世界を巡ったオリンピック聖火リレーはいよいよ中国入りである。今回北京オリンピック聖火リレーに世界の民衆が期待し託したものは何であったのだろうか。
先ずチベットと中国の関係、特に中国政府によるチベットの漢民族同化政策・人権蹂躙を世界が知ったことは、周知のとうりである。そしてこのチベットの民族問題を平和的に解決することを世界が期待していることは、聖火リレーの沿道の民衆から明らかである。現状のままの抑圧が今後も続けば、中国政府が世界から批判され続けることも明らかである。
次に、今回世界各地で起きた聖火リレーに対する中国留学生の一糸乱れぬ熱狂的な支援行動を観ると、従来の共産主義イデオロギーに代わって、愛国ナショナリズムが学生に浸透し台頭していることである。この変化は天安門事件以後の学生の思想の変化ではなかろうか。その背後には、天安門事件以後急進的改革派教授を大学から追放するような政府の強力な指導があったものと考えられる。しかも、オリンピック聖火を今回世界最高峰のエベレスト山頂にもかざそうという行為は、明らかに国家戦略であり、ナショナリズムによる国威発揚であろう。
しかし、このようなナショナリズムの台頭は、1965年以降の中国政府の大きな動きと切り離すことはできない。当時毛沢東は造反有理のスローガンを掲げ、文化大革命の名の下に紅衛兵を組織し、それまで実権を握っていた改革派を排除した。その後毛沢東の威を借りた極左共産主義の4人組が実権を握り、改革派を徹底的に粛正し、中国の政治経済に不毛の10年を生じた。毛沢東の死後、今度は改革派が巻き返し、極左の4人組を追放し、再び改革に着手中に急進的改革に火がつき、天安門広場での暴動が発生した。そして当時の改革派はこれを弾圧して世界の批判を浴びるのである。
その後暴動に寛大な改革派は政府中枢から追放され、世代交代を経て現体制になり、改革派は政経を分離して自由主義経済を取り入れ、政治は旧態依然の共産党一党独裁のままで最大の矛盾を抱え込んでいる。
この矛盾は、中国にとっては世界の政治経済史上初めての大々的な政経分離の実験であり、今後どのようにこの矛盾を解消していくのか世界の注目の的である。旧ソビエト同様、中国も多民族国家ゆえ中国政府が一気に崩壊すれば内乱の発生は必至であろう。おそらくソビエト連邦の崩壊の二の舞はしたくないと思っているはずである。世界もまたソビエトの轍は踏んで欲しくないとの思いが本音ではなかろうか。
しかしこの最大の矛盾を抱える中国政府にとって今後一番やっかいな問題は、共産主義イデオロギーの台頭と、急進的な政治的自由と民主主義を求めての一党独裁の排除のはずである。即ち現在の中国は共産党主義の矛盾(経済は自由主義経済)と自由主義経済の矛盾(政治は共産党一党独裁)を抱えており、この最大の矛盾に目を向けさせないように、或いはこの最大の矛盾を纏めるために、新たなイデオロギーを必要としており、これは今や共産主義思想でもなく、急進的な自由民主主義でもなく共産党による愛国ナショナリズムしかないのである。
よって学生や民衆が上記の相反する思想のどちらに走っても困るのであり、ナショナリズムで党への求心力を維持し、維持できているのが現在の中国の状態と見れば分かりやすい。その結果吹き出たのが先般の排日運動であり今回のフランス・カルフール商品の不買運動であり、各国の中国留学生による異様な聖火リレーの応援に他ならず、これらは起こるべくして起きているのである。
しかし今回のようにチベットの人権問題を批判されたからと言って、その都度ナショナリズムにより他国に仕返しされたのではたまらない。むしろ誤解を生み他国のナショナリズムに油を注ぎかねない危険もあることを、中国政府は理解すべきである。そしてナショナリズムを沈静化させながら、ソビエトの二の舞にならないように、政の経への一致体制へのソフトランデングを見せて欲しいものである。
そのような意味では、中国政府自らナショナリズムを否定する姿勢を見せて欲しい。それには今回の日中首脳会談は絶好の機会のはずである。両国に横たわる懸案事項、とりわけ東シナ海のガス田の共同開発で合意することが論より証拠となるはずである。それに加えて食の安全対策、チベットの人権問題に一定の進展が観られないようでは、日中首脳会談の意義は半減である。
「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
厚顔の美少年
先ずチベットと中国の関係、特に中国政府によるチベットの漢民族同化政策・人権蹂躙を世界が知ったことは、周知のとうりである。そしてこのチベットの民族問題を平和的に解決することを世界が期待していることは、聖火リレーの沿道の民衆から明らかである。現状のままの抑圧が今後も続けば、中国政府が世界から批判され続けることも明らかである。
次に、今回世界各地で起きた聖火リレーに対する中国留学生の一糸乱れぬ熱狂的な支援行動を観ると、従来の共産主義イデオロギーに代わって、愛国ナショナリズムが学生に浸透し台頭していることである。この変化は天安門事件以後の学生の思想の変化ではなかろうか。その背後には、天安門事件以後急進的改革派教授を大学から追放するような政府の強力な指導があったものと考えられる。しかも、オリンピック聖火を今回世界最高峰のエベレスト山頂にもかざそうという行為は、明らかに国家戦略であり、ナショナリズムによる国威発揚であろう。
しかし、このようなナショナリズムの台頭は、1965年以降の中国政府の大きな動きと切り離すことはできない。当時毛沢東は造反有理のスローガンを掲げ、文化大革命の名の下に紅衛兵を組織し、それまで実権を握っていた改革派を排除した。その後毛沢東の威を借りた極左共産主義の4人組が実権を握り、改革派を徹底的に粛正し、中国の政治経済に不毛の10年を生じた。毛沢東の死後、今度は改革派が巻き返し、極左の4人組を追放し、再び改革に着手中に急進的改革に火がつき、天安門広場での暴動が発生した。そして当時の改革派はこれを弾圧して世界の批判を浴びるのである。
その後暴動に寛大な改革派は政府中枢から追放され、世代交代を経て現体制になり、改革派は政経を分離して自由主義経済を取り入れ、政治は旧態依然の共産党一党独裁のままで最大の矛盾を抱え込んでいる。
この矛盾は、中国にとっては世界の政治経済史上初めての大々的な政経分離の実験であり、今後どのようにこの矛盾を解消していくのか世界の注目の的である。旧ソビエト同様、中国も多民族国家ゆえ中国政府が一気に崩壊すれば内乱の発生は必至であろう。おそらくソビエト連邦の崩壊の二の舞はしたくないと思っているはずである。世界もまたソビエトの轍は踏んで欲しくないとの思いが本音ではなかろうか。
しかしこの最大の矛盾を抱える中国政府にとって今後一番やっかいな問題は、共産主義イデオロギーの台頭と、急進的な政治的自由と民主主義を求めての一党独裁の排除のはずである。即ち現在の中国は共産党主義の矛盾(経済は自由主義経済)と自由主義経済の矛盾(政治は共産党一党独裁)を抱えており、この最大の矛盾に目を向けさせないように、或いはこの最大の矛盾を纏めるために、新たなイデオロギーを必要としており、これは今や共産主義思想でもなく、急進的な自由民主主義でもなく共産党による愛国ナショナリズムしかないのである。
よって学生や民衆が上記の相反する思想のどちらに走っても困るのであり、ナショナリズムで党への求心力を維持し、維持できているのが現在の中国の状態と見れば分かりやすい。その結果吹き出たのが先般の排日運動であり今回のフランス・カルフール商品の不買運動であり、各国の中国留学生による異様な聖火リレーの応援に他ならず、これらは起こるべくして起きているのである。
しかし今回のようにチベットの人権問題を批判されたからと言って、その都度ナショナリズムにより他国に仕返しされたのではたまらない。むしろ誤解を生み他国のナショナリズムに油を注ぎかねない危険もあることを、中国政府は理解すべきである。そしてナショナリズムを沈静化させながら、ソビエトの二の舞にならないように、政の経への一致体制へのソフトランデングを見せて欲しいものである。
そのような意味では、中国政府自らナショナリズムを否定する姿勢を見せて欲しい。それには今回の日中首脳会談は絶好の機会のはずである。両国に横たわる懸案事項、とりわけ東シナ海のガス田の共同開発で合意することが論より証拠となるはずである。それに加えて食の安全対策、チベットの人権問題に一定の進展が観られないようでは、日中首脳会談の意義は半減である。
「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
厚顔の美少年