話題に挙がっていたので読んでみた。
●福島県双葉町で鼻血「有意に多い」調査 「避難生活か、被ばくによって起きた」
[引用]
[引用終]
これだけ読むと、「被ばくのせいで鼻血が増えた」と見えるような気もします。
でもちょっと待とう。
こういうのは元となった論文を読まないことには話が始まりません。
というわけで、以下が発端の論文。
●水俣学の視点からみた 福島原発事故と津波による環境汚染
[引用](注:丸森町は宮城県、木之本町は滋賀県の町)
[引用終]
現物を読んでしまえば一目瞭然で、被ばくによる影響の可能性を捨ててはいないが、同時にストレスを原因として検討しています。
消化器系の病気やメンタル系も続出しているのですから、当然の判断でしょう。
もちろん、ストレスの原因は放射能汚染への不安や避難生活なのですから、「原発や放射能のせいで鼻血が出た」は嘘ではありません。
また体調を崩している人が多いのも事実なのだから、医療体制も充実させていく必要があります。
が、渦中の「美味しんぼ」などでイメージされるような「被ばくしたので鼻血」とは全く違います。
この「全く違う」にも関わらず直結させてしまう発想は、まさに風評被害につながる。
論文の筆者は専門が水俣病のようです。
その影響か、水俣病と原発問題を関連付けて「あの時も今も、国は隠蔽している」と批判する人たちも見かけましたが、両者は全く違う。
水俣病の問題は、病気と汚染物質の関連を示せているのに、その責任を国や工場が認めなかったこと。
原発問題は因果関係を証明できていませんから、まだスタートラインに立てていません。両者は全く異なるのです。
国や東電の対応には多くの問題がありますから、別にそれらを擁護する気はありません。
多くの被害者に対し、しっかりとした保障も行っていくべきです。
ですが、だからといって「被ばくが原因で鼻血が出た」にはなりません。この二つを混同するのは非常に危険だと思う。
以上、どうしても釈然としなかったので、勢いで書いてみた。
●福島県双葉町で鼻血「有意に多い」調査 「避難生活か、被ばくによって起きた」
[引用]
福島県双葉町では、鼻血などの症状の統計が有意に多かった――。岡山大などの研究グループが町の依頼で健康調査したところ、こんな結果が出ていたことが分かった。一体どうなっているのか。 (中略) その中間報告が載ったのは、熊本学園大の中地重晴教授が13年11月に学術雑誌に発表した論文だ。「水俣学の視点からみた福島原発事故と津波による環境汚染」の論文によると、住民には原発事故による健康不安が募っていることから、放射線被ばくや避難生活によるものかを確かめるために疫学による調査を行った。 (中略) 論文では、「これら症状や疾病の増加が、原子力発電所の事故による避難生活又は放射線被ばくによって起きたものだと思われる」としており、事故の影響であることを明確に認めている。今後は、双葉町が行った住民の動向調査から、被ばくとの関係をも調べる予定だとしている。 |
これだけ読むと、「被ばくのせいで鼻血が増えた」と見えるような気もします。
でもちょっと待とう。
こういうのは元となった論文を読まないことには話が始まりません。
というわけで、以下が発端の論文。
●水俣学の視点からみた 福島原発事故と津波による環境汚染
[引用](注:丸森町は宮城県、木之本町は滋賀県の町)
多重ロジスティック解析を用いた分析結果は,主観的健康観(self-rated health)に関しては,2012年11月時点で,木之本町に比べて,双葉町で有意に悪く,逆に丸森町では有意に良かった。更に,調査当時の体の具合の悪い所に関しては,様々な症状で双葉町の症状の割合が高くなっていた。双葉町,丸森町両地区で,多変量解析において木之本町よりも有意に多かったのは,体がだるい,頭痛,めまい,目のかすみ,鼻血,吐き気,疲れやすいなどの症状であり,鼻血に関して両地区とも高いオッズ比を示した(丸森町でオッズ比3.5(95%信頼区間:1.2,10.5),双葉町でオッズ比3.8(95%信頼区間:1.8,8.1))。2011年3月11日以降発症した病気も双葉町では多く,オッズ比3以上では,肥満,うつ病やその他のこころの病気,パーキンソン病,その他の神経の病気,耳の病気,急性鼻咽頭炎,胃・十二指腸の病気,その他の消化器の病気,その他の皮膚の病気,閉経期又は閉経後障害,貧血などがある。両地区とも木之本町より多かったのは,その他の消化器系の病気であった。治療中の病気も,糖尿病,目の病気,高血圧症,歯の病気,肩こりなどの病気において双葉町で多かった。更に,神経精神的症状を訴える住民が,木之本町に比べ,丸森町・双葉町において多く見られた。 今回の健康調査による結論は,震災後1年半を経過した2012年11月時点でも様々な症状が双葉町住民では多く,双葉町・丸森町ともに特に多かったのは鼻血であった。特に双葉町では様々な疾患の多発が認められ,治療中の疾患も多く医療的サポートが必要であると思われた。主観的健康観は双葉町で悪く,精神神経学的症状も双葉町・丸森町で悪くなっており,精神的なサポートも必要であると思われた。これら症状や疾病の増加が,原子力発電所の事故による避難生活又は放射線被ばくによって起きたものだと思われる。 宮城県丸森町は,福島県境に接しており,福島原発事故による放射能汚染地域であり,住民には,放射能汚染に関するストレスがかかっており,双葉町民と同様の健康障害が出てきていると考えられる。 |
現物を読んでしまえば一目瞭然で、被ばくによる影響の可能性を捨ててはいないが、同時にストレスを原因として検討しています。
消化器系の病気やメンタル系も続出しているのですから、当然の判断でしょう。
もちろん、ストレスの原因は放射能汚染への不安や避難生活なのですから、「原発や放射能のせいで鼻血が出た」は嘘ではありません。
また体調を崩している人が多いのも事実なのだから、医療体制も充実させていく必要があります。
が、渦中の「美味しんぼ」などでイメージされるような「被ばくしたので鼻血」とは全く違います。
この「全く違う」にも関わらず直結させてしまう発想は、まさに風評被害につながる。
論文の筆者は専門が水俣病のようです。
その影響か、水俣病と原発問題を関連付けて「あの時も今も、国は隠蔽している」と批判する人たちも見かけましたが、両者は全く違う。
水俣病の問題は、病気と汚染物質の関連を示せているのに、その責任を国や工場が認めなかったこと。
原発問題は因果関係を証明できていませんから、まだスタートラインに立てていません。両者は全く異なるのです。
国や東電の対応には多くの問題がありますから、別にそれらを擁護する気はありません。
多くの被害者に対し、しっかりとした保障も行っていくべきです。
ですが、だからといって「被ばくが原因で鼻血が出た」にはなりません。この二つを混同するのは非常に危険だと思う。
以上、どうしても釈然としなかったので、勢いで書いてみた。