「夫は外で働き、妻は主婦業に専念すべきだ」と考える既婚女性の割合がこれまでの低下傾向から一転し、増加したことが31日、厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所の「第4回全国家庭動向調査」(2008年7月に実施)で分かった。
前回調査(03年)より3・9ポイント上昇の45%で、特に29歳以下(47・9%)が12・2ポイントの大幅アップとなった。「母親は育児に専念した方がよい」とする割合も増加しており、調査担当者は「伝統的価値観を否定する回答が増えていたこれまでの傾向に変化の兆しがみられる」と分析。
結婚や少子化問題に詳しい専門家からは「非正規労働が増え、正社員でも長時間労働で疲弊する状況があり、女性の間で仕事への意欲が低下している。主婦になって子育てに専念した方が楽と考えるのは当然」と指摘する声が出ている。
調査結果によると、「夫は外で働き、妻は主婦業に専念すべきだ」に賛成は全体で45%で、1993年の第1回調査時(53・6%)から前回の03年調査(41・1%)まで続いていた減少が初めて増加に転じた。
年齢別では、29歳以下が47・9%で前回調査より12・2ポイントの大幅上昇。
総じて若年層の保守化が顕著でもある昨今ですが、こんな調査結果も出てきたようです。果たして専業主婦が本当に「伝統」なのかどうか、その辺に疑問を感じないでもないですが、ともあれ「伝統的価値観」と呼ばれているものに肯定的な人が、とりわけ29歳以下で増えていることが伝えられています。
要因の一つとしては真ん中辺りの段落で指摘されているように、労働環境の悪化が挙げられます。外に出て働いても辛いだけで金銭的に報われることもないのが一般的ですから、「専業主婦の方が良い」と思う人が増えるのも当然でしょう。今なお会社での地位/収入=人間としての価値みたいな考え方が強いですけれど、その手の競争は他人(夫)に任せたいと思うのだって、ごく自然な流れです。
「外」でバリバリ働きたい女性もいれば、「外」でこき使われるのなんて御免だと思う女性もいるわけです。一方、女性を労働力として「活用」したい人もいれば、女性を家庭に押し止めておきたがる人もいます。それぞれの前者同士、後者同士で、あまり仲が良くないように見えながらも実はお互いに手を取り合ってきた部分もあるのではないでしょうか。私なんかは男性ですけれど、はっきり言って働きたくないです。しかるに男性に対しては「働け」という方向にしか社会的圧力が存在しないけれど、女性の場合は「家にいろ」という方向にも圧力がかかってくるわけで、その辺が「外で働きたい女性」には不満を感じさせるのかも知れませんが、一方で「働きたくない女性」には格好の免罪符を与えているところもあるはずです。
ことあるごとに「男性差別だ!」とか叫んでいるミソジニストが目立つようになったのは、「外で働く」ことに希望が持てなくなってきたせいもあるような気がします。男性には実質上「専業主夫」とか「家事手伝い」なんて選択肢はないだけに、「外で働く」以外の選択肢を持っている女性の方が優遇されているように見えてくるわけです。「外で働く」ことに希望が持てない時代なら、たとえ管理職が男性ばかりであったとしても、そんなものは無価値ですから。それだけに「外で働く」以外の選択肢が羨望の的になるのは致し方ないところでしょう。
仕事に「やりがい」を求め、労働を「自己実現」だの「社会貢献」だのと飾り立てる風潮の中では「女性(男性)が働きやすい環境作り」なんてのが理想として掲げられていくのでしょうけれど、仕事に求めるのはあくまで「給料」であり、労働は生活のための「手段」と見るならば「女性(男性)が働かずに済む環境作り」の方が需要にマッチしているのかも知れません。「働きやすい環境」もさることながら「できるだけ働かずに済む環境」の実現も並行して考えたらどうかとか、そう思わないでもないですね。
フェミニズムも主流は「働きたい女性」向けという気がしますしね。配偶者を働かせることで「働かない」を実現するのではなく、根底的に労働を減らしていく必要があると思うのですが、この前の義務/負担の平等よろしく「労働という義務から免れている奴は許せない」みたいな感覚も強いだけに、なかなか難しそうです。
以前「結婚しても必ず子供を持つ必要は無い」という考えの人が多くなったとあちこちで物議をかもしましたがそういう人の中には「でも自分は結婚したら子供は欲しい」という人も結構多いんじゃないかなーと思ったので。
因みに私は「ワークライフバランス大歓迎!!でも自分は働きたくないでござる!!」ですが。
正社員であっても、年収で非正規雇用呼ばわりを何度もされてきた身なので解決したいのですが。
自分の「したい」と、他人の「すべきだ」は一致しないことが多いですからね。自分は働きたくなくても、他人が働かないのは許せない、みたいな人も多いでしょうし。
>ヒイロさん
結局、専業主婦志望の人は「働かない」ことに肯定的である以前に、旦那の収入を当てにする部分が強いですから厳しいですね。とはいえ、頑張って働いたところで給料が上がる時代じゃありませんし……