く応に知るべし。慢は瞋と疑と相応せず。
 無明に二有り、相応と不共となり。不共は瞋疑と相応せず、疑は貪と慢と見と相応せずと云へり。会することは此の論と及び疏との如し。故に重ねて云わず。」)

 貪と瞋。貪と慢。貪と疑。貪と見
 瞋と慢。瞋と疑。瞋と見
 慢と疑。慢と見。         } の倶起・不倶起について
 疑と見
 癡は九種と皆定んで相応す。

 以上が、自類相応門で学んできたことになります。各項目の倶起・不倶起については元にもどって幾度も研鑽されますことを念じます。

 次科段からは、第三に識相応門が説かれてきます。