老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

病窓から見る娑婆(シャバ)の景色

2020-03-12 10:37:16 | 社会問題
入院してから一ケ月。思いのほか、傷の治りが遅く、退院までもう少しかかりそうだ。

病者の目で「娑婆(シャバ)の騒ぎ」を見ていると、救いようのない日本の不幸が良く分かる。

東京新聞の川柳が事の真相をよく捉えている。
 『ごてごて(後手後手)の/後に叫ぶ/先手先手』

羽鳥のモーニングショーでも指摘されていたが、アジア各国の中で台湾の蔡英文総統のコロナ対策が突出して凄い。

高野孟(たかの・はじめ) THE JOURNAL
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CHRONICLE《新型コロナウイルスへの台湾の対応》

・12/31 衛生福利部が最初の注意喚起。武漢からの航空便への検疫官の機内立ち入り検査はじめ空港などでの入国検疫強化を指示
・01/02 専門家などによる「台湾衛生福利部伝染病予防治療諮問会」の「旧正月春節インフルエンザ対応整備会議」で、武漢の肺炎についての対策を討論。医師の診察時のN95マスク装着の徹底、入国検疫の再強化と帰国後10日間の経過観察、旅行経歴の告知の徹底などが話し合われ、即日実行
・01/05 陳時中=衛生福利部長が「中国原因不明肺炎疫病情報専門家諮問会議」を召集、経過観察を10日から14日に延長
・01/06 台湾行政院が中国での正確な情報を把握するための調査体制強化を指示
・01/07 武漢地区の危険レベルを1(注意/Watch=一般的予防措置の遵守)に上げた
・01/08 すべての国際線と中国・厦門、アモイ、泉州、福州などの船舶の往来についても警戒レベルを上げる決定。「12/31~01/08の武漢地区からの帰国便=13便、帰国者の検査人数=1,193人、08日までの感染者=0」と国民に明瞭に情報開示
・01/11 「台湾で感染者が見つかった」とのSNS上のデマに対して当局が「虚偽」と明言、デマを流した者は「伝染病予防治療法」あるいは「社会秩序維持保護法」で処罰されると警告
・01/16 武漢からタイに行った中国人女性が陽性反応で隔離されたためタイから台湾への帰国者・入国者への特別検疫体制を検討したが、この時点では見送りと発表。同日、武漢から日本に帰国した在日中国人男性が陽性と判明。このため衛生福利部がタイと神奈川の事例を分析し「ヒトからヒトへの伝染がありうる」と判断、「法定感染症」に指定し、武漢の危険レベルを2(警示/Alert=防護措置の強化)へ引き上げ
・01/20 「厳重特殊伝染性肺炎中央伝染病指揮センター」を正式に立ち上げ、全省庁と地方政府の横断的な連携で伝染病対策に取り組む体制を整えたと発表
・01/21 武漢から帰台した50代女性が空港検疫で「症状あり」とされ、搬送先の病院で陽性と判定(初感染者)。機内でその女性と接触があったと見られる46名も追跡調査し全員が陰性と確定。同日、危険レベルを3(警告/Warning)に引き上げ。
・01/22 蔡英文総統が「国家安全ハイレベル会議」を招集
・01/23 「中央伝染病指揮センター」を陳部長の直接指揮下に
・01/24 同センターが行政院、経済部と協力してマスクの輸出禁止、高値転売禁止措置。また中国への団体旅行、中国からの団体旅行受入を中止
・01/25 湖北省からの中国人の来台を禁止
・01/27 台湾政府が武漢にチャーター機派遣を打診開始するが難航
・02/02 「01/下旬~02/10までの小中高の正月休みを延長して02/24までとする」決定。同時に小学生の世話が必要な保護者のために看護休暇を申請できるようにした
・02/03 武漢からチャーター機で247人が台北に到着。完全隔離で14日間観察され、感染者1人
・02/06 中国在住の中国人の入国を全面禁止に。マスクを買うのに健康保険IDで本人確認する仕組みを導入
・02/24 世論調査で蔡英文総統の支持率が前月より11.8pアップの68.5%に
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🔷初動の速さは、世界一。昨年の12月31日には動いている。1月2日には、対策会議などで協議している。

このような初動の速さは、蔡英文総統が、常に行政のあらゆる部門について、神経を研ぎ済ませて対応している事を意味している。

【感度】よく諸課題に反応できると言う事は、彼女が常にその諸課題について学習している事を意味し、同時にそれらの課題を深く理解している事を示している。

トップがトップである所以は、同じことを聞いても、その問題の裏にひそむ課題を瞬時に掴みとる【感度】を持っているかどうかにかかる。

蔡英文総統の地位になれば、国家のあらゆる部門について瞬時に裁可を下さなければならない。その決定を間違えれば、即、国は傾く。ましてや、台湾のように、常住坐臥、中国との関係で神経をすり減らさざるを得ない国家は、トップの判断の誤りは、即、台湾と言う国家の運命を左右する。

🔷残念ながら、日本のトップの安倍晋三首相とは、「問題の把握」「コロナ対策の本質」「行政機関への権力の振るい方」「危機対応に対する官僚機構の真摯さ」など全ての点で全く違う。

一言で言えば、【権力は誰のために、何のために使うのか!】を考えたことのない安倍首相には、どうあがいても蔡英文総統の真似はできないと言う事実である。

🔷もう一つ決定的に違う点は、「情報公開」の徹底である。

【公衆衛生は、国民の政府に対する信頼がなければ成立しない】=【公衆衛生の公理】では、ここまで「後手」ばかり踏んできた安倍首相が、2月29日「突然の」一斉休校要請を行った。結果、日本中が大混乱に陥った。

学校関係にも相談せず、休校した後の後始末も何の準備もないままの強硬策に、巷の評判は散々。桜を見る会などのスキャンダルで支持率急落の窮地に立たされた安倍政権が賭けに出て大失敗したとさえ、酷評されている。

問題は、どうやらこの大博打を打ったのが、今井首相秘書官だという点。古賀茂明氏は、この一斉休校要請こそ、安倍内閣延命のための起死回生の一手だと言う。

古賀氏の所論を読むと、権力中枢にいる官僚たちの思考法が良く分かる。この種の手練手管は一概に否定されるべきではない(政策目的が国民のためになるのなら)が、ただ権力維持のために行使されるものなら、悪辣さだけが焼き付けられ、政権不信だけが残る。

何はともあれ、古賀氏の所論を読んでみよう。

「古賀茂明「安倍疑惑隠しだった?今井首相秘書官の術中にはまった野党」〈週刊朝日〉
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200309-00000011-sasahi-pol&p=1
 
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安倍晋三首相による「突然の」一斉休校要請で日本中が大混乱に陥った。何の準備もないままの強硬策に、巷の評判は散々。桜を見る会などのスキャンダルで支持率急落の窮地に立たされた安倍政権が賭けに出て大失敗したとさえ言われる。
 
では、安倍首相の最側近として、今回の要請を強力に推し進めたとされる今井尚哉首相秘書官はどう考えているのだろうか。

実は、「まずまず」だと感じているのではないか、というのが今回のテーマだ。

2月29日の安倍首相の記者会見を見て思い出したのは、アメリカで人気の政治ドラマだ。スキャンダルで危機に陥った大統領が、防御だけではじり貧で窮地に追い詰められるという場面で反転攻勢に出ようと、自ら別の危機的状況を作るというお決まりの展開だ。

桜を見る会や検察官の定年延長問題で野党にやられっ放しの安倍政権が、批判や混乱は覚悟のうえで、あえて「戦略的に」休校要請に打って出たと見ると、意外と筋が通る。

こうした場合、批判されるリスクは問題ではない。致命傷を負った安倍首相だからこそ、「致命的でない」批判はいくらでも甘受できる。そのために新型コロナウイルス問題をどう使うかだ。今井氏はこう読んだ。
 
──まずは、テレビがコロナ一色になることを狙う。そのために一斉休校ならインパクト十分。必ず、野党はこれに食いついてくる。実は、野党のほうにも、桜を見る会ばかりやっていると、「そんなことよりコロナのほうが大事だ」と国民から批判されるという不安感がある。また、コロナのほうがテレビ受けが良いなら、コロナをやって露出を高めたいという誘惑もある。そんな野党に対しては、むしろ批判の材料を与えたほうが良い。批判できるとなれば渡りに船で、野党のほうが、桜を見る会からコロナへのシフトを進めたくなる──
 
結果は、今井氏の読みどおりだ。野党議員は、休校批判が受けるのを知って、喜んでコロナ問題に集中するようになった。パフォーマンス好きは安倍首相だけではないのだ。桜や検察の話題は完全に霞み、今井氏の目的はかなりの程度、達成されたように見える。
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古賀茂明氏は、元経済産業省官僚。古館氏の報道ステーションで「I am not ABE」のステッカーを掲げ、番組を降板したことで知られた人物。安倍政権の狡猾さ、悪辣さ、恐ろしさを知り尽くしている。

わたしは、彼の読みは、当たっていると考えている。同時に、安倍政権中枢連中の悪辣さは、彼の読み以上だと思う。

比喩的にいうならば、コロナ対策で周回遅れの安倍政権が、周回遅れにも関わらず、トップランナーであるかのように偽装するため、打ち出したのが【新型肺炎特措法案】。この法案に、窮地に陥った安倍政権の【窮鼠猫をかむ】戦略が隠されている。

現在、安倍政府が具体化している特措法は、現行の2012年に民主党政府が成立させた新型インフルエンザ等対策特別措置法の対象(現特措法の対象疾病は①新型インフルエンザ、②再興型インフルエンザ、③新感染症)に、新型コロナを加えるという内容だ。適用期間は新型コロナを指定感染症と規定した2月1日から2年間。わざわざ一カ月間さかのぼって適用することにも疑問が出ている。

【内容】
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▼住民への外出自粛要請
▼学校、保育所、老人福祉施設等の使用制限要請、指示
▼音楽、スポーツイベント等の開催制限や中止の指示
▼予防接種の実施指示
▼臨時医療施設確保のための土地、建物の収用(強制使用を含む)
▼鉄道・運送会社等への医薬品運送指示
▼医薬品、食品等の売り渡しや保管命令(強制収容含む)
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それは対象地域に指定された都道府県の知事に、住民にイベントを中止させたり、医療施設確保を口実にした土地や建物の強制収用の権限を持たせることなど国、地方自治体等行政機構の権限強化が一つの柱である。同時にこうした措置に背いた施設があれば、実名を公表して摘発したり、国や県による物資売り渡しや物資提供命令を拒むと処罰することを規定している。

台湾の蔡英文総統のコロナ対策を「王道」とすると、この特措法案の成立を強行する事は、「邪道」としか言いようがない。

新型コロナウイルス対応で最も求められる事
① PCR検査の徹底
② 専門家の知見を基に感染予防対策を地域の実情に合わせて実施
③ 医療機関への支援、医療関連物資の確保
④ 一斉休校に伴う学校現場や子持ち家庭への支援
⑤ 全国の中小企業への支援

等々、やるべき対策は山ほどある。

そういう具体的な支援策を行わず、「私権制限」や懲罰強化を目的にした「緊急事態宣言」を優先させるところに、安倍政権の本質が浮き彫りになっている。

野党立憲民主党や国民民主党の反対姿勢もおざなり。結局、この法案は成立するだろう。何とも情けない野党だ。

こういう危機的状況だからこそ、消費税10%凍結などと言う明確で分かりやすい政策をぶち上げ、国民生活を守る、という姿勢を明確に打ち出せない野党の現状に日本の政治の世紀末的現状を見る。

3・11のニュースに紛れて、自民党議員有志が、消費税10%下げろという政策提言を打ち出していた。こういう場面で先手を取れない野党とは何なのか。こういう政治的センスのなさでは、政権は取れない。

これでは首相官邸に巣くう悪辣な官僚どもに抵抗できない。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
流水
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