非国民通信

ノーモア・コイズミ

緊急の課題

2010-08-29 22:59:51 | ニュース

円高続けば4割が工場を海外移転 6割が減益(共同通信)

 直嶋正行経済産業相は27日の閣僚懇談会で、1ドル=85円台の円高が継続した場合、製造業の4割が工場や開発拠点を海外に移転するとした緊急調査の結果を報告した。最近のドルに対する円高で製造業の約6割が、ユーロでは約5割が減益になると回答。円高が企業経営に打撃を与え、産業空洞化に拍車をかける恐れが強いことが浮き彫りになった。

 どうにも政府筋や日銀に危機感が見られない昨今ですが、円高が続けば4割が海外移転するとの調査結果が出てきました。海外移転するぞと凄んだところで実際に海外移転できる企業は限られてくるでしょうし、円高が是正されようとも海外移転するところは海外移転しますので、円高さえどうにかすればと言うものでもなさそうですが、4割という回答結果は重く受け止められるべきでしょう。なにしろ派遣規制を本来の水準に戻した場合に「海外移転する」と回答した企業は僅かに6%しかないわけです(参考)。一方で円高で海外移転すると回答した企業は4割です。規制緩和に明け暮れてきた近年の日本でありますが、何がより重要なのかは明らかと言えます。効果は微々たるもので弊害ばかりが大きい規制緩和より7倍ほど重要な、もっと優先してやるべきことは見えているはずです。

 また経済産業省の「公的負担と企業行動に関するアンケート調査」によると、法人税が引き下げられた場合に国内(日本)回帰を検討するとの回答は17.8%に止まり、逆に法人税が引き下げられようとも海外移転を続けると回答した企業は69.5%に上りました。言うまでもなく海外移転と法人税率の関連性は薄いわけです(そもそも日本は額面の税率がアメリカ並みと言うだけで課税ベースは広くない、かつ社会保険料の事業者負担が少ないためコスト面では有利ですし)。それなのに政財界は法人税引き下げにご執心、そんなものよりも海外移転と密接に関わりのある、優先的に取り組むべき課題はあるはずですよね?

 このブログでは何度か言及したことですが、菅が財務相に就任した際、円安が望ましいと発言したことがありました。一時的なこととはいえ為替介入への期待感から本当に円安が進み、輸出関連株が買われて日経平均株価も上昇したわけです。しかるに、これは与野党双方から囂々たる非難を浴びました。与党を批判するのが仕事である野党の立場はわかりますが、なぜ与党内部からも? 経済界からすれば好ましいことなのに? 前任の藤井財務相が円高容認発言をしたときには何の非難もなかったのに? 結局、このエピソードは日本的経営とは何かを端的に示しているような気がします。円安なら楽して儲けることができますが、それは日本的経営の美学に反する、楽して儲けるのは良くない、儲けとは骨身を削って出すものだ、具体的には人件費を削減して捻出するものだと、そんなフシはないでしょうか。とりあえず昨今の異常な円高の是正は必須ですが、円高を是正しても政府への支持が強まることはないと思います。その辺は大いに同情しますが、それでも政治は役割を果たしてください。

 

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2 コメント

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Unknown (シトラス)
2010-08-31 09:08:12
メディアでは、「円高=円が強い=日本の国力が高い」という世界観がたまに流されます。
GDPが国の威信を表す単位として使われるように、やはり日本経済の本質は金儲けではなく、精神的な問題を重視していると言えそうです。
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-08-31 10:36:03
>シトラスさん

 菅も自ら口にしたように、とかく「強い~」が好まれますしね。結局、この20年近くは政財界すらもが経済合理性から背を向けて、精神的なものを追い求めてきたような気がします。楽に儲けられる環境作りより、「強い円」の元で労苦を重ねていく方が選ばれたようですから。
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