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感想:別冊マガジン 2011年10月号「嵐の伝説 最終回」

2011年09月13日 | 週刊少年漫画「マガジン」「サンデー」感想
創刊当時には感想書いてた気がする「別冊マガジン」さんから久々に。

■嵐の伝説 最終回

ある日、世界は「裁きの日」を迎え、文明は滅びた。
荒廃した未来を跋扈するのは異形のクリ―チャー。食べ物すら満足になく、ただひたすらに絶望が支配する世界。
そんな中かろうじて生き残った人々は、英雄・嵐分吾に率いられ、化け物の群れと戦い続けていた…。

が、それはそれとして。物語は「裁きの日」が起きる前。いつもと変わらぬ現代から始まる。

という漫画。

日常系ギャグ漫画なのに、「後に世界が滅びる」設定なのが上手い。
絶望の未来では英雄と呼ばれる人たちも、現代ではむしろ役立たず。
でも世界が滅びたその時から、彼らの偉大さが分かるのです。
素手でゴキブリを潰せる無神経さは、地獄の未来を生き抜く力になる。
人目を気にせず少女漫画を購入できる行動力が、未来では生死を分ける。

突然襲った「裁きの日」は、様々な人たちの人生も変えます。
安っぽい熱血ドラマを展開していた野球少年は、崩壊した未来で命懸けでフォークボールを投げ、元プロレスラーはゾンビと化した先輩レスラーと熱い戦いを繰り広げる。
現代ではひきこもりだったり、着ぐるみバイトだったり、筋トレ大好き人間だったりする人たちが、未来では決死の戦いを演じて見せる。

そんな無理やり感が泣ける。
馬鹿らしいのだけど、案外リアルなんじゃないかとすら思えてくる。

個人的には白雪姫の人たちが好き。ギャグ漫画を文章で解説するほど野暮なこともないですが。

学芸会で白雪姫をやることになり、主役を押し付けられた地味な娘さん。
七人の小人役を探して回ったところ、学生離れした肉体馬鹿や時代錯誤な武人たちがぞろぞろと集まって来る。
それも思いっきり勘違いして。「我ら、白雪姫を命懸けで守る!」「いやこれ劇だから…」。

よくあるエスカレートしていく系のギャグですが…そして世界は滅びる。
崩壊した未来で、以前に立てた誓いどおり「白雪姫」役の娘さんを命懸けで守る「七人の小人」役の人たち。
鍛え上げた肉体は無駄じゃなかった!むさくるしいまでの漢気は飾りじゃなかった!

という漫画。

とても馬鹿馬鹿しいけど、馬鹿馬鹿しいだけに意外にも真面目に泣ける。
最終回、それまでいつもどおりに展開していた馬鹿馬鹿しい日常が、一変して世界崩壊。
瓦礫と化した日常を背負い、歩いていく後の英雄・嵐分吾の姿は胸にきた。

これまでは「崩壊した未来」「現代の日常」を行き来して物語が展開してたのに、「現代」が「崩壊」に追いついてしまった。
一度崩れ去ってしまえば、もう前には戻らない。現実には時間の流れは一方通行であり、破滅は避けられない。
それでも進んでいく嵐分吾。こんなに馬鹿馬鹿しくて悲しいギャグ漫画は、なかなかないんじゃなかろうか。


(左画像)
嵐の伝説(1) (少年マガジンコミックス)

(右画像)
嵐の伝説(2) (少年マガジンコミックス)


「別冊マガジン」さんは雑誌テーマが「絶望」だそうで。
「進撃の巨人」が有名ですが、「嵐の伝説」もギャグ漫画ながら良い漫画です。割と本気で。

ギャグ漫画を引き合いに出すのは不謹慎極まりないことは承知の上で、それでも書くと、やっぱり「突然に崩壊する未来」は昨今の状況と重なるものがある。
何かドラマチックな準備期間があって、納得がいく形で「崩壊」するわけじゃない。
ある日いきなり「崩壊」して、その時までのしょうもない日常や能力の積み重ねで乗り切るしかないんだ。

そんなことまでつい考えてしまった漫画でした。ただのギャグ漫画なのに。

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