穴にハマったアリスたち

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感想:劇場版 魔法少女まどかマギカ[新編]叛逆の物語

2013年10月29日 | ライブ・イベントレポート(アニメ系)
今週末は映画を見過ぎて、何やら色々混乱中。

■劇場版 魔法少女まどかマギカ[新編]叛逆の物語

【あらすじ】

まどかさんが謎の神的存在として宇宙の彼方に消えた、その後日。
一人取り残された暁美さんは、ぼそぼそと魔法少女を続けていました。
しかし募るのは、まどかさんへの思慕ばかり。

やがて絶望の淵に落ちた暁美さんは、不慮の事故も相まって立派な魔女へと変貌なされました。
神的まどかさんの救済も届かず、あわやこのままお一人で絶望を食む食むする日々を送るかと思われましたが。
そこはさすがの神。まどかさんはきっちり助けにやってきてくれ、暁美さんは無事に彼女と再会することができました。

そして、その隙を逃さず、暁美さんは全力でまどかさんを拉致なされた。

神的な謎生き物と化したまどかさんを捕縛した暁美さんは、悪魔的な謎生物へと変貌。
彼女を動かすのは、もはや希望でも絶望でもない。
愛を原動力に動く彼女は、果たして間違ってるのか。それとも…。

【前編・後編】

散々言われつくしているように、前作はゼロ年代の総括のようなお話だったように思う。

「私が何かの力に目覚め、それで世界を救う」という妄想は、今となっては結局は妄想でしかなかった。
現実には、個人が超パワーを発揮しても世界は変わらず、そもそも明確な「敵」すらも存在しておらず、ただただ漠然とした不安と問題に満ちている。
人生を左右するような致命的な岐路はそこかしこに溢れていて、そこでの選択は取り消せない。残念ながら。

安易な願いで魔法少女を選択してしまった人々には、安易な理由で進学や就職先を選んでしまった人たちの姿が被ります。
「スポーツが強いから」「制服が可愛いから」「自分にもできそうな仕事だったから」etcetc。
もしもあの時、もっとよく考えていれば、全然違う生活があったかもしれないのに。

ただ上記も含め、実際のところ、劇中で暁美さんらがおっしゃる「魔法少女の絶望」は、さしたる問題ではありません。
命がけの仕事は他にも色々あるし、異常な体はむしろメリットともいえる。どうしても辛かったら自害する手段はあるんだし。
一般社会から孤立して孤独云々に関しては、他言を禁止されてはいないのだから、普通に周囲に話せばいい。

結局、「周囲に話して皆で協力する」ことさえしていれば、この物語はほとんど終わってる。
どうして最初の段階で、家族や友人に相談しないのか。
迫害される?信頼されない?そんなわけないでしょう。
そんな狭量な人たちには見えないし、再現も観測もできる「魔法」を疑う理由はない。
どうしても不安なら、願う奇跡を「魔法少女を認知してもらう」にでもすれば良かった。

とはいえ「それが正しかったと分かってはいても、それでもやっぱり『私』を信じたかった」という気持ちはある。
確かに選択を間違えた自業自得なのかもしれないけれど、それでも私たちは苦労したんだ。
だから、あくまで個の自力による救済を実行したまどかさんからは、一矢報いたようなそんなカタルシスを感じます。
閉じた世界を閉じたままで解決して見せた。
最善手ではないのだけど、やっぱりゼロ年代にも矜持ってもんがある。

【新編その1】

さてそんなわけで一矢報いたはいいんだけど、それでもやっぱり人生は続く。

大変に残念ながら、世の中には不幸や絶望が転がっています。
そんなものなくしてしまいたいのだけど、実際に存在するんだから仕方がない。
同様に、過去に自分がやっちまった失敗選択の事実は、どうやろうとも消えない。

そうなると、もう「それはそれ」として折り合いをつけるしかありません。

やたらに悲愴感満載だった神まどかさんも、やってみたら案外とのほほんとされている。
「未来永劫ひとりぼっち」というのが、神化のデメリットだと思われてたのに、普通に懐かしい人たちと再会できるみたいですし。
確かに元の生活とは大きく違うのでしょうけれど、これはこれでやっていけるんじゃなかろうか。

だけど暁美さんはそれを良しとしなかった。
まどかさんと会いたかったはずなのに、迎えに来てくれた彼女を捕縛するとか、もはや意味が分かりません。
となると、暁美さんが真に望んでいたのは、「鹿目まどか」その人ではなく、「鹿目まどか+日常」だったと思われます。

「まどか」さんでよく使われたブラック企業の例で考えてみる。

『正社員になって結婚してマイホームとマイカーを持った平凡な生活』が夢だった。
でもブラック企業に入社してしまい、そんな昭和型の幸せは実現できなかった。
ただ、それは本当に不幸なのか?

子供の頃に夢見た生活とは違ってしまっても、じゃあすなわち不幸なのか?
そんなことはないでしょう。
ブラック企業に入ってボロボロになり、退社して別の職場で非正規勤務するようになった…確かに「完璧なる幸せ」ではないのかもしれないけれど、不幸と決めつける理由はない。
あの辛かったブラックの経験は、それはそれとして何かの糧にはなる。
経験しないならしない方がもちろんいいのだけど、経験しちゃった以上は、それはそれとして役立てた方がマシです。

そもそも平凡だと思っていた昭和型の幸せとやらは、昭和の時代においても大多数がそうだったわけじゃない。
これは「魔法少女モノは、そもそも皆ハッピーで平和なものだったか?」にも通じます。
例えば元祖の一つである「セーラームーン」の第5部は、終わらない人生と無限ループに絶望した未来のセーラームーンが、死を求めてやってくる話。
そもそもの問題として、思い描いていた「幸せ」は、「平凡な当たり前のもの」ではないのです。
だったら、そんなものに拘る必要はないじゃないか。

もはや魔女能力を武器にしている、さやかさんやお菓子娘には、そんな割り切った頼もしさを感じます。
確かに絶望した。魔法少女を通り越して、何だかよく分からん魔女になった。
でもそれはそれで良いじゃない。
わざわざ求めて手に入れるものでもないけれど、現実問題として絶望して魔女化したんだから、それを有効利用しよう。
今や時代は、そんなフェーズに突入している。

【新編その2】

一方、暁美さんの考えは違った。

絶望パワーを利用するところまでは同じだったけれど(後に「愛」とおっしゃってますが、餌に使ったのは「絶望」の方)、それを使って「平凡な当たり前のもの」(と自分が思い込んでいるもの)を実現しようとした。
ブラック企業の例でいえば、自分の鬱認定をダシに裁判でも起こし、企業を撃破して改革したのちに、既に辞めて第二の人生を始めていた元同僚を強制的に呼びもどしたようなものでしょうか。
(無理がある気もするけど、ニュアンスはあってると信じたい)

で。暁美さんの行動が間違ってるのかどうかは、かなり難しい。
何せ「誰も困っていない」。
円環システムそのものには支障がない(と暁美さんはおっしゃってる)のだから、非難される筋合いはありません。

昭和型の幸せは破綻した。だから新しい2010年代の生活にシフトした。
でも昭和型に問題があったわけではない。単に実現が難しくなっただけ。
だから、実現できるならそれはそれでもいいんです。

かつて経験した絶望の力を、新しい生活を構築することに使うか。それとも以前の生活を取り戻すために使うか。
どちらが正しいとも何とも言えない。
特に動機が「愛」となると、もはや善悪を超越してしまう。

強いて言えば、暁美さんは徹底的に対話を拒んでいるのが気になります。
マミさんやさやかさんが、何度も武器を叩きこんで時間停止を阻止するのが極めて印象的でした。
そして執拗なまでにそれを振り払って、時間を止め続ける暁美さんも。

まどかさんは事情を全く関知できないまま、あの生活を強制されてしまってる。
無理にブラック企業の例えに戻ると、「共働きで苦しんだ妻を、本人の意向無視して専業主婦として隔離した」ようなものでしょうか。
これを幸せと呼ぶかどうか。
なんだかんだで新しい職場には適応していたのに。でもやっぱり外が辛いのも事実なわけで…。

劇中ではここで物語は終わり。

現実の私たちが、まだ答えを経験していないので、ここから先はどうなるか不明の領域です。
前作がゼロ年代の総括ならば、今作は2010年代(というか震災以後というべきか)の問題提起のように感じました。
是非ともこの「答え」を、10年後くらいの第4作で見てみたい。


(左画像)
劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語 (1) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)

(右画像)
魔法少女まどか☆マギカ 巴マミ (1/8スケール PVC塗装済み完成品)


【プリキュアさん】

同日公開の「ドキドキプリキュア」にも、「辛い過去を変える」や「愛」の要素がありましたが、視点の根っこがやや違うかなと思った。

「プリキュア」さんの場合、絶望は不可避で、どう足掻いても必ずやってくる。
「まどか」さんの場合、判断ミスで実行できなかっただけで、絶望を回避する手段はある。

人生に例えるなら、前者が「死」で、後者が「就職」や「進学」。
どちらの方が、より深刻で厄介な問題なのかは、状況にもよるので何とも言えない。
(不可避と言う意味では前者だけど、なまじ努力の余地があるだけに後者の方がきついとも言える)

今年のテーマがフィードバックリンクであることからも分かるように、「プリキュア」さんでは他者との絆がキーです。
一方の「まどか」さんは、依然として「個」に依っている。
方向性の問題なので、どちらが良い悪いという話ではないですが。

「プリキュア」さんでは、悲しい過去があった後に訪れた出会いや出来事が、次の世代への幸せをもたらしてる。
その点、「まどか」さんでは新しい世界・時代での出会いが、特にない。
もしも「プリキュア」文法で演出するなら、多分、暁美さんの絶望を破るのは、新しい世界の住人である魔獣だと思う。

暁美さん:
 「この世界にはまどかはいない」
 「でも魔獣と出会えた。私は幸せだ」

みたいな感じで。私は魔獣に何を期待してるんだ。

【新編その3】

上記の「他者との絆」ですが、ちょいと引っかかったのが、「学校の先生」の存在。
彼女は魔法少女でも、その家族・友人でもないのに、なぜか呼びこまれてあの世界にいます。
「まどかとの出会いの場を作った、まさにその人」だからかな…。

そうだとすると、「まどかと出会えたのは他者の存在があったから」を示す強力なキーパーソンです。
あの先生が何かの弾みに覚醒し、それっぽいお説教と訓戒を垂れて暁美さんを引き戻したら、凄まじく熱いですね。
もはや魔法少女とか魔女とか、究極とか悪魔とか、そんなん関係ない。アラサーなめんな。

同様に、さりげなく呼びこまれてたクラスメイトの皆さまも。
暁美さんは、心底本気で完璧に孤立していたのではなく、何だかんだで魔法少女以外とも接点はあったようです。
途中に出てきた「顔のない人たち」は、孤独で不気味に見えたけれど、考えてみればクラスメイト全員とか、街行く人とかの顔をそんなに認識してるかというと、かなり微妙。
案外人生はそんなものかもしれない。
まさかの「民間人による介入」による決着の可能性も、一応は残されてるのか。

【マミさんのテーマ】

黄色い魔法少女派としては、強いマミさんを見れたのは良かったです。
あの謎のガンアクション、後から振り返ってみれば全くの無意味な戦いってあたりが、特に良いです。
撃つ前に会話をしようよ、会話を…。

マミさんが、暁美さんにせっせとリボンを巻きつけてた理由が初めは分からなかったんですが、時間停止対策だったんですよね。
ではそうすると、本体のマミさんはどうやってたんだろう?普通に考えれば時間停止しちゃうと思うのですが。
偽マミさんから本体にもリボンで繋がってたんでしょうか。よく絡まなかったものだ。

それに少なくとも暁美さんは、周囲の事なんて何も考えずにガンガン発砲しています。
偽マミさんを操っていたマミさんも、当然ながら流れ弾を浴びていたはずで…。
中心にいる暁美さんらは、初動をかわせば後の行方は無視できますが、離れたところにいる本物マミさんは、時間停止が解除されてからが本番です。
なんかもう物凄い勢いで展開されていく弾丸(時間停止)を眺めながら、そろそろ逃げ場がなくなってきたと冷や汗かいてたんじゃなかろうか、あの人。
そして時は動き出す。銃口をつきつけあったまま格好良く決めてる暁美さん+偽マミさんの後ろで、必死に弾丸を避けまくってる本物マミさん。お茶目で惚れる。

あと、貰った入場特典の色紙は、ばっちりマミさんでした。もう何も恐くない。
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映画「ドキドキ!プリキュア マナ結婚!!?未来につなぐ希望のドレス!」

2013年10月26日 | プリキュア映画シリーズ
【今年のプリキュアさん】

例年通りTジョイ大泉さんで、最速上映を見てきました。
本日はちょうど「まどか」さんの公開日。いつも以上に人がごった返す様子に、普段以上にお祭り感を感じました。
私たちは、ひとりじゃない。

■映画「ドキドキ!プリキュア マナ結婚!!?未来につなぐ希望のドレス!」

ある日のこと。
相田さんはお母様の結婚式のドレスと対面しました。
聞けば、お婆様も同じドレスを着用されたとか。
相田さんも夢を膨らませます。
親子三代続いたこのドレス、自分も結婚式で着てみたい…。

あくる日。
そのことを学校で話したりして茶化されたりしつつ。
いつものプリキュアメンバーで、思い出話に花を咲かせます。

が。

話題は自然とお婆様や、以前に飼っていた犬のことに。
お祖母さんは随分と前に他界され、飼っていた犬ともお別れしたそうです。
そこで相田さんはおっしゃった。

相田さん:
 「昔の話じゃなくて、未来の話をしよう」

微妙に話しづらそうな相田さんの心情を察したか、一同は取り留めもない未来のお話へ。
まぁそんなに変なことじゃない。
ちょっとばかり、相田さんの話題の転換の仕方が気にはかかるけれど。

だけどその夜。

街の片隅の閉館した映画館を起点にして。
不意にやってきた謎の集団が、街を制圧しつつ、相田邸へ。
一団を率いる謎の男・マシューさんのクラリネットの音色に合わせ、街中の古品が宙に舞う。

相田さんの件のウェディングドレスも逃亡を試みますが、彼女の「あたしが着るんだから」の声にひとまず静止。
そこまでは良かったものの、慌てて外に飛び出てみれば、マシューさんが迫ってきていた。
よく分かりませんが、彼の狙いは相田さんのご様子。だけど相田さんには全く思い当たるものがない。

マシューさん:
 「そうか。覚えていないのか」

それは憎しみか悲しみか。
相田さんの無反応ぶりに、マシューさんの戦意が高まる。
そこにちょうどやってきた菱川さんら。相田さん、早速応戦に入ります。唸れ!ラブリンク!

この様子にマシューさんはやや動揺。なんだあいつらは。
どうも「相田さん=プリキュア」という認識はなかったようです。
なんてこった。無垢な一般人を襲撃してきたのか。たまたま相田さんがプリキュアで本当に良かった。

応戦に出たプリキュアさんですが、当初こそ優勢に戦況を進めるものの、マシューさんの力の前に屈してしまいました。
助けに入ったセバスの奮闘も虚しく、プリキュアさんは敗退。
家族も街の人も謎光線に囚われ、プリキュアさんもまた「過去の思い出」とやらに捕獲されてしまいます。

捕らわれた相田さんが見たのは、数年前の世界。
そこには亡くなったはずのお婆様も、大好きだった犬もいる。
今では決して戻らない夏休みが、ずっとずっと続く世界。

現実世界ではレギュラー謎生物+ゲスト謎生物が奮闘するけれど、でも相田さんは過去の世界に埋没していく。
終わらない夏休み。楽しかったあの日々。
それが架空のまやかしであることは、相田さんも分かってる。
だけどこれはあまりに卑怯だ。
ずっと会いたかったあの人たちとの再会と、未来に訪れる別れが、相田さんの心を溶かしていく。

このまま放っておいても、相田さんは復帰不能に思われましたが、マシューさんは油断しない。

マシューさん:
 「あいつらはプリキュアだ」
 「万が一がある。とどめをさそう」

極めて賢明です。奴ら、理不尽極まるイカサマで復活してくるし。

そして実際、四葉さんや菱川さんは夢の中で意識を取り戻しました。
この世界は幸せだ。だけど相田さんがそこにはいない。
失っていた自我を取り戻し、お二人は現実に向かい歩きだす。

一方、まこぴー。
腐ってました。
完膚なきまでに爛れて腐ってました。

思い起こされるのは、誉れ高いプリキュアの拝命式。
王女様から任命され国民一同に祝福されたあの日。
敗戦の責任を負わされることもなく、「唄ってただけ?王女様が行方不明だったのに唄ってただけ?それ、何の役に立ったの?え、聞こえないんだけど?どう役に立ったの?はっきり答えてよ」とか囲まれて糾弾されることもなかった、あの日。
胸が震えます。もういっそこのまま夢の世界に永住したい…。

しかしながらその夢は、乱入してきたダビィに破られます。
ああいいわよ。戦えばいいんでしょ、戦えば!
若干、逆ギレの様子を漂わせながらも、まこぴー奮起。

だけど菱川さん&四葉さん、および、まこぴーと脈絡なく乱入してきたエースさん。
襲ってきた敵は撃破したものの、力尽き、倒れてしまいました。
結局のところ、相田さんが立ち上がらないことには始まらない。

その相田さん。
大切な人たちの死を突き付けられ、更に深く、思い出の中に埋没。
未来には悲しいことが待っている。努力や根性で回避できるものじゃない。
それは必ずやってくる悲しい事実。
だったら、いっそ、このままでも…。

シャルル:
 「そっちに行っちゃ駄目シャル!!」

謎生物の悲鳴が響く。
苦しい未来よりも、楽しかった過去。
失う事を恐れた相田さんの物語は、ここで終わりを迎えた。

そんな相田さんを呼びとめたのは、思い出の中のお祖母さんその人でした。

お祖母さん:
 「耳を澄まして御覧」
 「何が聞こえる?」

言われたとおりにしてみれば、耳に届くのは友の呼ぶ声。
思い出は美しい。だけど、ここには彼女たちはいない。
過去にとどまる限り、未来には進めない。

前を向きだした相田さんを、お祖母さんも優しく見送ってくれる。
いつかどこかでまた会える。
この「過去」は、相田さんがい続ける場所じゃない。

戻ってきた相田さんを見て、マシューさんは狂乱。
どうしてあの楽しい日々を捨てるのか。時間が止まってしまった者を置いて、先に進んで行ってしまうのか。
彼の正体は、あの思い出の日々の犬。
映画冒頭で、相田さんが「そんなことよりも」と話を遮った、あの犬でした。
置いていかれる者にとっては、どんな綺麗事も悲しく響く。

その犬の悲しい叫びは、相田さんの身を呈した行動により止められました。
流血というかつてないほどの大怪我を負いながらの語りかけに、マシューさん改めマシュマロさんも正気に。
過去には戻れない。確かに切り捨ててしまうものもある。だけど私たちは前に進むしかないんだ。

これを見て、マシュマロさんをそそのかしていた謎の黒幕ことクラリネットは未来への侵攻を開始。
ぶっちゃけクラリネットが黒幕だとか、それで何でいきなり未来を狙うのかは分かりませんが、まぁそういうものなんだろう。
直接「目の前にいるプリキュアを倒そう」とか考えなかったあたり、クラリネットさんも賢明というか、プリキュアさんの恐怖が浸透しているというか。

さて敵は未来に旅立った。それは分かったが、追撃手段がない。
そこで円さんはおっしゃった。なんだか良く分からないけれど、ミラクルライトを振れば奇跡が起こるらしい。
よしじゃあ振れ。力の限りに。

毎年毎年、ミラクルライトの演出には唸ってばかりですが今年もまた凄い。
「未来に送るため」ではあるけれど、今の相田さんらは未来において忘れられる側に回ります。
だって未来では、現在は過去なんだから。
実際、未来世界で出会った成長した相田さんらは、プリキュア能力を失っているように思えます。
謎生物たちは存在するようですが、クラリネットさんの襲撃を察知してる様子は全く見られません。

アイちゃんによって支給されたのも、未来を創る存在が赤ちゃんであることを思うと、ちゃんと筋は通ってます。
映画館でライトを振るのが基本的にお子様であることも効いてる。

大好きだったお祖母さん達と別れたように、中学時代の相田さんらは未来には存在できない。
そのまた未来の子供世代や孫世代になったら、相田さんが別れを告げられる側になる。
未来を守る行為は、いわばお祖母さんが行った「おまじないを伝える」ことと同等の行為。

覚悟を元に未来に乗り込んだ一行は、相田さんの結婚式をバックに最後の決戦へ。
その過程で、マシュマロさんは再び倒れ、天に召されてしまいます。
二度目の別れ。とてもとても悲しいことだけど、でもいつまでも過去とともにはいられない。
本当に、とても悲しいことなのだけれど。
そこまでしてどうして未来に進まなければいけないのかと、本当に心の底から嘆きたくはなるけれど。

でも前に進むしかない。

クラリネット:
 「私は蘇る。忘れられたものがいる限り」
相田さん:
 「でも」
 「あたしは」
 「負けない」

大切な人たちから注がれた愛は、私たちの中に残っている。
その愛を受け止めて、今度は次の世代に伝えていこう。
愛とウェディングドレスを残して旅立っていった、ゲスト謎生物やマシュマロくんのように。
私たちはひとりじゃない。
たとえ別れてしまっても。自分が別れを告げられる側になったとしても。


(左画像)
映画 ドキドキ!プリキュア マナ結婚!!?未来につなぐ希望のドレス テーマソング

(右画像)
映画 ドキドキ!プリキュア マナ結婚!!?未来につなぐ希望のドレス オリジナル・サウンドトラック


【今年のプリキュアさん】

一言でいえば「幸福の王子 VS ドキドキプリキュア」。

楽しい思い出を提供して、後にボロボロになった王子を、街の人たちは切り捨てた。
それと同じことを、相田さんも私たちもやっている。
その「幸福の王子」からの復讐を描いた物語。

言うまでもなく、本編では相田さんが「幸福の王子」に喩えられています。
映画ではちょうど逆の立ち位置なのが面白い。
襲ってきたのはマシュマロさんでしたが、同じように、相田さんもいずれは(あんなに努力して貢献したにも関わらず)忘れられる日がやってくる。報われない「幸福の王子」。

本編ではちょうど、愛を受け取った人たちからの承認のフィードバックが描かれてます。
それを受けて、以前に感想で「幸福の王子から受け取った金箔で、豊かになった街の人たちが、再び王子像を再建する未来があっても良かったのかも」と書きましたが、映画を見た感じだと、この考えは間違ってそう。
受けとった愛を返すべきは、過去の王子ではなく、未来の子供たちだ。
ボロボロの王子像を、ただの感慨で無理に維持することよりも、未来に投資して次の世代へとつなげていく方が、多分王子の意思にも沿っている。
それなら結末が焼却炉行きだったとしても、あの物語はバッドエンドじゃない。

【今年のプリキュアさん2】

今年のプリキュアさんは、「ディケイド」よろしく各シリーズのエッセンスがあるかと思ってました。
その流れであえて言えば、今回の映画は「ディケイド VS ドキドキさん」でにあった。

・お祖母さん&犬:MH
・永遠に止まった未来:SS
・悪夢への埋没と、会いに行く人々:GoGo
・忘れられた思い出が敵:フレッシュ
・大切な過去が後悔の檻に:スイート
・メルヘンを継承する:スマイル

ハートキャッチさんがよく分からないですが、「目的や正体が不明のクラリネット」でしょうか。
詳しい事情は全く分からない。でも、せめてそうすれば救われるんじゃないか。
クラリネットさんの問題は、何も解決してないのだけど、でも確かに何かは変わったんだと思いたい。

【今年のプリキュアさん3】

二段変身は「エンゲージモード」。
何とのエンゲージなのか。
そのまんまで考えると、未来とのエンゲージかなと思った。

結婚は一人の相手を選ぶ行為。逆にいえば、それ以外の可能性を切り捨てる行為です。
未来を選んだ相田さんは、過去と別れることを選んだ。とても悲しくて寂しいけれど。
過去の象徴たるクラリネットさんに対し、未来とエンゲージした相田さんが対峙するシーンは、なかなか胸にくるものがありました。

【今年のプリキュアさん4】

意地でも岡田さんを出さないのは、敵が「忘れられた者たち」なのも相まって、もはや様式美の域。

ジコチューの皆さまはOPに友情出演。
ゴリラも出るよ!

【来年のプリキュアさん】

もはや恒例となった次回作。
来年春に「NS」の最終章が放映されるようです。
サブタイトルは「永遠のともだち」。ついに来たか。

再来年は更なる新シリーズがあるのか、それともこれが正真正銘の最終章かは分かりませんが、心してみたいです。

【今年の大泉学園】

今回、上映の前に「カウントダウンを行う」とのアナウンスが。
何かと思ったら、「盗撮防止のため」だそうで。
流出した場合に出所を特定するため?不要な音声を紛れ込ませることで価値を低下させる(そして結果的に流出を防ぐ)ため?
よく分かりませんが、その発想は全くなかったので、ちょっとした発見でした。
そうか、カウントダウンには、そういう意味もあるのか。

あと例年通り、Tジョイ大泉さんでは特設展が開催されてます。
同日、「まどか」さんも深夜上映を行っていましたが、そこはさすがに東映アニメ様のお膝元。
館内BGM等もプリキュアさんで、かなり力を入れてくれてました。次回にも期待しています。
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ドキドキ!プリキュア 第37話「なおせ好きキライ!ニンジンVS亜久里!」

2013年10月20日 | ドキドキ!プリキュア感想
【今秋のプリキュアさん】



猛烈に面白そう。
出てくるシーンやギミックの全てに、ことごとく心躍ります。
さすが映画祭に参加したのは伊達じゃない。

ちらちら見える、忠太郎さんや「おもちゃの国」を連想するカットは、集大成的なものを狙ってるのかしら。

■ドキドキ!プリキュア 第37話「なおせ好きキライ!ニンジンVS亜久里!」

アイちゃんの離乳食時代が始まりました。
ここから長いミルク禁断症状との戦いが始まり、戻り授乳期を経て、強制的に乳離れをさせられ、そのことが一抹の不満として蓄積し、時を経て胸への性的欲求として昇華される、そんな大事な過渡期です。
人類の背負う原罪の一片に、今、乳幼児が一歩踏み出した。

だけどアイちゃんは懸命に乳離れを拒みます。ニンジンなんて食べたくない!
そこですかさず、円さんがご自分用のニンジンを、アイちゃんの口にねじりこみました。
好き嫌いはダメですよ!私のニンジンも差し上げましょう!



ドキドキさん:
 「もしかして」
 「お嫌いなんですか。ニンジン」

バレました。円さんの背筋に冷や汗が伝う。

円さんはニンジン嫌い。なぜかお嫌いらしい。
ニンジンは苦みや辛みもなく、甘くてスイーツにも使われる食物です。
ですが円さん的には、その半端な甘さがむしろダメなようで。

円さんのニンジン嫌いを克服すべく、相田さんらは奮闘します。
栄養素の解説やら親密度アップやら。
思うに、これらの理屈で説得して、好き嫌いが治ることってあるんだろうか。

そもそも何故ニンジンを食べなければいけないのか。栄養や味の問題ならば、別に他の食物でも構いません。
好き嫌いを否定するのなら、もはや食の個性を否定するに等しい。
極論を言ってしまえば、「栄養価が高いからイナゴを食べよう」と言われても、好んで食べられる人は少数です。

現実的に考えると、「料理として出されたときに失礼をしないように」が最大の理由だと思う。
例えば、御招待されたお家でニンジン料理をいただいたときに、わざわざ除けて食べたら失礼極まりない。
例えば、皆で外食する際に、一般的な食材を食べられないと入る店に制限を食らい、周囲に迷惑をかける。
アレルギーは別として、好き嫌いの範疇ならば、「好きにならないまでも、嫌な顔をせずに食べることはできる」くらいにはなってないと、交際関係に影響を及ぼします。
というわけで、人間関係を守るために、好き嫌いは軽減しておいた方がいい。

…のですが、教育の観点では微妙に言いづらかったのか、相田さんらはコスト面から攻めることにしました。

生産の現場を紹介し、いかなるコストをかけられてこのニンジンが出来上がっているかを見せることで、価値の上乗せを図ったのです。
同時に、自身にも作業を体験させることで愛着も持たせる作戦。
食べ物の味そのものではなく、付加価値から攻めるのは間違ってないと思う。

その甲斐あってか、徐々にニンジンに心を許し始める円さん。
しかしながら、ここに来てニンジン側が反旗を翻しました。
そう、私たちは忘れていたのです。食べられるニンジンにとっては、美味かろうが不味かろうが些細な問題であることを。



ジコチュー:
 「食べられるものなら食べてみろよ!!」

ジコチューから発せられる恐ろしい叫び。
ニンジン嫌い?どうせ俺らを食べる気のくせに、好きだの嫌いだのごちゃごちゃと。
さあ食べられるものなら食べるがいいさ!俺の父や妹を食べたようにな!さあ食え!

ブチ切れたニンジンたちの叫びに、円さんは優しく語りかける。
いいえ、私は美味しくいただきます。だってニンジンに込められた愛を知ったから。
そして手にしたニンジンをガブリ。あらいやだ、美味しいじゃないですか。

コスプレした成人女性が生ニンジンをいきなり齧りだしてガッツポーズを決める…という異常事態に毒気を抜かれたか。
ジコチューは無事に弱体化し、いつものように屠られました。
この「何だったんだこの不毛な戦いは」感は、無印時代を彷彿するようなしないような。


(左画像)
ドキドキ! プリキュア 等身大タペストリー キュアハート

(右画像)
映画 ドキドキ!プリキュア マナ結婚!!?未来につなぐ希望のドレス オリジナル・サウンドトラック

ドキドキ!プリキュア 後期エンディングテーマ(DVD付)


農場主が滑稽なまでに注いだ愛は、円さんには届かず、無為になっていた。
つまり農場主は、「幸福の王子」であり、相田さんの写し身。
そして農場主の存在を知り、愛を感じ取った円さんは、ちゃんとそれを受け取ることができた。

テーマ的なものに派生させて考えるなら、
・「幸福の王子」は自分の存在をもっと知らせるべきだった
・金箔を配る行為に、市民自身を参加させて当事者として巻き込むべきだった
といったところでしょうか。

カオスな食育回のようでいて、思いのほか直球な回だったのかもしれない。

【今週の5人目】



かつての島での戦いの際に、円さんはカレーを食しています。(第30話)
この際に「みんなで食べるご飯は美味しい」と、悠久を生きる亀と意気投合したことが、後の玩具獲得につながるわけですが。
そんな団欒の横で、せっせとニンジンをより分けていたのでしょうか、この小学生は。口では絶賛してたくせに。

【今週のプリキュアさん】

どうしてニンジンは嫌われるのか。

ピーマンは、色が緑色で固さもあるので、見た目が食べ物に見えない。
ブロッコリーやキュウリも同様。
しいたけは、食感が妙に柔らかくて抵抗を感じる。

しかしニンジンは、色は柿を始めとして他にもありますし、形状と食感は基本的に大根です。
苦みのある食べ物でもないので、嫌われるのは不思議と言えば不思議。
もしかして「アニメ等で嫌いな食べ物として演出される」ことが多いので、そうインプットされてるんだったりして。
つまり、ニンジン嫌いを治すはずの本番組のせいで、むしろニンジン嫌いを生み出してしまった説。
円さんの生みだした負のフィードバックの罪は重い。

【蛇足】
Twitterアカウント:https://twitter.com/RubyGillis

最近ブログよりも稼働率が高いです。
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ドキドキ!プリキュア 第34話、第35話

2013年10月13日 | ドキドキ!プリキュア感想
感想2週間遅れという大変に切ない状況ですので、簡潔に。

■ドキドキ!プリキュア 第34話「ママはチョーたいへん!ふきげんアイちゃん!」
■ドキドキ!プリキュア 第35話「いやいやアイちゃん!歯みがき大作戦!」

謎の赤ん坊として登場し、いつまでたっても謎のままだったアイちゃん。
あんまりにも謎すぎて、「ああコレはエースさんの変身アイテムか。ドドリーみたいな生き物」と納得しかけていたのですが…。
ここにきて、「泣くとジコチューをパワーアップ」という傍迷惑な機能が発覚しました。本当に、傍迷惑としかいいようがない。

おかげでドキドキさんの負担が急激に増えました。
迂闊に泣かれた日には、いきなり敗戦を迎えかねません。
こうして、菱川さんは命を賭けた子守に追われ。
こうして、まこぴーは命を賭けた虫歯治療に赴き。
気がつけば私生活全てが戦況に直結するような有様。

だけど。

菱川さんは気付く。
自分の幼きアバババァ時代を、母がいかに愛してくれたかを。
思わず感謝の言葉が漏れた菱川さんに、お母さんはむしろきょとん。
お母さん的にはあんまり良い母親ではなかったと後悔もあっただけに、これは嬉しい。
母が注いだ愛は、今こうして母と次世代の子に返されていく。

まこぴーも気付く。
虫歯に悶え苦しむ自分を、赤ちゃんもまた見ていることを。
治療のためにドリルに立ち向かうのは、決して自分一人のためではないのです。
だからエナメル質を削り、歯ぐきをえぐられるあの苦しみを乗り越えよう。
艱難辛苦に挑むまこぴーの勇気は、今こうして赤ん坊と王女様にも…

というか歯を磨こう。まこぴー。

まこぴーのこの体たらくは、トランプ王国の平均水準なんでしょうか。
ずば抜けた気の毒な子だとしたら、何でそんな子にプリキュア業務を任せてるのか。
これが一般的だとしたら、トランプ王国はなんで王国として成立できてるのか。。



(左画像)
ドキドキ!プリキュアボーカルアルバム1

(右画像)
ドキドキ!プリキュア キュアドール! キュアエース

ドキドキ!プリキュア 後期エンディングテーマ(DVD付)


【今週の5人目】



この一幕が妙に可愛い。
ええ、この後、変身しなければ尚よいのですが。
円さんが王女様とどういうご関係なのかは存じませんが、とりあえず老化が止まるのならどんな設定でも歓迎します。
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