老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

新型コロナウイルス騒動と緊急事態条項必要発言!

2020-02-01 17:28:32 | 民主主義・人権
1/31の羽鳥のモーニングショウで、維新の馬場幹事長が、「コロナウイルス問題で、武漢からの帰国者のうち二名が、検体検査を拒否して帰宅した」問題を取り上げ、「だから憲法改正して【緊急事態法】を成立させなければ駄目だ」という発言をしたという報道を取り上げていた。

当然、コメンテーターの玉川氏も吉永女史も、感染症専門家として出ていた岡田教授も、「コロナウイルス問題と緊急事態法成立問題は、全く無関係」として厳しく反論していた。

維新の馬場幹事長がどんな人物かは良く知らないが、こんな事態の時に、こんな発言をするようでは、典型的ファッショ型アジテーター政治家と言わざるを得ない。

同じことを自民党の伊吹文明氏も発言し、自民党内右派を中心に賛同者がかなりいるそうだ。彼らも同様な感性を持っているのだろう。

当然、立憲民主党の枝野氏やれいわの山本氏などは、厳しく反論しているが、公明党もかなり激しく反論していた。

政治家の能力・資質を図る尺度として、緊急事態(危機)の時、どのように考え、どのように対応するかを見るのが一番良く分かる。つまり、「権力をどう使うか」を見れば、その政治家が一体誰の為に、何のために、権力を使おうとしているかが一目瞭然になる。

わたしは「荒れる中学校」時代、教師の資質をその教師の危機に対する対処の態度で評価していた。危機的場面で表現される対処法に、教師の生徒(子供)に対する理念・思想・信念などが、見事に投影されていた。これには、管理職も平教員の差はない。あるのは、一人の人間としての教師の姿勢と信念と誇りの問題だけ。

現在の「コロナウイルス危機」も同様。国民一人一人の命と健康が危機に晒されるのをどう防ぐか、【国民の命と健康をどう守るか】の問題。その為には、現在ある法律、制度、救急体制、警備体制、医療設備、医療従事者などの医療資源を始めとする国のありとあらゆる能力を総動員して、一番効果のある方策を実施する事に尽きる。

その為には、法的知識・行政的知識はもちろん、各省庁の守備範囲に対する知識、外交的配慮、法と人権の問題、感染症に対する知識と正当な怖れを抱く感性、決定した方策を説明しきる能力と決断力、メディアなどの批判を恐れぬ信念等々の体系的な能力が求められ、政治家としての資質が試される。

今回のコロナウイルス危機に対して、TVに出ている感染症専門家たちの意見を集約すると、現行制度を最大限活用すれば、相当程度コロナウイルス拡大を防御する手を打つことができる、というもの。

政治家なら、これら専門家の知見を参考にして、今できる最大限の防御手段を指示し、実行すべきだろう。

そんな具体的方策を何一つ示さず、「憲法改正」や「緊急事態条項」成立に言及するなど、公党(維新)の幹事長とも思えない。何一つ周囲が納得できる知見も示していない。これでは、政治家としての資質にも疑問符がつく。
彼には、【今、生きている生身の国民】に対する想像力が決定的に欠落しているとしか思えない。

例えていうなら、目の前でいじめられている生徒、暴れている生徒に手をこまねき、みて見ぬふりをして、偉そうに「教育制度の改正」を語る教育関係者を誰が信用するのか。そんな人間に教育など語る資格はない。馬場幹事長の発言は、このレベルだと思う。

では、このような政治家が語る「緊急事態条項」とは何か。

以前にも書いたが、この「緊急事態条項」獲得こそ、右派連中が憲法改正を叫ぶ本当の理由だと考えてよい。

この「緊急事態条項」の導入は、ナチス・ドイツが独裁的権力を握る入り口となったワイマール憲法の「大統領緊急令」を参考にしているとみて間違いない。

1919年に制定され、当時、世界で最も民主的な憲法とされたワイマール憲法が、ナチスドイツの独裁を招いたのはなぜか。理由は、ワイマール憲法48条(緊急事態条項)の「大統領緊急令」にあった。

ワイマール憲法48条 第2項
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共和国大統領は、ドイツ国内において公共の安寧と秩序が著しく阻害され、あるいは脅かされるときは、公共の安寧と秩序を回復させるために必要な措置をとることができ、必要な場合に武装兵力を用いて介入することができる。
この目的のために、共和国大統領は一時的に第114条(人身の自由)、第115条(住居の不可侵)、第117条(信書、郵便、電信・電話の秘密)、第118条(意見表明の自由)、第123条(集会の権利)、第124条(結社の権利)、および第153条(所有権の保障)に定められている基本権の全部または一部を無効にすることができる
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参考までに自民党の改憲草案を書いておく。
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第98条
1、 内閣総理大臣は、わが国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認められる認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて緊急事態の宣言を発することができる
第99条
  1、緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
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🔷ヒトラーの独裁権力獲得過程
●1929年に起こったNY ウオール街での株の大暴落に端を発した世界恐慌の影響で、ドイツ国内でも失業者が急増。1930代初頭のドイツは政党間の利害対立が深刻になり、必要な政策が実施できない状況に陥っていた。⇒政府はこの事態を【緊急事態】と認識⇒法律と同等の効力を持つ【大統領令】を用いて政治を行っていた。⇒国会の空洞化が激しくなっていた。

●当時の大統領は帝政主義者で陸軍元帥のヒンデンブルク。彼は、直接選挙で大統領に選出されたにも関わらず、ワイマール憲法に懐疑的だった。同様な考え方を持ったヒトラーを首相に任命。(1933・1月末)⇒ヒトラーは独裁権力を持つために行動。

●ヒトラー率いるナチ党の支持は、有権者の26%。(首相就任直前の国会選挙。ナチ党の得票率33・1%。投票率80%。)国民の熱狂的支持を得ていたわけではない。⇒独裁的権力を保持できたのは、大統領緊急令だと言える。
↓(経緯)
2月に国会解散。⇒選挙⇒※2月27日 国会議事堂炎上事件⇒政府は、「共産主義者による国家転覆計画」と決めつける⇒ヒンデンブルグ大統領を動かす⇒「(共産主義から)国民と国家を防衛するための大統領緊急令」を公布。⇒憲法が保障する人身の自由、意見表明の自由、結社の自由など国民の基本権を停止し、共産党員を一網打尽にした。
※国会議事堂炎上事件⇒現在、政府(ヒトラー政権)による自作自演という説が出されている。
https://www.afpbb.com/articles/-/3237184
https://matome.naver.jp/odai/2154908529287599601

🔷ヒトラーの目的
授権法(全権委任法)制定 =国会が政府に立法権を授けるもの。

手続き⇒国会議員の2/3の出席と出席者の2/3以上の賛成が必要。(きわめて困難)

大統領緊急令発布⇒共産党の国会議員全員を拘束。議会運営規則変更

力づくで反対派を封じ込め、成立。 ・・・⇒ヒトラー政権成立から54日。

★ 決められる政治実現 
ナチズム理念実現のための法律が制定⇒職業官吏再建法(ユダヤ人を公職追放)・遺伝病子孫予防法(強制断種法)=優性思想の実行
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わたしには、このナチスドイツの権力獲得過程を見ていると、既視感がある。

安倍政権成立前、メディアを中心に【決められない政治】に対する批判が大きく報じられていた。ワイマール共和国の末期の政治症状と同じだった。しかも、米国発の世界的景気後退局面も同様だった。民主主義に対する疑念と強権主義的政治への渇望という危険な政治状況が生まれ始めていた。

これに民主党の党内抗争・分裂が拍車をかけた。(野田元首相などを始めとする民主党内の新自由主義勢力VS 小沢一郎、鳩山由紀夫元首相などを始めとする正当な富の分配を主張する勢力。)結果として、安倍政権が成立。民主党の凋落が重なり、その後、安倍一強政権が続いている。

安倍政権の表看板は、【決められる政治】だった。たしかに、安倍政権下では、強行採決が日常化。議論なしに、重要法案が決められた。国会はその存在価値を失ったも同然の姿になっている。

麻生太郎が「ナチスドイツを見習う」と言ったように、安倍政権七年のありようは、ナチスドイツが独裁権力を勝ち取った過程と酷似している。

その総仕上げが、自民党改憲案に書かれている【緊急事態条項】である。これさえ書き込めれば、自民党右派が敵視している共産党はじめリベラル勢力を一斉に摘発、豚箱に放り込むことができる。後は何をやっても誰も反対する連中はいない。

自民党改憲案草案を見てほしい。
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第98条
1、 内閣総理大臣は、わが国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認められる認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて緊急事態の宣言を発することができる
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「内閣総理大臣は」と書かれている。つまり、内閣総理大臣一人の判断で、【緊急事態】の認定をすることができる。

個人の判断で全国民の運命を決定できるというのは、完全な【独裁】。しかも、その判断をする科学的・合理的要件が全く書かれていない。一言で言えば、総理大臣の気分で決定しても、誰も文句を言えない規定になっている。

さらに、【内乱等】【地震等】と言う風に、日本官僚お得意の【等】がついている。一見、例外規定に見えるこの【等】に、何でも押し込めることができるのは、周知の通り。

だから、政府批判をしている政党や政治家、公務員、メディアなどの言論機関、言論人、一般人を【内乱等】の【等】に当てはめて、逮捕拘留することなどお茶の子さいさい。さらに【内乱等】の【等】に当てはめて、国民の基本的権利を制限することなど簡単にできる。戦前の特高警察の出番である。

これで、日本を一色に染め上げる事が可能になる。これぞ、オーウェルの書いた『1984』の日本版の完成というわけである。

コロナ・ウイルス騒動のように、国民が恐怖に晒されている時こそ、彼らのような独裁主義者(ファシスト)の暗躍する絶好のチャンス。「恐怖心」を煽って、国民を洗脳するのが、彼らの手口。厭な時代になったものである。

伊吹文明や自民党右派連中、馬場幹事長などの発言は、その象徴だと考えなければならない。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
流水
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