老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

転形期世界の転換点か(ウクライナ危機)

2014-03-29 10:56:18 | 安全・外交
オランダでのG7が終わった。
各国首脳が怖い怖いプーチンがいない間に欠席裁判をしたようだが、欧米各国の手詰まり感は否めず、何とも生ぬるい結果に終わった。まして、日本のぼんぼん首相などは、ウクライナに1、500億円の援助をぶち上げる以外に何の存在感も示せなかった。

本来なら、プーチンとの関係を強みにして、ロシアと欧米の間の政治的落とし所を探り外交的イニシアテイブを握り、日本の存在感を示す絶好のチャンスだったにも関わらず何もできなかった。千歳一隅のチャンスをみすみす棒に振った安倍首相の外交センスの無さにはほとほとあきれ果てた。まあ、これもしなくても良い右派的発言やパフォーマンスを続け、中国・韓国との関係を悪化させてきた安倍内閣が自ら招いたツケなので仕方がない。

今回の問題で、オバマ政権や欧州各国が見誤ったのは、ロシア(プーチン)の屈辱感だった。ソ連崩壊以来、ロシアは西側諸国なかんずく米国にやられっぱなし。KGB出身のプーチンははらわたが煮えくりかえる思いだったに相違ない。G8に加入したものの、西欧社交界にどうしても馴染めなかったのだろう。(鹿鳴館に馴染めなかった旧体制の人々の感性を想起してほしい。)

米欧とロシアの関係をよく見ると、どちらがうそつきだったかがよく分かる。たとえば、【冷戦後、米国はNATOを東欧に拡大しないと約束してロシア軍を東欧から撤退させたが、その後米国は約束を守らず、東欧をNATOに加盟させた。911後、ロシアは米国のアフガン占領に協力し、中央アジアのロシア軍基地を米軍に使わせてやったりしたが、そのお返しに米国がやったのは「イランからのミサイルを迎撃するため」という茶番な理由をつけた、ロシア近傍の東欧への短距離ミサイル配備だった。】・・田中宇

さらに田中は以下のように指摘する。
・・【今回の危機直前の昨年11月、ロシアはEUに対し、ウクライナも入れた3者間でウクライナの安定について協議しようと提案したが、EUは無視し、逆にウクライナに「EUとロシアとどちらにつくか」と二者択一を強要した。当時の親露的なウクライナがロシアを選択すると、EUは、米国と協力してウクライナの政権を転覆した。こうした米欧のロシアに対する横暴やウソは、ソ連崩壊後のロシアが弱く、米国の覇権が圧倒的に強かったからだ。しかし今、米国の覇権は自滅的に崩壊する一方、ロシアは強さを取り戻すプーチンの長期戦略が成功し、今回のウクライナ危機で形勢の顕在化している。】

プーチンならずとも、大国だったソ連を知る人間にとっては、この扱いは屈辱的だったに違いない。

今回のウクライナ危機も、どちらが先に手を出したかは、一目瞭然。欧米側だった。しかも、国家の名誉を賭けたソチオリンピックの最中。しかも、オリンピック開会式への出席を欧米各国首脳は拒否。理由は、同性愛者の人権を認めないという事だった。プーチンにしてみれば、相当頭に来ていたはずだ。

冷戦終了後のウクライナの政情は、親ロ派と親欧米派の政争に終始した為、ウクライナは経済的に成長せず、国民は貧困にあえいでいた。2004年のユーシエンコ政権も今回のネオナチ政権も米国の政権転覆支援によってできている。日本の新聞も欧米の新聞もロシアを混乱の元凶のように書いているが、よく見てみると米国の介入がウクライナに混乱をもたらしている側面の方が大きい。つまり、ウクライナは米ロ対立の場にされているのである。

それでも、米国一極支配の時代ならロシアも今回のような行動をとらなかっただろうが、イラク戦争後米国の力は急激に落ち、ロシアは力を回復してきた。さらに、中国・インド・ブラジルなどの新興国も力をつけ、いわゆる多極化の世界に入っている。プーチンはこの事を読み切って、G8追放もそれほどの痛手にならないと読み切ったのであろう。

もう一つの切り札。基軸通貨であるドルをロシアに融資しないという金融制裁も、現在ロシアはドル不足なので、支払いもドルではなく、天然ガスなどで行っているので、意外と効き目が少ない。さらに言えば、ロシア・中国・インド・ブラジルなどと結んで貿易決済をドルではなく、自国通貨で行おうと画策している。

もう一つ。アメリカは先日、シリア大使館員を撤退した。つまり、後始末はロシアに任せたのである。イラン問題もロシア主導で解決し始めている。北朝鮮問題の6ケ国協議にもロシアは入っている。つまり、世界の厄介な問題をアメリカ単独では解決できなくなり、今やロシア抜きでは解決は難しくなっている。ロシアと決定的な対立に入ると言う事は、これらの問題の解決が不可能になりかねず、米国の支出が増大し続けると言う事になりかねない。

これら、すべての事を計算しつくして、プーチンはクリミアを編入した。

21世紀世界は、米国一極支配から、多極支配へと移行し、今やドングリの背比べ状態になりつつある。大国のパワーゲームも新たな時代を迎えつつある。イラク戦争前、わたしは、世界は転形期に入ったと主張してきたが、シリア問題、エジプト問題、イラン問題、今回のウクライナ紛争など、全ての問題で米国の指導力の低下が顕著になった。もはや、米国の退潮は明らかで、世界の国々は、羅針盤なき航海を強いられる事は避けられなくなってきている。

もう一度世界は【ジャングルの掟】の時代に逆戻りするのか。それとも、新たな理念の下で21世紀にふさわしい世界を構築するのか。今回のウクライナ騒動でも、欧米とロシアの駆け引きの中で、一番忘れ去られているのは、ウクライナ国民たちの幸せである。評論家たちや政治家たちは、上記のような情勢分析はできるが、ウクライナ国民一人一人の幸せを如何に実現するかは、誰にも分からない。国民一人一人の幸せをどのように実現するか、の視点こそが、21世紀にふさわしい理念に欠かせないものだと思う。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
流水
コメント (1)
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