大幅に出遅れつつも、DVD版と劇場版を見てみました。
なお、ゲームや漫画等々は未チェックなので、見当違いなことを書いててもご容赦ください。
■劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [前編] 始まりの物語
■劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [後編] 永遠の物語
一応、おおまかな設定。
民間人には不可視の「魔女」なる災厄存在がいる世界。
謎生物・キュゥべえにスカウトされた娘さん達は、なんでも叶う奇跡1個と引き換えに、「魔法少女」となって魔女と戦います。
が、「魔法少女」と言えば響きはいいけれど、とどのつまり人外になり果てて命がけで延々と惨たらしく戦うだけ。
戦っていれば普通に戦死する子も出てくるし、よしんば勝っても誰からも評価されない。
「魔法少女」としての肉体を維持するには、「魔女」を倒して維持アイテムを得ないといけないので逃げることもできず。
おまけに維持アイテムがなくなったり、絶望しきってしまったりしたら、自分自身が「魔女」に変貌してしまう。
この一連のシステムは、謎生物どもが謎エネルギーを採取するために構築したもの。
ヒロインのまどかさん達もこのシステムに巻き込まれ、それはそれは苦労する羽目に。
うっかり奇跡を願い、うっかり「魔法少女」様になってしまった娘さん達の行方や如何に。
【感想】
本放送時に1話は見たのですが、何となく続きは見てなかった。
それを後悔するくらいに面白かったです。
使われてるギミック自体は、割と昔からあるものだと思う。
一例を挙げれば、ミヒャエル・エンデの「はてしない物語」。
「願いが叶う」を餌に引き寄せられた子たちが、安易にヒーローになったものの、先人の辿った悲惨な状況に絶望し、多大な苦悩の果てに、友を犠牲にして解決するお話。
その他、探せば似た構成のお話は無数にあるはず。
魔法少女の反転や過酷な戦闘等々も、そこかしこで見かけます。
ですが、それらをきっちりまとめて、ちゃんと話が始まって、ちゃんと終わる形に構成したのは凄い。
全12話しかないことも逆手にとって上手く使ってるし(「変身するのは最終話」なんて構成を、全50話のシリーズでやったらさすがに間が持たない)、ビジュアルノベル得意のトリック(繰り返すごとに真相が見えてくるとか)も活かされてる。
音楽や映像の「はったり」(良い意味で)も、かなり効果的。
「昔からあるギミック」とは書いたものの、ではこれを20年前に出来たか?というと無理だったはず。
一つ一つは、いわば「お約束」な要素なのだけど、それが「お約束」になったからこそ作れた話だったというか。
自分たちの得意分野に持ち込んで、視聴者のニーズも読み切った上で、綺麗にまとめきったような、そんな印象。
一種の「魔法少女物の集大成」と言ってよいようなパワーを感じた番組でした。
【感想2】
考察の類は1年以上前から沢山されているとは思いますが、疑問に思った事を一つ。
まどかさんが選択した願い「全ての魔女を消す」は、初めよく理解できなかった。
そもそも彼女たちを追い詰めていたのは、「いつか魔女化してしまうこと」ではなかったはず。
事実、さやかちゃんさんが絶望したのは魔女化とは関係ないし、マミさんにいたってはそれ以前の問題です。
これらの問題が何も解決していない。
確かに状況は改善はしていますが、せっかく掛け値なしに「なんでも」叶う状況だったのに、無駄使いにも程がある。
そんな感じで首を傾げていたのですが、傾げている内に、まどかさんの置かれた状況を考えると、あれが最良だったのかもしれないと思えてきた。
(1)
前提として、「願いが叶う」とは言ってるものの、実際はかなり曖昧です。
例えば、ほむらさんは「まどかとの出会いをやり直す」と「まどかを守れる自分になりたい」と、さりげなく2つ願い事をしてる。
で、後者は実現していないところを見ると、さりげなく却下されてる。
前者も実際に叶ったのは「まどかとの出会いをやり直すことが可能な能力を得る」であって、「やり直す」ではありませんでした。
この二つは決定的に違います。
さやかさんのお願いは「恭介の手を治すこと」だったと思われますが、「手が治る」と「手を治す能力を得る」は全く違う。
まぁ案外、キュゥべえらが説明を省略しただけで、奇跡は全て「○○する」ではなく「○○する能力を得る」として実現してたのかもしれませんけれど。
仮に杏子さんに彼の手を潰されても、実は何度でも簡単に治癒できたとか。
要するに、願いがどんな形式で叶うのか、詳細はよく分かっていません。
従って妙に複雑な条件や表現に走ると、想定外の変な叶い方をしてしまいかねない。
つまり、出来るだけシンプルな表現で、別解釈のしようのない願いにしないと危なすぎる。
(2)
じゃあ単純明快に「皆が幸せになる」とか願えばいいかというと、そうもいかない。
杏子さんの事例で判明しているように、下手に感情や行動を操作する願いは危険すぎる。
(まどかさんは、直接には杏子さんの一件を知りませんが)
「魔法少女システムをなかったことにする」も選べない。
文明がこのシステムで成立してきたことは事実だし、エントロピーの問題もあります。
何より希望の象徴を否定してしまっては、まどかさんの主張がブレる。
「魔法少女は絶望しない」も精神を操作するので、上述の通り不可。
システム面に着目して「ソウルジェムに穢れが溜まらない」と願えばOKそうですが、これはこれで不死になってしまいそうで怖い。
(まどかさんは「魔法少女はソウルジェムを破壊されない限り無敵だ」と説明を受けてる)
(3)
しかももう一つの前提として、まどかさんは奇跡コストの踏み逃げを狙う必要があった。
でかい願いを叶えると、反動ででかい呪いがまき散らされるので、これを自己完結して防ぐ願いにしないといけない。
難しいです、これ。悩み始めると、確かに「魔女を消す」が最善手な気がしてくる。
魔女に反転した際に発するエネルギーを回収しないとヤバイ、という点については、多分、
「魔法少女化→絶望→エネルギー放出→魔女化」
だと思ってたんじゃないかな。
さやかさんの魔女化の描写を見る限り、そんな感じだし。(まどかさんはその現場には居ませんでしたが)
実際には
「魔法少女化→絶望→魔女化→エネルギー放出」
だったため、魔女化を置換したせいでエネルギー枯渇に直面してしまいましたが、まぁご愛敬。
魔獣なる謎存在がいてくれて命拾いしました。
神化してお澄まししてるその裏では、一瞬冷や汗かいてたりしたんだ。
(4)
といったわけで、苦肉の策として「魔女を消す」は理解できる。
しかしそうは言っても、問題が解決していないのも事実です。
いくら魔女化しないとは言っても、戦って玉砕とかしたくないんです。ていうか、マミさんにとっては本当に関係ないし!
思うに、限られたリソースで何とかしようとしたのが間違いだったんじゃないかな。
第2話あたりでの、マミさんに引率されてまどか&さやかさんが魔女退治に同行するシーンで、キュゥべえが言ったセリフが割と好きです。
「近くに魔法少女候補が2人いれば、いざとなったときの切り札ができるから良い」。
確かにそうだ。奇跡を2発ぶっ放せる上に、そのまま変身して戦線に参加できます。超優秀な187クリーチャー。
これの応用で、片っ端から魔法少女にしまくって、奇跡を乱射する手があっても良かったんじゃないかと。
素質を持つ娘さんがどれくらいいるのかは分かりませんが、全人類の1%としても6,000万です。
さすがに6,000万発のシルバーバレット戦術を使えば、解決できない問題はなさそうな。
それを思うと、まどかさんの奇跡は、仲間を増やすことを考えた方が良かったのかもしれない。
「3つの願い事」でよくある回答である「願い事の回数を増やしてくれ」と同じ理屈。
戦力も増えるんだし。
(5)
劇中では「魔法少女」を悲惨で孤独な存在として描いてはいますが、冷静になってみれば、別に周囲に助けを求められない事情はないのですし、そこまで酷い状況でもなさそうに見えます。
しばしば例えられているように、「魔法少女」を通常の「仕事」に置き換えてみれば分かる。
「魔法少女しか知らない世界がある」といったところで、それは通常の仕事にもつきものです。
生死を賭けるのも、一度入ったら抜け出しづらいのも、生存のために続けなければいけないのも、特段に特殊ではない。
しかも魔法少女の数が増えれば増えるほど、これらの問題は軽減する。
人でなくなるのは確かに恐怖とはいえ、なってしまえばそういうものかなとも思う。
何となく、老化・成長や生殖が出来なくなりそうにも思えますが、それこそ誰かの「奇跡」を使って解決すればいい。
当事者であるまどかさんたちが、そういった発想に行きつけなかったのは、かなり残念です。
ほむらさんも、魔法少女能力だけではなく、人類の科学力で戦う発想に行きついたのだから、もう一歩進んでも良かったろうに。
(ほむらさんの場合、自力で解決することに意味があったのでしょうけれど)
(6)
哀しいことに、そんな閉じた世界での解決に走ってしまったまどかさん達を、周囲の大人はカバーできなかった。
まどか母が「子供の内に間違い方を覚えておけ」と言っていましたが、これが間違いだった。
既に中学生は子供じゃなかった。間違えたら、致命的なことになってしまった。
現実世界においても、中学生の頃にやらかした選択ミスは、後々の人生に洒落にならない影響を与えます。
「制服が可愛いから」とか「部活が強いから」とか、後になってしまえば実にしょうもない理由で進学先を決め、後悔した人も少なくないはず。
冗談抜きで、人生変わる。
まどかさんが出した「奇跡」は、確かに他に選択の余地がなさそうではあるし、犠牲となることを選んだのは尊いのだけれど、周囲にアドバイスを求めず、周囲の力にも頼らなかったというのは、違う意味で哀しい行動だったように思う。
新作となる第3作では、そのあたりの解決があったら、個人的にはとても嬉しいです。
閉じた世界での苦悩や「世界と自分たちは違う」というのは、「これまでの魔法少女物の集大成」としては理解できる。そこから一歩進んだ2010年代の解決にも期待してみたいです。
【蛇足】
お気に入りはマミさんでした。良い黄色です。
例の「マミる」シーンですが。
あれを見たまどかさんは、かなりの勢いで心を折られてましたが、魔法少女としては実はレアケースだったんじゃないかと思う。
インキュベーターの立場からすれば、魔女にもならずに退場するなんてのが頻繁に起きるようでは、システムとして成立しません。
説明によれば「ソウルジェムを砕かれない限り無敵」です。
ですが、おそらく多くの場合、魔法少女になった新人さんは、初戦の魔女を倒せないと思われます。
戦い方を知らないんだから。
そのため一方的に魔女にやられるものの、ソウルジェム効果により肉体は蘇生。
でもやっぱり勝てないので、蘇生と瀕死を繰り返しつつ、魔力が尽きるか絶望するかで魔女化。
多分これが最も多いケースだと思う。
まぁ何が言いたいかといえば、それにも関らず、安易にバタバタ倒れまくってるマミさんは、とてもお茶目さんだと思いました。
願った奇跡が「自身の蘇生」だったと思われるので、回復力は人一倍だったはず。
それにも関らず、あのマミり具合。大変にヘッポコで、良いと思うのです。
なお、ゲームや漫画等々は未チェックなので、見当違いなことを書いててもご容赦ください。
■劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [前編] 始まりの物語
■劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [後編] 永遠の物語
一応、おおまかな設定。
民間人には不可視の「魔女」なる災厄存在がいる世界。
謎生物・キュゥべえにスカウトされた娘さん達は、なんでも叶う奇跡1個と引き換えに、「魔法少女」となって魔女と戦います。
が、「魔法少女」と言えば響きはいいけれど、とどのつまり人外になり果てて命がけで延々と惨たらしく戦うだけ。
戦っていれば普通に戦死する子も出てくるし、よしんば勝っても誰からも評価されない。
「魔法少女」としての肉体を維持するには、「魔女」を倒して維持アイテムを得ないといけないので逃げることもできず。
おまけに維持アイテムがなくなったり、絶望しきってしまったりしたら、自分自身が「魔女」に変貌してしまう。
この一連のシステムは、謎生物どもが謎エネルギーを採取するために構築したもの。
ヒロインのまどかさん達もこのシステムに巻き込まれ、それはそれは苦労する羽目に。
うっかり奇跡を願い、うっかり「魔法少女」様になってしまった娘さん達の行方や如何に。
【感想】
本放送時に1話は見たのですが、何となく続きは見てなかった。
それを後悔するくらいに面白かったです。
使われてるギミック自体は、割と昔からあるものだと思う。
一例を挙げれば、ミヒャエル・エンデの「はてしない物語」。
「願いが叶う」を餌に引き寄せられた子たちが、安易にヒーローになったものの、先人の辿った悲惨な状況に絶望し、多大な苦悩の果てに、友を犠牲にして解決するお話。
その他、探せば似た構成のお話は無数にあるはず。
魔法少女の反転や過酷な戦闘等々も、そこかしこで見かけます。
ですが、それらをきっちりまとめて、ちゃんと話が始まって、ちゃんと終わる形に構成したのは凄い。
全12話しかないことも逆手にとって上手く使ってるし(「変身するのは最終話」なんて構成を、全50話のシリーズでやったらさすがに間が持たない)、ビジュアルノベル得意のトリック(繰り返すごとに真相が見えてくるとか)も活かされてる。
音楽や映像の「はったり」(良い意味で)も、かなり効果的。
「昔からあるギミック」とは書いたものの、ではこれを20年前に出来たか?というと無理だったはず。
一つ一つは、いわば「お約束」な要素なのだけど、それが「お約束」になったからこそ作れた話だったというか。
自分たちの得意分野に持ち込んで、視聴者のニーズも読み切った上で、綺麗にまとめきったような、そんな印象。
一種の「魔法少女物の集大成」と言ってよいようなパワーを感じた番組でした。
【感想2】
考察の類は1年以上前から沢山されているとは思いますが、疑問に思った事を一つ。
まどかさんが選択した願い「全ての魔女を消す」は、初めよく理解できなかった。
そもそも彼女たちを追い詰めていたのは、「いつか魔女化してしまうこと」ではなかったはず。
事実、さやかちゃんさんが絶望したのは魔女化とは関係ないし、マミさんにいたってはそれ以前の問題です。
これらの問題が何も解決していない。
確かに状況は改善はしていますが、せっかく掛け値なしに「なんでも」叶う状況だったのに、無駄使いにも程がある。
そんな感じで首を傾げていたのですが、傾げている内に、まどかさんの置かれた状況を考えると、あれが最良だったのかもしれないと思えてきた。
(1)
前提として、「願いが叶う」とは言ってるものの、実際はかなり曖昧です。
例えば、ほむらさんは「まどかとの出会いをやり直す」と「まどかを守れる自分になりたい」と、さりげなく2つ願い事をしてる。
で、後者は実現していないところを見ると、さりげなく却下されてる。
前者も実際に叶ったのは「まどかとの出会いをやり直すことが可能な能力を得る」であって、「やり直す」ではありませんでした。
この二つは決定的に違います。
さやかさんのお願いは「恭介の手を治すこと」だったと思われますが、「手が治る」と「手を治す能力を得る」は全く違う。
まぁ案外、キュゥべえらが説明を省略しただけで、奇跡は全て「○○する」ではなく「○○する能力を得る」として実現してたのかもしれませんけれど。
仮に杏子さんに彼の手を潰されても、実は何度でも簡単に治癒できたとか。
要するに、願いがどんな形式で叶うのか、詳細はよく分かっていません。
従って妙に複雑な条件や表現に走ると、想定外の変な叶い方をしてしまいかねない。
つまり、出来るだけシンプルな表現で、別解釈のしようのない願いにしないと危なすぎる。
(2)
じゃあ単純明快に「皆が幸せになる」とか願えばいいかというと、そうもいかない。
杏子さんの事例で判明しているように、下手に感情や行動を操作する願いは危険すぎる。
(まどかさんは、直接には杏子さんの一件を知りませんが)
「魔法少女システムをなかったことにする」も選べない。
文明がこのシステムで成立してきたことは事実だし、エントロピーの問題もあります。
何より希望の象徴を否定してしまっては、まどかさんの主張がブレる。
「魔法少女は絶望しない」も精神を操作するので、上述の通り不可。
システム面に着目して「ソウルジェムに穢れが溜まらない」と願えばOKそうですが、これはこれで不死になってしまいそうで怖い。
(まどかさんは「魔法少女はソウルジェムを破壊されない限り無敵だ」と説明を受けてる)
(3)
しかももう一つの前提として、まどかさんは奇跡コストの踏み逃げを狙う必要があった。
でかい願いを叶えると、反動ででかい呪いがまき散らされるので、これを自己完結して防ぐ願いにしないといけない。
難しいです、これ。悩み始めると、確かに「魔女を消す」が最善手な気がしてくる。
魔女に反転した際に発するエネルギーを回収しないとヤバイ、という点については、多分、
「魔法少女化→絶望→エネルギー放出→魔女化」
だと思ってたんじゃないかな。
さやかさんの魔女化の描写を見る限り、そんな感じだし。(まどかさんはその現場には居ませんでしたが)
実際には
「魔法少女化→絶望→魔女化→エネルギー放出」
だったため、魔女化を置換したせいでエネルギー枯渇に直面してしまいましたが、まぁご愛敬。
魔獣なる謎存在がいてくれて命拾いしました。
神化してお澄まししてるその裏では、一瞬冷や汗かいてたりしたんだ。
(4)
といったわけで、苦肉の策として「魔女を消す」は理解できる。
しかしそうは言っても、問題が解決していないのも事実です。
いくら魔女化しないとは言っても、戦って玉砕とかしたくないんです。ていうか、マミさんにとっては本当に関係ないし!
思うに、限られたリソースで何とかしようとしたのが間違いだったんじゃないかな。
第2話あたりでの、マミさんに引率されてまどか&さやかさんが魔女退治に同行するシーンで、キュゥべえが言ったセリフが割と好きです。
「近くに魔法少女候補が2人いれば、いざとなったときの切り札ができるから良い」。
確かにそうだ。奇跡を2発ぶっ放せる上に、そのまま変身して戦線に参加できます。超優秀な187クリーチャー。
これの応用で、片っ端から魔法少女にしまくって、奇跡を乱射する手があっても良かったんじゃないかと。
素質を持つ娘さんがどれくらいいるのかは分かりませんが、全人類の1%としても6,000万です。
さすがに6,000万発のシルバーバレット戦術を使えば、解決できない問題はなさそうな。
それを思うと、まどかさんの奇跡は、仲間を増やすことを考えた方が良かったのかもしれない。
「3つの願い事」でよくある回答である「願い事の回数を増やしてくれ」と同じ理屈。
戦力も増えるんだし。
(5)
劇中では「魔法少女」を悲惨で孤独な存在として描いてはいますが、冷静になってみれば、別に周囲に助けを求められない事情はないのですし、そこまで酷い状況でもなさそうに見えます。
しばしば例えられているように、「魔法少女」を通常の「仕事」に置き換えてみれば分かる。
「魔法少女しか知らない世界がある」といったところで、それは通常の仕事にもつきものです。
生死を賭けるのも、一度入ったら抜け出しづらいのも、生存のために続けなければいけないのも、特段に特殊ではない。
しかも魔法少女の数が増えれば増えるほど、これらの問題は軽減する。
人でなくなるのは確かに恐怖とはいえ、なってしまえばそういうものかなとも思う。
何となく、老化・成長や生殖が出来なくなりそうにも思えますが、それこそ誰かの「奇跡」を使って解決すればいい。
当事者であるまどかさんたちが、そういった発想に行きつけなかったのは、かなり残念です。
ほむらさんも、魔法少女能力だけではなく、人類の科学力で戦う発想に行きついたのだから、もう一歩進んでも良かったろうに。
(ほむらさんの場合、自力で解決することに意味があったのでしょうけれど)
(6)
哀しいことに、そんな閉じた世界での解決に走ってしまったまどかさん達を、周囲の大人はカバーできなかった。
まどか母が「子供の内に間違い方を覚えておけ」と言っていましたが、これが間違いだった。
既に中学生は子供じゃなかった。間違えたら、致命的なことになってしまった。
現実世界においても、中学生の頃にやらかした選択ミスは、後々の人生に洒落にならない影響を与えます。
「制服が可愛いから」とか「部活が強いから」とか、後になってしまえば実にしょうもない理由で進学先を決め、後悔した人も少なくないはず。
冗談抜きで、人生変わる。
まどかさんが出した「奇跡」は、確かに他に選択の余地がなさそうではあるし、犠牲となることを選んだのは尊いのだけれど、周囲にアドバイスを求めず、周囲の力にも頼らなかったというのは、違う意味で哀しい行動だったように思う。
新作となる第3作では、そのあたりの解決があったら、個人的にはとても嬉しいです。
閉じた世界での苦悩や「世界と自分たちは違う」というのは、「これまでの魔法少女物の集大成」としては理解できる。そこから一歩進んだ2010年代の解決にも期待してみたいです。
【蛇足】
お気に入りはマミさんでした。良い黄色です。
例の「マミる」シーンですが。
あれを見たまどかさんは、かなりの勢いで心を折られてましたが、魔法少女としては実はレアケースだったんじゃないかと思う。
インキュベーターの立場からすれば、魔女にもならずに退場するなんてのが頻繁に起きるようでは、システムとして成立しません。
説明によれば「ソウルジェムを砕かれない限り無敵」です。
ですが、おそらく多くの場合、魔法少女になった新人さんは、初戦の魔女を倒せないと思われます。
戦い方を知らないんだから。
そのため一方的に魔女にやられるものの、ソウルジェム効果により肉体は蘇生。
でもやっぱり勝てないので、蘇生と瀕死を繰り返しつつ、魔力が尽きるか絶望するかで魔女化。
多分これが最も多いケースだと思う。
まぁ何が言いたいかといえば、それにも関らず、安易にバタバタ倒れまくってるマミさんは、とてもお茶目さんだと思いました。
願った奇跡が「自身の蘇生」だったと思われるので、回復力は人一倍だったはず。
それにも関らず、あのマミり具合。大変にヘッポコで、良いと思うのです。