非国民通信

ノーモア・コイズミ

ミスマッチ以前の問題

2010-08-27 22:59:09 | ニュース

クローズアップ2010:円高、不景気 長引く就職活動 15万人、行き場ない(毎日新聞)

 今春卒業した大学生の就職率は前年比で過去最大の下げ幅となるなど、就職事情は厳しさを増している。政府は、新卒者の就職支援を検討する特命チームを首相官邸に設置し、24日に初会合を開いたが、対策がどこまで実効性を持つかは未知数だ。加えて止まらぬ円高が日本経済の前途に暗い影を落とす。卒業単位を取得していても留年を認める希望留年制度や、既卒者対策に力を入れる大学も増えてはいるものの、就職難は展望の見いだせない状況が続く。

(中略)

 文部科学省が今月発表した学校基本調査速報によると、今春卒業した大学生の就職率は60・8%で、前年からの下げ幅は過去最大のマイナス7・6%だった。進学も就職もしていない進路未決定者は約8万7000人で、高卒も含め15万人近くが行き場がない。

 就職情報大手「毎日コミュニケーションズ」のインターネットサイト「マイナビ」編集長の望月一志さんは「来春も今年と同程度か、それ以上の規模の未決定者が出るのでは」と危惧(きぐ)する。

 高校生も大学生同様に厳しさを増しており、青森県内の高校の進路担当教諭は「求人数が昨年よりもかなり減っている。今までは高卒を採用していた企業が就職難の大卒や短大卒を採るようになった影響も大きい」と頭を抱える。

 同県は今春卒業した高校生の就職内定率が本州で最も低い88・4%。今年7月末現在の高校生の求人倍率は0・56倍と前年同時期(0・60倍)よりもさらに悪化している。

(中略)

 しかし、毎日新聞が今春実施した企業アンケートでは、11年春採用を前年と「同水準」か「減らす」と答えた企業が約6割に上り、抑制基調が続いていることを示している。

 小沢一郎は「政治経済は不安定な状況になりつつある」けれども「本来の日本人の精神力と知恵と力さえ持っていれば、このくらいの困難を克服するのは容易に可能だ」と悠長極まりないことを語るわけですが(参考)、現時点でも極めて状況は深刻であり、もはや精神力や知恵でどうにかなるレベルではありません。新卒時に採用機会が偏っているだけに新卒者の就職は既卒者のそれに比べれば格段に枠が大きいはずなのですが、その特別な採用枠をあてがわれているはずの新卒者でさえごらんの有様なのです。

 一方で、中小企業が人材確保に苦慮する状態が続く。ディスコの調査では、今年7月までの採用結果の満足度を聞いたところ、従業員300人未満の中小企業で「質・量ともに満足」と答えた企業は29・5%。昨年に比べ8ポイント近く悪化した。

 就職支援会社「ブラッシュアップ・ジャパン」のアドバイザー、奥村極さん(30)は「就職が決まらないのは不況のためだけでなく、企業側と学生のミスマッチもある」と分析する。既卒者でも中小やベンチャー企業は採用意欲が高いが、求職者は不況下で安定志向を強め、大手や公務員を目指す傾向が強いという。

 ……で、相も変わらずこういうことを言う人もいるわけです。中小なら求人はある、大手ばかりに目を向けていないで中小に行けばいい、と。何というか、昨今の就職事情というものがわかっていないのだなぁ、と思います。そりゃ大企業に比べれば中小企業への応募者は少ないかも知れませんが、だからといって応募者が求人数を下回るようなことなど例外中の例外に止まるのではないでしょうか。中小だって採用する側が選り取り見取りの状況であることには変わらない、逆に求職者からすれば中小に応募したところで採用される確率は極めて低いままなのです。ミスマッチが0とは言いませんが、それは決して有意な要因ではありません。根本的に採用数が少ないだけの話です。

 求職者に向けて「選り好みしなければ仕事はいくらでもある」とはよく言われることですが(有効求人倍率は0.5倍程度しかないのに?)、企業側に対して「選り好みしなければ人はいくらでもいる」とは決して言われないものです。就職活動をしていると年がら年中求人広告を出している会社がやたらと目に付くのですが、試しに応募してみたところですげなく追い返されるのが関の山だったりします。こっちは妥協して応募しているのだから、おまえも妥協しろよと言いたくもなりますが、これが労働者と雇用者の力関係なのでしょう。結局、中小企業は身の程も省みずに高望みする、大企業でも欲しがるような逸材が自分のところにも来てくれると信じて、青い鳥を待ち続けているわけです。

 「既卒者でも中小やベンチャー企業は採用意欲が高い」と引用元では断言されていますけれど、俄には信じがたい話です。採用意欲が高いのは規模に関わらず景気のいいところに限った話で、むしろ経営が不安定になりがちな中小ほど採用抑制に走る傾向は強いのではないでしょうか。そして「不況下で安定志向を強め」たのは求職者以上に採用側ではないかと思われてなりません。当たり外れのある人選を避け、従順な会社の歯車になってくれそうな人に絞り込む、冒険をしなくなったのは採用側であり、中小企業までもが大手企業と同レベルの人材を欲しがるようになった結果が今に至るわけです。確かに不況ともなると、好況時ならば大企業に入れたであろう人が枠から漏れ、やむなく中小企業に応募してくることも増えるのでしょう。そうなると中小企業が勘違いして採用の基準を引き上げる、結果として中小企業にすら入れなくなる人も出てくる、それが現在です。ミスマッチ云々と言葉を濁して、それとなく責任を求職者側に押しつけようとしている限り現状認識すらすることができない、問題解決のためのスタートラインにすら立てていないと言えます。

 

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5 コメント

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Unknown (ホルへ)
2010-08-28 00:00:57
この記事を見て、・常に自分の頭で考え判断して行動できる人材の育成を軽視及び放棄し、組織に絶対服従の人材を集めてきた、・企業の経営者及び雇用側が人材育成の実力不足やモラル及び向上心及び探求心の低さを棚に上げて、「選ばなければ仕事はぎょうさんある」と無責任な発言をし、正社員やなく非正社員をぎょうさん雇用して、彼らを奴隷扱いして支配して、彼らの生活及び雇用の不安やモチベーション及びスキル低下をもたらしてきたという悪循環な現状を企業の経営者及び雇用側や政治家がしっかりと謙虚に理解し、自主自律の行動ができる人材を育成して、ミスマッチの無き幅広い職業選択もできるようにしていくことも必要不可欠やと思うで。
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Unknown (HY)
2010-08-28 22:07:06
 国民には労働の義務があるのに、企業には雇用の義務がないのはなぜ??
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-08-28 23:09:54
>HYさん

 労働が「義務」だというのなら、労働環境を与えることもまた義務になっていなければ釣り合いがとれませんよね。働けと言うのなら、働く場所もセットでないとおかしいですから。
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Unknown (シトラス)
2010-09-04 23:38:07
中小やベンチャーは既卒でも採用意欲があるというのは要するにブラック企業が多いということでしかないような気がします。
また、求職者側が企業を吟味しようとしたら甘えだと言われるのに企業の高望みは甘えだと言われませんよね。
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-09-04 23:58:10
>シトラスさん

 会社の規模の割に求人が多いと言うことは、それだけ離職者が多いので補充が必要ってことですからね。そういう企業は避けるべきなのですが、求職者側は選り好みするなと言われる、しかし応募してみたら会社側に選別されて落とされる、なんとも嫌な話です。
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