■感想:映画トロピカル~ジュ!プリキュア 雪のプリンセスと奇跡の指輪
(「トロピカル~ジュ!プリキュア」第33話CMより)
いつものようにヤラネーダを撃破し、やる気を取り戻していたら、シャンティア王国の戴冠式に招待されました。
だけどそこのシャロン王女には思惑があって…。
【詳しい事情はわかりません】
今作の目玉のひとつ、ハートキャッチの参戦。
ハトプリのテーマは「通りすがりには詳しい事情はわからない。だけどお手伝いならできる」。本質的な解決はできなくても、立ち上がるきっかけは与えられます。
これが見事に玉砕した。ハトプリ理論が機能しない状況がばっちりがっちり用意された。
ローラへのアドバイスが滑ったのは、「正体が人魚」を知らなかったからでしょう。ローラのファッションセンスが壊滅しているとは思いがたいので、おそらく海の世界ではあれがフォーマルと思われます。水中ですからヒラヒラしたリボン系より、固い小物が映えるのかもしれない。
対シャロン戦はもはや惨いとしか。事情を知らない、知っても解決できないハトプリでは王女を救うルートがありません。
【今一番大事なこと】
トロプリも似たテーマを抱えています。
今一番大事なことが将来どんな役に立つかはわからない。でも何かの役には立つ。
変身バンクは猛烈に熱いです。
この敵に、ハトプリは勝てない。では似て異なるトロプリは?
何せ長大なフルバンク。音楽も壮烈に鳴り響く。勝てるのかトロプリは。勝てるとしたらどうやって?ブロ子はあてにならないから、頼むよトロプリさん…!
焦らしに焦らされ、高まる期待と恐怖。バンク演出そのものが良いこともあって涙で滲む。
そして案の定というか、格好よく駆けつけたハトプリは崩壊。弱いわけではない。変身バンクも音楽もやたらにすごい。だけどテーマ的に無理だ。
「お手伝いならできる」と「今一番大事なこと」の衝突。
よくある「○○VS✕✕」は「戦ってないじゃないか」と言いたくなるものも多いですが、これは正しく「ハトプリVSトロプリ」。技が当たったとかそういう意味でなく、この局面のこの立ち位置ではテーマがぶつかってしまってる。
【ハトプリとトロプリ】
「今一番大事なことをやれば、気持ちが伝わる」のがトロプリ。
「気持ちが伝われば、お手伝い(今一番大事なこと)ができる」のがハトプリ。
まだ上手く言語化できないけど、ざっくり言えばこんな感じだろうか。
解決の突破口はローラと王女の交流だった。
ローラはこれを見越して接触していたのではない。王女も素で友情を感じています。両者ともに打算はない。今一番大事なことをやった。その結果、気持ちは伝わった。
それができる存在がいるなら、ハトプリは息を吹き返します。
映画「花の都」におけるオリヴィエ=ローラの立ち位置です。花咲さんはローラと王女の関係性なんて知りません。が、よく分からんが何かがあるらしい。だから手伝った。
ラストシーンで花咲さんがローラにハンカチを差し出すシーンは、オールドファンには感涙もの。かつてパリ市民から差しのべられた手を、今度は花咲さんが。
トロプリチームをパワーアップさせる流れも、パリの戦いを彷彿させます。
でかいトカゲと戦う謎の娘さんに、事情が全く分からぬままパリ市民はお手伝いをしてくれた。
雪の王国に現れた謎のトカゲ(奇しくも同じ爬虫類系)との戦いに、戦局は全く分からぬまま花咲さんは力を送った。
お互いにお互いの不足を補う素晴らしい共闘。前回のヒープリ・プリキュア5もそうでしたが、先達が勝てない状況を覆すのが熱すぎる。
かといって先輩が貶められているのでもない。今回もトロプリだけでは(テーマ的にも)勝てなかった。
ハトプリがかつての戦いを切り抜けられたのは、皮肉にも敵方のデザトリアン療法により、心の声が公開されていたからなのかも。思い返せば来海さんも「第8話」で「言わなきゃ分からない」と言っています。ハトプリ単体では欠落している、この「言う」をトロプリが補ってる。
逆にトロプリ側は、「今一番大事なこと」には明確な算段がありませんから、外からのサポートがいる。本編でいえば顧問の先生や女王様でしょうか。詳しい事情は分からなくてもいい、むしろだからこその補佐がありがたい。
本当に物凄いですね、これ。タイムトラベルして「これがハトプリの秋映画だ」と言われても、成立してしまいそう。それでいてしっかりトロプリ映画になってる。「凄い凄い素晴らしい」としか言いようがないです。
【他、感想】
●「心の氷を溶かそう」と言われたトロプリさん。おてんとサマーストライクからのフラミンゴスマッシュに火の鳥召還と、火属性攻撃の連打。素直です。でもそういうことじゃない。
●オーケストラさん活躍!捌く捌く鉄拳!たぶんサマーさん達、これ誰だろうと眺めてたと思う。その人が何なのか、詳しい事情は誰も知らない。
●王女様は夏海さんらがプリキュアだと知った上で招待しています。「お菓子の国」等と違い、不意打ちや罠もしかけない。真っ向から勝つ気でいる。怖い。
●素直に考えるなら、あとまわしの魔女と伝説のプリキュア様も、今回のシャロン王女とローラのような関係なんだろうか。
●ゆりさんによれば1万2000年前(?)の彗星衝突が原因だそうです。妙に具体的な数字が突然でてきた。
軽く検索してみましたが、確かに1万2000年ほど前に有名な衝突があったらしく、寒冷を招いたようです。
ただ何でそれだといきなり断定したんだろう?一般的な感覚だと、最初に連想するのは恐竜絶滅の6600万年前の奴のような。
砂漠の使途絡みだとかだと、サラマンダー男爵より前に飛来してきていた?何にせよ、具体的な数字を出す物語上の理由になりません。
ハトプリお馴染みの「詳しい事情はわからない」ネタなんだろうか。
●薫子さんがイベントに参加していたのは、「希望ヶ花市は近い」のか「(前述の)砂漠の使途絡みで同行していた」のか。もうとにかく「詳しい事情はわからない」ので、この人らの背景を考えても仕方ない…。
●同じく近くにいたらしい花寺さんは、ご招待されなかったらしい。
仮にヒープリが参戦していたら、どうなったんだろう?
テーマ的には、王女の事情が何だろうとこちらが譲歩する理屈にはなりませんから、粉砕しにかかったと思う。
ハトプリ&ヒープリからの有無を言わさぬ波状攻撃。ローラは耐えられたんだろうか。。
●水中戦を挑むローラが素晴らしい。冒頭の戦闘もシャンティアでの初戦もハートキャッチ参戦後も、水中からの攻撃をメインに据えています。水中呼吸可能な生物に、水の下から回り込まれたり攻撃されたりって、かなりいやらしい攻撃だと思う。
マリンさんが水中戦に付き合ってるのも頼もしいです。今ならDX3の海上ステージも怖くない。
●例によって時系列が分からない。
おそらくはトロプリ最終回前ですが、ハトプリ最終回の後かどうかは不明。ハトプリ秋映画の後かも不明。
ブロ子たち自身はスーパーシルエットを発動していないので、下手をすればハートキャッチミラージュ入手前の可能性すらある。
逆に思いっきり未来かもしれない。花咲さんらが制服を着用している映像もありましたが、趣味で着ているだけかもしれないので「この花咲つぼみは実は32歳です」もなくはない。プリキュア世界の時間の推移は、もう考えてもどうしようもないのかも。
●鏡にシャロン王女の姿が映るのは、ハートキャッチの最終戦でデューンがミラージュに映るのと同じ。
●ハトプリの対だと思うと、本編の今の流れも分かるかも。
みのりん先輩は一番大事な創作をしたら、自分を伝えることになった。
涼村さんの一番大事な「可愛いを伝える」も、「自分が何を可愛いと思っているか」ですから自分を伝えることになる。
あすか先輩もプリキュアとしての戦いを通じ、生徒会長に何かが伝わりかけています。
ローラの「足が生えた」と同様の「それが目的ではなかったが、今一番大事なことをやったら結果的にそうなった」。
これが正解だとすると、これを人魚姫テーマに絡めてくるとか物凄い発想だなと思います。
●大活躍のくるるんも、何にも考えてない。今一番大事なこと(今一番やりたいこと)をやってたら、結果的に役立った。何かもう色々おかしい。
●スノードロップには「希望」の他に「死」の意味もあるそうです。花言葉には概ね正と負の意味があったりするので珍しくはないですが、花咲さんはこれを手掛かりに事態を把握していたのかもしれない。
ところで花咲さん、何か最後にまとめ的なことを言ってましたけど「私の時代にはスノードロップは生えていませんでした」とか言われたらどうしたんでしょうね…。
気候が激変してるので、その可能性かなりあったと思うのですけれど…。
●うちのお子様、帰り道で「お尻パンチ」「引き戸」に沸き上がってた。あと「鳥が…」と絶句し、ラストでは涙してた。楽しんでくれたようで何よりです。
ただ「短かった」と大変にご立腹でした。
来年の春映画はなし。詳しい事情は存じませんが、コロナの影響が読めないし仕方ないかなとは思うものの、とても残念です。「DX1」の頃からもう10年以上か…。恵まれすぎて感覚が麻痺してた。
映画をやらない代わりに、例えばネット配信で映画的なものとかやってくれないかしら。もちろん有料で。
そのやり方なら「小さな子供の集中力が続かないから1時間強で」の制約も外せると思うので期待しています。