非国民通信

ノーモア・コイズミ

これも定番?

2008-04-02 23:32:53 | ニュース

性犯罪常習者にGPS装着を検討…自民小委が提言(読売新聞)
 ↑いつの間にか元記事の「性犯罪常習者」が「常習性犯罪者」に変わってます……

 全犯罪者の3割近くを占める「再犯者」による犯罪を防止するため、自民党の「治安再生促進小委員会」(委員長・山本有二前金融相)は、現在の保護観察制度を見直すことを柱とする治安再生への提言「世界一安全な国をつくる8つの宣言」をまとめた。

 出所者や非行少年の自宅を訪問する「出前型」の社会復帰支援策を打ち出し、常習性犯罪者に全地球測位システム(GPS)の装着を義務づけることも検討課題とした。政府の犯罪対策閣僚会議に報告し、政府の行動計画のたたき台にしたい考えだ。

 1948年から2006年9月までの有罪確定者100万人を法務総合研究所が調査した結果、以前に犯罪を犯していた者は28・9%で、事件数全体の57・7%を占めた。特に20~24歳の再犯率は41%と高率で、刑務所などから出た後、社会復帰できずに生活に行き詰まって犯罪に走るという悪循環が指摘されていた。

 統計を使って誤った印象を与える方法論の中には「定番」とでも言うべきものがあるようで、しばしば同じ手法が繰り返し用いられます。定番中の定番は、公務員給与と民間給与の比較ですね。ホワイトカラーで常勤の公務員の平均と、パートタイマーと現場労働者を含めた民間企業の平均を比較して「公務員給与は高すぎる」と主張する奴です。

 そして今回の統計は再犯率の話、再犯率の定義自体が諸説別れており約3%から最大40%程度まで非常に幅が大きいわけですが、このような場面では大きく見せることの出来る数値が採用されます。さらに言えば性犯罪者の再犯率にしても「性犯罪の前科のある人が再び性犯罪で捕まった割合」ではなく「何らかの前科のある人が性犯罪で捕まった割合」を使うのが、これまた定番でもあります。後者ではなく前者を使うと、再犯率は概ね10%超に収まるようですね。

 古来中国では受刑者に刺青を施すことで、彼が罪人であることが隠せないようにしたわけですが、現代ではGPS付の手枷(自力では外せないとか)ですか。性犯罪者であることを示す腕輪を装着させるということで、これがそのうち首輪にならないか心配です。なんでも「世界一安全な国をつくる8つの宣言」と言うことですが……

 前にも疑問を呈しましたが、あの手の連中が言う「安全な国」「治安の良い国」の条件とは何なのでしょう? 例えば自転車の無灯火運転とか、細かな違反に目くじらを立てていけば件数は稼げるので単純な犯罪件数は当てになりませんが、最も誤魔化しが利かないであろう殺人の件数はある程度、安全の目安になるのではないでしょうか? そして2000年の国連機関の統計に拠りますと、日本の10万人あたりの殺人件数は十分な資料の揃っている国の中では世界最小でした。その2000年時点からも殺人件数は減少を続け、2007年度は戦後最小を更新するに至ったわけですが、そのような治安状況を「再生」すべく頑張っている人がいます。凶悪犯罪が減少を続ける状況に対して「再生」するわけですから、逆に増やしたいのでしょうかね?

 で、性犯罪です。一口に性犯罪と言っても範囲が広そうで、その中には少なからぬ痴漢の冤罪も含まれているような気がします。とりあえず凶悪犯罪に分類される強姦を見てみますと、10万人あたりの強姦件数が日本より少ない国となりますと、これはもうイスラム教国ばかりなのです。日本よりも強姦が犯罪と認知される件数が少ないのは、性犯罪が起こると女性の側が「誘惑した!」という咎で裁かれる世界くらいしかないわけです。

 強姦が犯罪と認知される件数もまた非常に少ないのが日本でありますが、こちらは必ずしも好ましい結果ではありません。というのも、明らかに治安の問題を抱える国で強姦認知件数が高いケースもあるのですが、強姦以外の犯罪は少ない国が、「先進国」が上位を争ってもいる項目だからです。ヨーロッパでも東側より西側で、南側より北側で、貧しい国よりも豊かな国で、強姦認知件数は高まります。

 これは人権意識の高い国ほど強姦として認知されるケースが増えるからです。つまり配偶者や家族、交友関係にある人同士の性暴力を強姦と扱う国かそうでないかで、統計上の数値は大きく左右されるわけです。昔アメリカの防犯関係の本を読んでいたときに、レイプ犯のほとんどは知人であると書かれていた記憶があるのですが、それは家族や恋人の性暴力をレイプとして扱う国だからですね、日本ではそうはなりません、日本の場合、性犯罪の加害者は概ね他人です。それは家庭内、恋人?同志の性暴力を法が黙認しているからですが、性犯罪をどうこう言うなら、まずはこの辺りから手をつけるべきかと。

 外国人との共生もうたい、日系ブラジル人が多い浜松市に在留手続きや教育などの相談を一括して受ける「ワンストップセンター」の設立を提案する。

 ちなみに、引用元の末尾に書かれていたのがこれです。これだけ読めば無害にも見えますが、犯罪対策云々を語った文脈の最後に、さも関係があるかのように置かれると、違った印象を与えるような気もします。結局これも定番の一つと言いましょうか、さも脅威が身近に存在するかのように、ありもしない不安を煽り立てて監視を強める、そんな意図でしょう。

 

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6 コメント

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Unknown (仲@ukiuki)
2008-04-02 23:47:43
ワンストップ・センターについて、毎日新聞はもっとあけすけに書いてますね。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20080326dde041010035000c.html

>法務省から委託された入管OBと民間ボランティアが運営し、各行政機関に照会・解決をあっせんする「よろず相談窓口」になる。摘発に傾斜していた外国人対策を見直し、生活をサポートすることで犯罪の未然防止を図る狙いもある。

入管OBって、坂中英徳なんかを見てるとろくな人間がいないような気がするんですが、これも新たな天下り先の創出が実は目的なのかも、なんて思ってしまいます。

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Unknown (非国民通信管理人)
2008-04-02 23:58:45
>仲@ukiukiさん

 >犯罪の未然防止を図る狙いもある

 例によって、最初から容疑者扱いですよね。今まで「壁」として人を阻んできた入管OBが運営するとなりますと、少なからぬ不信感を抱かざるを得ないところもあるでしょうか。
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Unknown (Bill McCreary)
2008-04-03 07:39:14
>外国人との共生
(笑)。共生だってさ。

>常習性犯罪者に全地球測位システム(GPS)の装着を義務づけることも検討課題
日本の場合、たとえばこれらの犯罪者への更生教育なんてほとんど行なってこなかったのが実態で、いきなりGPSというのもねえ。よほどの綿密なアフターケアをしないと、とんでもないことになります。

性犯罪に関しては、先日の沖縄での少女の事件での一部の人間の態度などを見ても、日本での被害者の人権擁護の状況は、まだまだ非常によろしくないと思います。
返信する
Unknown (ベースケ)
2008-04-03 13:52:36
>レイプ犯のほとんどは知人である
日本にもあてはまりますよね、当然。
日本では、いまだに明治時代につくられた男根主義が幅を利かせていますからねぇ。
ちなみに我が家では、ちょっと迫るとすぐ「DVだ」と脅されます(苦笑)

さておき、現首相の昔の名言からすると、日本全国の男にはみなGPSの”首輪”をつけなければいけませんね。なんせ”黒豹”ですから。
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Unknown (怪人20面相)
2008-04-03 22:32:13
GPS装着を検討するとは恐ろしい。
突極の人権蹂躪以外の何ものでもありません。
監視社会もとうとうここまできましたか。
「ある人が監視されてもよいこと」を認める社会は、
結局のところ、時の権力の気に入らない人は排除されるといった社会につながります。
社会的弱者が見捨てられることの容認をも意味するでしょう。
こんな卑劣なことを検討した自民小委こそ最も凶悪な犯罪者だと思います。
また、反発するどころかこれを支持する人が多々いるところに今の日本の社会の異様さがあるように思います。
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Unknown (非国民通信管理人)
2008-04-03 23:40:57
>Bill McCrearyさん

 外国人にしろ犯罪歴のある人にしろ、さんざん排除の理論を振り回しているだけに、建前だけで強制などと言われても空々しく聞こえるところはありますね。その辺はあくまで言い訳で、実際はGPS等を駆使した監視の方が眼目でしょうか。一方、性犯罪に関しては被告側が告訴を取り下げざるを得なくなる状況が頻繁に作られているわけで、この辺の意識こそ改めるべきところのはずですよね。

>ベースケさん

 日本は黒豹が放し飼いにされている国と考えると、確かに治安を考える必要が出てきそうですね。

 それはさておき、日本においてもレイプ犯のほとんどは知人である可能性は高いのですが、知人によるそれを罪とはしないがゆえに、統計上は性犯罪が少なくなります。やたらと人を罰したがる国でありながら、罰したくないものもあるようですね。

>怪人20面相さん

 何でも「定職に就く意欲のない若者などの自宅を相談員が訪問する英国のコネクションズ制度」がモデルだそうで、「定職に就く意欲を認めてもらえない人」や「定職に就く意欲がないと烙印を押された人」辺りも、いずれはGPS装着の対象になりそうですね。社会的なバッシングの対象になった人々を監視し焚刑にする、魔女狩りの始まりですよ。
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