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(第46話/最終回)トロピカル~ジュ!プリキュア「トロピカれ!わたしたちの今!」感想

2022年01月30日 | トロピカル~ジュ!プリキュア
■(第46話/最終回)トロピカル~ジュ!プリキュア「トロピカれ!わたしたちの今!」感想


(「トロピカル~ジュ!プリキュア」第46話より)

記憶を消して女王になるか、夢を捨てて地上に残るか。
ローラが出した答えは「女王になる」でした。

己の本質は貫き通す。描かれてしまえば明白な選択だった。「プリキュア」シリーズとし見ても、ローラが夢を捨てる展開はなかった。

トロフェスのお芝居はこれまでの彼女たちの足跡を忠実に盛り込んでいます。ラストシーンも変更し、現実通りのお別れエンドに。
記憶が消えても芝居は残る。これを見ればローラのことを忘れてしまっても、彼女たちの物語は残る。
シャンティアのシャロン王女の歌と同じ流れです。完璧な大団円ではなくとも、できうる範囲で想いは残している。

これだけでも納得のいく綺麗な終わり方でしたが、「結果的に」乗り越えてきました。

太古の人魚さんが開発した記憶消去システムの性能は凄まじく、物理痕跡や電子媒体まで根こそぎ消えていきました。明確に描写はされていないものの、お芝居のシナリオも消えてたんじゃなかろうか。身も蓋もなさすぎる。

だけどグランオーシャンの机に書かれた落書きは、なぜか残りました。『魔女の屋敷にいけ』。
これは「グランオーシャンの物理痕跡は消去対象から漏れていた不具合」なのかは不明。個人的には「消さなければいけない事が多すぎて、システムの限界に達して消し残った」を推したい。

ローラは大勢の観客に人魚の尾びれを晒しました。彼女が今一番やりたいことが、それだったから。
お芝居のシナリオも、たくさんのシャボンピクチャや写真も、でかいメロンパンクッションや何やらも、彼女がそれをやりたかったからやった。
その結果、消さねばならない事柄が大量に溢れた。そして消しきれず、たまたま机の落書きは生き残った。きっかけがあれば記憶が蘇り、抑えきれずに装置も暴発した。

もしかしたらローラは、この飽和攻撃を狙って尾びれを公開したのかもしれない。痕跡を残しまくれば、記憶復活の可能性も上がりそうです。
ただトロプリの「計画して動くのではなく、今一番やりたいことをやる。その結果として目的が実現する」の精神を思うと、打算ではなく結果論だと思いたい。
落書きそのものは計画的でも、これが残ったのは「今一番やりたいこと」の結果論。

トロピカる部設立の12話で出てきた、卒業生とペンギン像にも通じます。
卒業すれば色々と失われたり疎遠にもなる。でもペンギン像を介してまた思い出して集まれる。

一歩間違えれば、あとまわしの魔女様と同じ展開になりかねなかったのも胸にきます。
残念ながら落書きも消えてしまい、数百年後にたまたま魔女の屋敷にいったときに、たまたま記憶を聞かされるような展開もありえました。
もしそうなったら手遅れを嘆き、それこそ思い出さなければ良かったと苦しむかもしれない。魔女様のように。(そしてサマーさんがオアシスさんの如く亡霊と化し、最終的に踊り狂ったりするんだ)

あるいは「魔女の屋敷にいく」を後回しにしても起こりえます。女王候補として忙しいんだから、この選択も大いにありえた。魔女の屋敷に行く合理的な理由はない。
屋敷までは行ったとしても、元幹部らの説明を信じないこともありえる。信じたとしても重要視せず、「へぇそうなんだ」で流して地上に行くのは後回しにするのもありえる。
重要視しすぎて女王様に相談し、再び別室送りもありえます。
この策は、記憶を失ったローラがそれでもなお「今一番やりたいこと」をブレずにやり抜き、地上に直行することを前提にしています。策というか、未来の自分にジャッジを委ねたとも。

元あとまわし勢が、それほど詳しくは情報を伝えなかったのもさりげなく良いですね。似顔絵の一つも描いて渡しそうなところ、そんなことはしていません。
彼らの「やる気がない」性格にも合致します。いきなり善人化して全面協力してくれたのではない。
そしてそこから推察するに「地上に行け」と強く勧めたのでもないんでしょう。地上に確認に行ったのは、おそらくはローラの自発的な意思。何となくここは大事な気がする。

「魔女の屋敷に大事なものを取りに行く」のは、アンデルセンの「人魚姫」オマージュとしても面白いです。
あの人魚姫がやるべきは、王子を殺すか泡になるかの二択ではなく、声を返してもらい尾びれに戻ることだったのかもしれない。原作ではクーリングオフ禁止だったかもしれませんが、まぁそれはともかくとして。

「今一番やりたいことを目的も計画も定めずにやる」という通常とは因果が逆転した動きをするシリーズなのに、結果的に「最終回の一大イベントを、数話かけてじっくり準備する」構成の妙。一つ一つは行き当たりばったりなのに収束した。たぶん決着が最初にあって、そこからお話が作られたのかしら。

16年以降のシリーズに色濃い「何かを切り捨てても先に進む」の精神も一貫してて爽快です。
ローラはうじうじと悩まないし、女王様も「本当は記憶は消えない。試しただけ」とかではない。
先ほど少し触れましたが、構造は「卒業して離れ離れ」と同じですから、ずっとそこに居続けるのはおかしいのでしょう。
ローラ以外の面々も、やっぱりそれぞれどこかに旅立っていく。飛鳥先輩はもとより、みのりん先輩とかも(明言はされていませんが)文芸部に比重を移したりしたんじゃなかろうか。

ただそうすると夏海さんが最後まで謎存在ですね。「夏海さんの元に一時的に集まり、トロピカる精神を培ってそれぞれの道に戻る」の構造だと思うのですけど、では夏海さん自身は何なんだろう?
あの夢原さんですら「教師になる」と夢を持ったのに、夏海さんは具体的な何かはありません。

今回、久々の「未来を描かない」エンドだったこともあり、彼女がどうなったのか不明。
サマーさんはマルチカラープリキュアですし、意図的に具体性を排したのかもしれない。もはや人間ではなく概念存在か何かな気がしてきた。

今作は久々に全話感想を書くほど熱く観ていました。人魚さんは素晴らしい。そして人魚をきっちり活かして魅せてきたのが本当に素晴らしい。
以前にも書きましたが(第17話 初変身回)、「プリキュア」としてだけでなく「マーメイドもの」としても評価されて良いと思う。人魚の研究本にディズニーの「リトル・マーメイド」が引用されるように、現代の人魚考として「トロピカル~ジュ!プリキュア」が扱われる日も来ないかしら。
以前のまほプリ(魔法学校もの)やハグプリ(時間SFもの)もそうですが、プリキュアの枠を気持ちよく超えた感。

とても素晴らしい1年でした。ありがとうございます。
次のデパプリさんも楽しみです。

【蛇足】
些細な疑問なのですが、バトラーのやる気は何故ああいう消え方をしたんだろう?
てっきり最終回のエクストラバトルに絡むのかと思いきや、特にはなし。

「みんなのやる気が戻ったらバトラーも復活するのでは?」を解消するために消し去ったんだろうとは思いますが、女王様が「預かる」と一旦発言したのが謎です。
この1カットは展開上は不要で、サマーが「これどうしよう」といった後に消える…で問題なかったはず。それ以前に、戻っていく他の方々のやる気の中で、バトラーのだけ静かに消滅…でも良いです。
わざわざ尺を割きテンポも落としてまで何故「サマーが悩む→女王様が預かる発言→消える」の手順を踏んだんだろう?

「尺を切り詰める必要がなかった」+「バトラーのやる気が消えることを強調したかった」のかなと思いますが、こじつければテーマ的なものが見えるかもしれない。

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