穴にハマったアリスたち

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感想:映画「アリス イン ワンダーランド ALiCE IN WONDERLaND」

2010年04月20日 | 映画・コンサート・展示会・テーマパーク
『カラスと書き物机はなぜ似ているのか?』


『答えはどちらもNoteする』


     ~ルイス・キャロル~

■アリス イン ワンダーランド ALiCE IN WONDERLaND

卑しくもブログ名に「アリス」を冠している以上、見に行かないのはアレだと思い行ってきました。

まず最初に思うこと。
おそらく既に散々言われているのでしょうけれど、この映画は「アリス・イン・ナイトメア」と某かの関係があるんでしょうか?
「ナイトメア」は10年ほど前に発売されたPCゲームで、「鏡の国から10年後。アリス第三の冒険」を謳ったアクションもの。
ジャバウォックの造型や怪光線のグラフィック、目玉がキーになる点、帽子屋が重要人物、赤の女王=ハートの女王と置き、アリスが白の女王側で戦う…といった辺りが類似しています。
まぁ「アリスのその後の冒険」を描くと、概ねこういったアイデアになるのは自明とも思えるので、即座に盗作決定!と思い込むのも間抜けだとは思います。

ストーリーは若干ちぐはぐした印象を受けました。
元々の「アリス」自体、ストーリーは無きに等しいので突くところではないのかもしれませんが…。
身も蓋もないですが、「ナイトメア」の背景を知っていれば理解できるけど…という展開が多かった気がする。

残念だったのは「アリス」を原作に採用している意味が、あまり見られなかったこと。
映画のアリスさんの父親の名前が「チャールズ」だった場面は面白かった(ルイス・キャロルの本名はチャールズ。アリス・リデルの実際の父の名が何だったのかは忘れた)。
「父が他界して13年後=アリスは今20歳」の下りも良かった(アリスは7歳に決まってる。…でも公式ページを見たら6歳とか書いてあった。謎だ)。
ジャックが裏切るのも、ジャックなのだから当然。

でもそれ以外はあまり目立って原作要素はなく。
そこに拘りすぎて破綻するのもどうかとは思いますが、特にどうだっていい姉の名前をわざわざ変更するとか、意図が良く分からない。
(「不思議の国のアリス」は現実のアリスと違い二人姉妹だから、ロリーナにするのは逆におかしいとも言えるけれど)

「アリス・イン・ナイトメア」との比較になりますが、「ナイトメア」での「誰もいない涙の池」のシーンには震えるものがありました。
(「ナイトメア」のアリスは火事で家族全員を失っている設定。だから「涙の池」には誰もいない)
中盤の重要な敵キャラとして登場する帽子屋との対決シーンも熱かった。

帽子屋: 
 「こっちに来たまえ、お茶の時間だ」
アリス:
 「お茶は友だちとしか飲まないの」(じゃきん!)←武器を構えるアリス

その手の原作を踏まえた遊びがなかったのが、かなり残念でした。
ドードーに跨って騎士コスプレするアリスとか、多少期待してたのに。
(「ドードー」も「騎士」も原作におけるアリスの数少ない味方)

「不思議の国のアリス」は不条理・シュール・荒唐無稽といった表現がされがちですが、肝となるのは「論理的に狂っている」点だと私としては思う。
登場人物の奇妙な言動は、何らかの元ネタや論理に基づいています。
でも致命的な部分が意図的・悪意的におかしいので妙なことになってる。

例えば、アリスがメアリーアンであることの証明だとか。
原作でアリスがメアリーアンと呼ばれるシーンがありますが、アリス自身も特に聞き返すわけでもなく認めます。
何故なら、「アリス・リデルはエプロンドレスを着ている→エプロンドレスを着ているのはメイドだ→メイドならばメアリーアンである→よってアリスはメアリーアンである」、という「三段論法の悪用」が暗黙の常識として存在するから。

逆にいえば、単に不思議なだけの奇天烈な展開では「アリス」である意味が消えるはず。
私が気付けなかっただけの可能性も高いですが(出演者にちなんだ悪ふざけくらいはあってもおかしくないですし)、初見で分かるネタは特に組み込まれていなかったのが残念でした。

ただ白の女王様の軽く狂気入ってるところは、救いのないワンダーランドらしくて良かった。
どう考えても、見た目が良いと言うだけで赤の女王と内面は変わらないですね、あの方…。
やっぱり狂気の国は狂気の国のままなんだと思った。


(左画像)
Alice's Adventures in Wonderland and Through the Looking Glass

(右画像)
ALiCE IN WONDERLaND オリジナルサウンドトラック


余談ですがディズニーのアニメの方の「アリス」は、原作ネタを使う使わない以前に、ルール違反をやってしまってるのが疑問でした。
ドードーがアリスに危害を加えるとか、劇中でアリスが「今日は私のお誕生日ではない」と言うとか。
あれは何か元ネタなり裏事情があったんだろうか。

元ネタといえば、侯爵夫人の元ネタが長年の謎です。
適当に思いついたにしては特殊な役回りですし。
親戚か知人にそんな感じの人がいたとかなんでしょうか。

【追記】
 他の方の感想を見て気がつきました。「笑わないアリス」は原作を踏襲してた。
 原作では狂気の世界に迷い込んだアリスは、ほとんど(というか全く?)笑いません。
 (何せドードーや白の騎士以外はすべて悪意をもって接してくる)
 それを踏まえてか、この映画のアリスも終始顔をしかめてる。

 こういう分かりにくいところも踏襲しているのなら、探せば案外もっと色々仕込んであるのかもしれない。

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